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2022.06.15
【最近のウォーニングレター】ASTROM通信<244号>
こんにちは。
ASTROM通信担当の橋本奈央子です。
梅雨入りしてすっきりしない天気が続いていますがいかがお過ごしですか。
さて今回は、アメリカ食品医薬品局(FDA)がアメリカ国内の製薬会社向けに
出したウォーニングレター2件を見ていきたいと思います。
FDAがどのような点を指摘したかをご確認いただければ幸いです。
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最近のウォーニングレターの概要
注:文中のXXはウォーニングレターでマスキングされている文言及び具体的な社名・品名等です。
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■Warning Letter 624650■
2021年11月8日~11月19日のニューヨーク州の製造所の査察でみつかった医薬品製造の重大なCGMP違反に
ついて発した2022年3月14日付ウォーニングレターには、下記の指摘事項があげられています。
●XX施設
●指摘1
貴社は装置の洗浄とメンテナンスに関する適切に文書化された手順を制定し従うことを怠った。
(21 CFR 211.67(b))
<指摘1詳細>
貴社は、XX、混合機、打錠機を含む非専用装置を使って、様々な剤形の多数のOTC医薬品を製造してい
る。FDAの査察官は、医薬品と直接接触する面を持つ多数の重要な非専用装置について、洗浄バリデー
ションの検証が不完全であることを発見した。査察中、貴社は、現在の洗浄手順が医薬品の残留物を
適切に取り除き、交叉汚染を防ぐという十分な根拠を提出できなかった。
さらに、貴社の洗浄手順は、一貫して実施されバリデートされるために十分な特異性と詳細が不足して
いた。例えば、標準操作手順(SOP)MF-22“XXの洗浄手順”の7.3.9章は、XXの指示を含んでいた。XXは、
洗浄が非常難しい、製品と接触する装置の例で、それゆえに、通常は特定の医薬品に専用である。
貴社は、一見して清潔なXXが、ある医薬品の残留物を他のものに持ち越さないことを示す化学的な
データを持っていなかった。さらに、視覚的な残留物だけを除去する洗浄は不適切である。洗浄手順上
でも、目に見えない残留物も適切に除去されるようになっていなければならない。貴社は、適切でバリ
デートされた洗浄手順を持っていなければならない。
これは、2020年の査察から繰り返されている指摘事項であり、2020年8月13日の規制会議中に議論された
品目であった。
貴社は回答の中で、洗浄手順をレビュして改訂し、洗浄バリデーションプロトコルを最新化し、貴社の
洗浄バリデーションを支援するサードパーティと契約するつもりであると述べた。非専用装置の不備が
ある洗浄手順がアメリカ市場に残っている医薬品に与えたかもしれない影響について検討していないので、
貴社の回答は不十分である。さらに、貴社は、製造の再開において暫定的な装置の洗浄バリデーション
プロトコルを実装するつもりであると述べたが、そのようなプロトコルについて、十分な詳細を提出
しなかった。
この文書への回答の中で、以下の情報を提供せよ:
・交叉汚染の危険の範囲を評価するための、洗浄効果の包括的で独立した回顧的アセスメント
残留物の特定、不適切に洗浄された可能性のあるその他の製造装置、交叉汚染された医薬品が販売の
ためにリリースされたかどうかのアセスメントを含めよ。
アセスメントは、洗浄手順の業務の不備を特定し、複数製品の製造に使用されている各製造装置を
網羅するべきである。
・貴社の医薬品製造作業におけるワーストケースとして特定された条件を取り入れることに特に重点を
置いた貴社の洗浄バリデーションプログラムへの適切な改善
改善には、これに限定されないが、以下の全てのワーストケースの特定と評価を含むべきである:
〇より高い毒性を持つ医薬品
〇より高い有効性を持つ医薬品または洗浄溶液の中でより低い溶解度の医薬品
〇洗浄を難しくする特性を持った医薬品
〇洗浄を最も難しくする拭き取り場所
〇洗浄前の最大保持時間
・新しい製造装置や新しい製品を導入する前に、貴社の変更管理システムでとられるべき手順の記述
・製品、工程、装置の洗浄手順の検証とバリデーションのための適切なプログラムが実施されている
ことを保証する最新のSOPのサマリ
・XXを個々の医薬品の専用とするか、貴社の洗浄手順が残留物を適切に除去し交叉汚染を防げること
を示す洗浄バリデーションのデータを提出するという約束
●指摘2
貴社は、そのロットが既に出荷されたかどうかに関わらず、ロットまたはその成分の規格に対する説明
のつかない不一致や不具合を徹底的に調査することを怠った。(21 CFR 211.192)
<指摘2詳細>
貴社は規格外(OOS)の試験結果や、説明のつかない不一致について適切に調査することを怠った。
例えば:
・製剤XXの成分でない原薬グアイフェネシンを含む錠剤XXの22ロットの交叉汚染についての調査で、
汚染の根本原因を科学的に特定することを怠った。各OOSの結果を調査する代わりに、貴社は、全て
のOOSの結果を1つの調査にまとめ、その結果、なんの是正処置・予防処置(CAPA)も行われなかった。
その後、貴社は、新しいサンプルの標本を再試験するために、承認済の分析方法TM-48Aの修正を
開始した。貴社の再試験は、また、グアイフェネシンの交叉汚染に関し不合格となった。貴社は好ま
しい結果が得られなかった場合、不合格のサンプルだけをテストするために新しいバリデートされて
いない試験方法TM-149を使用し、合格の結果を得て、その後、販売のためにロットをリリースした。
・製剤XXの成分でない原薬カフェインを含む錠剤の4ロットの交叉汚染についての調査で、汚染の根本
原因を科学的に特定することを怠った。仮定に基づいて、貴社はバリデートされていない試験方法で
不合格のロットについて、合格の結果が得られるまで、繰り返しのOOSの結果の根本原因を特定する
ことなくXX回再試験を行い、その後、販売のためにロットをリリースした。
交叉汚染のいずれの場合も、貴社は、もともとのOOSを無効にしたり根本原因を特定したりするための
適切な科学的根拠を提供することなく全ての不合格の結果を無視した。代りに貴社は合格の結果を
得られるまで、バリデートされておらず検証されていない試験方法を使って不合格のロットを
再サンプリングして再試験を行った。
貴社は回答の中で、製品を回収したと述べたが、追加の市場でのアクションを必要とするかもしれない
使用期限内の全ての製品のOOSの調査のレビュを実施しなかった。規格に準拠するよう繰り返しの試験
を許す貴社の品質部門(QU)のシステム的な不具合を認識して対処することを怠っているので、貴社の
