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2022.09.15

【米国発OOSガイドライン】ASTROM通信<250号>

 こんにちは。

ASTROM通信担当の橋本奈央子です。

 

今回は20225月にアメリカの医薬品評価センター(CDERCenter for Drug Evaluation and Research

から発表された“医薬品製造のためのOOSの試験結果の調査-業界向けガイドライン改訂版を取り上げ

ます。

 

ウォーニングレターでは、しばしば規格外(OOS : Out-of-specification) の結果が発生した際の対応に

関し、以下のような指摘が挙げられています。

・最初の試験でOOSの結果が出た際、十分な調査をせず、合格が出るまで試験を行い、合格が出ると最初

 の試験を無効にする

OOSの原因を安易にラボの分析者のせいにして製造工程にある隠れた原因の調査を怠る

・同様もしくは類似の原因の影響を受けた他のロットや他の製品の是正処置・予防処置が不十分

 

そこで、FDAが考えるOOSの対処方法をガイドラインを読んで確認していきたいと思います。

また、本メールマガジンの最後に、DXのオンラインセミナーのご案内がございますので、あわせてご確認

頂ければ幸いです。

 

 

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Investigating Out-of-Specification (OOS) Test Results for Pharmaceutical Production Guidance for Industry

医薬品製造のためのOOの試験結果の調査-業界向けガイドライン

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I. はじめに

業界向けのこのガイドラインは、規格外(OOS : Out-of-specification) の試験結果を評価する方法に

関する当局の現在の考え方を提供する。この文書の目的上、「OOSの結果」という用語は、 医薬品申請、

医薬品マスターファイル(DMF)、公式公定書、または製造業者によって確立された仕様または合格基準

の範囲外にあるすべての試験結果を含む。この用語は、確立された仕様の範囲外にあるすべての工程内

の試験にも適用される。

このガイドラインは、CDERによって規制されている医薬品の化学ベースのラボの試験に適用される。

これは、従来の医薬品の試験およびリリース方法に向けられている。これらのラボの試験は、現行の

CGMPの規制(21 CFR parts 210, 211)およびFD&C Act(501(a)(2)(B))が適用される範囲で、有効成分、

賦形剤およびその他の成分、工程内原料、および最終医薬品に対して実施される。このガイドラインの

原則は、企業により購入された医薬品の成分の社内試験にも適用される。このガイドラインは、生産

および/またはラボの試験の責任を実行する契約企業によっても使用できる。具体的には、ラボの職員の

責任、ラボフェーズの調査、必要な追加試験、ラボ外に調査を展開するタイミング、すべての試験結果

の最終評価など、OOSの試験結果の調査方法について説明する。

当局は、20028月の Pharmaceutical CGMPs for the 21st Centuryの構想に従って、工程の予測

可能性と効率を強化するために、製造、モニタリング、および管理への現代的なアプローチを奨励する。

プロセス分析技術(PAT)は、ロットの合格判定をするために単一の試験の判断に依存するのではなく、

プロセス制御と工程内データをリリース規格として使用することにより、品質保証のための異なる

アプローチを採用している。このガイドラインは、PATアプローチに対処することを意図したものでは

なく、日常的な工程内の使用には他の考慮事項が含まれる場合がある。タイムリーな工程内試験の詳細

については

CGMPガイドラインA Framework for Innovative Pharmaceutical Development, Manufacturing, and Quality Assurance(20049)

を参照せよ。

この文書の内容は、法律の力および効果を有さず、契約に特に組み込まれていない限り、いかなる方法

でも公衆を拘束することを意図したものではない。この文書は、法律に基づく既存の要件について公衆

に明確さを提供することのみを目的としている。このガイドラインを含むFDAガイドライン文書は、特定

の規制要件または法定要件が引用されていない限り、推奨事項としてのみ見なされるべきである。当局

のガイドラインで“should(すべき)という言葉の使用は、何かが提案または推奨されているが、必須

ではないことを意味する。

 

II.バックグラウンド

ラボの試験は、成分、容器と蓋、工程内原料、および最終製品が安定性の規格を含む規格に準拠している

ことを確認するために必要である。

試験は、分析およびプロセスバリデーションも裏付ける。ラボの運用をカバーする一般的なCGMPガイド

ラインは、Part 211、サブパートI(試験の管理)およびJ(記録および報告)に記載されている。これらの

規制は、成分、容器と蓋、工程内材料、および最終医薬品が確立された基準に準拠していることを保証

するために設計された、科学的に理にかなった適切な規格、標準、および試験手順の確立を規定している。

CGMPガイドラインの211.165(f)は、確立された標準、規格、またはその他の関連する品質管理基準を満た

さない最終医薬品は不合格と判定されなければならないと規定している。

完成した医薬品と有効成分(API)は、いずれも同法501 (a)(2)(B)に基づくCGMPに従って製造されたもの

でなければならない。APICGMPには、科学的に理にかなった原材料の試験、工程内モニタリング、

リリースおよび安定性試験、プロセスバリデーション、およびそれらの試験から得られたOOSの結果の

適切な調査の履行が含まれる。この文書内のPart 211のすべての引用は最終医薬品に関するものだが、

これらの参照された規制要件は、OOSの調査を含むラボの管理に関するAPICGMPに関する当局のガイド

ラインとも一致している。特定の推奨事項について、

FDAの業界向けガイドラインQ7 Good Manufacturing Practice Guidance for Active Pharmaceutical Ingredients(20169)ICH Q7

を見よ。

 

III. OOS検査結果の特定と評価 フェーズI :ラボの調査

FDAの規制は、OOSの試験結果が得られたときはいつでも調査を実施することを要求している (§ 211.192)

調査の目的は、OOSの結果の原因を特定することである。OOSの結果の原因は、測定プロセスの逸脱または

製造プロセスの逸脱として識別する必要がある。ロットがOOSの結果に基づいて拒否された場合でも、

結果が同じ医薬品または他の製品の他のロットに関連しているかどうかを判断するために調査が必要

である。ロットの不合格の判断は、調査を実施する必要性を否定するものではない。規制は、結論と

フォローアップを含む、調査の文書化された記録を作成することを要求している(§211.192)

調査を有意義なものにするためには、徹底的で、タイムリーで、偏見がなく、十分に文書化され、科学的

に理にかなっていないといけない。このような調査の第1段階には、ラボのデータの精度の初期評価を

含める必要がある。可能な限り、試験標本 (試験した一定分量の混合物または均質な供給源を含む)

廃棄する前に、これを行う必要がある。このようにして、ラボのエラーや機器の誤動作に関する仮説を、

同じ試験標本を使用して試験することができる。この最初の評価で、データを得るために使用された分析

方法に原因となるエラーがなかったことが示された場合は、本格的なOOS調査を実施する必要がある。

受託ラボの場合、ラボはデータ、調査結果、および補足文書を製造会社の品質部門(QU)に伝える必要が

ある。製造会社のQUは、明らかに原因となる実験室のエラーが特定されなかったときはいつでも、

フェーズ2(本格的な)OOS調査を開始する必要がある。

 

A. 分析者の責任

正確なラボの試験結果を得るための最初の責任は、試験を実行している分析者にある。分析者は、試験

プロセス中に発生する可能性のある潜在的な問題を認識し、不正確な結果を生み出す可能性のある問題を

監視する必要がある。§ 211.160(b)(4)CGMPガイドラインに従って、分析者は、規定された性能規格

を満たす機器のみが使用され、すべての機器が適切に較正されていることを保証する必要がある。

特定の分析方法にはシステム適合性の要件があり、これらの要件を満たしていないシステムは使用される

べきでない。例えば、クロマトグラフィーシステムでは、ドリフト、ノイズ、および再現性を測定する

ために、クロマトグラフィーの実行中に参照用の標準溶液を間隔をあけて注入することができる。参照用

の標準の反応でシステムが正しく機能していないことが示された場合は、疑わしい期間に収集された

すべてのデータを適切に識別し、使用すべきでない。誤動作の原因を特定し、可能であれば、疑わしい

期間より前のデータを使用するかどうかを決定する前に誤動作が是正される必要がある。

分析者は、試験標本または標準標本を破棄する前に、試験規格に準拠しているかどうかデータを確認する

必要がある。予期せぬ結果が得られ、明白な説明が存在しない場合は、試験標本が安定していれば保持し、

分析者は管理者に通知する必要がある。結果の正確性の評価は直ちに開始する必要がある。

サンプル溶液のこぼれやサンプル複合材料の不完全な転送など、エラーが明らかな場合、分析者は何が

起こったかを直ちに文書化する必要がる。分析者は、突き止めることが可能な原因について、後で無効

になると予想される分析を故意に継続すべきではない (すなわち、明らかなエラーが判明したときに

どのような結果が得られるかを見るという目的だけで分析を完了すべきではない)

