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2022.04.15
【最近のウォーニングレター】ASTROM通信<240号>
こんにちは。
ASTROM通信担当の橋本奈央子です。
寒暖の差が激しいですが、いかがお過ごしですか。
さて今回は、FDAがアメリカ国外の製薬会社向けに出したウォーニングレター1件と、国内の製薬会社向け
に出したウォーニングレター1件を、FDAがどのような点を指摘したかを確認していきたいと思います。
是非、お読みいただければ幸いです。
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最近のウォーニングレターの概要
注:文中のXXはウォーニングレターでマスキングされている文言及び具体的な社名・品名等です。
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■Warning Letter 320-22-12■
ポーランドの製薬会社に対しFDAが2021年6月2日に記録及びその他の情報提供を依頼し、製薬会社から
提出された記録のレビュでみつかった重大なCGMP違反について発せられた2022年3月14日付ウォーニング
レターには、下記の指摘事項があげられています。
●指摘1
貴社は貴社が製造する医薬品が、それが持つとされる、または、持つと表示されている同一性、濃度、
品質、純度を持っていることを保証するために設計された製造・工程の管理のための文書化された手順
を制定し、それに従うことを怠った。
<指摘1詳細>
貴社は、貴社の製造工程が、それが持つとされる品質と安全性を持ったホメオパシー薬品を製造できる
ことを証明するための適切なプロセスバリデーションのデータなしに、アメリカにホメオパシー薬品の
クリームXXを販売した。
具体的には、貴社が提出した文書は、貴社が製造する医薬品がラベルに記載された濃度であることを
裏付けるものでない。製造記録及びXXの製品ラベルのレビュによれば、有効成分XXの濃度はXX%で、
およそXXとXXの間である。しかし、貴社が販売した製品のラベルはXXとなっている。これは、貴社が、
希釈物内でXXの差がある医薬品を製造しているか、または、活性濃度がラベルに表示されたものの
100,000,000倍であることを意味している。
さらに、XXのバリデーションプロトコルとバリデーション報告に関する我々の最初のリクエストに対し、
貴社はバリデーションプロトコルは存在しないと回答した。また、貴社が提出した文書は、成分XXに
ついて、製造記録に記録された温度(XX℃~XX℃)と、製造指図書内に記載されている温度範囲(XX℃~
XX℃)との間に矛盾があることを示している。
製造工程の各重要な手順は、中間材料と最終製品がその品質特性と規格を満たすことを保証するために
コントロールされていなければならない。バリデートされていない製造工程は、貴社の製品の濃度、
品質、純度が変化する可能性を増す。貴社の医薬品製造工程のバリデートの不履行は、貴社の最終製品
の有効成分がばらつく可能性があり、一貫性を保証できないことを意味している。
この文書への回答の中で以下の情報を提供せよ:
・製品のライフサイクルを通して管理状態を保証するための、関連手順も添えたバリデーションプログ
ラムの詳細なサマリ
工程の性能適格性評価(PPQ)と、継続的な管理状態を保証するためのロット内及びロット間のばらつき
の継続的なモニタリングに関する貴社のプログラムについて述べよ。
・販売されている貴社の各医薬品の適切なPPQの実施に関するタイムライン
・装置及び設備の適格性評価に関する貴社の工程性能プロトコルと文書化された手順
・継続的な管理状態を保証するためのロット内及びロット間の慎重なモニタリングを含む、貴社の各
製造工程の設計、バリデーション、維持、管理、モニタリングに関する詳細なプログラム
装置及び設備の適格性評価のためのプログラムも含めよ。
・ラベルに表示された内容が正確で、有効成分の濃度が一致していて、正しい桁数を示していることを
保証するための、各製品の工程のアセスメント
●指摘2
貴社は医薬品の各成分の同一性を検証するために少なくとも1つのテストを実施することを怠った。
<指摘2詳細>
貴社が提出した記録及び情報は、貴社は医薬品の各成分の同一性を検証するために少なくとも1つの
テストを実施していることを示していなかった。
例えば、成分の各ロットの同一性試験の情報に関する我々の最初のリクエストに対する貴社の回答は、
官能試験を実施しているか、供給者により提供された分析証明書(COA)に頼っていることを示している。
提出された文書は、貴社が、入荷した原材料について、特定の同一性試験を実施していないことを
示している。