回答は不十分である。
この文書への回答の中で、以下の情報を提供せよ:
・最終的にロットがアメリカに出荷されたかどうかにかかわらず、アメリカ向け製品について、全ての
無効化されたOOS(工程内とリリース/安定性試験を含む)の結果の回顧的で独立したレビュと、各OOS
に関し以下のことを含む、分析結果の要約したレポート:
〇無効化されたOOSの結果に関する科学的な正当性やエビデンスが、決定的または決定的でなくても
試験のエラーが原因であると示しているかどうかの判断
〇試験の根本原因を決定的に立証した調査について、論理的根拠を提出し、同じ(または類似の)
根本原因に脆弱なその他すべての試験方法が修正のために特定されていることを保証せよ。
〇根本原因がない、または、試験室が根本原因という結論が出ていない、回顧的レビュでみつかった
全てのOOSの結果について、製造の徹底的なレビュ(例えば、バッチの製造記録、製造ステップの
妥当性、機器/設備の適合性、原材料のばらつき、工程の能力、逸脱の履歴、苦情の履歴、ロット
の不具合の履歴)を含めよ。各調査において可能性のある製造の根本原因と、製造作業の改善の
サマリを提出せよ。
・貴社のOOSの結果の調査システムに関する包括的なレビュと改善の計画
CAPAは、これに限定されないが、以下のことの対処を含めよ。
〇試験の調査のQUの監督
〇有害な試験管理の傾向の特定
〇試験のばらつきの原因の解決
〇試験の原因が決定的であると特定されていない場合は、潜在的な製造の根本原因の徹底的な調査の
開始
〇各調査とCAPAの適切な範囲
〇これら及びその他の修正を含む改訂されたOOSの調査手順
・逸脱、不一致、苦情、OOSの結果、不具合の調査に関する貴社の包括的なシステムの包括的で独立した
アセスメント
このシステムを修正するめの詳細なアクションプランを提出せよ。貴社のアクションプランには、
これに限定されないが、調査能力、調査の範囲の決定、根本原因の評価、CAPAの効果、QUの監督、
文書化された手順の大幅な改善を含めるべきである。調査の全てのフェーズが適切に実施されることを
いかに保証するかについて説明せよ。
・顧客への通知や回収を含む、アメリカで流通している貴社の全ての製品に関する、製品の品質や患者の
安全のリスクに対処するためのアクションプラン
不合格、OOS、傾向外、その他の意図しない結果や貴社の調査の文書化の取り扱いについての更なる情報
に関し、FDAのガイダンス文書Investigating Out-of-Specification(OOS) Test Results for Pharmaceutical Production
を見よ。
●XX施設
●指摘1
貴社は、そのロットが既に出荷されたかどうかに関わらず、ロットまたはその成分の規格に対する説明
のつかない不一致や不具合を徹底的に調査することを怠った。(21 CFR 211.192)
<指摘1詳細>
貴社のXX施設は、XX施設で製造された製品の分析試験を実施している。
貴社は、OOSの試験結果や説明のつかない不一致について適切に調査しなかった。貴社は、潜在的な
根本原因を適切に正当化し、影響を受けた可能性のあるすべてのロットに調査を広げ、CAPAを実施
することを怠った。
具体的に、貴社は、XXとXXで、アセトアミノフェン250㎎/アスピリン250㎎/カフェイン65㎎の錠剤の
多数のロットに関し、25℃±2℃、60%±5%の相対湿度の安定性試験において、OOSの分析試験結果を
得て、不純物XXを発見した。
調査中、貴社は、XXで相対湿度が管理されていない低ストレス条件のもとで保管されている
保管サンプルを試験した。合格結果を得た後、貴社は、OOSの結果は “市場の製品のロット18J024の
状態を表していないかもしれない”と主張し、科学的な根拠もなく、湿度60%±5%の保管条件が
アスピリンの副次的効能と不純物XXの原因であると結論づけた。当時、貴社は、市場にアクションを
起こさなかった。
貴社は回答の中で、サードパーティのコンサルタントを雇い、アセトアミノフェン250㎎/
アスピリン250㎎/カフェイン65㎎の錠剤の製造と販売を中止し、自主回収を開始したと述べた。さらに、
貴社は試験作業をレビュし、CAPAを策定し実施するつもりであると述べた。貴社の回答は、60%±5%
の湿度の保管条件に対応していなかった。
貴社の回答は不十分である。アメリカの標準的な安定性の保管条件は、相対湿度60%±5%である。
さらに、分析試験作業は、XX施設からXX施設に移管された。しかし、XXのマネージャはXXのQUに報告
しており、2018年と2020年のXXのFDA査察中に、同様の問題の報告がされていた。貴社の回答は、貴社
の試験作業のQUの監督を改善するために2018年から現在の査察の間にとられたアクションの十分な情報
に欠けている。
さらに、貴社の回答は以下の詳細な情報が欠けていた:
・現在市場にある他の医薬品の不適切なOOSの調査に潜在的な影響への対応
・繰り返される不十分な調査と、不十分なQUの監督の根本原因の特定
・調査と関連するCAPAに関する貴社の品質システムの効果の評価
この文書への回答の中で、以下の情報を提供せよ:
・最終的にロットがアメリカに出荷されたかどうかにかかわらず、アメリカ向け製品について、全て
の無効化されたOOS(工程内とリリース/安定性試験を含む)の結果の回顧的で独立したレビュと、
各OOSに関し以下のことを含む、分析結果の要約したレポート:
〇無効化されたOOSの結果に関する科学的な正当性やエビデンスが、決定的または決定的でなくても
試験のエラーが原因であると示しているかどうかの判断
〇試験の根本原因を決定的に立証した調査について、論理的根拠を提出し、同じ(または類似の)
根本原因に脆弱なその他すべての試験方法が修正のために特定されていることを保証せよ。
〇根本原因がない、または、試験室が根本原因という結論が出ていない、回顧的レビュでみつかった
全てのOOSの結果について、製造の徹底的なレビュ(例えば、バッチの製造記録、製造ステップの
妥当性、機器/設備の適合性、原材料のばらつき、工程の能力、逸脱の履歴、苦情の履歴、ロットの
不具合の履歴)を含めよ。各調査において可能性のある製造の根本原因と、製造作業の改善のサマリ
を提出せよ。
・貴社のOOSの結果の調査システムに関する包括的なレビュと改善の計画
CAPAは、これに限定されないが、以下のことの対処を含めよ。
〇試験の調査のQUの監督
〇有害な試験管理の傾向の特定
〇試験のばらつきの原因の解決
〇試験の原因が決定的であると特定されていない場合は、潜在的な製造の根本原因の徹底的な調査の
開始
〇各調査とCAPAの適切な範囲
〇これら及びその他の修正を含む改訂されたOOSの調査手順
・逸脱、不一致、苦情、OOSの結果、不具合の調査に関する貴社の包括的なシステムの包括的で独立した