 

B. ラボ管理者の責任

OOSの結果が特定されたら、管理者のアセスメントは客観的でタイムリーでなければならない。OOSの結果

の原因について先入観のある仮定があってはならない。データを迅速に評価して、結果がラボのエラーに

起因する可能性があるかどうか、または結果が製造プロセスの問題を示している可能性があるかどうかを

確認する必要がある。即時のアセスメントには、オリジナルの測定と標本で使用された実際の溶液、試験

ユニット、およびガラス製品の再試験が含まれ、それはラボのエラーの仮説をより高めるかもしれない。

管理者のアセスメントの一環として、次の手順が実行されるべきである:

1. 分析者と試験方法を議論せよ。正しい手順に関する分析者の知識と実行を確認せよ。

2. クロマトグラムやスペクトルなど、解析で得られた生データを調べ、異常情報や疑わしい情報を特定

  せよ。

3. ローデータの値を最終試験結果に変換するために使用される計算が科学的に理にかない、適切で正しい

   ことを確認せよ。また、自動計算方法に承認されていない変更または検証されていない変更が加えられ

   たかどうかも判断せよ。

4. 機器の性能を確認せよ。

5. 適切な参照標準、溶媒、試薬、およびその他の溶液が使用され、品質管理規格を満たしていることを

   確認せよ。

6. 方法の検証データと履歴データに基づき、期待された標準に従って実行されていることを保証するため

   に、試験方法の実行を評価せよ。

7. このラボのアセスメントの記録を完全に文書化し、保存せよ。

OOSの結果に関する原因の決定は、保持されたサンプル標本が迅速に検査されれば、非常に容易になる。

何が起こったかの仮説(希釈誤差、機器の誤動作など)を試験する必要がある。保持された溶液の検査は、

ラボの調査の一環として実施されるべきである。

例:

• 一時的な機器の誤動作が疑われる調査の一環として、溶液を再注入できる。このような仮説は証明が

  難しい。しかし、再注入は、問題がサンプルまたはその標本ではなく、機器に起因するべきであると

  いう強力な証拠を提供することができる。

•試験中に破壊されない特定の特殊な剤形の医薬品の放出速度試験のために、可能であれば試験された

 オリジナルの投薬単位の検査は、それがその性能に影響を与える方法で実験室の取り扱い中にダメージ

 を受けたかどうかを判断してもよい。このようなダメージは、OOSの試験結果を無効にする証拠を提供

 し、再試験が示される。

•可能であれば、投薬単位のさらなる抽出を行って、オリジナルの分析中に完全に抽出されたかどうか

 を決定することができる。抽出が不完全な場合、試験結果が無効になる可能性があり、試験方法の

 バリデーションに関する問題につながる可能性がある。

調査の各ステップを完全に文書化することが重要である。ラボの管理は、得られた個々の値の信頼性だけ

でなく、これらのOOSの結果がラボの品質保証プログラムにとってどの程度重要かを確認する必要がある。

ラボの管理は、開発傾向に特に注意する必要がある。効果的な品質システムの一環として、企業の経営陣

はこれらの傾向を適切に監視し、問題のある分野が確実に対処されるようにする必要がある。

ラボのエラーは比較的まれである。頻繁なエラーは、分析者の不十分なトレーニング、不十分なメンテ

ナンスまたは不適切な校正された機器、または不注意な作業によるかもしれない問題を示唆している。

ラボのエラーが特定されたときはいつでも、企業はそのエラーの原因を特定し、再発を防ぐために是正

措置を講じる必要がある。CGMPガイドラインへの完全な準拠を保証ために、製造業者は是正措置の適切な

文書も保持すべきである。

要約すると、ラボの誤りの明確な証拠が存在する場合、ラボの試験の結果は無効にされるべきである。ラボ

のエラーの証拠が不明瞭なままの場合は、製造会社によって本格的なOOSの調査を実施して、予期しない

結果の原因を特定する必要がある。OOSの試験結果は、ラボの根本原因を明確に確証する調査を完了せずに

分析エラーに起因するべきではない。最初のラボのアセスメントと次のOOS調査の両方を完全に文書化する

必要がある。

 

IV. OOS 試験結果の調査 フェーズ II: 本格的なOOSの調査

初期評価で、実験室でのエラーが OOSの結果の原因であると判断されず、試験結果が正確であると思われる

場合は、予め定義された手順を使用した本格的なOOS調査を実施する必要がある。このような調査の目的は、

OOSの結果の根本原因を特定し、適切な是正措置と予防措置をとることにある。本格的な調査には、製造

およびサンプリング手順のレビュを含めるべきであり、しばしば追加のラボの試験が含む。このような調査

は最優先されるべきである。このフェーズの要素の中には、既に出荷されたロットに対するOOSの結果の

影響の評価がある。

 

A. 生産の見直し

調査はQUよって実施されるべきで、製造、プロセス開発、保守、エンジニアリングを含む、関係する可能性

のある他のすべての部門を巻き込むべきである。製造がオフサイト (すなわち、委託製造業者または複数の

製造サイトで実施された場合) で実施される場合、関与する可能性のあるすべてのサイトを調査に含める

必要がある。その他の潜在的な問題が特定され調査されるべきである。

OOSの結果の考えられる原因を特定するために、製造工程の記録と文書が完全にレビュされるべきである。

本格的なOOS調査は、タイムリーで徹底的で十分に文書化されたレビュであるべきである。レビュの文書化

された記録には、次の情報を含めるべきである:

1. 調査の理由の明確な陳述

2. 問題を引き起こした可能性のある製造工程の特徴のサマリ

3. 実際の原因または推定原因の割り当てを伴う文書レビュの結果

4. 問題が以前に発生したかどうかを判断するために行われたレビュの結果

5. 実行された是正措置の説明

OOSの調査のこの部分で 、OOSの結果が確認され、根本原因の特定に成功した場合、OOSの調査は終了され、

製品は不合格になる可能性がある。しかし、特定の不具合に関連している可能性のある他のロットまたは

製品にまで及ぶ不具合の調査が実施されなければならない(§211.192)。追加の試験の後に原材料が再処理

された場合、調査には、生産およびQU職員を含む適切な職員のコメントと署名を含めるべきである。

OOSの結果は、製品または工程設計の欠陥を示している可能性がる。例えば、製品の処方設計における

堅牢性の欠如、不十分な原材料の特性評価またはコントロール、製造工程の複数の部門の作業によって

もたらされる実質的なばらつき、 またはこれらの要因の組み合わせが、一貫しない製品品質の原因となり

得る。このような場合、再現性のある製品品質を保証するために、製品またはプロセスの再設計を実施する

ことが不可欠である。

 

B. 追加のラボの試験

本格的なOOSの調査には、フェーズIで実施された試験を超える追加のラボの試験が含まれるかもしれない。こ

れらには(1)オリジナルのサンプルの一部を再試験すること (2)再サンプリングが含まれる。

 

1. 再試験

調査の一部には、オリジナルのサンプルの一部の再検査が含まれる場合がある。再試験に使用するサンプルは、

もともとロットから収集され、試験され、OOSの結果が得られたのと同じ均質な原材料から採取する必要がある。

液体の場合、もともとの1個の液体の製品または液体製品の複合体からの採取であってもよい。固体の場合、

オリジナルの試験のために調製した同じサンプルの複合体から追加の秤量になるかもしれない。

再試験が選択される状況では、試験機器の誤動作の調査や、例えば希釈のエラーの疑いなど、サンプル処理の

問題の特定が含まれる。再試験の判断は、試験の目的と合理的な科学的判断に基づくべきである。事前に規定

する再試験の計画に、オリジナルの試験を実行した分析者以外の分析者によって実行された再試験を含める

ことがしばしば重要である。再試験を実行する2人目の分析者は、少なくともオリジナルの分析者と同等の

経験と資格を持っている必要がある。

CGMPガイドラインは、仕様、標準、サンプリング計画、試験手順、およびその他のラボの制御メカニズムの

確立を要求している(§211.160)

FDAの査察では、一部の企業は、合格の結果が得られるまで試験を繰り返し、科学的根拠もなしにOOSの結果を

無効化する戦略を使用していることが明らかになった。この「合わせる試験」という慣行は、CGMPの下では

非科学的で好ましくない。サンプルに対して実行される再試験の最大数は、文書化された標準操作手順 (SOP)