貴社は、もし医薬品の製造に使用する前に各成分のロットの同一性を検証するために少なくとも1つの
テストを実施し、供給者の試験結果に関する適切なバリデーションを通して供給者の分析の信頼性を
確証するなら、品質特性について供給者のCOAを信頼することができる。
我々のリクエストの前後にアメリカに輸入された全ての医薬品について、この文書への回答の中で以下
の情報を提出せよ:
・製造に使用する目的で、入荷した成分の各ロットのテストとリリースのために貴社が使用している、
化学及び微生物学上の品質管理の規格
・各成分のロットが、同一性、濃度、品質、純度に関する全ての規格に一致することを、貴社がいかに
テストするつもりかの記述
もし貴社が各成分のロットの濃度、品質、純度に関するテストを実施する代わりに供給者のCOAの
結果を受け入れるつもりなら、初期のバリデーションと定期的な再バリデーションを通じて供給者
の結果の信頼性をいかに慎重に確証するつもりかを明記せよ。さらに、入荷した成分の各ロットに
ついて少なくとも1つの特定の同一性試験を常に実施するという約束を含めよ。
・各成分の製造業者から得たCOAの信頼性を評価するための、全ての成分の試験から得られた結果の
サマリ
このCOAのバリデーションプログラムを述べた貴社の標準操作手順を含めよ。
・貴社が製造した医薬品の試験をする契約施設の適格性評価と監督に関する貴社のプログラムのサマリ
・成分、容器、蓋の全ての供給者がそれぞれ適格性評価をされていて、原材料は適切な使用期限または
リテストの日付が付与されているかどうかを判断するための、貴社の原材料システムの包括的で独立
したレビュ
レビュは、不適切な成分、容器、蓋の使用を防ぐために入荷した原材料の管理が適切かどうかの判断
も含めるべきである。
・正しい有効成分が使用されていることを判断するための、貴社の医薬品の処方、製品ラベル、製造
記録の包括的なレビュ
●指摘3
貴社は、各医薬品のロットの製造、加工、包装、保持の各重要な手順の実施記録を含む、製造指図記録
書を作成することを怠った。
<指摘3詳細>
我々の記録のリクエストに応じて貴社が提出したバッチレコードは、これに限定されないが、医薬品
の製造作業における、主要な装置の同一性、各重要手順の実施時間、ロットの製造の合計時間、各重要
手順を実施した職員の特定を含む製造の詳細が不足していた。この文書は、製造工程が一貫して手順を
順守し、再現可能であることを確証するために必要である。不完全な記録は、調査のために必要な
アクションのトレーサビリティを奪う。
この文書への回答の中で以下の情報を提供せよ:
・貴社の医薬品の重要なバリデートされた各製造手順を完全に記録していることを示すための、製造
指図記録書の原本
・文書化手順の不十分な場所を特定するための、貴社が製造作業を通じて使用している文書化システム
の完全なアセスメント
貴社が作業を通して、帰属可能で、判読可能で、完全で、原本性があり、正確で、同時性のある記録
を保持していることを保証するために、貴社の文書化手順を包括的に改善する詳細なCAPAの計画を
含めよ。
●指摘4
貴社は、成分、製品の容器、蓋、工程内原料、ラベル、製品が同一性、濃度、品質、純度の適切な標準
に一致していることを保証するために設計された、科学的に正当で適切な規格、標準、サンプリング
計画、試験手順を含む試験室の管理を制定することを怠った。
<指摘4詳細>
アメリカに出荷したロットに関して貴社が提出したCOAのレビュで、貴社がXXの微生物試験に関する
適切な規格を制定することを怠っていたことが判明した。貴社のCOAは、アメリカ薬局方の一般章
<61>「非滅菌製品の微生物試験」またはそれと同等のバリデートされた方法に従って、好気性菌の
総菌数に関する試験をしていることを示していない。さらに、COA内で規定されている酵母とカビに
関するXX CFU/gの上限に関する正当性はない。21 CFR 211.160(b)のもとで、試験の管理には、
最終製品が同一性、濃度、品質、純度の適切な規格に従うことを保証するために、科学的に妥当で
適切な規格の制定が含まれなければならない。製品のラベルにはXXの使用を示しているので、好気性
菌の総菌数や、酵母とカビの数に関する科学的に妥当で適切な規格を制定することが重要である。
この文書への回答の中で、以下の情報を提供せよ:
・最終製品試験の妥当性を保証するための包括的で独立したアセスメントとCAPAの計画
貴社の改善されたプログラムには、これに限定されないが、USP抄録モノグラフの規格を使用する
というコミットメントも含めるべきである。
・ロットの処遇の判断する前に貴社の製品の各ロットを分析するために使用される試験方法を含む、
微生物の規格のリスト
〇この文書の日付時点で使用期限内にあるアメリカに出荷された製品の全てのロットの品質を判断