アセスメント
このシステムを修正するめの詳細なアクションプランを提出せよ。貴社のアクションプランには、
これに限定されないが、調査能力、調査の範囲の決定、根本原因の評価、CAPAのっ効果、QUの監督、
文書化された手順の大幅な改善を含めるべきである。調査の全てのフェーズが適切に実施されること
をいかに保証するかについて説明せよ。
・顧客への通知や回収を含む、アメリカで流通している貴社の全ての製品に関する、製品の品質や患者の
安全のリスクに対処するためのアクションプラン
不合格、OOS、傾向外、その他の意図しない結果や貴社の調査の文書化の取り扱いについての更なる情報
に関し、FDAのガイダンス文書Investigating Out-of-Specification(OOS) Test Results for Pharmaceutical Production
を見よ。
●指摘2
貴社は、試験管理の仕組みを確立しそれに従うことを怠った。(21 CFR 211.160(a))
<指摘2詳細>
貴社は医薬品の試験で使用される多数の試験方法を適切にバリデートしていなかった。CAPA2020-034に
よると、貴社のXXの試験方法のうち、およそ60の試験方法が不完全であると報告され、75の試験方法は
バリデーションまたは検証レポートが見つからなかった。これらの不備またはバリデーション・検証が
未実施の可能性のある試験方法は、薬剤の混合の工程内試験や、バルクや製品のリリース及び安定性試験
にて、引き続き使用されていた。例えば、方法TM-19“フェニレフリンHCLの分析”は、バリデートされて
いなかったが、現在市場にあるXX錠剤の少なくともXXロットのリリースの際に使用された。さらに、
計算に使用される貴社のEXCELのワークブックは、多数のエラーが示す通り、信頼できる結果を生んで
いない。
貴社は回答の中でリリースと安定性試験の作業を一時的に停止し、方法のバリデーションまたは検証
を2021年11月1日まで終了するつもりであると述べた。貴社は、医薬品の潜在的な影響について、全て
の試験方法と関連するバリデーション及び検証レポートのレビュをするのを助けるCGMPコンサルタント
を雇ったと述べた。その後の2021年11月5日の貴社の回答の中では、貴社は、化学及び製品の安定性試験
と洗浄バリデーションの化学試験を実施するためにXXと契約したと述べた。
貴社の回答は、以下の詳細情報を欠いているために不十分である:
・試験のシステム的な問題の修正の有効性の評価
・現在市場にある医薬品の潜在的な品質上の懸念の回顧的なアセスメントの効果の評価
・貴社の安定性サンプルのCGMP契約試験機関として、XXの適格性評価をいかに実施しているかの説明
・XXを含む貴社の契約試験機関で使用されている試験方法のバリデーションの状況と比較可能性に
ついての取り組み
この文書への回答の中で、以下の情報を提供せよ:
・貴社の試験の業務、手順、方法、装置、文書、分析者の能力の包括的で独立したアセスメント
このレビュに基づいて貴社の試験システムを修正しその効果を評価するための詳細の計画を提出せよ。
・市場にある医薬品の安全性、同一性、濃度、品質、純度への影響の回顧的レビュと包括的アセスメント
FDAが方法のバリ―ションの適切な要素と考える一般原則とアプローチについて、FDAのガイダンス文書
Analytical Procedures and Methods Validation for Drugs and Biologicsを見よ。
●指摘3
貴社は、権限のある職員のみが製造指図書原本またはその他の記録への変更を実施することを保証する
ためにコンピュータまたは関連システムの適切な管理を実施することを怠った。(21 CFR 211.68(b))
<指摘3詳細>
貴社は電子データおよびソフトウエアシステムに対する適切な監督と管理をしていなかった。査察中、
我々査察官は、貴社の分析者が正当な理由もなく高速液体クロマトグラフィ(HPLC)の1回の注入を実施し、
文書化された理由もなく“シングル実行”と名付けられたフォルダに関連データを保存するのを確認
した。我々査察官は、HPLCの監査証跡の中で、文書化された理由のない“削除された方法”、
“中止された実行”、“削除された手動積分”、“データ収集の停止”などの多数の操作も発見した。
さらに、貴社の分析者は、HPLC装置の中の承認された試験方法を変更する権限を持っていた。貴社の
電子記録保持システムの不適切な管理は、データが信頼できて正確であることを保証していなかった。
貴社は回答の中で、ソフトウエアXXをインストールして適格性評価を実施し、1回の注入実施の定期的
なレビュを含めるためのSOPの改訂、調査目的のために試験室での試験を管理するためのポリシーと手順
の確立をするつもりであると述べた。さらに、試験室に品質保証のプロをアサインした。
シングル実行がいつ行われるかの詳細情報を提供したり、明確にしたりしなかったので、貴社の回答は
不十分である。さらに、回答には、市場にある製品への影響の回顧的評価も、電子記録保持システムや
関連データの監督の改善をいかに計画するかの記述も含まれていなかった。
この文書への回答の中で、以下の情報を含めよ:
・監査証跡をアクティブにした全ての試験機器とソフトウエアのリスト
・ソフトウエアの構成設定、管理者権限を含む全てのユーザ権限の詳細、貴社の各試験システムの監督
の役目
ユーザの権限に関しては、試験室のコンピュータシステムへのアクセス権を持った全て職員に関し、
所属組織と役職と共に、役割と関連する権限を明記せよ。管理者権限が完全に分離され、QUの
試験職員と完全に独立していることをいかに保証するつもりか詳細を説明せよ。
・暫定的な管理、全てのレベルで全ての該当する試験装置と電子データシステムに関する監査証跡が
有効になる時期、CGMPの対象となる分析結果のリリース前に監査証跡のレビュのための手順が実装
される時期を述べたタイムライン付の貴社のアクションプラン
・貴社の監査証跡内の全ての手動の積分の回顧的レビュとリスクアセスメント
手動の積分が許可される条件と状況を定義し科学的根拠に基づく手動の積分を事前に定義するために
文書化された手順を含めよ。それらのイベントの文書化、追跡、調査のための手順を提供せよ。
●契約試験施設の責任
貴社の施設は、他の医薬品製造業者のための試験も実施している。FDAは、請負業者も製造業者自身の
施設の延長とみなす。CGMPの遵守の不備は、貴社が貴社のクライアントのために試験した医薬品の品質、
安全性、有効性に影響を与える可能性がある。貴社がCGMPを完全に遵守して運用する責任を理解し、
これらの医薬品の全ての規格外の試験結果や試験中に発生した重大な問題を全ての顧客に通知すること
は不可欠である。