 で事前に指定されているべきである。この数は、採用される特定の試験方法の変動性によって異なるかも

しれないが、 科学的に理にかなった原理に基づくべきである。再試験の回数は、得られた結果に応じて調整

されるべきでない。企業のあらかじめ決められた再試験手順には、追加の試験の終了ポイントと、ロットが

評価されるポイントが含まれているべきである。この時点で結果が満足のいくものでない場合、ロットは

疑わしいものであり、不合格にされるか、さらなる調査を待たなければならない(§211.165(f))。このSOP

からの逸脱はまれであるべきであり、文書化された規格、サンプリング計画、試験手順、またはその他のラボ

の制御メカニズムからのいかなる逸脱も記録され、正当化されなければならないと述べている§211.160(a)

従って行われるべきである。このような場合、追加の再試験を開始する前に、実施される追加試験を記述し、

データの科学的および/または技術的な取り扱いを指定するプロトコルを(QUの承認の対象)準備する必要がある。

明確にラボのエラーが特定されている場合、再試験結果はオリジナルの試験結果に置き換えられるかもしれ

ない。しかし、全てのオリジナルのデータは保持されなければならず(§ 211.180)、説明は記録されるべき

である。この記録は、関係者によって開始され、日付が付けられ、エラーの考察と監督者のコメントを含める

必要がある。(ラボでの調査の詳細については、このガイドラインのセクション III を見よ)

最初の試験でラボまたは計算のエラーが特定されない場合、最初のOOSの結果を無効にして再試験の結果を

合格にする科学的根拠はない。全ての試験結果、すなわち、合格の結果と疑わしい結果の両方が報告され、

ロットのリリースの決定で考慮されるべきである。

 

2. 再サンプリング

再試験とは、オリジナルの均質なサンプル原料の分析を指すが、再サンプリングでは、オリジナルのサンプ

リング手順の一部として収集された追加の個体から、または、ロットから収集された新しいサンプルの標本

を分析する必要がある。

ロットのオリジナルのサンプルは、OOSの結果が得られた場合に追加の試験に対応できる十分な大きさでなけ

ればならない。ただし、状況によっては、ロットから新しいサンプルを収集することが適切な場合があるかも

しれない。追加の検体の検査のための制御メカニズムは、所定の手順とサンプリングの戦略(§211.165(c))

に従うべきである。

全てのデータが評価され、調査の結果、オリジナルのサンプルが不適切に準備されたため、ロットの品質を

代表していないと結論付けられる場合があるかもしれない(§211.160(b)(3))。不適切なサンプルの準備は、

例えば、オリジナルの複合体のいくつかの分割サンプルから得られた広くばらついた結果によって示される

かもしれない(分析の性能に誤りがないと判断した後)。再サンプリングは、最初のサンプルで使用されたの

と同じ適格で検証済みの方法によって実行されるべきである。しかし、調査で、最初のサンプリング方法が

本質的に不適切であると判断した場合、新しい正確なサンプリング方法を開発され、文書化され、QU

よってレビュされ承認されなければならない(§§211.160および211.165(c))

 

C. 試験結果の報告

試験結果の報告と解釈に使用される手順には、(1) 平均化(2)棄却検定が含まれる。

1.平均化

オリジナルの試験中とOOSの調査中に、試験データの平均化の適切な使用と不適切な使用の両方がある。

 

A.適切な使用

データの平均化は有効なアプローチだが、その使用はサンプルとその目的によって異なる。たとえば、

旋光度試験では、サンプルの旋光度を決定するためにいくつかの離散測定値が平均化され、この平均が

試験結果として報告される。サンプルが均質であると仮定できる場合(すなわち、個々のサンプルの標本が

均質であるように設計されている)、平均を使用して、より正確な結果を提供することができる。微生物

学的分析の場合、米国薬局方(USP)は、生物学的試験システム固有の変動性により、平均の使用を選ぶ。

試験は、結果に到達するために特定の複製物で構成される場合があることに注意されるべきである。

例えば、HPLC分析の結果は、同じ標本(通常2または3)から得た多数の連続した複製の注入のピーク応答

を平均することによって決定することができる。分析結果は、ピーク応答平均を用いて計算されるだろう。

この判定は、1つの試験と1つの結果とみなされる。これは、ロット内のばらつきを決定することを意図

した1つのロットからの異なる部分の分析や、および同じ均質サンプルの複数の完全分析とはっきりと

異なる違いである。1つの報告可能な結果に達するための複製の使用や、複製の特定回数の使用はQUに

よって承認された文書化された試験方法に明記すべきである。複製間のばらつきの許容限界も試験方法

の中に明記すべきである。複製の判定における予期せぬばらつきは、§211.160(b)(4)で要求されるよう

に是正措置を発動すべきである。複製のばらつきの許容限界を満たさない場合は、試験結果は使用される

べきでない。

場合によっては、分析などの一連の完全な試験(試験手順の完全なランスルー)が試験方法の一部である。

試験方法において、これらの複数の分析の平均が1つの試験とみなされ、1つの報告可能な結果とみなす

ことを明記するのがよいかもしれない。この場合、個々の分析結果間のばらつきの許容限界は、試験方法

の既知のばらつきに基づくべきであり、、試験方法論にも明記されるべきである。これらの制限を満たさ

ない一連の分析結果は使用されるべきではない。

これらの試験データの平均化の使用は、OOSの結果を生成したオリジナルの試験中に使用された場合に

のみ、OOSの調査中に使用せよ。

 

B.不適切な使用

平均化への依存には、個々の試験結果間のばらつきを隠すという欠点がある。このため、個々の試験結果

はすべて、通常、個別の値として報告する必要がある。個別の試験の平均化が試験方法によって適切に

明記されている場合、1つの平均化された結果を最終試験結果として報告できる。場合によっては、結果

のばらつきの統計的処理が報告される。例えば、製剤の含量均一性についての試験において、標準偏差

(または相対標準偏差)は、個々の単位用量の試験結果と共に報告される。

平均化は、ロットのさまざまな部分またはサンプル内のばらつきを隠すこともできる。例えば、粉末の

混合/混合物の均一性または製剤の含有量の均一性の判定を行う場合、平均の使用は不適切である。この

ような場合、試験は製品内のばらつきを測定することを意図しており、個々の結果はそのような評価の

ための情報を提供する。

OOSの調査中に実行される追加の試験が実施される状況では、調査を促したオリジナルの試験の結果と、

OOSの調査中に得られた追加の再試験または再サンプルの結果と平均化することは、個々の結果間の

ばらつきを隠すため適切でない。このようなデータの平均に依存することは、結果の一部がOOSであり、

他の結果が規格内にある場合に特に誤解を招く可能性がある。ラボは、医薬品、工程内原料などの合格・

不合格の責任を負うQUによる評価および検討のために、すべての個々の結果を提供することが重要で

ある(§ 211.22)

たとえば、仕様が90110%の最終医薬品の分析では、最初のOOSの結果が89%で、追加の再試験の結果が

90%91%の場合、90%の平均が生成される。この平均は仕様を満たすが、追加の試験結果もオリジナルOOS

の結果を確認する一助となる。ただし、同じ規格で別の状況で、最初のOOSの結果が 80% で、追加の

再試験の結果が85%105% の場合、90%の平均が生成されるが、大きく異なる状況を示す。これらの結果

は、オリジナルのOOSの結果を承認しないが、高いばらつきを示し信頼性が低い可能性がある。どちらの

例でも、製品の品質を評価するためには、平均ではなく個々の結果が使用されるべきである。

 

2.棄却検定  

CGMPガイドラインは、統計的に有効な品質管理基準に適切な合格および/または不合格の水準を含めること

を要求している(§211.165(d))。まれに、バリデートされた方法を使用して、一連の値とは著しく異なる

値が得られることがある。このような値は、統計的異常値として評価されるかもしれない。異常値は、

所定の試験方法からの偏差に起因する場合もあれば、サンプルの変動性の結果である場合もある。

異常値の理由は、試験されたサンプルに固有の変動性ではなく、試験手順のエラーであるみなされる

べきでない。

棄却検定は、大量データから極端なデータを識別するための統計的手順である。棄却検定の使用の可能性

は、事前に決定する必要がある。これは、データ解釈のためにSOPに書かれ、十分に文書化されているべき

である。SOPには、事前に指定された関連パラメータと共に、適用される特定の棄却検定を含めるべきで

ある。SOPは、指定された棄却検定から統計的に有意な評価を得るために必要な結果の最小数を指定すべき

である。

高いばらつきを有する生物学的分析の場合、棄却検定は、統計的に極端な試験結果を特定するための適切

な統計分析となり得る。USPは、Design and Analysis of Biological AssayUSP<11>)の一般章に、

棄却試験を記述している。このような場合、異常な観測値は計算から除外される。USPはまた、「明らか

に異常な反応の恣意的な拒絶または保持は、偏見の深刻な原因となり得る...その相対的な大きさのみに

基づいて観測を拒絶し、原因に関する調査を行わずに不合格にすることは、慎重に使用されるべき手順

である」(USP<11>)