するための、全ての保管サンプルの微生物試験の実施に関するアクションプランとタイムライン
〇各ロットの保管サンプルの試験から得られた全ての結果のサマリ
もしそれらの試験で、基準を満たしていない品質の製品が明らかになった場合、顧客への通知
や製品の回収のような迅速な是正処置をとれ。
・貴社の試験の業務、手順、方法、装置、文書、分析者の能力の包括的で独立したアセスメント
このレビュに基づき、貴社の試験システムの改善と効果の評価の詳細な計画を提出せよ。
●プロセスバリデーション
貴社にはプロセスバリデーションプログラムがない。プロセスバリデーションは、そのライフサイ
クルを通じて工程の設計と管理状態の正当性を評価するものである。製造工程の各重要な手順は、
適切に設計され、投入する原材料、工程内原料、最終製品の品質を保証しなければならない。工程
の適格性評価は、初期の管理状態が確立されているかどうかを判断する。
商用の出荷の前に、工程の適格性評価を成功させる必要がある。その後、製品のライフサイクルを
通じて貴社が安定した製造作業を維持していることを保証するために、工程の性能と製品の品質の
継続的で慎重な監視が必要である。
●プロセス管理
貴社は、安定した製造作業と一貫した製品品質を保証するための工程管理のモニタリングに関する
適切で継続的なプログラムを持っていない。
FDAがプロセスバリデーションの適切な要素と考える一般原則とアプローチに関し、
FDAのガイダンス文書Process Validation : General Principlesを見よ。
●CGMPコンサルタントの推奨
我々が貴社で発見した違反の性質に基づき、もし貴社がアメリカ市場向け医薬品の製造を続ける
つもりであれば、CGMPの要件を満たすように貴社を支援するために、21 CFR 211.34に規定された
適格性のあるコンサルタントを雇うことを強く勧める。また我々は、貴社がFDAと共に貴社の
コンプライアンス状態の解決を達成しようとする前に、適格なコンサルタントが貴社のCGMP遵守
に関し貴社の全ての作業の包括的な監査を実施し、貴社の是正処置・予防処置の完了と効果を評価
することを勧める。
貴社のコンサルタントの使用は、CGMPを順守するための貴社の義務を軽減するものではない。貴社
の経営陣には、継続的なCGMP順守を保証するために、全ての不備とシステムの欠陥を解決する責任
が残る。
●結論
この文書で挙げた違反は、貴社の製造所に存在する違反の包括的なリストでもない。貴社には、
違反を調査し、原因を判断し、再発やその他の違反の発生を防止する責任がある。
FDAは2022年3月4日に輸入警告措置66-40をとった。全ての逸脱に完全に対応され、我々が貴社の
CGMPの遵守を確認するまで、FDAは貴社の製造業者としての新薬の申請やリストの補完の承認を
保留するだろう。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
■CMS#619450■
2021年8月24日~8月31日のカリフォルニア州の製造所の査察でみつかった医薬品製造の重大な
CGMP違反について発した2022年2月24日付ウォーニングレターには、下記の指摘事項があげられて
います。
●指摘1
貴社は、そのロットが既に出荷されたかどうかに関わらず、その規格を満たすために、ロット
またはその成分の説明のつかない不一致や不具合を徹底的に調査することを怠った。
<指摘1詳細>
貴社は規格外(OOS)を適切に調査しなかった。具体的には、貴社は分析でOOSの結果になった複数
のOTC医薬品のサンプルの新しい試験標本を準備した。オリジナルの試験結果を確認するために
最初に不合格になった結果の適切な調査をせずにOTC医薬品の新しいサンプルを準備して試験する
貴社の手順は科学的な正当性がない。また、XXのOOSの調査は、OOSの結果の根本原因を判断する
ための適切な指示が不足している。貴社の手順は、試験室の職員のXXを認めている。XXに科学的
な正当性はない。
貴社は回答の中で、オリジナルの結果を確認するためにオリジナルのサンプルの再試験を実施
する指示を含むOOSの調査に関する貴社の標準操作手順を改訂したと述べた。また貴社は、貴社の
OOSの調査にはいつもXXが含まれていると述べた。しかし、貴社のOOSの調査レポートにXXは
含まれていなかった。さらに、貴社は、XXを含むように、貴社のOOSの手順とOOSの調査レポート
を改訂したと述べた。
貴社は全てのOOSの結果を完全に確定し、徹底的に調査したことを保証するためのXXの回顧的な
レビュを提出しなかったので、貴社の回答は不十分である。貴社の改訂されたOOSの手順は、
OOSの結果がいつ無効化できるかに関し、変更されていないままである。さらに、査察時点で、
貴社の現在のOOSの手順もOOSの調査レポートも、オリジナルのサンプル標本XXのXXを評価して