更なる情報については、FDAのガイダンス文書Contract Manufacturing Arrangements for Drugsを
参照せよ。
●XX社
●指摘1
貴社は、全ての成分、医薬品の容器、蓋、中間材料、包装材料、ラベル、医薬品を承認または拒否する
責任と権限を持った品質管理部門を制定することを怠った。(21 CFR 211.22(a))
<指摘1詳細>
XX社は、自身の事業に加えて、上記の両施設を監督し、州際通商への医薬品のリリースに関する責任を
持っている。貴社のQUは、洗浄、調査、試験作業の監督を含む、貴社の複数の製造所で製造される貴社
の医薬品の製造の適切な監督を実施していなかった。
貴社のQUは、最終製品のリリースに関する責任を適切に果たすことを怠った。貴社のQUは、XX施設から
得られた試験結果に基づき医薬品のリリースの判断をしている。上記の通り、医薬品のリリースと
安定性試験で使用されている貴社の試験施設における試験方法は検証もバリデートもされていないので、
貴社は、貴社の医薬品の同一性、濃度、品質、純度に関する適切な試験を保証することを怠った。
しかし、少なくとも2021年初期以来、貴社のQUは、これらのバリデートされていない試験方法から
得られた試験結果に基づき医薬品の多数のロットのリリースを続けた。
貴社は、安定性のサンプルがSOP QA-65“安定性システム手順”に従って、指定された時点で試験される
ことを保証する責任を適切に果たすことを怠った。その結果、貴社には、現在市場にある医薬品が、
ラベルに表示された使用期限を通して、同一性、濃度、品質、純度、安全性を維持していることを保証
するための適切なデータが不足していた。
貴社は回答の中で、試験方法は、検証を必要とするUSPモノグラフに基づいており、しかも、検証されて
いない試験方法を使用して医薬品のロットのリリースに関する根本原因を特定するつもりであると
述べた。また貴社は、方法の検証を実施し安定性サンプルを試験するために、サードパーティの
試験機関と契約したと述べた。
貴社は医薬品にUSPモノグラフがあるかどうかに関わらず、バリデートも検証もされていない試験方法を
使うことにより現在市場にある医薬品の同一性、濃度、品質、純度への影響に対処することを怠った
ので貴社の回答は不十分である。
この文書内の重要な調査結果は、貴社のQUがその権限と責任を完全に果たすことができないことを
示している。貴社はQUに、その責任を果たし、医薬品の品質を一貫して保証するための適切な権限と
十分なリソースを提供しなければならない。
この文書への回答の中で、以下の情報を提供せよ:
・QUが効果的に機能するための権限とリソースを与えられていることを保証するための包括的なアセス
メントと改善の計画
アセスメントには、これに限定されないが以下の情報も含むべきである:
〇貴社で用いられている手順が安定していて適切かどうかの判断
〇適切な手順の遵守を評価するための、貴社の業務全体のQUの監督の規定
〇QUがロットの処遇を判断する前の、各ロットとそれに関連する情報の完全で最終的なレビュ
〇調査の監督と承認及び全ての製品の同一性、濃度、品質、純度を保証するためのQUのその他の職務
の遂行
〇これに限定されないが、タイムリーなリソースの提供、新たに発生した製造及び品質の問題への
積極的な対処、継続的な管理状態の保証を含む、いかに経営陣が品質保証と信頼できる業務を
サポートするかの説明
・検証されていない、またはバリデートされていない試験方法を使って医薬品をリリースするための、
貴社の品質マニュアルからの逸脱の独立した調査
・バリデートされた、または、検証された試験方法から得られた試験データのみがロットのリリースの
判断に使用されていることを保証するための貴社の計画または手順
・顧客への通知や回収の可能性も含む、アメリカで流通している貴社の全ての医薬品に関する製品品質
や患者の安全性のリスクに対処するためのアクションプラン
●複数製造所での繰り返しの査察結果
FDAは、貴社のネットワーク内の複数の施設で同様のGMPの査察結果を挙げた。多数の施設でのこれらの
繰り返される不具合は、貴社の経営陣の医薬品製造の監督と管理が不十分であることを示している。
・2018年6月29日、XX施設は、とりわけ、不十分な安定性プログラム、不十分なOOSの調査、不十分な
装置の洗浄手順とバリデーションについて指摘された。
・2020年1月31日、XX社は、とりわけ、不十分なOOSの調査、不十分な装置の洗浄手順とバリデーション、
不十分なコンピュータ、関連システムの管理について指摘された。
貴社の経営陣には全ての不備を完全に解決し、継続的なCGMP遵守を保証する責任がある。貴社は、
システム、工程、製造する医薬品がFDAの要件に従うことを保証するために貴社全体の製造作業を迅速
かつ包括的に評価するべきである。
●医薬品製造と試験の停止
我々は貴社が、改善が完了するまで2つの施設で、それぞれ医薬品の製造と試験を停止すると約束した
と認識している。この文書への回答の中で、貴社がいつこれらの施設での製造作業の再開するつもりか
の見込みを提供せよ。さらに、貴社作業の再開前にはこの事務所に連絡せよ。
●データ・インテグリティの改善
貴社の品質システムは、貴社が試験した医薬品の安全性、有効性、品質を裏付けるデータの正確性と
完全性を適切に保証していない。CGMPを遵守したデータ・インテグリティ業務を確立し、それに従う
ためのガイダンスとして、
FDAのガイダンス文書Data integrity and Compliance with Drug CGMPを見よ。
我々は、貴社が貴社の作業を監査しFDAの要件を満たす助けをするためのコンサルタントを使用して
いることを知っている。この文書への回答の中で、以下の情報を提供せよ:
A.アメリカに出荷された医薬品のデータのレビュ結果を含む、データ記録と報告の不正確な範囲の
包括的な調査
貴社のデータ・インテグリティの欠如の範囲と根本原因の詳細な記述を含めよ。
B.みつかった不具合の貴社の医薬品の品質への潜在的な影響の、現在のリスクアセスメント
貴社のアセスメントには、データ・インテグリティの欠如の影響を受けた医薬品のリリースに
よる患者のリスクの分析と、継続的な作業により引き起こされるリスクの分析を含めるべきである。
C.貴社の全社的な是正処置・予防処置の詳細を含む、貴社の経営戦略
是正処置の詳細な計画には、貴社が、微生物及び分析のデータ、製造記録、FDAに提出される全て
のデータを含む、貴社で生成された全てのデータの信頼性と網羅性をいかに保証するつもりかも
記述すべきである。
●結論
この文書で挙げた違反は、貴社の施設に存在する違反の包括的なリストでもない。貴社には、違反を
調査し、原因を判断し、再発やその他の違反の発生を防止する責任がある。
全ての違反を速やかに是正せよ。この問題への即座の適切な対処の不履行は、制限のない差し押さえ、