比較的小さな分散で検証された化学試験で、試験されるサンプルが均質であると考えられる場合(例えば、

濃度を判断するための製剤の複合体の分析)、棄却検定は、試験および再試験から得られたデータの

統計分析にすぎない。極端な観測の原因を特定することはできないため、疑わしい結果を無効にする

ために使用すべきではない。時折、棄却検定は、結果がデータセットからどれほど不一致であるかを

理解するうえで何らかの価値があるかもしれないが、平均からの結果の差を判断するため、調査の過程

で情報としてのみ利用できる。

棄却検定は、内容物の均一性、溶解、放出速度の判断など、製品にばらつきが評価されているものには

適用できない。これらのアプリケーションでは、異常値とわかる値は、実際には不均一な製品の正確な

結果である可能性がある。

OOSの調査で実施される追加試験中にこれらの手順を使用すると、ラボは複数の結果を取得する。最終の

出荷判定の中でのQUによる評価と検討のために、全ての試験結果を提供することは、繰り返しになるが、

ラボにとって重要である。また、契約試験機関による調査で原因が確定しない場合、全ての試験結果は、

分析証明書上で顧客に報告されるべきである。

 

V. 調査の完了

調査を終了するには、結果が評価され、ロットの品質が判断されるべきで、QUによりリリースの判断

がされるべきである。関連するSOPはこの時点で守られるべきである。ロットが不合格になると、

是正処置がとれるよう、不具合の原因を特定するための更なる試験に制限はない。

 

A. 調査結果の解釈  

QUは調査結果の解釈に責任を負う。最初のOOSの結果は、必ずしも対象のロットが失敗することを意味する

わけではなく不合格にすべきでない。OOSの結果は調査されるべきであり、再試験結果を含む調査の結果は、

ロットを評価しリリースまたは不合格に関する判断ができるよう解釈されるべきである (§211.165)

調査によって原因が明らかになり、疑わしい結果が無効になった場合、その結果をロットの品質を評価

するために使用すべきでない。個別の試験結果の無効化は、OOSの結果を引き起こしたと合理的に判断

できる試験イベントの観察と文書化によってのみ行うことができる。

調査がOOSの結果がロットの品質に影響を与える要因によって引き起こされたことを示している場合

(すなわち、OOSの結果が確認された場合)、結果はロットの品質を評価する際に使用されるべきである。

確認されたOOSの結果は、ロットが、制定された標準または規格を満たしておらず、§211.165(f)

従ってロットが不合格になり、適切な処分が行われるべきであることを示している。決定的でない調査

の場合-(1)OOSの試験結果の原因が明らかにならず、(2)OOSの結果を確認しない場合、ロット処分の

決定においてOOSの結果が十分に考慮されるべきである。最初のケース(OOS確認済み)では、調査はOO

Sの調査からロットの不具合の調査に変わり、特定の不具合に関連している可能性のある他のバッチ

または製品に拡大されなければならないかもしれない (§211.192)

2番目のケース (決定的ではない) では、QU は最終的にバッチのリリースを決定する可能性がある。

たとえば、ある企業は、次のシナリオで製品のリリースを検討するかもしれない:

製品の許容可能な複合の分析範囲は90.0110.0%である。初期(OOS)分析結果は89.5%である。オリジナル

サンプルからの後続のサンプル標本で、次の再試験結果が得られる: 99.098.999.099.198.8

99.1、および99.0パーセント。包括的なラボの調査(フェーズ1)では、ラボのエラーは明らかにできない。

ロットの製造中のイベントのレビュで、異常な工程のばらつきの異常や兆候は見られない。製造プロセス

と製品のレビュは工程が安定していることを示している。合格した7つの再試験の結果はすべて、使用

される方法のばらつきの既知の限界内に十分に収まっている。工程内のモニタリング、内容物の均一性、

溶解、およびその他の試験からのバッチ結果は、合格した再試験結果と一致する。徹底的な調査の後、

企業のQUは、最初のOOSの結果がロットの真の品質を反映していないと結論付けるかもしれない。

このシナリオで、オリジナルの徹底的なラボの調査が突き止められる原因を見つけられなかったことは

注目に値する。しかし、その後の調査にもかかわらず、OOSの結果の原因が製造プロセスとは無関係の

原因であると結論付けた場合、ラボの逸脱の検出の非定型的な失敗に対応して、OOSの結果につながった

可能性のあるラボのエラーの再発を防ぐため、調査に適切なフォローアップと精査を含めることが不可欠

である。

上記の例が示すように、最初の OOSの結果が無効になっていないにもかかわらずロットをリリースする

決定は、完全な調査の結果がロットの品質を反映していないことが示された後にのみ行われるべきである。

そのような決定を下す際には、QUはいつも慎重過ぎるぐらい慎重になるべきである。

 

B. 注意事項

1.オリジナルのサンプルから得た複数のサンプル標本の結果の平均化

一連の分析結果(単一の報告可能な結果を生成することを意図したもの)が試験手順によって必要とされ、

個々の結果の一部がOOSであり、いくつかは規格内であり、すべてが試験方法の既知のばらつきの範囲内に

ある場合、合格の結果がサンプルの真の値を表していない可能性は、OOSの結果と同じである。このため、

企業は注意を怠らず、これらの値の平均が規格内であっても、これらの値の平均をOOSの結果として扱う

必要がある。このアプローチは、USP一般通知で概説されている原則と一致しており、公式記事は、

コンペンディアルの試験が適用される時はいつでも、コンペンディアルの標準に準拠しなければならない。

したがって、公式試験の個々への適用が規格を満たす結果を生み出すことが期待されるべきである。

 

2.同じ最終サンプル標本からの平均結果

平均化セクション(IV.C.1)で述べたように、結果に到達するために、試験方法がばらつきの適切な受け入れ

基準と、最終希釈サンプル溶液からの事前定義された反復回数を規定する場合がある。例えば、HPLC試験法

は、ばらつきの許容基準と、同じ試験バイアルからの多数の連続した反復注入からのピーク応答の平均に

より単一の報告可能な結果が決定されることを明記しているかもしれない。このような場合でばらつきの

許容基準が満たされていることを考えれば、個々の結果自体を報告するOOSの原因とすべきでない。

 

3. 規格内のボーダーラインの結果

低いが規格内の分析結果も懸念を引き起こすはずである。結果の1つの原因は、ロットが適切に配合され

なかったことかもしれない。ロットは、ラベルに表示された、または、制定された量の有効成分の100%

以上を提供する意図で配合されなければならない(§211.101(a))。これはまた、分析結果が規格を満たす

状況ではあるが、リリースまたは不合格の決定には注意が必要である。

医薬品の品質を評価するために実施されるすべての分析試験と同様に、OOSの試験結果に関するすべての

記録を保持する必要がある。制定された規格および標準(§211.194)への準拠を保証するために実施された

全ての試験から得られた完全なデータの記録を保持する必要がある。

 

C. フィールドアラートレポート

承認された新薬申請または省略の新薬申請の対象となる製品について、規制は、出荷されたロットが申請

で制定された規格のいずれかを満たさなかった不具合に関する情報のフィールドアラートレポート(FAR)

3営業日以内に提出する必要がある(21 CFR 314.81(b)(1)(ii)).。これらの製品のOOSの試験結果は、

この規制で述べられた、ある種の「不具合に関する情報」とみなされる。出荷されたロットの OOS

結果が 3 日以内に無効であることが判明した場合を除き、最初の FAR を送信する必要がある。OOS調査

の完了時にフォローアップ FAR を提出する必要がある。

 

出典:https://www.fda.gov/media/158416/download

 

 

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まとめ

◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

いかがでしたでしょうか。

 

OOS発生時、何回まで再試験をしよいかといった手順を明確に定めておく必要性をあらためて感じました。

 

☆次回は、10/1(土)に配信させていただきます。

 

 

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【発行責任者】

株式会社プロス

ASTROM通信』担当 橋本奈央子

2022.09.01

【最近のウォーニングレター】ASTROM通信<249号>

 こんにちは。

ASTROM通信担当の橋本奈央子です。

 

暑さもおさまり、朝晩は虫の声が響くようになってきましたが、いかがお過ごしですか。

 

さて今回も、アメリカ食品医薬品局(FDA)がアメリカ国内の製薬会社向けに出したウォーニング

レター2件を見ていきたいと思います。

FDAがどのような点を問題視して指摘しているかをご確認いただければ幸いです。

 

 