いない。
不合格、規格外、傾向外またはその他の予期しない結果と貴社の調査の文書化のより詳細な
情報については、
FDAのガイダンス文書Investigating Out0of-Specification(OOS) Test Results for Pharmaceutical Productionを見よ。
この文書への回答の中で以下の情報を提供せよ:
・過去3年間に実施された製品試験について、全ての無効化されたOOS(リリース試験及び安定性
試験を含む)の結果の回顧的で独立したレビュと、各OOSについて以下のことを含む、分析結果
を要約したレポート:
〇全ての無効化されたOOSの結果に関する科学的な正当化の理由と証拠が、決定的に、または、
決定的ではない状態で、原因となる試験の誤りを示しているかどうか判断せよ。
〇決定的に試験の根本原因を確証した調査に関し、論理的根拠を提出し、同じまたは類似の
根本原因に対して脆弱な他の全ての試験方法が改善のために特定されていることを保証せよ。
〇回顧的なレビュにより、試験で根本原因が非決定的または根本原因がないとわかった全ての
OOSの結果に関し、顧客に送られた通知を含めよ。
・貴社のOOSの結果の調査システムの包括的なレビュと改善計画
これに限定されないが、以下のことを、是正処置・予防処置(CAPA)に含めるべきである:
〇試験室の調査の品質部門の監督
〇有害な試験管理の傾向の特定
〇試験のばらつきの原因の解決
〇各調査とそのCAPAの適切な範囲の決定
〇これら及びその他の改善を含む改訂されたOOS
●指摘2
貴社は、試験方法の正確性、感度、特異性、再現性を確証し文書化することを怠った。
<指摘2詳細>
貴社はOTC医薬品を分析するために使用されている化学及び微生物の試験方法が意図した使用目的
に適していることを保証するための方法の検証を実施することを怠った。例えば貴社は、さまざまな
処方の異なる医薬品に含まれる有効成分XXについて、同じ分析試験方法を用いた。また、貴社は、
各医薬品に対する方法の適合性の検証をせずに、抄録の試験方法を使って、微生物の存在に関し、
さまざまな医薬品の試験をした。
貴社の回答は不十分である。貴社は、貴社の試験方法で生成されたデータが正確であるという保証を
提出しなかった。試験方法の検証を終えるために貴社が提出したタイムフレームは適切ではない。
この文書への回答の中で、以下の情報を提供せよ:
・試験方法の適合性を判断するための化学及び微生物に関する医薬品の試験方法の包括的で独立した
アセスメント(すなわち、顧客のために実施する分析方法の検証またはバリデーション)
もし検証またはバリデーションが必要な場合、適切な活動を完了するための計画とタイムラインと、
結果を顧客に通知するという約束を提出せよ。
・全ての試験方法の適合性がどのように決定されるか、方法の検証とバリデーションがいつ行われる
かを文書化した改訂された手順と、それに対応した教育記録
●指摘3
貴社は、権限を与えられた職員のみが製造指図記録書原本またはその他の記録の変更を行えることを
保証するために、コンピュータ及び関連システムの適切な管理を行うことを怠った。
<指摘3詳細>
貴社が医薬品の製造結果の記録を生成するための電子データシステムは適切な管理が不足している。
貴社のシステムに、データの削除を防止し、データへの全ての変更を記録するための適切な管理が
行われているという保証がない。例えば、医薬品の同一性試験に使用されている貴社のXXシステム
で生成された電子データファイルは、削除されるおそれがある。さらに、貴社のOTC医薬品内の
活性物質を試験するための高速液体クロマトグラフィーとガスクロマトグラフィーのシステムを
管理するXXには、重要な変更を記録するための全ての適切な監査証跡がなかった。
貴社は回答の中で、装置とソフトウエアの製造業者に連絡し、データの削除を防ぐために必要な
管理を実装するためのガイダンスを要求したと述べた。貴社は、何のデータが削除され、それに
よる貴社が試験した医薬品への影響を判断するためのデータシステムのアセスメントを提出しな
かったので、貴社の回答は不十分である。さらに、貴社は貴社のソフトウエアシステムに更新を
適用する間の、適切な暫定手段を講じることを怠った。
この文書への回答の中で、以下の情報を提供せよ:
・文書化手順のどこが不十分かを判断するための、貴社の試験室の試験作業に使用されている
文書化システム(紙及び電子)の完全なアセスメント
貴社が、貴社の作業を通じて、帰属可能で、判読可能で、完全で、原本性があり、正確で、
同時性のある記録を保持していることを保証するために、貴社の文書化手順を包括的に修正する
詳細なCAPAの計画を含めよ。
・適用可能な電子試験データシステムの監査証跡を有効にするためのアクションプランとタイム
