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2022.12.15

【最近のウォーニングレター】ASTROM通信<256号>

 

師走のあわただしい時期になりましたが、いかがお過ごしでいらっしゃいますか?

 

20221116日から、EU-PIC/S GMP Annex11の改訂にむけて、コンセプトペーパーのパブリック

コメントの募集が始まりました。

参照先:https://picscheme.org/docview/4967

今のAnnex112011年に発出されましたが、昨今の新しい技術の登場に対応していく必要が出て

きているため、2026年の適用にむけて、改訂が進められていくようです。

クラウド、AI(人口知能) ML(機械学習)などに対応した内容になるようで、非常に興味深いです。

 

さて今回もアメリカ食品医薬品局(FDA)がアメリカ国外の製薬会社向けに出したウォーニングレター

2件を見ていきたいと思います。

FDAがどのような点を問題視して指摘しているかをご確認いただければ幸いです。

 

 

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最近のウォーニングレターの概要  

注:文中のXXはウォーニングレターでマスキングされている文言及び具体的な社名・品名等です。

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Warning Letter 320-22-25

2022322日~44日のインドの製造所の査察でみつかった原薬製造の重大なCGMP違反について

発した2022927日付ウォーニングレターには、下記の指摘事項があげられています。

 

●指摘1

中間体及び原薬の製造に使用する装置の洗浄及びそのリリースに関する適切な文書化された手順の

制定の不履行

<指摘1詳細>

貴社は貴社の原薬の中に不純物XXを検出した後、既存の洗浄手順と業務が、医薬品XXを製造する

過程で発生する不純物XX及びXXを含む遺伝毒性不純物を除去または削減できるのかを確認する目的

で複数のリスクアセスメントを実施した。また貴社は既存の洗浄手順が中間体と原薬の交叉汚染を

削減することを評価するために、非専用製造装置や回収溶媒内の残留物を評価するリスクアセス

メントを実施した。貴社のリスクアセスメントは、既存の装置の洗浄手順が、装置の各部品から

残留原薬とXXを許容できるレベルまで除去するのに効果的であることを裏付けるデータが不足して

いた。

例えば、原薬XXの製造後の建物XXXX内の非専用装置で起きる可能性のある交叉汚染を評価する

ための貴社の仮説検定プロトコルと、装置のタイプA(製品管の切替)の洗浄は、次の点で不十分で

ある:

・実施された2つのプロトコルは、2019年から2021年に、原薬XXの製造後に非専用装置で製造された

 原薬XXXXロットを確認した。XX4ロットで、XX以下という限界値付近で計測可能なレベルのXX

 が確認された。これらの結果について、更なる調査は実施されなかった。

・原薬XXの製造から切り替えた後に非専用装置で製造された原薬XXXXまたはXXの最初のロットの

 特定を裏付ける文書が不足していた。

・プロトコルは、溶媒を回収するために使用される非専用装置を含む非直接の汚染源からの交叉

 汚染に対処していない。

制定された限界値付近の遺伝毒性不純物が確認されたことは、逸脱が起こりうることを示唆して

いる。医薬品XXの製造に使用される、非専用装置で製造された全ての中間体及び原薬は、それらが

遺伝毒性不純物に許容できないレベルで汚染されていないことを保証するために、バリデートされた

サンプリングと分析試験の対象にされるべきである。

貴社は、原薬XXの製造からの切替後に原薬XX内での遺伝毒性不純物の検出・計量に関し、矛盾する

データを提出した。例えば、原薬XXの製造からの切替後に、遺伝毒性の残留物の累積したキャリー

オーバーの可能性の調査中に試験された原薬XXXXの全てのロットの中に、定量化可能なレベルの

不純物XXXXXXがあることを報告した。しかし、貴社の品質のリスクアセスメントでは、同じ

製品のロット内で不純物XXは検出されなかったと述べた。貴社は、適切な科学的な正当化の理由も

なく、好ましくない分析結果を無視した。貴社は、非専用装置で製造された他の中間体や原薬に

これらの遺伝毒性不純物のキャリーオーバーのリスクはないと結論づけた。

貴社は回答の中で、原薬XXXXの製造を専用装置に制限し、専用の溶媒回収ユニットを使用すると

約束した。しかし貴社は、特定の製品の製造キャンペーン中にだけ専用の溶媒回収タンクを使用

すると述べた。溶媒回収タンクが特定の製品専用ではないために交叉汚染のリスクは残るので、

貴社は非専用の溶媒回収装置から交叉汚染が発生しないことを保証するために、適切にリスクを

評価して手順をバリデートする必要がある。

この文書への回答の中で以下の情報を提供せよ:

・交叉汚染の危険性の範囲を評価するための、洗浄の効果の包括的で独立した回顧的なアセスメント

 残留物、不適切に洗浄された可能性のある他の製造装置の特定と、交叉汚染された製品が出荷の

 ためにリリースされた可能性があるかどうかのアセスメントを含めよ。アセスメントは、洗浄の

 手順と業務の不備を特定し、原薬や最終製品を含む、複数製品を製造するために使用されている

 製造装置を網羅する必要がある。

・貴社の洗浄プログラムの回顧的なアセスメントに基づく、洗浄プロセスと手順の適切な改善を

 含む是正処置・予防処置の計画と、完了のタイムライン

 装置の洗浄のライフサイクル管理のプロセスにおける脆弱性のサマリを提出せよ。洗浄効果の

 向上、全ての製品及び装置の適切な洗浄実施の継続的な検証の改善、その他全ての必要な改善を

 含む、貴社の洗浄プログラムの改善について述べよ。

・貴社の医薬品製造作業におけるワーストケースとして特定された条件を取り入れることに特に

 重点を置いた洗浄バリデーションプログラムへの適切な改善

 改善には、これに限定されないが、以下の全てのワーストケースの特定と評価を含むべきである:

 〇より高い毒性を持つ医薬品

 〇より高い有効性を持つ医薬品

 〇洗浄溶液の中でより低い溶解度の医薬品

 〇洗浄を難しくする特性を持った医薬品

 〇洗浄を最も難しくする拭き取り場所

 〇洗浄前の最大ホールドタイム

 〇さらに、新しい製造装置や新しい製品を導入する前に、貴社の変更管理システムでとられる

  べき手順を述べよ。

 〇製品、工程、装置の洗浄手順の検証とバリデーションのための適切なプログラムが実施されて

  いることを保証する最新の標準操作手順(SOP)のサマリ

 

●指摘2

中間体及び原薬の品質特性にばらつきをもたらす可能性のある工程ステップの性能の進捗をモニタ

し管理するための文書化された手順の制定の不履行

<指摘2詳細>

原薬XXXXの製造のためのXX工程で、不規則な頻度でXXの定量化可能なレベルで不純物XXが発生した。

例えば、貴社は、XX工程で製造された原薬XXXXXXXX内の不純物を検出して定量化するために

サンプリングをして分析試験を実施した。XX(XXppmの制限に対してXXppm)XX(XXppm以下の制限に対し

XXppm)であるロットでXXの定量化可能なレベルの不純物XXを得た。

貴社は、不純物XXを含む遺伝毒性不純物を理論的に減らす工程ステップの効果を評価するために、一連

の卓上試験と、商用レベルの検証も実施した。これらの検証では、全ての不純物は効果的に除去され、

不純物XXXXの工程内のモニタリングの追加の必要性はないと結論づけた。これは原薬の商用ロット

から得た前述の分析結果にもかかわらずである。貴社は、製造工程がこの不純物を効果的に除去できる

と宣言したが、XXXXのいくつかの一部のロットで不純物XXの定量化可能なレベルの出現について

更なる調査を実施しなかった。

貴社の卓上試験のデータは貴社の不純物除去が効果的であることを示唆しているが、貴社の商用の

製造データは、一貫したレベルで全ての遺伝毒性不純物を除去していないことを示している。原薬の

中の不純物のレベルに見られるばらつきは、特別な原因によるばらつきの可能性があるため、貴社は

次のいずれかを実施する必要がある:

・原薬内で不純物XXが許容限度のXX%未満であることを示すための、不純物XXまたはその前駆体のXX

 に関する試験の追加

・または、原薬の規格への不純物XXXXに関する試験の追加

改善されたプロセスの確認は、不純物XXに関するロットのリリース試験のようなロットのリリースを

裏付ける追加データを収集することによって実施されるべきである。

我々は、貴社がプロセスの性能分析を実施し、現在製造されている製品について包括的なリスクベース

のレビュを実施すると約束したと認識している。

この文書への回答の中で以下の情報を提供せよ:

・是正処置・予防処置と、そのそれらの完了予定日を含む、製造された中間体及び原薬内の遺伝毒性

 不純物の構成、モニタリング、管理を含む調査

・原薬XXXXの製造中に遺伝毒性不純物の低減または除去に関する工程性能分析から得られたデータと

 結論

 分析では、特別な原因によるばらつきと、医薬品の品質を保証するためにどのような管理を実施する

 かについても考察すべきである。

・現在製造されている全ての製品に関するリスクベースのレビュの手順

 

●指摘3

全ての重大な逸脱の調査の不履行

<指摘3詳細>

貴社は制限値の逸脱を含む全ての重大な逸脱を確認し調査することを怠った。例えば、貴社はXX

関する洗浄の確認プロトコルの実施中にXXppm未満という制限に対しXXppmOOS (Out-of-Specification)

の結果を得た。最終報告には、ロットXXの製造とタイプBの洗浄の完了後にXXから採取された拭き取り

サンプルのOOSを記録した。最終報告の10章は、OOSの結果にもかかわらず、逸脱もOOSの結果も見つ

からなかったと述べている。報告は、不適のデータとその後のレビュとこのレポートの承認があった

にもかかわらず、タイプBの洗浄は装置から化学的な残留物は効果的に除去されていることがバリデート

されたと結論づけている。

この文書への回答の中で以下の情報を提供せよ:

・貴社の品質部門(QU)が効果的に機能するために権限とリソースを与えられていることを保証するため

 の包括的なアセスメントと改善計画

 アセスメントには、これに限定されないが以下のことを含めるべきである:

 ○貴社で使用されている手順が安定していて適切かどうかの判断

 ○適切な手順の遵守を評価するための、貴社の作業全体のQUの監督に関する規定

 ○QUによるロットの処遇の判定前の、各ロット及びそれに関連する情報の完全で最終的なレビュ

 ○調査の監督と承認と、全ての製品の同一性、濃度、品質、純度を保証するための、QUのその他の

  業務の遂行

・不適合な結果の全ての案件を特定しそれらが適切に対処されていることを保証するために、使用期限

 内の原薬の製造または使用期限内のリリースされた原料に関連した工程の適格性またはバリデートの

 ために使用された全てのデータの回顧的なレビュ

 

●医薬品の製造停止

貴社がアメリカ市場向け医薬品の製造を停止することを約束したと認識している。この文書への回答

の中で、貴社が今後この施設で医薬品の製造を再開するつもりかを明確にせよ。

もしアメリカ市場向け医薬品の製造を再開するつもりなら、作業を再開する前に通知せよ。

 

●結論

この文書で挙げた逸脱は、貴社の施設に存在する逸脱の包括的なリストではない。貴社には、逸脱を

調査し、原因を判断し、再発やその他の逸脱の発生を防止する責任がある。

全ての逸脱を速やかに是正せよ。全ての逸脱に完全に対応がされ、我々が貴社のCGMPの遵守を確認

するまで、FDAは貴社の医薬品製造業者としての新しい申請やリストの補完の承認を保留するだろう。

我々は、貴社が全ての逸脱に対する是正処置を完了したことを確認するために再査察を行うかもしれ

ない。

 