強制命令を含む、さらなる通知のない制限または法的なアクションにつながるかもしれない。未解決の
違反は、他の連邦機関の契約授与も妨げるかもしれない。
違反への対処の不履行は、FDAの輸出証明の発行の差し控えにもつながるかもしれない。全ての違反に
完全に対応がされ、我々が貴社のCGMPの遵守を確認するまで、FDAは貴社の医薬品製造業者としての
新しい申請やリストの補完の承認を保留するだろう。我々は、貴社が全ての違反に対する是正処置を
完了したことを確認するために再査察を行うかもしれない。
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■CMS#623475■
2021年10月21日~11月3日のプエルトリコの製造所の査察でみつかった医薬品製造の重大なCGMP違反に
ついて発した2022年3月25日付ウォーニングレターには、下記の指摘事項があげられています。
●指摘1
貴社の品質管理部門は、製造された医薬品がCGMPを遵守し、同一性、濃度、品質、純度に関して制定
された規格を満たしていることを保証することを怠った。(21 CFR 211.22)
<指摘1詳細>
貴社は、医療従事者が使用するためにラベル表示された、開いた傷口の消毒や手指の消毒剤のOTC医薬品
を製造している。貴社の品質部門(QU)は、貴社の医薬品の製造のための適切な監督を行わなかった。
例えば、QUは以下のことを保証することを怠った:
・入荷した成分の同一性、純度、濃度、その他の品質特性に関する適切な試験
(21 CFR 211.84(d)(1)と(2))
・貴社の最終製品の適切な試験と適切な規格(21 CFR 211.165(a))
・プロセスバリデーション、調査、逸脱、機器の洗浄、変更管理について述べた適切な手順
(21 CFR 211.22(d))
・継続的な安定性プログラムの遵守(21 CFR 211.166(a))
・年次製品照査の実行(21 CFR 211.180(e))
貴社の品質システムは不適切である。CGMPの規制要件を満たすための品質システムとリスクマネジメント
のアプローチを実装する助けとして、
FDAガイダンス文書Quality Systems Approach to Pharmaceutical CGMP Regulationsを見よ。
この文書への回答の中で、貴社のQUが効果的に機能するために権限とリソースを与えられていることを
保証するための包括的なアセスメントと改善計画を提出せよ。アセスメントには、これに限定されない
が以下の情報も含めるべきである:
・貴社で使用されている手順が安定していて適切かどうかの判断
・適切な手順の遵守を評価するための貴社の作業全体のQUの監督に関する規定
・QUがロットの処遇を判断する前の、各ロットとそれに関連する情報の完全で最終的なレビュ
・調査の監督と承認及び全ての製品の同一性、濃度、品質、純度を保証するためのQUのその他の職務
の遂行
●指摘2
貴社は、製造、加工、包装、保持に使用される建物を、清潔で衛生的な状態に維持することを怠った。
(21 CFR 211.56(a))
<指摘2詳細>
貴社の施設の医薬品製造エリアは荒れていた。例えば、我々査察官は、製造エリアで壊れた壁、ごみ、
開放された製造装置のすぐ近くの溜まった水を発見した。
この文書への回答の中で、施設及び装置の、日常的で慎重な作業の管理監督を実装するための是正処置・
予防処置(CAPA)の計画を提出せよ。この計画には、とりわけ、装置/施設の性能の問題の迅速な検知、
修理の効果的な実施、適切な予防保全スケジュールの遵守、装置/施設インフラストラクチャへの
タイムリーな技術的アップグレード、継続的なマネジメントレビュのためのシステムの改善を含める
べきである。
●指摘3
貴社は、貴社が、それが持つとうたわれている、または、表示されている同一性、濃度、品質、純度を
持つ医薬品を製造していることを保証するために設計した製造及び工程管理のための文書化された手順
を制定することを怠った。(21 CFR 211.100(a))
<指摘3詳細>
貴社は、医薬品の製造に使用されている工程がバリデートされていることを立証していなかった。
さらに、貴社は医薬品の製造のための成分として、貴社の水システムの水を使用しているが、貴社は、
水システムが使用目的に適した水を継続して製造することを保証するために適切に設計され、管理され、
保全され、モニタされていることを立証していなかった。
貴社には、プロセスバリデーションのプログラムが欠けている。プロセスバリデーションは設計や
ライフサイクルを通じた工程の管理状態の安定性を評価する。製造工程の各重要な段階が適切に設計
されていなければならず、投入される原材料、中間材料、最終製品の品質を保証しなければならない。
工程の適格性評価は、初期の管理状態が確証されているかどうか判断する。商用流通の前に工程の
適格性評価を成功させる必要がある。その後、製品のライフサイクルを通じて貴社が安定した製造作業
を維持していることを保証するために、工程の性能と製品品質の継続的で慎重な監視が必要である。
FDAがプロセスバリデーションの適切な要素と考える一般原則とアプローチに関し、
FDAのガイダンス文書Process Validation : General Principles and Practicesを見よ。
この文書への回答の中で、以下の情報を提供せよ:
・製品のライフサイクルを通じて管理状態を保証するために、関連する手順を添えたバリデーション
プログラムの詳細なサマリ
継続的な管理状態を保証するための、工程の性能適格性評価と、ロット内およびロット間のばらつき
の継続的なモニタリングに関するプログラムを述べよ。
・貴社の販売している各医薬品に関する適切な工程の性能適格性評価の実施に関するタイムライン
・装置と設備の適格性評価に関する工程性能プロトコルと文書化された手順を含めよ。
・継続的な管理状態を保証するために、ロット内およびロット間のばらつきの慎重なモニタリングを
含む、各製造工程の設計、バリデーション、保全、管理、モニタリングに関する詳細なプログラム
を提供せよ。また、貴社の装置と設備の適格性評価に関する貴社のプログラムと、貴社の水システム
の設計、管理、保全の包括的で独立したアセスメントも含めよ。
・適切な水システムを設置し運用するための徹底的な改善計画
改善されたシステムの設計が、USPモノグラフの精製水の規格及び適切な微生物数の上限に準拠した
水を一貫して製造することを保証するための、安定した継続的な管理、保全、モニタリングの
プログラムを含めよ。
・微生物数の上限に関しては、貴社の水の微生物総数の上限が、貴社で製造される製品の使用目的を
考慮して適切であることを保証せよ。
・発見された水システムの不具合の、現在アメリカで販売中または使用期限内の製品の全てのロット