ライン
また、暫定的な管理について述べ、全ての監査証跡のレビュのために、いつ手順が実装される
かを明記せよ。
●契約試験機関の責任
FDAは、請負業者を製造業者自身の施設の拡張とみなす。貴社のCGMP遵守の不履行は、顧客のため
に貴社が試験した医薬品の品質、安全性、有効性に影響を与える可能性がある。
貴社がCGMPを完全に遵守して活動する責任を理解し、医薬品の試験中に見つかった全ての規格外
の結果や重大な問題を全ての顧客に通知することは不可欠である。
●CGMPコンサルタントの推奨
我々が貴社で発見した違反の性質に基づき、CGMPの要件を満たすように貴社を支援するために、
21 CFR 211.34に規定された適格性のあるコンサルタントを雇うことを我々は強く勧める。
貴社のコンサルタントの使用は、CGMPを順守するための貴社の義務を軽減するものではない。
貴社の経営陣には、継続的なCGMP順守を保証するために、全ての不備とシステムの欠陥を解決する
責任が残る。
●結論
この文書で挙げた違反は、貴社の製造所に存在する違反の包括的なリストでもない。貴社には、
違反を調査し、原因を判断し、再発やその他の違反の発生を防止する責任がある。
全ての違反を速やかに是正せよ。この問題への即座の適切な対処の不履行は、制限のない差し
押さえ、強制命令を含む、さらなる通知のない制限または法的なアクションにつながるかもしれ
ない。未解決の違反は、他の連邦機関の契約授与も妨げるかもしれない。
違反への対処の不履行は、FDAの輸出証明の発行の差し控えにもつながるかもしれない。全ての
違反に完全に対応がされ、我々が貴社のCGMPの遵守を確認するまで、FDAは貴社の医薬品製造業者
としての新しい申請やリストの補完の承認を保留するだろう。我々は、貴社が全ての違反に対する
是正処置を完了したことを確認するために再査察を行うかもしれない。
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まとめ
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いかがでしたでしょうか。
指摘の中には、実際の濃度がラベルの表示の100,000,000倍だったというような、びっくりする
内容もありましたが、今回取り上げた2通の両方に、データ・インテグリティに関する指摘が含まれ
ていたことが印象的でした。
耳にタコが出来そうなデータ・インテグリティですが、この機会に今一度、データ・インテグリティ
の基本要件であるALCOAが遵守できているかについて確認してみるのもよいのではないでしょうか。
<ALCOA>
A:Attributable 帰属性
L:Legible 判読性
C:Contemporaneous 同時性
O:Original 原本性
A:Accurate 正確性
※データ・インテグリティは、電子記録はもちろん、紙の記録にも求められているので、注意が
必要です。
☆次回は、5/1(日)に配信させていただきます。
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【発行責任者】
株式会社プロス
『ASTROM通信』担当 橋本奈央子
2022.04.01
【最近のウォーニングレター】ASTROM通信<239号>
こんにちは。
ASTROM通信担当の橋本奈央子です。
今年も桜の季節になりましたが、いかがお過ごしでいらっしゃいますか。
さて今回は、FDAがアメリカ国内の製薬会社向けに出したウォーニングレター2件を取り上げ、FDAが
どのような点を指摘したかを確認していきたいと思います。
アメリカ国内向けの指摘ではありますが、GMP査察のチェックポイントという点で参考にしていただ
ければ幸いです。
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最近のウォーニングレターの概要
注:文中のXXはウォーニングレターでマスキングされている文言及び具体的な社名・品名等です。
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■CMS#616877■
2021年6月23日~7月1日のカリフォルニア州の製造所の査察でみつかった医薬品製造の重大なCGMP
違反について発した2021年12月29日付ウォーニングレターには、下記の指摘事項があげられています。
●指摘1
貴社は、返品された医薬品が再出荷の前に、安全性、同一性、濃度、品質、純度の適切な基準を
満たすことを保証するのを怠った。
<指摘1詳細>
貴社の、返品された医薬品の再出荷前の取り扱いは不適切である。例えば査察中、貴社は、返品
された医薬品が返品前及び再出荷前における、保持、保管または出荷された状態のラベルを確認する