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最近のウォーニングレターの概要  

注:文中のXXはウォーニングレターでマスキングされている文言及び具体的な社名・品名等です。

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CMS#624281

2021118日~1119日のアリゾナ州の製造所の査察でみつかった原薬製造の重大なCGMP違反に

ついて発した202253日付ウォーニングレターには、下記の指摘事項があげられています。

 

●指摘1

貴社の製造工程が再現可能な方法で、予め定めた品質属性を満たす中間体及び原薬を製造できると

いう証明の不履行

<指摘1詳細>

貴社は、アメリカ薬局方甲状腺用原薬の製造工程を適切にバリデートすることを怠った。具体的

には、最終混合前にXXXXのような工程があるが、貴社はプロセスバリデーションに含んでいな

かった。貴社の品質部門職員は、貴社が今後これらの工程をバリデートすることを計画している

と述べた。

さらに、XXの性能適格性評価は実施されたが、XXの混合時間で最大及び最小の混合サイズで均一

な混合品が製造できる能力を示すための事前に定められた合格基準を満たしていなかった。この

適合性評価が、工程で製造され、商用にリリースされたアメリカ薬局方甲状腺用原薬のロットの

プロセスバリデーションを支持していた。

プロセスバリデーションは、そのライフサイクルを通じて、設計と管理状態の正常性を評価する

ものである。製造工程の各重要な段階は、投入される原材料、工程内原料、最終の原薬の品質を

保証するために適切に設計されなければならない。工程の適格性評価の検証が、初期の管理状態

が確立しているかどうかを判断する。

工程の適格性評価の成功は商業流通の前に必要である。その後、製品のライクルを通じて、貴社

が安定した製造作業を維持していることを保証するために、工程性能と製品品質の継続的で慎重

な監視が必要である。

貴社が製造しているアメリカ薬局方甲状腺用原薬は甲状腺機能低下症を治療するための医薬品を

製造するために使用される。これらの製品の治療範囲が狭いため、プロセスバリデーションを

通じて適切に評価された貴社の製品の適切な混合と製造は、患者が不十分または過剰な用量を

受け取るの防ぐために不可欠である。

貴社は回答の中で、貴社の混合機で製造された全てのロットの回顧的レビュの実施、リスク

アセスメントの実施と、プロセスバリデーションの基本計画を立てることを約束した。

貴社は、バリデーション、または、ばらつきの全ての原因を特定するためにとられるアクション

に関する工程の性能プロトコルの詳細を提出することを怠ったので、貴社の回答は不十分である。

さらに、貴社の回答は、貴社の各原薬の予測的な工程の性能適格性評価(PPQ)の完了のための

タイムラインを提出しなかった。回顧的バリデーションのアプローチの使用は受け入れられない。

最後に貴社は、この違反が現在市場にある貴社の原薬に与える影響について言及していなかった。

この文書への回答の中で、以下の情報を提供せよ:

・製品のライフサイクルを通じて管理状態を保証するための、関連する手順を伴ったバリデー

 ションプログラムの詳細な概要

 工程の性能適格性評価と、継続的な管理状態を保証するためのロット内とロット間のばらつき

 の継続的なモニタリングのプログラムについて述べよ。

 〇これには、原薬の最終混合を達成するために原薬ロットを選択する工程も含めるべきである。

・貴社の各原薬のPPQを実施するためのタイムライン

・工程の性能プロトコル、装置と設備に関する適格性評価に関する文書化された手順を含めよ。

・貴社の製造工程の設計、バリデーション、維持、管理、継続的な管理状態を保証するための

 ロット内及びロット間の慎重な監視を含むモニタリングに関する詳細なプログラムを提出せよ。

 また、貴社の装置と設備の適格性評価に関するプログラムも含めよ。

 

●指摘2

中間体及び原薬の各ロットについて、規格への一致を判断するために適切なラボの試験が実施

されているという保証の不履行

<指摘2詳細>

貴社は、長期間保持されているアメリカ薬局方甲状腺用原薬が、最終的な混合をする前に全ての

品質特性を満たすことを保証するためにラボでの試験を実施することを怠った。例えば、

201925日に試験されたロットXXは、リテストなしに、2021215日にアメリカ薬局方甲状腺

用原薬、ロットB20361-FSに混合された。貴社の品質部門の職員は、最終混合の前に、ロットの

リテストの要件や手順はないと述べた。

さらに、最終の原薬は、混合品の中の最も古い原薬のロットの製造日付に基づくのではなく、

混合の日付から2年の再評価日がラベルに表示された。

貴社は回答の中で、全てのロットの回顧的レビュの実施、2年の期限を超えた全てのロットの

リスクアセスメント、再発を防ぐための手順の制定を約束した。

貴社はタイムラインの提出を怠っているので、回答は不十分である。

この文書への回答の中で以下の情報を提供せよ:

・貴社の是正処置・予防処置(CAPA)の完了のタイムライン

 完了したら、リスクアセスメントレポートと改訂された手順を提出せよ。

・成分、容器、蓋の全ての供給者の適格性評価がされていて、最終の原薬の混合の前にロットを

 含む原材料に、適切な使用期限またはリテスト日付が付与されていることを判断するための、

 貴社の原材料システムの包括的で独立したレビュ

 レビュは、不適切な成分、容器、蓋の使用を防ぐために、入荷した原材料の管理が適切かどうか

 の判断も含めるべきである。

・貴社の安定性プログラムの妥当性を評価するための包括的で独立したアセスメントとCAPA

 計画

 貴社の修正されたプログラムは、これに限定されないが以下のことを含むべきである:

 〇出荷許可前の、市販の容器施栓システムによる貴社の原薬の安定性の検証

 〇うたわれている品質保証期限が妥当かどうかを判断するために原薬の製品の代表的なロット

  が毎年プログラムに追加されていくような継続的なプログラム

 〇各ステーション(タイムポイント)で試験される特定の属性の詳細な定義

 

●指摘3

不正アクセスやデータの変更を防ぐためのコンピュータ化システムの十分な管理を実施すること

の不履行と、データの削除を防ぐための適切な管理を実施することの不履行

<指摘3詳細>

査察中、我々査察官は、貴社のコンピュータ化システムの多くが、生成されたデータの完全性

を保証するための十分な管理に欠けていることを確認した。例えば:

・我々査察官は、貴社のソフトウエアXXの唯一のユーザの役割として システム/管理者

 を見つけた。

 このユーザの役割に関し、データの削除や変更に制限はなかった。システムは、20213

 から202111月まで、完成したアメリカ薬局方甲状腺用原薬の分析と同一性試験に使用されて

 いた。

・我々査察官は、完成したアメリカ薬局方甲状腺用原薬のロットのHPLCの分析に関し、

 オリジナルのピーク面積の結果との多数の逸脱を見つけた。これらの変更に関する文書は

 なかったが、貴社の品質部門の職員は、これは、HPLC装置XXの未承認の更新が原因であるかも

 しれないと述べた。貴社の品質部門の職員によれば、この装置は適格性が評価されたことは

 なかった。

・全てのバリデーションロットの分析のために、完成したアメリカ薬局方甲状腺用原薬の分析

 結果を計算するのにバリデートされていなExcelのスプレッドシートが利用された。

 スプレッドシートの数式と結果は計算時に印刷され、保存されていなかった。貴社は、 

 査察中、オリジナルのスプレッドシートの電子的コピーもスプレッドシートの原本も提出でき

 なかった。

・貴社のコンピュータの共有ドライブに電子的に保持されている製造記録書原本には、ユーザ

 アクセスの制限がない。貴社の品質部門の職員は、新規および廃止された製造記録書原本に

 アクセスするためのログイン資格情報を持つ職員に制限はないと述べた。我々査察官は査察中

 原薬の製造に複数のバージョンの製造記録が利用されているのを見つけた。

貴社は回答の中で、貴社の生データの回顧的レビュを実施すること、全ての試験作業のリスク

アセスメントを実行すること、全ての電子的ソフトウエアをコンプライアンス状態にするために

バリデーション計画を立てることを約束した。

貴社の提案したアクションが完了するまでのタイムラインと暫定的措置を提出しなかったので、

貴社の回答は不十分である。さらに、貴社の回顧的レビュを実施するための計画には、ラベル上

24ヶ月のリテスト日付だったにもかかわらず、18ヶ月のロットが含まれていた。

この文書への回答の中で以下の情報を提供せよ:

・貴社が回答した約束のタイムラインと、CAPAが完了するまでにとられる暫定措置

・完了時、リスクアセスメントのレポートと電子的ソフトウエアのバリデーション計画を提出

 せよ。

・他にどこに不備があるかを判断するために貴社の製造及び試験作業で使用されているデータ

 レビュのシステムの包括的なアセスメント

 品質部門の監督を含む、不備のあるデータレビュに対処するためのシステム的修正を伴う詳細

 なCAPAの計画を含めよ。CAPAは、これに限定されないが、改訂された製造記録原本、訓練、

 全てのCGMPの記録の完全性を保証するために実装されたシステム的なアクションを含めるべき

 である。

・誤った数式やその他の不備のような不正確さの範囲を特定し調査するための、CGMP作業を

 サポートするために使用されている全てのExcelのスプレッドシートのアセスメント

 指摘された不備に対処し再発を防ぐための、詳細のCAPAの計画を含めよ。

・変更や削除を防ぐための十分な管理に欠けたコンピュータ化システムを使った、使用期限内に

 ありアメリカに販売された原薬に関し、全てのテストデータとバッチレコードの回顧的レビュ

 とリスクアセスメント

 このアセスメントに基づきOOSの結果を得たら、顧客への通知や回収の開始といった貴社の

 アクションプランを示せ。

・逸脱、普通でない事象、苦情、OOSの結果、不具合に関する貴社の全体的なシステムの包括的

 で独立したアセスメント

 貴社のCAPAは、これに限定されないが、調査能力、根本原因の分析、文書化された手順、

 品質部門の監督に関する改善を含むべきてある。

 

●指摘4

貴社の中間体や原薬が制定された品質基準に従うことを保証するための、全ての試験の手順が

科学的に理にかなって適切であることを保証することの不履行

<指摘4詳細>

貴社のアメリカ薬局方甲状腺用原薬の微生物上の属性をリリース前に判断するために使用され

ている微生物学的試験方法は、以下の点で不備があった。

・購入された培地または社内の培地での成長促進の検証が、文書化されていなかったか実施

 されていなかった。

・方法の適合性とバリデーションが規定されていなかったか文書化されていなかった。

貴社は回答の中で、微生物試験の結果の回顧的レビュの実施、リスクアセスメントの完了、

貴社の微生物試験方法の適格性評価を行うことを約束した。

貴社の提案したアクションが完了するまでのタイムラインと暫定的措置を提出しなかったので、

貴社の回答は不十分である。さらに、貴社の回顧的レビュを実施するための計画には、

ラベル上は24ヶ月のリテスト日付だったにもかかわらず、18ヶ月のロットが含まれていた。

我々は、"ICH Q7と現在のUSPの両方に従った"方法を実施するという貴社の決定を認めるが、

貴社の回答は、原薬の試験中に使用された後続の全てのロットの培地について成長促進試験を

実施し文書化するという約束を含んでいなかった。

この文書への回答の中で、以下の情報を提供せよ:

・貴社が回答した約束のタイムラインと、CAPAが完了するまでにとられる暫定措置

・貴社の各原薬の製品に関し、ロットの適切な微生物のリリース規格(即ち、総菌数、好ま

 しくない微生物を検出するためのバイオバーデンの確認)

・貴社の各製品を分析するために使用されている全ての微生物試験の方法

・使用期限内にある全ての製品のロットの保管サンプルの試験から得られた結果のサマリ

 貴社は、各ロットの微生物学的品質(総菌数と好ましくない微生物を検出するためのバイオ

 バーデンの確認)を試験すべきである。もし試験でOOSの結果を得たら、顧客への通知や回収

 の開始を含む、貴社がとろうとしている是正処置を示せ。

 

●指摘5

貴社の製造所で製造された原薬や中間体がCGMPに準拠していることを保証するために、貴社の

品質部門がその責任を果たすことの不履行

<指摘5詳細>

貴社の品質部門(QU)は、医薬品の製造作業が適切であることを保証するためのQUの所定の機能を

果たすことを怠った。例えば、貴社のQUは以下のことを怠った:

・脂肪分析、無機ヨウ化物、残留溶媒のような最終製品の試験に使用されているサードパーティ

 の試験機関の適切な評価手順を定め維持すること

 貴社の品質部門は、これらの試験に使用された契約試験機関の適格性評価も評価も実施して

 いなかった。

・貴社の製造所の職員に対してCGMP教育が提供されていることの保証

2017年から2020年に製造された原薬の年次製品照査の実施

貴社は回答の中で、過去24ヶ月の回顧的なリスクアセスメントの実施や、ベンダを評価し承認

するためのシステムの開発といった、サードパーティのベンダの包括的な計画の策定を約束した。

貴社の約束のタイムラインを提出しなかったので、貴社の回答は不十分である。

この文書への回答の中で、以下の情報を提供せよ:

・貴社のCAPA完了のタイムライン

・貴社のQUが効果的に機能するために権限とリソースが与えられていることを保証するための

 包括的なアセスメントと改善計画

 アセスメントには、これに限定されないが以下のことを含むべきである:

 〇貴社で使用されている手順が安定していて適切であるかどうかの判断

 〇適切な手順の遵守を評価するための貴社の作業全体のQUによる監督に関する規定

 〇QUによるロットの処遇の判定前に、各ロット及びそれに関連する情報の完全で最終的な

  レビュ

 〇全ての製品の同一性、濃度、品質、純度を保証するための、調査の監督と承認及び他の

  全てのQUの職務の遂行

  経営陣がこれに限定されないが、新たに発生した製造/品質の問題に積極的に対処し、

  継続的な管理状態を維持するためのタイムリーなリソースの提供をいかにサポートするかに

  ついても述べよ。

 

CGMPコンサルタントの推奨

我々が貴社で確認した逸脱の性質に基づき、我々は、CGMPの要件を満たすように貴社を支援する

ために貴社の業務を評価する適格性のあるコンサルタントを雇うことを強く勧める。貴社の

コンサルタントの使用は、CGMPを順守するための貴社の義務を軽減するものではない。貴社の

経営陣には、継続的なCGMP順守を保証するために、全ての不備とシステムの欠陥を解決する責任

が残る。

 

●追加の原薬CGMPガイダンス

FDAは、原薬がCGMPに従って製造されているかを判断する際に、ICH Q7で概説されている期待を

考慮する。原薬の製造に関するCGMPのガイダンスとして、FDAのガイダンス文書

Q7 Good Manufacturing Practice Guidance for Active Pharmaceutical Ingredients

を見よ。

 

●複数製造所での繰り返しの不備

FDAは、貴社のネットワーク内の複数の施設で同様のCGMPの不備を挙げた。複数の製造所での

これらの繰り返される不具合は、医薬品の製造に関する経営陣の監督と管理が不十分であること

を示している。貴社の経営陣には全ての不備を完全に解決し、継続的なCGMP遵守を保証する責任

がある。貴社は、システム、工程、製造する医薬品がFDAの要件に従うことを保証するために

貴社全体の製造作業を迅速かつ包括的に評価するべきである。

 

●結論

この文書で挙げた逸脱は、貴社の施設に存在する逸脱の包括的なリストではない。貴社には、

逸脱を調査し、原因を判断し、再発やその他の逸脱の発生を防止する責任がある。

全ての逸脱を速やかに是正せよ。この問題への即座の適切な対処の不履行は、制限のない差し

押さえ、強制命令を含む、さらなる通知のない制限または法的なアクションにつながるかも

しれない。未解決の逸脱は、他の連邦機関の契約授与も妨げるかもしれない。

逸脱への対処の不履行は、FDAの輸出証明の発行の差し控えにもつながるかもしれない。全ての

逸脱に完全に対応がされ、我々が貴社のCGMPの遵守を確認するまで、FDAは貴社の医薬品製造

業者としての新しい申請やリストの補完の承認を保留するだろう。我々は、貴社が全ての逸脱

に対する是正処置を完了したことを確認するために再査察を行うかもしれない。

 

出典:https://www.fda.gov/inspections-compliance-enforcement-and-criminal-investigations/warning-letters/specialty-process-labs-llc-624281-05032022

 

 

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CMS#624415

2021118日~1117日のカリフォルニア州の製造所の査察でみつかった医薬品製造の重大な

CGMP違反について発した2022510日付ウォーニングレターには、下記の指摘事項があげられ

ています。

 

●指摘1

貴社の品質管理部門は、製造された医薬品がCGMPに準拠し、同一性、濃度、品質、純度に関して

制定された規格を満たすことを保証するためにその責任を果たすことを怠った。

(21 CFR 211.22)

<指摘1詳細>

貴社は、XXや手指の消毒剤のようなOTCの局所医薬品を製造している。貴社の品質部門(QU)は、

貴社のOTC医薬品製造に関し適切な監督を行わなかった。例えば、貴社のQUは以下のことを保証

するのを怠った:

・医薬品の各ロットのリリース前に、有効成分の同一性と濃度に関する試験が行われ、レビュ

 されたこと(21 CFR 211.165(a))

OOSの結果、苦情、逸脱、その他の不一致の結果について、適切な文書化され承認された手順

 による徹底的な調査(21 CFR 211.192)