出典:https://www.fda.gov/inspections-compliance-enforcement-and-criminal-investigations/warning-letters/lupin-limited-633703-09272022

 

 

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Warning Letter 320-23-02

2022418日~419日のメキシコの製造所の査察でみつかった医薬品製造の重大なCGMP違反に

ついて発した2022105日付ウォーニングレターには、下記の指摘事項があげられています。

 

●指摘1

貴社は、公式な、またはその他の制定された要求を超えて医薬品の安全性、同一性、濃度、品質、

純度を変える可能性のある誤動作や汚染を防ぐために、適切な間隔で装置や器具を洗浄、メンテ

ナンス、必要に応じて消毒/殺菌することを怠った。 (21 CFR 211.67(a))

<指摘1詳細>

貴社は、XXXXのようなOTC医薬品を製造している。また貴社は、商用の化学溶液XXOTC医薬品と

同じ製造装置で製造している。洗浄時の製造装置からの残留物の不十分な除去は、その後に非専用

装置で製造された医薬品の汚染につながる可能性がある。さらに貴社は、文書化された洗浄手順や

医薬品の製造に使用されているタンクXXに関する装置使用ログを保持していなかった。

交叉汚染のリスクにより、商用の化学溶液XXやその他の非医薬品を製造するのに使用しているのと

同じ装置を使って医薬品の製造を続けるのは、CGMP上受け入れられない。

この文書に応えて、貴社の施設内の非医薬品と共有している装置での医薬品の製造を中止せよ。

貴社が貴社の施設で医薬品と非医薬品の製造を再開するつもりなら、医薬品製造と工業用製品製造

のために専用の製造装置を保持するエリアをいかに分離するかを示す計画を提出せよ。

さらに、非医薬品と共有する装置で以前製造された全ての医薬品のリスク評価を実施せよ。各製品

について、共有装置による潜在的な汚染のリスクを評価し、まだ販売中の製品の品質と患者の安全

のリスクに対応するための、回収や市場からの撤退の可能性を含む計画を提出せよ。

 

●指摘2

貴社の品質管理部門は、製造された医薬品がCGMPに準拠し、同一性、濃度、品質、純度に関して

制定された規格を満たすことを保証するために、その責任を果たすことを怠った。(21 CFR 211.22)

<指摘2詳細>

貴社の品質部門(QU)は貴社の医薬品の製造に関して適切な監視を行わなかった。例えば、貴社のQU

は以下のことについて保証するのを怠った:

・ベンダの適格性評価、ロットのリリース、保存検体、調査、苦情、CGMPの訓練の取り扱いを含む、

 QUの役割と責任について述べた適切な手順 (21 CFR 211.22(a)(d))

・入荷した成分の同一性、純度、濃度、その他の適切な品質特性に関する適切な試験

 (21 CFR 211.84(d)(1)(2))

・安定性プログラムの遵守 (21 CFR 211.166(a))

・ロットの記録の適切な保持 (21 CFR 211.188)

貴社の品質システムは不十分である。CGMPの規制要件21 CFR part 210, 211を満たすために

品質システムとリスクマネジメントのアプローチを実装する助けとして、

FDAのガイダンス文書Quality Systems Approach to Pharmaceutical CGMP Regulationsを見よ。

この文書への回答の中で以下の情報を提供せよ:

・貴社のQUが効果的に機能するために権限とリソースを与えられていることを保証するための

 包括的なアセスメントと改善計画

 アセスメントには、これに限定されないが以下のことを含めるべきである:

 ○貴社で使用されている手順が安定していて適切かどうかの判断

 ○適切な手順の遵守を評価するための、貴社の作業全体のQUの監督に関する規定

 ○QUによるロットの処遇の判定前の、各ロット及びそれに関連する情報の完全で最終的なレビュ

 ○調査の監督と承認と、全ての製品の同一性、濃度、品質、純度を保証するための、QUのその他

  の業務の遂行

 

●医薬品の製造停止

貴社がこの施設での医薬品の製造を停止し、医薬品製造業者として貴社の施設の登録を抹消する

ことを約束したと認識している。もしアメリカ市場向け医薬品の製造を再開するつもりなら、作業

を再開する前に通知せよ。

 

CGMPコンサルタントの推奨

貴社で確認した違反の性質に基づき、貴社は、CGMPの要件を満たすように貴社を支援するために

21 CFR 211.34に記載されている適格性のあるコンサルタントを雇うべきである。貴社がFDAと共に

貴社のコンプライアンス状態の解決を達成しようとする前に、適格性のあるコンサルタントは、

CGMPの遵守について貴社の製造作業全体の包括的な監査を実施し、貴社の是正処置・予防処置の

完了と効果も評価するべきである。

貴社のコンサルタントの使用は、CGMPを遵守するための貴社の義務を軽減するものではない。貴社

の経営陣には、継続的なCGMP遵守を保証するために、全ての不備とシステムの欠陥を解決する責任

が残る。

 

●結論

この文書で挙げた違反は、貴社の施設に存在する違反の包括的なリストではない。貴社には、違反

を調査し、原因を判断し、再発やその他の違反の発生を防止する責任がある。

FDA2022812日に輸入警告措置66-40をとった。

全ての違反を速やかに是正せよ。全ての違反に完全に対応がされ、我々が貴社のCGMPの遵守を確認

するまで、FDAは貴社の医薬品製造業者としての新しい申請やリストの補完の承認を保留するだろう。

我々は、貴社が全ての違反に対する是正処置を完了したことを確認するために再査察を行うかもしれ

ない。

 

出典:https://www.fda.gov/inspections-compliance-enforcement-and-criminal-investigations/warning-letters/eksa-mills-sa-de-cv-634706-10052022

 

 

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まとめ

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いかがでしたでしょうか。

 

今回は2件とも、医薬品と非医薬品の製造で共用されている非専用装置の交叉汚染対策に関する

指摘が含まれていました。

医薬品・非医薬品の製造で装置を共用することはあまりないかもしれませんが、複数の医薬品で

装置を共用することはよくある話かと思います。交叉汚染を防ぐ意味で、洗浄バリデーションの

重要性をあらためて感じました。

 

ところで、最近、FDAが海外の製造所に出すウォーニングレターの数が増えつつあり、少しずつ

コロナ以前の状態に戻りつつあるように思います。

来年こそコロナが終息することを願うばかりです。

皆様、良いお年をお迎えください。

2022.12.01

【最近のウォーニングレター】ASTROM通信<255号>

 

こんにちは。

ASTROM通信担当の橋本奈央子です。

 

今年も残すところあと一ヶ月となりましたが、いかがお過ごしでいらっしゃいますか?