検査・調査の文書を提出できなかった。さらに貴社は返品された製品の安全性・同一性・濃度・
品質・純度を保証するための適切な試験を実施することを怠った。製品が不適切な保管状態にさら
されていたかもしれない後で、官能検査だけでは、その安全性・同一性・濃度・純度・品質を保持
していることを保証するのには不十分である。
再出荷前に貴社は返品された複数のロットのカプセルを新しいロット番号を持つ新しいロットに結合
した。これらの新しいロットは、3年以内に使用期限切れになるカプセルを含み、均一の特性と品質
を持っていなかった。しかし貴社は、これらの結合されたロットに新しいロット番号を割り当て、
さらに3年間の使用期間を与えた。新しい使用期限は、安定性のデータにより裏付けされていないし、
ある場合は、返品された製品の18ヶ月の使用期限を超えていた。貴社のバッチレコードは、再出荷前
にこれらの結合されたロットに対して貴社が実施した試験を示していなかった。
返品前の状態が不明の製品に官能試験を実施し、返品されたさまざまなロット番号と使用期限を
持った製品を結合してロットを作成し、返品された製品の使用期限に関わらず新しい使用期限を
与える貴社の業務は受け入れられない。
この文書への回答の中で以下の情報を提供せよ:
・返品された医薬品の再出荷のための取扱いや処理の適切性を保証するための包括的で独立した
アセスメントと改善計画
これに限定されないが、以下のことに含む、詳細なアクションプランとそれに関連する手順を提出
せよ:
〇返品された製品が返品前・返品中・返品後に保持・保管・出荷された状態、返品の理由、返品数、
処分の日、医薬品の品質に関して疑いがある場合を含む最終的な処分の手順
〇返品された製品の、保持・保管・出荷の状態が医薬品の安全性、同一性、濃度、品質、純度に
悪い影響を与えなかったことを保証するための手順
・アメリカに再出荷されたロットに関連する、顧客への通知や回収の可能性も含む、品質リスクに
対応するためのアクションプランを提出せよ。
●指摘2
貴社は、貴社が製造した医薬品が、それが持つまたは持つと表示されている同一性、濃度、品質、
純度を持っていることを保証するために設計された製造や工程管理に関する文書化された手順を
制定するのを怠り、貴社の品質管理部門は変更を含むこれらの手順をレビュし承認しなかった。
<指摘2詳細>
貴社は、貴社のOTC医薬品XXを製造するのに使用される工程を適切にバリデートしていなかった。
貴社は2017年12月に、複数の成分の廃止を含む、XXの製法の変更を行った。貴社はプロセスバリ
デーションのプロトコルと、関連する分析試験レポートを、それぞれ、1年後の2018年11月及び
12月まで発行しなかった。さらに、2018年11月のバリデーションプロトコルの裏付けをする
2014年10月21日付の唯一のデータは、以前の製法の試験で、現在の製法を反映していない。
2017年12月の製法変更以来、貴社はアメリカ向けに、少なくともXXロットの不十分なプロセス
バリデーションデータを持った医薬品を製造し出荷した。
貴社は回答の中で、プロセスバリデーションのための新しい標準操作手順(SOP)を作り、プロセス
バリデーションの検証結果を文書化しレビュするつもりであると述べた。さらに、貴社は2021年
8月の最初のプロセスバリデーションの製造を開始するつもりであると述べた。
プロセスバリデーションの検証実施の不履行は、製品の品質特性の不具合につながる可能性が
あるので、貴社の回答は不適切である。貴社は、貴社の製造工程が再現可能で均一な性質と品質
を持つ製品を生産するために管理されていることを適切に示していないならば、医薬品の製造を
続ける正当な理由を示すことにも対処していない。
この文書への回答の中で以下の情報を提供せよ:
・製品のライフサイクルを通して、関連する手順も含めた管理状態を保証するための貴社の
バリデーションプログラムの詳細なサマリ
貴社の工程性能適格性評価に関するプログラム、継続的な管理状態を保証するためのロット内
及びロット間のばらつきの継続的なモニタリングについて述べよ。
・貴社が販売している製品の、適切な工程性能適格性評価の実施に関するタイムライン
・継続的な管理状態を保証するための、ロット内及びロット間のばらつきの慎重な監視を含む、
貴社の製造工程の設計、バリデーション、維持、管理、モニタリングに関する詳細なプログラム
を提出せよ。
また、貴社の装置及び設備の適格性評価に関するプログラムも含めよ。
・製造工程等のばらつきの全ての原因を特定し管理する、データ駆動型で科学的に合理的な
プログラムがあり、適切な規格と製品の標準を一貫して満たすことを保証するための、各医薬品
の工程のアセスメント
アセスメントは、これに限定されないが、装置の使用目的への適合性、貴社のモニタリング及び