の品質への潜在的な影響に対応した詳細のリスクアセスメント
リスクアセスメントに対応して貴社がとろうとしている、顧客への通知や製品の回収などの
アクションを明記せよ。
●医薬品の製造停止
我々は、この施設で医薬品の製造を停止するという貴社の約束を認識している。しかし、貴社は
製造業者として引き続き登録されている。この文書への回答の中で、貴社がこの施設または別の
施設で今後医薬品の製造を再開するつもりかどうかを明確にせよ。
もし貴社が医薬品の製造を再開するつもりなら、適切な是正処置がとられることを保証し、作業を
再開する前に会議の計画をこのオフィスに通知せよ。
我々が貴社で発見した違反の性質に基づき、もし貴社がアメリカ向けの医薬品の製造を再開するつもり
なら、我々は、CGMPの要件を満たすように貴社を支援するために21 CFR 211.34に記載されている適格性
のあるコンサルタントを雇うことを強く勧める。
貴社のコンサルタントの使用は、CGMPを遵守するための貴社の義務を軽減するものではない。貴社の
経営陣には、継続的なCGMP順守を保証するために、全ての不備とシステムの欠陥を解決する責任が残る。
●施設での繰り返しの違反と査察結果
2010年10月13日付の以前の無題の文書(11-SJN-UTL-02)と、その後の査察で、FDAは、類似のCGMP違反と
査察結果を指摘した。繰り返しの違反は、医薬品の製造に対する貴社の経営陣の監督と管理が不十分で
あることを示している。
●結論
この文書で挙げた違反は、貴社の施設に存在する違反の包括的なリストでもない。貴社には、違反を
調査し、原因を判断し、再発やその他の違反の発生を防止する責任がある。
全ての違反を速やかに是正せよ。これらの問題への即座の適切な対処の不履行は、制限のない差し押さえ、
強制命令を含む、さらなる通知のない制限または法的なアクションにつながるかもしれない。未解決の
違反は、他の連邦機関の契約授与も妨げるかもしれない。
違反への対処の不履行は、FDAの輸出証明の発行の差し控えにもつながるかもしれない。全ての違反に
完全に対応がされ、我々が貴社のCGMPの遵守を確認するまで、FDAは貴社の医薬品製造業者としての
新しい申請やリストの補完の承認を保留するだろう。我々は、貴社が全ての違反に対する是正処置を
完了したことを確認するために再査察を行うかもしれない。
◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆
まとめ
◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆
いかがでしたでしょうか。
どの指摘事項も、日本の製薬企業でも起こりうる内容だったのではないでしょうか。
1件目のウォーニングレターの“契約試験設備の責任”に、“FDAは、請負業者も製造業者自身の
施設の延長とみなす。“とありましたが、委受託に関わらず、製薬企業が製品に対する責任を負う
ことが求められています。
ちょうど、2022年5月に日本で出たオレンジレターにも、受託製造であっても、自らの製造所から出荷
する製品の有効性、安全性に対する責任を持つべきであるという指摘がありました。
オレンジレター:https://www.pmda.go.jp/files/000246593.pdf
是非、ウォーニングレターの指摘内容を参考にしていただければと思います。
委受託に関しては、ちょうど、2022年6月22日版の薬事日報でも、厚生労働行政推進調査事業で
「医薬品の製造販売業者による品質管理の体制構築に向けた調査研究」で、製造販売業者と製造業者
が適切に委受託を行うためのGQP省令の運用に課題があることが指摘されたという記事がありました。
この機会に、委受託に関する管理を見直してみるのもいいかもしれません。
☆次回は、7/1(金)に配信させていただきます。
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【発行責任者】
株式会社プロス
『ASTROM通信』担当 橋本奈央子
2022.06.01
【初のオレンジレターと最近のウォーニングレター】ASTROM通信<243号>
こんにちは。
ASTROM通信担当の橋本奈央子です。
急に暑くなってきましたが、いかがお過ごしですか。
さて今回は、以下の2つのテーマを取り上げたいと思います。
1.日本のPMDAが初めて発表したオレンジレター 1件
2.FDAがアメリカ国内の製薬会社向けに出したウォーニングレター 1件
PMDAやFDAがどのような点を指摘したかを確認していただければ幸いです。
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1.PMDAが初めて発表したオレンジレター
◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆
今年度から、日本のPMDA(医薬品医療機器総合機構)は、GMP 調査における指摘事項のうち、
業界への周知が特に有用と考えられる事例について、注意喚起や技術的な参考として年1回
と臨時で公表することになりました。
オレンジレターは臨時で公表されるタイプのほうの呼び名で、FDAのウォーニングレターと
違って特定の会社に宛てたものではなく、業界全体で参考となる事案を公表したものです。
https://www.pmda.go.jp/files/000245524.pdf
今回のオレンジレターは、日本国内の原薬製造所で発生した事例です。
■背景
GMP省令第十条第五号では、原料について、ロットごとに適正である旨を確認し、その結果に
関する記録を作成することを求めており、この製造所の手順でも、原料の受入時に、容器に
貼付されたラベルにより、供給元のメーカー名を確認し、その記録を残すことが規定されて
いた。
■確認された事例
原料の容器に貼付されたラベルにメーカー名が未記載であったにもかかわらず、受入担当者は、
容器に貼付されたラベルによりメーカー名を確認したように受入記録を作成したが、実際には
原料の試験成績書によりメーカー名を確認していた。
■問題点・リスク
・受入時に容器のラベルの確認を怠った場合、本来と異なる原料が入荷しても、検知できない
リスクが存在する
・本来入荷すべき原料と異なる原料を使用して製造された製品の品質に、重大な影響を及ぼす
危険性が存在する
■チェックポイント
①手順通りにラベルの確認・記録を行っているか
②作業者が業務の意味を理解しているか
③製造所全体で手順を順守する意識が浸透しているか
■対応
原料の取り違えのリスク低減のため、原料の受入~製造工程での仕込みまでの間に、
①原料の受入時の確認
②倉庫からの払い出し時の確認
③製造部門による受入時の確認
④製造工程での仕込み時の確認
といった複数部署によるラベルの確認等を実施すること