・生産と工程管理の変更の適切な文書化とアセスメント(21 CFR 211.100(a))

・適切で継続的な安定性プログラムの確立(21 CFR 211.166(a))

・適切な年次製品照査の実行(21 CFR 211.180(e))

・安定した医薬品品質を保証するために必要な全ての製造作業の適切なQUの監督

■品質システム

貴社の品質システムは不十分である。CGMPの規制要件を満たすための品質システムとリスク

マネジメントアプローチを実装する助けとして、FDAのガイダンス文書

Quality System Approach to Pharmaceutical CGMP Regulations

を見よ。

この文書への回答の中で、以下の情報を提供せよ:

QUが効果的に機能するために権限とリソースが与えられていることを保証するための包括的

 なアセスメントと改善計画

 アセスメントにはこれに限定されないが以下のことも含むべきである:

 〇貴社により使用されている手順が安定していて適切かどうかの判断

 〇適切な手順の遵守を評価するための貴社作業全体のQUの監督の規定

 〇ロットの処遇を判断する前に貴社製品の各ロットを分析するために使用されている化学試験

  及び微生物試験の方法と規格のリストと、関連する文書化された手順

・この文書の日付時点で使用期限内にありアメリカに出荷された医薬品の全てのロットの品質

 を判断するために、保管サンプルの全ての化学試験及び微生物試験を実施するための

 アクションプランとタイムライン

・各ロットの保管サンプルの試験から得られた全ての結果のサマリ

 それらの試験で医薬品が基準以下の品質であることが明らかになった場合、顧客への通知や

 製品の回収といった迅速な是正処置をとれ。

QUのロットの処遇の判断の前の、各ロットとそれに関連する情報の完全で最終的なレビュ

・全ての製品の同一性、濃度、品質、純度を保証するための調査の監督と承認及びその他のQU

 の職務の遂行

・逸脱、不一致、苦情、OOSの結果、不具合を調査するための貴社の全体的なシステムの包括的

 で独立したアセスメント

 このシステムを改善するための詳細なアクションプランを提出せよ。貴社のアクションプラン

 には、これに限定されないが、調査の能力、調査範囲の決定、根本原因の評価、是正処置と

 予防処置(CAPA)の効果、QUの監督、文書化された手順を含むべきである。調査の全ての

 フェーズが適切に実施されていることを貴社がいかに保証するつもりか説明せよ。

・貴社の変更管理システムの包括的で独立したアセスメント

 このアセスメントには、これに限定されないが、変更が貴社のQUによって正当であるという

 根拠が示され、レビュされ、承認されていることを保証するための手順を含めるべきである。

 貴社の変更管理プログラムは、変更の効果の判断に関する規定も含むべきである。

・貴社の安定性プログラムの妥当性を保証するための包括的独立したアセスメントとCAPA

 計画

 貴社の改善されたプログラムには、これに限定されないが、以下のことを含むべきである:

 〇安定性を示す方法

 〇出荷許可前の、市販の容器施栓システムの中の貴社の各製品の安定性の検証

 〇うたわれている品質保証期限が妥当かどうかを判断するために、各製品の代表的なロット

  が毎年プログラムに追加されていくような継続的なプログラム

 〇各ステーション(タイムポイント)で試験される特定の属性の詳細な定義

 〇貴社の改善された安定性プログラムのこれら及びのその他の要素を述べた全ての手順

 

●指摘2

貴社は、貴社が製造した製品が、それが持つとされている同一性、濃度、品質、純度を持って

いることを保証するために設計された製造及び工程管理の文書化された手順を制定することを

怠った。 (21 CFR 211.100(a))

<指摘2詳細>

貴社は、貴社の医薬品のための適切なプロセスバリデーションが不足していた。例えば、貴社

は、我々査察官に対し、貴社のXXまたは手指の消毒剤の製品に関するプロセスバリデーション

が実施されていないと認めた。さらに貴社は、プロセスバリデーション実施のための文書や

文書化された手順も提出しなかった。貴社は、貴社の医薬品を製造するために使用されている

XXXXや、装置(例:混合タンク、充填ライン、包装ライン)について、装置の適格性評価が

実施されていないことも認めた。

プロセスバリデーションは、そのライフサイクルを通じて、設計と管理状態の正常性を評価

するものである。製造工程の各重要な段階は適切に設計され、投入される原材料、工程内原料、

最終の原薬の品質を保証しなければならない。工程の適格性評価の検証は、初期の管理状態が

確立しているかどうかを判断する。

工程の適格性評価の成功は商業流通の前に必要である。その後、製品のライクルを通じて、

貴社が安定した製造作業を維持していることを保証するために、工程性能と製品品質の継続的

で慎重な監視が必要である。

■プロセスバリデーション

FDAがプロセスバリデーションの適切な要素と考える一般的な原則とアプローチについて、

FDAのガイダンス文書

Process Validation: General Principles and practices

を見よ。

この文書への回答の中で以下の情報を提供せよ:

・貴社の製造工程が、一貫して適切な規格と製造の基準を満たすよう、ばらつきの全ての原因

 を特定し管理するデータ駆動型の科学的に理にかなったプログラムが存在することを保証

 するための各製品プロセスのアセスメント

 アセスメントには、これに限定されないが、機器の使用目的への適合性の評価、貴社の

 モニタリング及び試験のシステム(貴社及び契約試験機関で使用されている分析方法を含む)

 の検出能力の十分性、投入原材料の品質、各製造工程のステップと管理の信頼性を含むべき

 である。

・製品のライフサイクルを通じた管理状態を保証するための、関連する手順も添えた、貴社の

 バリデーションプログラムの詳細なサマリ

 貴社の工程の性能適格性評価、継続的な管理状態を保証するためのロット内及びロット間

 のばらつきの継続的なモニタリングに関する貴社のプログラムについて述べよ。

・販売されている貴社の各製品の工程の性能適格性評価を実施するためのタイムライン

・貴社の工程性能のプロトコルと、装置及び施設の適格性評価に関する文書化された手順

・継続的な管理状態を保証するためのロット内及びロット間のばらつきの慎重なモニタリング

 を含む貴社の各製造工程の設計、バリデーション、維持、管理、モニタリングに関する詳細

 なプログラム

 貴社の装置及び設備の適格性評価のプログラムも含めよ。

・設備と装置の定期的で慎重な作業管理の監督を実施するためのCAPAの計画

 この計画は、とりわけ、装置/施設の性能問題の迅速な検知、修理の効果的な実施、適切な

 予防保全スケジュールの遵守、装置/施設のインフラストラクチャのタイムリーな技術的

 アップグレード、継続的なマネジメントレビュのためのシステムの改善を保証すべきである。

 

●指摘3

貴社は、公的またはその他の制定された要件を超えて、製品の安全性、同一性、濃度、品質、

純度を変える誤動作や汚染を防ぐために適切な間隔で装置や器具を洗浄、維持、また医薬品の

性質により必要に応じて、消毒・滅菌することを怠った。また、装置の洗浄及び維持に関する

文書化された手順の制定を怠った。(21 CFR 211.67(a)&(b))

<指摘3詳細>

貴社は、貴社のOTC医薬品と医薬品以外の製品を製造するのに使用される共用装置から汚染を

除去するために貴社の洗浄手順が適切であるということを示していなかった。例えば、我々

査察官は、貴社の医薬品製造装置の不十分な洗浄と維持を見た。具体的には:

■洗浄バリデーションの不足

貴社は我々査察官に対して、貴社のOTC医薬品を製造するために使用される装置(例:混合

タンク、ホース、充填ライン、包装ライン)について、洗浄バリデーションは実施していな

かったと認めた。

■装置の洗浄の不足

貴社は、貴社の医薬品を製造するために使用されている装置の洗浄及び維持の手順が不足して

いる。

貴社は貴社の充填ラインの洗浄を文書化しているが、貴社の医薬品製造に使用されるその他の

装置の洗浄は文書化していないと我々査察官に認めた。そのうえ貴社は我々査察官に、

充填ラインの洗浄の文書化は、20218月になってようやく始めたと述べた。さらに、我々

査察官は、製品の記述、ロット番号、洗浄・消毒の開始時刻と終了時刻を含む、充填ラインの

洗浄ログに欠落している情報があることに気付いた。

XXの消毒の不足

貴社には、貴社のXXを消毒して維持する方法の手順が不足している。貴社は、20219月に

貴社の水システムのサンプリングを始めたと述べた。我々査察官により収集された貴社の

水システム試験結果のレビュで、総プレートカウント(TPC)XX cfu/mLだった。貴社は我々

査察官に、水システムを再度消毒し、再度サンプリングしたと述べた。我々は、リテスト結果

のレビュで、全有機体炭素計(TOC)の試験のみを見た。貴社は、貴社のXXが管理状態で作業

していることを示すエビデンスを提供していなかった。さらに、貴社は、文書化された調査、

再消毒作業、高い微生物試験結果の根本原因、適切なCAPAを提供しなかった。

洗浄中の製造装置からの有効成分や残留物の不十分な除去は、貴社の医薬品の交叉汚染に

つながる可能性がある。さらに貴社の水システムXXの不十分な洗浄や消毒は、貴社の医薬品

の微生物汚染につながる可能性がある。

この文書への回答の中で、以下の情報を提供せよ:

・交叉汚染の危険の範囲を評価するための、洗浄の効果の包括的で独立した回顧的アセス

 メント

 残留物の特定、不十分に洗浄されていた可能性のあるその他の製造装置、交叉汚染された

 製品が販売のためにリリースされたかどうかのアセスメントを含めよ。アセスメントは、

 洗浄手順や実務の不備を特定し、複数製品を製造するのに使用されている製造装置を網羅

 すべきである。

・工業製品と共有された装置で貴社が以前に製造した全ての医薬品のリスクアセスメント

 各製品に関し、共有された装置による潜在的な汚染のリスクを評価し、まだ販売中の製品

 について、回収や市場からの撤退も含めた、製品の品質と患者のリスクに対処するための

 貴社の計画を提出せよ。

・貴社の設備での医薬品及び医薬品以外の製品の両方の製造に関する貴社の計画

 もし貴社の設備で医薬品及び医薬品以外の製品の両方の製造を継続するつもりなら、

 医薬品の製造と工業製品の製造作業のための専用製造装置を維持するエリア分割の計画を

 提出せよ。

・洗浄手順と実務の適切な改善、完了までのタイムラインを含む、貴社の洗浄プログラムの

 回顧的なアセスメントに基づくCAPAの計画

 装置洗浄のライフサイクル管理に関する貴社の手順の脆弱性の詳細を提出せよ。洗浄効果

 の増大、全ての製品と装置に関する適切な洗浄の実施の継続的な検証の改善、その他全て

 の必要とされる改善を含む、貴社の洗浄プログラムの改善について述べよ。

・貴社の医薬品製造作業におけるワーストケースとして特定された条件を取り入れることに

 特に重点を置いた洗浄バリデーションプログラムへの適切な改善

 改善には、これに限定されないが、以下の全てのワーストケースの特定と評価を含むべき

 である:

 〇より高い毒性を持つ医薬品

 〇より高い有効性を持つ医薬品

 〇洗浄溶液の中でより低い溶解度の医薬品

 〇洗浄を難しくする特性を持った医薬品

 〇洗浄を最も難しくする拭き取り場所

 〇洗浄前の最大保持時間

 さらに、新しい製造装置や新しい製品を導入する前に、貴社の変更管理システムでとられる

 べき手順を述べよ。

・製品、工程、装置の洗浄手順の検証とバリデーションのための適切なプログラムが実施され

 ていることを保証する最新の標準操作手順(SOP)のサマリ

・貴社の水システムの設計、管理、維持、該当するCAPAの包括的で独立したアセスメント

・適切な水システムの設置と運用のための徹底的な改善計画

 改善されたシステムの設計または新しいシステムが一貫して、USPモノグラフの規格や適切な

 微生物の限界値(微生物総数、好ましくない微生物)を遵守したXX水を製造できることを保証

 するための安定した継続的な管理、維持、モニタリングのプログラムを含めよ。

・後者に関しては、水に関する微生物の総数の限界値が、貴社が製造する製品の意図された

 用途を考慮して適切であることを保証せよ。

 

●指摘4

貴社は、許可された職員のみが製造指図書原本またはその他の記録の変更を始められるという

ことを保証するために、コンピュータまたは関連システムに適切な管理を行うことを怠った。

(21 CFR 211.68(b))

<指摘4詳細>

貴社は、貴社の医薬品の製造に使用されているXXの完全性を保証するための管理が不足して

いた。例えば、貴社は、医薬品の処方や、医薬品の隔離・リリースのステイタスを含むデータ

の保持のためにソフトウエア(すなわちXX)を使用していた。このソフトウエアは、XXの量、

製造作業、計算を含むバッチ記録における製造ステップの完了を文書化するのにも使用されて

いる。貴社は、このソフトウエアXXは、バリデートされておらず、監査証跡がないと我々

査察官に述べた。

さらに貴社には、操作が、ユニークで共用されていないログイン資格を持つ許可された個人

に帰属することを保証するための適切な管理が欠けていた。例えば、我々査察官は、従業員XX

のログイン資格が2021317日と2021719日の2つの医薬品のバッチレコードのいくつか

の製造記録の完了の文書化に使用されているのを見つけた。しかし、貴社は我々査察官に、

XXは、20199月以降会社に雇用されていないと述べた。さらに、XXXXを含むログイン資格

がいくつかの製造活動の完了を文書化するのに使用されているが見つかった。貴社は我々査察官

に、これらのログイン資格は、複数の職員によって共有されていると述べた。この行為は管理

されたシステムにアクセスする特定の個人の識別を妨げるので、共有されたログイン資格は受け

入れられない。

貴社の品質システムは貴社が製造する医薬品の安全性、有効性、品質を裏付けるためのデータの

正確性と完全性を適切に保証していない。CGMPに則ったデータ・インテグリティの手順を制定し

遵守するためのガイダンスとして、

FDAのガイダンス文書

Data Integrity and Compliance With Drug CGMP

を参照せよ。

我々は、貴社が貴社の改善を支援するための適格なコンサルタントを雇うことを強く勧める。

この文書への回答の中で、以下の情報を提供せよ:

・アメリカに販売された医薬品のデータレビュの結果を含む、記録及び報告データの不正確さの

 範囲の包括的な調査

 貴社のデータ・インテグリティの欠如の範囲と根本原因の詳細な記述を含めよ。

・発見された不具合が貴社の医薬品の品質に与える潜在的な影響の現在のリスクアセスメント

 貴社のアセスメントは、データ・インテグリティの欠如の影響を受けた医薬品のリリースに

 よる患者へのリスクの分析と、継続的なオペレーションによってもたらされるリスクの分析を

 含めるべきである。

・全体的な是正処置・予防処置の計画の詳細を含む貴社の経営戦略

 詳細な是正処置計画は、微生物データ、分析データ、製造記録、FDAに提出される全ての

 データを含む貴社で生成された全てのデータの信頼性と完全性をいかに保証するつもりかを

 記述すべきである。

 

CGMPコンサルタントの推奨

貴社で確認した違反の性質に基づき、我々は、CGMPの要件を満たすように貴社を支援するために

21 CFR 211.34に記載されている適格性のあるコンサルタントを雇うことを強く勧める。貴社の

コンサルタントの使用は、CGMPを順守するための貴社の義務を軽減するものではない。貴社の

経営陣には、継続的なCGMP順守を保証するために、全ての不備とシステムの欠陥を解決する

責任が残る。

 

●結論

この文書で挙げた違反は、貴社の施設に存在する違反の包括的なリストではない。貴社には、

違反を調査し、原因を判断し、再発やその他の違反の発生を防止する責任がある。

全ての違反を速やかに是正せよ。この問題への即座の適切な対処の不履行は、制限のない差し

押さえ、強制命令を含む、さらなる通知のない制限または法的なアクションにつながるかも

しれない。未解決の違反は、他の連邦機関の契約授与も妨げるかもしれない。

違反への対処の不履行は、FDAの輸出証明の発行の差し控えにもつながるかもしれない。全て

の違反に完全に対応がされ、我々が貴社のCGMPの遵守を確認するまで、FDAは貴社の医薬品

製造業者としての新しい申請やリストの補完の承認を保留するだろう。我々は、貴社が全ての

違反に対する是正処置を完了したことを確認するために再査察を行うかもしれない。

 

出典:https://www.fda.gov/inspections-compliance-enforcement-and-criminal-investigations/warning-letters/colorful-products-corporation-624415-05102022

 

 

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まとめ

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いかがでしたでしょうか。

 

今回は、2件のウォーニングレターでデータ・インテグリティに関する指摘がありました。

 

退職者のユーザ資格で製造記録の完了が登録されているというのは、なかなかすごい内容

でしたが、

・システムのバリデーションの不備

・ユーザ資格の管理の不備

・監査証跡の不備

・製造記録のバージョン管理の不備

EXCELの管理の不備

といったことは、身近で起こりうる内容かと思います。

是非、参考にしてみていただければと思います。

 

 

☆次回は、9/15(木)に配信させていただきます。

 

 

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