 

さて今回は、久々に、アメリカ食品医薬品局(FDA)がアメリカ国外の製薬会社向けに出した

ウォーニングレター2件を見ていきたいと思います。

FDAがどのような点を問題視して指摘しているかをご確認いただければ幸いです。

 

 

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最近のウォーニングレターの概要  

注:文中のXXはウォーニングレターでマスキングされている文言及び具体的な社名・品名等です。

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Warning Letter 320-22-24

2022216日~218日のドイツの製造所の査察でみつかった医薬品製造の重大なCGMP違反に

ついて発した202299日付ウォーニングレターには、下記の指摘事項があげられています。

 

●指摘1

貴社は、貴社が製造した医薬品が、それが持つとうたわれている同一性、濃度、品質、純度を持って

いることを保証するために設計された製造や工程管理についての文書化された手順を制定することを

怠った。貴社は、装置の洗浄及びメンテナンスのための文書化された手順を制定しそれに従うことも

怠った。(21 CFR 211.100(a)211.67(b))

<指摘1詳細>

〇プロセスバリデーションの欠如

貴社は、貴社のOTC医薬品の製造工程がバリデートされていることを示すためのデータを提出する

ことを怠った。査察中、貴社は、製造された各OTC医薬品が、予め定められた品質要件を一貫して

確実に満たすことを裏付けるための文書を提出できなかった。また、貴社は所定の製造工程が

管理状態にあることを保証するために実施された活動の記述を伴う、制定された合格基準が満たす

ことを示す適格性評価のプロトコル、報告、検証文書が欠けていた。

さらに、プロセスバリデーションが不足しているために、貴社のバッチレコードには、重要な製造の

情報が含まれていないので不適切である。例えば、ロットXXXXXXXXに関するバッチレコードは、

XX回、XX、工程内の確認やサンプル等のXX工程の情報が欠けていた。査察中、貴社は、全てのXX装置

には、製造中にオペレータによって手動で調整される可変のXXがあるが、操作XXは貴社の製造記録に

文書化されていないと述べた。

貴社は回答の中で、プロセスバリデーションを支援するための第三者を雇うと約束した。また貴社は、

貴社の製造記録書を改訂するつもりであると述べた。

貴社の回答は不十分である。貴社は、さまざまな製造工程のバリデーションのための工程性能プロト

コルと、ばらつきの全ての原因を特定するために実施されるアクションの詳細を提出することを

怠った。

さらに、貴社は、XXのバルクのホールドタイムに従っているが、バルクのホールドタイムの検証が

不足していた。貴社は回答の中で、貴社の設備で製造される医薬品のバルクのホールドタイムを

バリデートすると約束した。貴社は貴社の医薬品の品質を保証するために製造段階でいかに時間の

制限を制定するかの十分な情報を提供することを怠ったので、貴社の回答は不十分である。さらに、

貴社は、バルクのホールドタイムの検証の不足が貴社の医薬品の安定性や品質特性に与える可能性

の影響を判断するための製造作業の回顧的評価を含めなかった。

〇洗浄バリデーション

XXXXを含む医薬品XXXX等の貴社のOTC医薬品は、軟膏、XXXXを含むかもしれないXX等の非医

薬品を製造するために使用されるのと同じ装置で製造されている。

貴社は、洗浄の対象の最悪の物質としてXXを特定した。XXに関する安全データシートは、その物質

を、飲み込んだら有害であると記載している。貴社の医薬品はXX用であり、意図しない摂取の危険

があることに注意せよ。貴社の医薬品の洗浄バリデーションプログラムに関して提出された情報は

不十分である。非医薬品を製造するために使用しているのと同じ装置を使って医薬品の製造を続け

ることは、CGMP上受け入れられない。

この文書への回答の中で、以下の情報を提供せよ:

・製品のライフサイクルを通して、管理状態を保証するためのバリデーションプログラムの関連

 手順を添えた、詳細なサマリ

 工程性能の適格性評価と、継続的な管理状態を保証するためのロット内及びロット間のばらつき

 の継続的なモニタリングに関する貴社のプログラムについて述べよ。

・販売されている貴社の各製品についての、工程性能適格性評価(PPQ)の実施に関するタイムライン

・工程性能プロトコル、装置及び設備の適格性評価に関する文書化された手順を提供せよ。

・継続的な管理状態を保証するための、ロット内及びロット間のばらつきの慎重なモニタリング

 を含む、貴社の各製造工程の設計、バリデーション、メンテナンス、管理、モニタリングに

 関する詳細なプログラムを提供せよ。また、貴社の装置及び施設の適格性評価に関する

 プログラムも含めよ。

・非医薬品と共有された装置で以前に製造された全ての医薬品のリスクアセスメント

 各製品について、共有装置による潜在的な汚染のリスクを評価し、まだ販売中の全ての製品に

 ついて、回収の可能性や市場からの撤退を含む、製品品質や患者の安全性のリスクに対処する

 ための計画を提出せよ。

・貴社の設備の、医薬品及び非医薬品の両製造に関する貴社の計画

 もし貴社が、貴社の設備で医薬品及び非医薬品の両製造を継続するつもりであれば、医薬品

 製造のための専用製造装置を維持するエリアを分離するための計画と、工業用製品の製造作業

 についての情報を提供せよ。

・新しい製造装置や新しい製品を導入する前に、貴社の変更管理システムでとられるべき手順を

 述べよ。

・貴社の医薬品製造作業におけるワーストケースとして特定された条件を取り入れることに特に

 重点を置いた洗浄バリデーションプログラムへの適切な改善

 改善には、これに限定されないが以下の全てのワーストケースの特定と評価を含むべきである:

 〇より高い毒性を持つ医薬品

 〇より高い有効性を持つ医薬品

 〇洗浄溶液の中でより低い溶解度の医薬品

 〇洗浄を難しくする特性を持った医薬品

 〇洗浄を最も難しくする拭き取り場所

 〇洗浄前の最大ホールドタイム

 さらに、新しい製造装置や新しい製品を導入する前に、貴社の変更管理システムでとられる

 べき手順を述べよ。

・製品、工程、装置の洗浄手順の検証とバリデーションのための適切なプログラムが実施されて

 いることを保証する最新の標準操作手順(SOP)のサマリ

・洗浄手順と実務の適切な改善、完了までのタイムラインを含む、貴社の洗浄プログラムの

 回顧的なアセスメントに基づくCAPAの計画

 装置洗浄のライフサイクル管理に関する貴社の手順の脆弱性の詳細を提出せよ。洗浄効果の

 増大、全ての製品と装置に関する適切な洗浄の実施の継続的な検証の改善、その他全ての

 必要とされる改善を含む、貴社の洗浄プログラムの改善について述べよ。

貴社には、プロセスバリデーションのプログラムが欠けている。プロセスバリデーションは、

ライフサイクルを通じて、工程の設計の安定性と管理状態を評価する。製造工程の各重要な

段階は、適切に設計され、投入される原材料、工程内原料、最終製品の品質を保証しなければ

ならない。工程の適格性評価は、初期の管理状態が定着しているかどうかを判断する。

商用の販売の前に、工程の適格性評価の達成が必要である。その後、製品のライフサイクルを

通じて、安定した製造作業を維持していることを保証するために、工程の性能と製品品質の

継続的で慎重な監視が必要である。

 

●指摘2

貴社は、成分、医薬品の容器、蓋、工程内原料、ラベル、医薬品が、同一性、濃度、品質、純度

の適切な標準に従っていることを保証するために設計された、科学的に妥当で適切な規格、標準、

サンプリング計画、試験手順を含む試験の管理を確立することを怠った。(21 CFR 211.160(b))

<指摘2詳細>

貴社は、貴社のXXシステムがUSPモノグラフ規格の最小値を一貫して満たし、医薬品の製造に

適した適切な微生物の限度を管理していることを証明することを怠った。例えば、2021年に、

貴社のXXに関するXX試験の結果はUSP基準を超えた。さらに貴社は、XXの規格を持たず、XX

XX試験を実施していない。

貴社が、意図した目的に合うXXを一貫して製造するためにXXシステムを設計することが不可欠

である。貴社は回答の中で、確実にUSPの標準を満たすために、XXの供給を外部委託する意向

を述べた。不適切なXXシステムを使って製造されリリースされた医薬品のリスクアセスメント

を含んでいなかったので、貴社の回答は不十分である。

この文書への回答の中で、以下の情報を提供せよ:

・このシステムが、貴社の各製品の使用目的に合ったXXを製造しているかどうかをモニタする

 ための微生物総数の限界

XXシステムで見つかった不具合が、現在アメリカに流通しているか、使用期限内のすべての

 医薬品のロットの品質に与える潜在的な影響に対処するための詳細なリスクアセスメント

 リスクアセスメントに応じて、貴社がとろうとしている、顧客への通知や製品の回収と

 いったアクションを明記せよ。

・システムが、XXUSPモノグラフ規格や微生物の限度を満たすXXを一貫して製造することを

 保証する、継続的な管理、メンテナンス、モニタリングに関する貴社のプログラムを管理

 する手順

XXシステムの設計、管理、メンテナンスに関する包括的な改善計画

XXシステムのバリデーション報告

 システム設計及び継続的な管理とメンテナンスに関するプログラムに対してなされた全ての

 改善のサマリを含めよ。

 

●指摘3

貴社は、医薬品の各成分の同一性を確認するために少なくとも1つの試験を実施することを

怠った。(21 CFR 211.84(d)(1))

<指摘3詳細>

貴社は、貴社の医薬品を製造するのに使用される、入荷した有効成分の同一性を判断するための

試験を実施することを怠った。我々査察官は、XXの同一性試験をせずに、製造で使用するために

原薬XXをリリースしているのを見た。各成分のロットの同一性試験は、医薬品の製造に使用する

前に必要であり、適切な間隔で供給者の試験結果をバリデーションすることで、その他の成分の

属性に関する分析証明書(COA)を信頼できる。

貴社は回答の中で、貴社は、XXの同一性試験を実施するための装置を持っていないと述べた。

また、貴社は、サードパーティのラボにて、使用された原薬の保存検体の試験を実施することを

約束した。

貴社の回答は不十分である。貴社は、貴社の原材料システムの包括的な改善、既にリリースされ

出荷された製品のアセスメント、サードパーティの試験の完了のタイムラインに関する情報を

提出しなかった。

この文書への回答の中で、以下の情報を提供せよ:

・成分、容器、蓋の全ての供給業者が、それぞれ適格であり、原材料には適切な使用期限または

 リテスト日付が付与されているかどうかを判断するための、貴社の原材料システムの包括的で

 独立したレビュ

 レビュには、不適切な成分、容器、蓋の使用を防ぐために入荷した原材料の管理が適切かどう

 かを判断することも含むべきである。

・入荷した成分の各ロットを製造に使用するために試験しリリースするのに貴社が使用している

 化学及び微生物学上の品質管理の規格

・同一性、濃度、品質、純度の全ての規格への一致について、入荷した成分の各ロットを貴社が

 いかに試験するつもりかの記述

 もし貴社が濃度、品質、純度に関し各成分を試験する代わりに、供給者の分析証明書(COA)

 結果を受け入れるつもりなら、初期のバリデーションと定期的な再バリデーションを通じて、

 いかに確実に供給者の分析結果の信頼性を確認するかを明記せよ。さらに、入荷した成分の

 各ロットについて、少なくとも1つの特定の同一性試験を常に実施するという約束を含めよ。

・成分の各製造業者から得たCOAの信頼性を評価するための、全ての成分の試験から得られた

 結果のサマリ

 このCOAのバリデーションプログラムについて述べた貴社のSOPも含めよ。

 

●指摘4

貴社は、許可された職員のみが製造指図記録書原本やその他の記録の変更を行えることを保証

するために、コンピュータまたは関連システムに対し適切な管理を実施することを怠った。

(21 CFR 211.68(b))

<指摘4詳細>

貴社は、フーリエ変換赤外分光計(FTIR)システムの適切な管理を行うことを怠った。例えば、

貴社は、各分析者のユニークなユーザ名やパスワードを設定しなかった。さらに、このFTIRは、

日常的に原材料や最終製品試験に使用されているにもかかわらず、監査証跡機能が無効に

なっていた。

貴社の品質システムは、貴社が製造する医薬品の安全性、有効性、品質を裏付けるデータの

正確性と完全性を適切に保証していない。CGMPに則ったデータ・インテグリティの手順の制定

と遵守のアドバイスとして、

FDAのガイダンス文書Data Integrity and Compliance With Drug CGMPを見よ。

我々は、貴社が、貴社の作業を監査し、FDAの要件を満たす手助けをするためのコンサルタント

を使っていることを認識している。我々は、貴社の改善を手助けする適切なコンサルタントを

雇うことを強く勧める。この文書への回答の中で、以下の情報を提供せよ:

A.アメリカに販売された医薬品のデータレビュの結果を含む、記録及び報告データの不正確さ

  の範囲の包括的な調査

  貴社のデータ・インテグリティの欠如の範囲と根本原因の詳細な記述を含めよ。

B.発見された不具合が貴社の医薬品の品質に与える潜在的な影響の現在のリスクアセスメント

  貴社のアセスメントは、データ・インテグリティの欠如の影響を受けた医薬品のリリース

  による患者へのリスクの分析と、継続的なオペレーションによってもたらされるリスクの

  分析を含めるべきである。

C.全体的な是正処置・予防処置の計画の詳細を含む貴社の経営戦略

  詳細な是正処置計画は、微生物データ、分析データ、製造記録、FDAに提出される全ての

  データを含む貴社で生成された全てのデータの信頼性と完全性をいかに保証するつもりか

  を記述すべきである。

 

●結論

この文書で挙げた違反は、貴社の施設に存在する違反の包括的なリストではない。貴社には、

違反を調査し、原因を判断し、再発やその他の違反の発生を防止する責任がある。

全ての違反を速やかに是正せよ。全ての違反に完全に対応がされ、我々が貴社のCGMPの遵守を

確認するまで、FDAは貴社の医薬品製造業者としての新しい申請やリストの補完の承認を保留

するだろう。我々は、貴社が全ての違反に対する是正処置を完了したことを確認するために

再査察を行うかもしれない。

 

出典:https://www.fda.gov/inspections-compliance-enforcement-and-criminal-investigations/warning-letters/system-kosmetik-produktionsgesellschaft-fur-kosmetische-gmbh-632727-09092022

 

 

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Warning Letter 320-23-01

2022411日~415日の中国の製造所の査察でみつかった医薬品製造の重大なCGMP違反に

ついて発した2022105日付ウォーニングレターには、下記の指摘事項があげられています。

 

●指摘1

貴社は、医薬品の各成分の同一性を確認するために少なくとも1つの試験を実施することを

怠った。また貴社は、適切な間隔で、成分の供給者の分析試験の信頼性をバリデートし確証

することを怠った。(21 CFR 211.84(d)(1)211.84(d)(2))

<指摘1詳細>

貴社は、アルコール75%手指の除菌用ローションとXXを含む、OTCの手指の除菌用ローション

の医薬品を製造している。貴社は、医薬品を製造するために成分を使用する前に、入荷した

成分の同一性について試験することを怠った。さらに貴社は、適格性評価がされていない供給者

から得た成分の規格に関する分析証明書(COA)を信頼した。同一性、純度、濃度、品質について

成分を分析しないことにより、貴社は入荷した成分が規格を満たすことを保証することを怠った。

貴社は回答の中で、貴社の手指の除菌用ローションの製造で使用されている2つの有効成分で

あるXXとエタノールに関する試験方法を提出した。また貴社は、メタノールが検出できない

レベルの2つの除菌用ローションの保存検体の試験結果も提供した。

貴社は、貴社の試験方法が、USPの方法と同等か、USPより良いということを示す、有効成分及び

成分の関連する試験方法に関する詳細を提供しなかったので、貴社の回答は不十分である。

さらに貴社は、どのように貴社の供給者のCOAの試験結果の信頼性を確認し定期的にバリデート

するか検討しなかった。

この文書への回答の中で、以下の情報を提供せよ:

・現在アメリカ市場にあり使用期限内の医薬品の同一性、純度、濃度、品質、安全性に対する、

 入荷成分の試験の不足の影響の回顧的リスクアセスメント

・入荷した成分のロットを製造に使用するために試験してリリースするのに使用している化学

 及び微生物学上の品質管理の規格

・各成分のロットの同一性、濃度、品質、純度に関する全ての規格への一致をいかに試験する

 つもりかの記述

 各成分のロットの濃度、品質、純度に関して試験する代わりに、供給者のCOAの結果を受け

 入れるつもりであれば、初期のバリデーションと定期的再バリデーションを通じて、供給者

 の分析結果の信頼性をいかに慎重に確証するつもりかを明記せよ。さらに、入荷した成分の

 ロットについて、少なくとも1つの特定の同一性試験を常に実施するという約束を含めよ。

・各成分の製造業者のCOAの信頼性を評価するための、全ての成分の試験から得られた結果の

 サマリ

 このCOAのバリデーションプログラムを述べた貴社の標準作業手順書(SOP)を含めよ。

・貴社が製造する医薬品を試験する契約設備の適格性評価と監督に関する貴社のプログラムの

 サマリ

・成分、容器、蓋の全ての供給業者が、それぞれ適格であり、原材料には適切な使用期限または

 リテスト日付が付与されているかどうかを判断するための、貴社の原材料システムの包括的で

 独立したレビュ

 レビュには、不適切な成分、容器、蓋の使用を防ぐために入荷した原材料の管理が適切かどう

 かを判断することも含むべきである。

 

●指摘2

貴社は、装置の洗浄及びメンテナンスの文書化された手順を制定して遵守することを怠った。

(21 CFR 211.67(b))

<指摘2詳細>

貴社は、XXXX等の非医薬品の工業製品を製造するために使用しているのと同じ装置を使って

医薬品を製造している。洗浄中の製造装置からの不十分な残留物の除去は、非専用装置で続いて

作られた医薬品の汚染につながる可能性がある。

貴社は回答の中で、製造装置の洗浄と殺菌に関する貴社の手順の概要を述べた文書を提供した。

工業用製品の製造に使用するのと同じ製造装置を使って医薬品製造を続けることは、交叉汚染の

リスクによりCGMP上受け入れられない。

この文書への回答の中で、以下の情報を提供せよ:

・工業製品と共有している装置で以前に作られた全ての製品のリスクアセスメント

 各製品について、共有された装置による汚染の可能性のリスクを評価し、まだ流通中の製品の

 品質と患者の安全のリスクに対処するための、回収や市場からの撤退の可能性を含む、貴社の

 計画を提出せよ。

・貴社の施設で医薬品と非医薬品の両方を製造することに関する貴社の計画

 もし貴社が、貴社の設備で医薬品及び非医薬品の両製造を継続するつもりであれば、医薬品

 製造のための専用製造装置を維持するエリアを分離するための計画と、工業製品の製造作業に

 ついての情報を提供せよ。

・製品、工程、装置の洗浄手順の検証とバリデーションのためのプログラムが実施されることを

 確実にする改良したSOPのサマリ

 

●指摘3

貴社は、有害な微生物が含まれていないことが求められている医薬品の各ロットについて、必要

に応じて、ラボの適切な試験を実施することを怠った。(21 CFR 211.165(b))

<指摘3詳細>

貴社のバッチレコードは、貴社の手指の除菌用ローションの最終製品の微生物試験を実施しなかっ

たことを示している。各ロットのリリース前の試験を実施しないので、貴社には、全ての医薬品

のロットが適切な微生物の品質規格に従っているという科学的なエビデンスがなかった。

この文書への回答の中で、以下の情報を提供せよ:

・ロットの処遇の判断をする前に医薬品の各ロットを分析するために使用されている試験方法を

 含む化学及び微生物の規格のリスト

 〇この文書の日付時点で使用期限内にあるアメリカ向けに出荷された医薬品の全てのロットの

  品質を判断するために、保存検体の全ての化学及び微生物の試験を実施するためのアクション

  プランとタイムライン

〇使用期限内の各ロットの保存検体の試験から得られた全ての結果のサマリ

 もしそれらの試験で医薬品の基準以下の品質が明らかになった場合、顧客への通知や製品の

 回収などの是正措置を迅速に実施せよ。

 

●指摘4

貴社は、貴社が製造した医薬品が、それが持つとうたわれている同一性、濃度、品質、純度を

持っていることを保証するために設計された製造や工程管理についての文書化された手順を制定

することを怠った。 (21 CFR 211.100(a))

<指摘4詳細>

貴社は、OTCの手指の除菌用ローションの製造工程のバリデーションを怠った。例えば貴社は、

これに限定されないが、XXや時間を含む重要な製造の変数を十分に特定していなかった。貴社は、

均一な特性と品質の医薬品を一貫して製造できるように製造工程が管理されていることを証明

しなかった。

貴社は回答の中で、2022418日以降に実装されるOTCの手指の除菌用ローションの製造工程の

手順を提出した。

貴社の回答は不十分である。貴社は、貴社の医薬品を製造するために使用する工程をバリデート

するかどうかについて言及していない。

この文書への回答の中で、以下の情報を提供せよ:

・製品のライフサイクルと通して管理状態を保証するための、関連手順も添えた貴社のバリデー

 ションプログラムのサマリ

 工程の性能適格性評価、継続的な管理状態を保証するためのロット内及びロット間のばらつき

 を継続的にモニタリングするための貴社のプログラムについて述べよ。

・医薬品の出荷前に適切なバリデーションの実施を確実にする方法を含む、販売されている貴社

 の各製品の工程性能適格性評価を実施するためのタイムライン

 FDAがプロセスバリデーションの要素と考える一般原則とアプローチについて、

 FDAのガイダンス文書Process Validation : General Principles and Practicesを見よ。

 

●指摘5

貴社の品質管理部門は、製造された医薬品がCGMPに従い、同一性、濃度、品質、純度に関して制定

された規格を満たすことを保証するためにその責任を果たすことを怠った。(21 CFR 211.22)

<指摘5詳細>

貴社の品質部門(QU)は貴社のOTC医薬品の製造を適切に監督しなかった。例えば:

・貴社のバッチレコードは、医薬品のリリースの日の情報がなく、QUによって署名されていなかった。

・貴社のQUは貴社の電子システム内でラボの試験結果を見つけることができず、電子データのバック

 アップが不十分だった。

XXに関するラボノート内に記録された試験結果は判読できず、記録は帰属可能でなかった。

・我々査察官がXXに関すCOAを要求した時、貴社は査察官に食品グレードのCOAを提出した。

医薬品の品質を一貫して保証するために、全ての製造作業のQUによる適切な監督が必要である。

貴社は回答の中で、QUの責任、記録の管理手順、製造記録書のフォーム、XXの記録フォーム、製造

記録の管理システムを説明したいくつかの文書を提出した。

貴社は、これらの不備につながった貴社のQUの根本的な欠陥に対応することを怠ったので、貴社の

回答は不十分である。貴社の回答は、製品品質を保証するために、適切な運用プログラム、システム、

データガバナンス、関連手順を制定していることを示す文書と十分な記述が不足していた。

この文書への回答の中で、以下の情報を提供せよ:

・貴社のQUが効果的に機能するために権限とリソースを与えられていることを保証するための

 包括的なアセスメントと改善計画

 アセスメントには、これに限定されないが以下のことを含めるべきである:

 ○貴社で使用されている手順が安定していて適切かどうかの判断

 ○適切な手順の遵守を評価するための、貴社の作業全体のQUの監督に関する規定

 ○QUによるロットの処遇の判定前の、各ロット及びそれに関連する情報の完全で最終的なレビュ

 ○調査の監督と承認と、全ての製品の同一性、濃度、品質、純度を保証するための、QUのその他

  の業務の遂行

・文書手順が不十分かどうかを判断するための、貴社の製造及び試験作業を通して使用されている

 文書システムの完全なアセスメント

 貴社が貴社の業務を通して、帰属可能で、判読可能で、完全で、原本性があり、正確で、同時性

 のある記録を保持していることを保証するために、貴社の文書化手順を包括的に改善する詳細な

 CAPAの計画を含めよ。

貴社の品質システムは不十分である。CGMPの規制の21 CFR Part 210,211の要件を満たすために、

品質システムとリスクマネジメントアプローチを実装する助けとして、

FDAのガイダンス文書Quality Systems Approach to Pharmaceutical CGMP Regulationsを見よ。

 

●データ・インテグリティの改善

貴社の品質システムは、貴社が試験した医薬品の安定性、有効性、品質を裏付けるデータの正確性

と完全性を適切に保証していない。CGMPに従ったデータ・インテグリティの手順を制定し遵守する

ための助けとして、FDAのガイダンス文書Data Integrity and Compliance with Drug CGMPを見よ。

この文書への回答の中で、以下の情報を提供せよ:

A.アメリカに販売された医薬品のデータレビュの結果を含む、記録及び報告データの不正確さの

  範囲の包括的な調査

  貴社のデータ・インテグリティの欠如の範囲と根本原因の詳細な記述を含めよ。

B.発見された不具合が貴社の医薬品の品質に与える潜在的な影響の現在のリスクアセスメント

  貴社のアセスメントは、データ・インテグリティの欠如の影響を受けた医薬品のリリースに

  よる患者へのリスクの分析と、継続的なオペレーションによってもたらされるリスクの分析を

  含めるべきである。

C.全体的な是正処置・予防処置の計画の詳細を含む貴社の経営戦略

  詳細な是正処置計画は、微生物データ、分析データ、製造記録、FDAに提出される全てのデータ

  を含む貴社で生成された全てのデータの信頼性と完全性をいかに保証するつもりかを記述すべ

  きである。

 

●未承認の新薬と虚偽表示の違反

省略

 

CGMPコンサルタントの推奨

貴社で確認した違反の性質に基づき、もし貴社がアメリカ市場向け医薬品の製造を再開するつもり

であれば、貴社は、CGMPの要件を満たすように貴社を支援するために21 CFR 211.34に記載されて

いる適格性のあるコンサルタントを雇うべきである。また適格性のあるコンサルタントは、CGMP

遵守について貴社の製造作業全体の包括的な監査を実施し、FDAと共に貴社のコンプライアンス状態

の解決を達成しようとする前に、コンサルタントが貴社の是正処置・予防処置の完了と効果を評価

するべきである。貴社のコンサルタントの使用は、CGMPを遵守するための貴社の義務を軽減する

ものではない。貴社の経営陣には、継続的なCGMP遵守を保証するために、全ての不備とシステムの

欠陥を解決する責任が残る。

 

●結論

この文書で挙げた違反は、貴社の施設に存在する違反の包括的なリストではない。貴社には、違反

を調査し、原因を判断し、再発やその他の違反の発生を防止する責任がある。

FDA202281日に輸入警告措置66-40をとった。

全ての違反を速やかに是正せよ。全ての違反に完全に対応がされ、我々が貴社のCGMPの遵守を確認

するまで、FDAは貴社の医薬品製造業者としての新しい申請やリストの補完の承認を保留するだろ

う。

我々は、貴社が全ての違反に対する是正処置を完了したことを確認するために再査察を行うかも

しれない。

 

出典:https://www.fda.gov/inspections-compliance-enforcement-and-criminal-investigations/warning-letters/beijing-xinggu-lvsan-technology-co-ltd-formerly-known-beijing-lvsan-technology-co-ltd-633904

 

 

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まとめ

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いかがでしたでしょうか。

 

今回は2件ともデータ・インテグリティに関する指摘が含まれていました。

1件目は、データを生成するコンピュータの管理に問題があり、データ・インテグリティが保証

出来ない状態でした。

また、2件目は、文書作成手順の問題で、データがALCOAの原則を満たしていない状態でした。

耳にタコが出来そうなデータ・インテグリティですが、今一度、自社のデータ管理に不備が

ないか注意してみるのもよいかもしれません。