出典:https://www.pmda.go.jp/files/000246311.pdf
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2.最近のウォーニングレターの概要
注:文中のXXはウォーニングレターでマスキングされている文言及び具体的な社名・品名等です。
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■Warning Letter 621313■
2021年9月23日~9月29日のニュージャージー州の製造所の査察でみつかった医薬品製造の重大な
CGMP違反について発した2022年3月14日付ウォーニングレターには、下記の指摘事項があげられて
います。
●CGMP違反
●指摘1
貴社は医薬品の各ロットについて、リリース前に、各有効成分の同一性、濃度を含む、医薬品の
最終規格への十分な一致について試験の判断を行うことを怠った。(21 CFR 211.165(a))
<指摘1詳細>
貴社は、貴社のOTC医薬品XXを販売のためにリリースする前に、各有効成分の同一性と濃度に関し、
試験を行うことを怠った。さらに貴社は、医薬品XXの承認された規格を持っていなかった。貴社
が製造した医薬品が意図した使用目的に適した予め定められた全ての品質属性に一致することを
保証するために、試験は不可欠である。貴社の医薬品の各ロットの適切な試験が欠けているため、
貴社の医薬品が全ての最終製品の規格に一致し、消費者へのリリースに適しているかどうか
わからない。
この文書への回答の中で、以下の情報を提供せよ:
・貴社の試験の業務、手順、方法、装置、文書、分析者の能力の包括的で独立したアセスメント
このレビュに基づき、貴社の試験システムの修正と、その効果の評価のための詳細な計画を
提出せよ。
・市場にある製品が適切な仕様に一致していることを保証するための計画
・ロットの処遇を判断する前に貴社の医薬品の各ロットを分析するための化学及び微生物試験
方法と規格のリストと、それに関する文書化された手順
●指摘2
貴社は、同一性、純度、濃度、品質に関する全ての文書化された規格への一致について、各成分
のサンプルを試験することを怠った。また貴社は、適切な間隔で成分の供給者をバリデートし、
分析試験の信頼性を確認することを怠った。(21 CFR 211.84(d)(1)と(2))
<指摘2詳細>
貴社は、貴社の医薬品XXの製造で使用する前に、有効成分ジメチコンと、ニームオイル、
カランジャオイル、ラベンダーを含む他の成分の試験することを怠った。また貴社は、同一性、
濃度、品質、純度について、有効成分及びその他の成分が適切な規格へ一致することを確認する
ための承認された規格も持っていなかった。貴社は、供給者から原材料と一緒に分析証明書を
受け取るが、最終製品の製造に使用する前に、受領時の同一性の確認を含む成分のロットの分析
を実施していなかった。また貴社は適切な間隔で成分の供給者の分析試験の信頼性の確認をせず
に、供給者の分析証明書を信頼した。
この文書への回答の中で、以下の情報を提供せよ:
・成分、容器、蓋の全ての供給者が適格性を評価され、原材料には適切な使用期限または
リテスト日が付与されているかどうかを判断するための、貴社の原材料システムの包括的で
独立したレビュ
レビュには、成分、容器、蓋の不適切な使用を防ぐための入荷原材料の管理が適切かどうか
も判断すべきである。
・製造で使用する成分の各ロットの試験とリリースに使用する化学及び微生物の品質管理の規格
・貴社が、いかに成分の各ロットの同一性、濃度、品質、純度に関する全ての規格への一致を
試験するかの説明
もし貴社が濃度、品質、純度に関して成分の各ロットの試験をする代わりに供給者の分析
証明書の結果を受け入れるつもりであれば、初期のバリデーションと定期的な再バリデー
ションを通じて、供給者の試験結果の信頼性をいかに確実に確認するつもりか明記せよ。
さらに、入荷した成分の各ロットについて、少なくとも1つの同一性試験を常に実施すると
いう約束を含めよ。
●指摘3
貴社は、貴社の医薬品の製造、加工、包装、保持に使用される、自動の機械的電子的装置または、
その他のコンピュータを含む装置の適切な性能を保証し、校正の確認や検査の文書化された記録
を保持するために設計され文書化されたプログラムに従って定期的に校正・検査・確認すること
を怠った。(21 CFR 211.68(a))
<指摘3詳細>
貴社は、貴社の医薬品XXを製造するためにXXを使用していた。貴社は、製造工程がロット毎に
制御されていることを保証するためにXXの温度制御機能の精度を校正または検証していなかった。
さらに貴社は医薬品の成分を計量するために使用していた秤の校正または適格性評価を怠った。
この文書への回答の中で、貴社の全ての製造装置が使用目的に合っていることを保証するための
評価結果を提供せよ。さらに、装置の慎重な作業の管理と監視を実施するための是正処置・予防
処置(CAPA)の計画を提出せよ。この計画は、とりわけ、装置の性能問題の迅速な検知、効果的な
修理の実施、適切な予防的メンテナンス計画の遵守、装置のタイムリーな技術的改善、継続的な
マネジメントレビュのためのシステムの改善を保証すべきである、
●指摘4
貴社は、ロット間の均一性を保証するために設計された製造指図書原本の準備のための文書化
された手順を制定し、それに従うことを怠った。また貴社は、製造された医薬品の各ロットの
製造と管理に関する完全な情報を含むロットの製造指図記録を準備することも怠った。
(21 CFR 211.186(a)と211.188)
<指摘4詳細>
貴社は、貴社の医薬品XXのための適切な製造指図書原本を準備していなかった。貴社のバッチ
レコードは、下記の内容が不足していた:
・製造指図書原本に従っているという承認の署名
・詳細の製造指示
・使用される装置の識別
・サンプリングの情報
・収率
さらに貴社は正当な理由や変更管理がない状態で製造工程にいくつかの変更を行った。例えば、
貴社は有効成分ジメチコンと、製造作業中に添加されるその他の成分(例:ニームオイル、
カランジャオイル、ラベンダー)の量を変更した。
適切なバッチレコードがなく、貴社は医薬品のロット間の均一性を保証することはできない。
この文書への回答の中で以下の情報を提供せよ:
・適切かつ承認済の製造指図書なしに、アメリカ市場に出荷された製品のリスクアセスメント
・製造記録が規定に従って完了し、製品の販売のためのリリース前に品質部門によりレビュ
されていることを保証するために実施または改訂された手順
・医薬品XXの改訂された製造指図書原本
●指摘5
貴社は、医薬品の製造、加工、包装、保持に従事する各職員がアサインされた機能を果たす
ことを可能にするために、教育や訓練され、経験を持っていることを保証することを怠った。
(21 CFR 211.25(a))
<指摘5詳細>
貴社は、全ての職員がCGMP作業を実施するために適格であることを保証することを怠った。
例えば、貴社の共同所有者は、医薬品XXの製剤の唯一の所有者で、工程の全ての知識を持ち、
全ての製造作業を実施したと述べた。しかし、貴社には、共同所有者がこれらの機能は実施
するための適切な経験を持ち、適切なCGMPの教育を受けているというエビデンスが不足して
いた。
訓練は職務の適切な遂行を保証するために不可欠である。
この文書への回答の中で、以下の情報を提供せよ:
・以下のことを保証するための訓練計画
〇職員の職務と訓練の必要性が確認され、職員の能力が安定しているかどうかをモニタ
するために継続的にレビュされていること
〇経営陣の責任と監督が定義されていること
〇職員が適用される全てのCGMPの要件の理解を維持していることを保証するために十分な頻度
で訓練が実施されていること
〇CGMPの機能を実施または監督する全ての職員が、CGMPについて適切に訓練され、貴社の作業
が医薬品の安全性、同一性、濃度、品質、純度を保証する方法で実施されていること
〇適格性のある個人が訓練を実施すること
〇職員の理解、訓練の効果を評価し、必要に応じて適切な修正が保証されているための規定が
実装されていること
・適切な訓練の欠如の販売される医薬品への影響の評価
●指摘6
貴社は、全ての成分、医薬品の容器、蓋、中間材料、包装材料、ラベル、医薬品を承認または
拒否する責任と権限を持った品質管理部門を制定することを怠った。(21 CFR 211.22(a))
<指摘6詳細>
貴社には品質部門(QU)と、QUの責任と管理を定義した文書化され承認された手順がない。さらに、
貴社は下記のための文書化された責任と手順を制定することを怠った。
・ロットのリリース
・製造工程
・試験の逸脱とCAPA
・苦情
・回収
・医薬品の返品と不合格品の取り扱い
この文書への回答の中で、貴社のQUが効果的に機能するための権限とリソースを与えられている
ことを保証するための包括的なアセスメントと改善計画を提出せよ。アセスメントには、これに
限定されないが以下のことを含めるべきである:
・貴社で使用されている手順が安定していてい適切かどうかの判断
・適切な手順の遵守を評価するための運用全体のQUの監督の規定
・QUがロットの処遇を判断する前の、各ロットとそれに関連する情報の完全で最終的なレビュ
・調査の監督と承認及び全ての製品の同一性、濃度、品質、純度を保証するために、QUのその他
の職務からの解放
●品質システム
貴社の品質システムは不十分である。CGMPの要件21 CFR 210及び 211を満たすために、品質
システムとリスクマネジメントのアプローチを実装するための助けとして
FDAのガイダンス文書Quality Systems Approach to Pharmaceutical CGMP Regulationsを
見よ。
●製造所の繰り返しの違反
2019年6月28日の先の査察で、FDAは同様のCGMPの査察結果を挙げた。これらの査察結果は、
2019年12月17日の規制会議でも貴社に通知された。
しかし、貴社の製品は、医薬品として販売され続け、2019年12月17日の規制会議に対応して
貴社がとった是正処置は不十分なままである。
さらに貴社は、我々の現在の査察所見に対する具体的な改善処置をとらず、CGMPの規制に従う
つもりかどうかも示さなかった。繰り返しの不具合は、経営陣の医薬品製造に対する監督や
管理が不十分であることを示している。
●CGMPコンサルタントの推奨
我々が貴社で発見した違反の性質と、貴社が繰り返しの違反の是正を怠っていることから、
我々は、CGMPの要件を満たすように貴社を支援するために21 CFR 211.34に記載されている
適格性のあるコンサルタントを雇うことを強く勧める。
貴社のコンサルタントの使用は、CGMPを順守するための貴社の義務を軽減するものではない。
貴社の経営陣には、継続的なCGMP順守を保証するために、全ての不備とシステムの欠陥を解決
する責任が残る。
●不正商標表示と登録/リスト作成の違反
省略
●医薬品の製造停止
貴社のOTC医薬品XXの製造を中止またはラベルを更新する場合、書面で我々に通知せよ。
もしこの製品の製造を継続するなら、貴社がいかにCGMP要件を満たすつもりか通知せよ。
●結論
この文書で挙げた違反は、貴社の製造所に存在する違反の包括的なリストでもない。貴社には、
違反を調査し、原因を判断し、再発やその他の違反の発生を防止する責任がある。
全ての違反を速やかに是正せよ。この問題への即座の適切な対処の不履行は、制限のない
差し押さえ、強制命令を含む、さらなる通知のない制限または法的なアクションにつながる
かもしれない。未解決の違反は、他の連邦機関の契約授与も妨げるかもしれない。
違反への対処の不履行は、FDAの輸出証明の発行の差し控えにもつながるかもしれない。全ての
違反に完全に対応がされ、我々が貴社のCGMPの遵守を確認するまで、FDAは貴社の医薬品製造業者
としての新しい申請やリストの補完の承認を保留するだろう。我々は、貴社が全ての違反に
対する是正処置を完了したことを確認するために再査察を行うかもしれない。
出典:
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まとめ
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初のオレンジレター、いかがでしたでしょうか。
定められた手順を守らないのも問題ですが、供給者が容器にメーカー名を表示するよう徹底
してもらうことも必要ではないでしょうか。
供給者との力関係で、供給者に依頼ができないといった話を聞くこともありますが、供給者が
納品物に品目NoやロットNoのQRコードを表示することで、受入側も入荷時にQRコードを読むこと
で、品目の取違いを防いだり、メーカーロットNoの転記の手間を省いたりできます。
このあたりは、業界全体で改善していけるとよいのですが。
それはさておき、オレンジレターは、ウォーニングレターに比べて具体的な対応策が書かれて
いてわかりやすく、職員の教育にも使えるものだと思いました。
☆次回は、6/15(水)に配信させていただきます。
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2022年7月13日~15日に、東京ビッグサイトにて開催されるインターフェックスジャパンへの出展
を予定しております。久々の東京ビッグサイトです!
ご来場される方は、是非、弊社ブース【西ホール1回 25-5】にもお立ち寄りいただければ幸いです。
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