試験システムの検知能力の十分性、投入原材料の品質、製造工程の手順と管理の信頼性の評価を
含めよ。
・貴社の変更管理システムの包括的で独立したアセスメント
このアセスメントはこれに限定されないが、変更が理にかなっていて、レビュされ、品質部門
(QU)に承認されていることを保証するための貴社の手順を含めるべきである。貴社の変更管理
プログラムは、変更の有効性を判断するための規定も含めるべきである。
プロセスバリデーションは、そのライフサイクルを通して工程の設計と管理状態の妥当性を評価
するものである。製造工程の重要な各段階は、適切に設計され、投入する原材料、工程原料、
最終製品の品質を保証していなければならない。工程の適格性評価の検証は、初期の管理状態が
確立されているかどうかを判断するものである。
上首尾の性能適格性評価は、商用の出荷前に必要である。その後、製品のライフサイクルと通じて、
貴社が安定した製造作業を維持していることを保証するために、工程性能と製品品質の継続的で
慎重な監視が必要である。
FDAがプロセスバリデーションの適切な要素とみなす一般的な原則とアプローチについて、
FDAのガイダンス文書Process Validation : General Principles and Practicesを見よ。
●指摘3
貴社は、試験方法の正確性、感度、特異性、再現性を立証し文書化することを怠った。
<指摘3詳細>
貴社は、製品XXのリリースの規格に使用されている分析方法を適切にバリデートしていなかった。
具体的には、貴社の最終製品の規格で示されている通り、規格毎に、XXの波長で、分析光度計を
用いた方法XXが実施されていることになっているが、バリデーションレポート内のデータによれば、
貴社はXXの波長を使用していた。さらに、分析方法のバリデーションレポートは、システムの
適合性も、変更した方法が目的に合っていることも示していなかった。
貴社は回答の中で、分析方法のバリデーションは、正しい波長で実施されたと述べた。貴社の回答
は以下の点で不適切である。
・分析方法のバリデーションが正しい波長で実施されたという貴社の主張を裏付ける文書に欠けて
いた。
・適切にバリデートされていないし、現在市場にある医薬品の販売継続の正当な理由も示して
いない分析方法を使ってリリースされた製品のリスクアセスメントを提出しなかった。
この文書への回答の中で、以下の情報を提供せよ:
・貴社の試験の業務、手順、方法、装置、文書、分析者の能力の包括的で独立したアセスメント
このレビュに基づき、貴社の試験システムを改善し効果を評価する詳細な計画を提出せよ。
・全ての試験方法が適切にバリデートされ、意図した使用目的に合っていることを保証するため
の包括的で独立したアセスメント
・医薬品が製品の規格に従っていることを保証するために、現在市場にある全ての医薬品の保管
サンプルの、バリデートされた試験方法を使った回顧的なアセスメント
・データを記録するために使用された、管理されていない文書(例:法定の紙)から得たデータの
完全性、一貫性、正確性のレビュ
・貴社の製品に適用可能な簡便法のレビュ
バリデーション方法に関する一般原則とアプローチに関し、
FDAのガイダンス文書Q2(R1) Validation of Analytical Procedure and Analytical Procedures and Methods Validation for Drugs and Biologics
を参照せよ。
●指摘4
貴社は、医薬品の安定性を評価し、保管条件と使用期限を決定するために安定性試験の結果を使用
するよう設計された文書化された試験プログラムに従うことを怠った。
<指摘4詳細>
貴社の安定性プログラム不適切である。具体的には、貴社は、製品XXのXXだけ安定性試験を実施し、
少なくとも2017年9月以降、安定性試験の実施を怠った。さらに貴社は新しい製法を使って製造された
製品に関する安定性データを持っていなかった。従って、この医薬品のXXの使用期限を実証するため
の安定性データが不足している。
貴社は回答の中で、安定性の検証の実施が遅れているのは、QUのリソースが限られているためで
あると述べた。貴社は、医薬品の使用期限を決定するために、長期の継続的な安定性試験XXと、
加速安定性試験を開始するつもりであると述べた。
貴社は、2013年の査察以来、貴社の安定性プログラムが不十分であることに気付いているので、
貴社の回答は不十分である。その後の2015年、2018年、2021年の査察で、貴社の安定性プログラム
において、同一または類似の査察結果があった。貴社の回答は、貴社が安定性プログラムを改善
するために、2013年から現在の査察の間で貴社が実施したことに関する情報が欠けていた。
この文書への回答の中で、以下の情報を提供せよ:
・貴社の安定性プログラムの妥当性を保証するための、包括的なアセスメントと是正処置・予防
処置(CAPA)の計画
貴社のCAPAの計画には、これに限定されないが以下のことを含むべきである:
〇安定性を示す方法
〇出荷が許可される前の、販売されている容器密閉システムにおける各医薬品の安定性の研究
〇使用期間が妥当であるかどうかを判断するために、毎年各製品の代表的なロットがプログラム
に追加されるような継続的なプログラム
〇各段階(タイムポイント)で試験される特性の詳細な定義
・改善された安定性プログラムの、これら及びその他の要素を説明する全ての手順
安定性試験の一般原則とアプローチに関し、
FDAのガイダンス文書Q1A(R2) Stability Testing of New Drug Substances and Products
を参照せよ。
●指摘5
貴社の品質管理部門は、全ての手順や、医薬品の同一性・濃度・品質・純度に影響を与える規格の
承認や拒絶をすることを怠った。
<指摘5詳細>
貴社は、貴社の製品の安全性・同一性・濃度・品質・純度に影響を与えるかもしれない全ての手順
を制定しレビュし承認することを怠った。具体的に、貴社のQUは医薬品を製造するために使用される
装置を操作するためのSOPなど、医薬品の品質を保証するために重要なSOPを実装することを怠った。
貴社は回答の中で、該当するSOPを作成・改訂するつもりであると述べた。貴社は、裏付け文書(例:
SOPのドラフト、教育)を提出することを怠ったので、貴社の回答は不十分である。さらに、2012年、
2013年、2018年の査察における繰り返しまたは類似の査察結果に対して同様の回答をした。従って、
貴社の是正処置が実装されるという保証がない。
この文書への回答の中で、以下の情報を提供せよ:
・品質部門が効果的に機能するための権限とリソースを与えられていることを保証するための包括的
なアセスメントと改善計画
アセスメントには、これに限定されないが以下のこともふくむべきである:
〇貴社で使用されている手順が安定していて適切であるかどうかの判断
〇適切な手順の順守を評価するための、QUによる、貴社の作業全体の監督の規定
〇QUの出荷判定前の、ロット及び関連する情報の完全で最終的なレビュ
〇調査の監督と承認及び全ての製品の同一性、濃度、品質、純度を保証するためのQUのその他の
職務からの解放
・文書化手順の不十分な場所を判断するための、貴社の製造及び試験の作業を通じて使用される
文書化システムの完全なアセスメント
貴社が作業を通して、帰属可能で、判読可能で、完全で、原本性があり、正確で、同時性のある
記録を保持していることを保証するために、貴社の文書化手順を包括的に改善する詳細なCAPAの
計画を含めよ。
・アメリカに販売された貴社の医薬品に関する、製品の品質や患者の安全性のリスクに対応する
ための、顧客への通知や回収の可能性も含むアクションプラン
一般原則とアプローチに関し、
FDAのガイダンス文書:Quality Systems Approach to Pharmaceutical CGMP Regulationsを参照せよ。
●品質部門の権限
貴社の査察の履歴とこの文書内の重要な調査結果は、貴社のQUがその権限・責任を完全に果たして
いないことを示している。貴社は、その責任を果たし医薬品の品質を一貫して保証するために、
QUに適切な権限と十分なリソースを提供しなければならない。
●設備での繰り返しの査察結果
2018年に実施された先の査察で、FDAは同様のCGMPの査察結果を挙げた。貴社は、回答の中で、
これらの査察結果に対する具体的な改善を提案した。繰り返される不具合は、経営陣の医薬品製造
の監督と管理が不十分であることを示している。
●CGMPコンサルタントの推奨
我々が貴社で発見した違反の性質に基づき、我々は、CGMPの要件を満たすように貴社を支援する
ために21 CFR 211.34に記載されている適格性のあるコンサルタントを雇うことを強く勧める。
我々は、適格性のあるコンサルタントが、CGMP遵守に関し貴社の全ての作業を包括的に監査し、
貴社のコンプライアンス状態の解決をFDAと追求する前に、貴社のCAPAの完了と効果を評価する
ことも勧める。
貴社のコンサルタントの使用は、CGMPを順守するための貴社の義務を軽減するものではない。
貴社の経営陣には、継続的なCGMP順守を保証するために、全ての不備とシステムの欠陥を解決する
責任が残る。
●結論
この文書で挙げた違反は、貴社の製造所に存在する違反の包括的なリストでもない。貴社には、
違反を調査し、原因を判断し、再発やその他の違反の発生を防止する責任がある。
全ての違反を速やかに是正せよ。この問題への即座の適切な対処の不履行は、制限のない差し
押さえ、強制命令を含む、さらなる通知のない制限または法的なアクションにつながるかもしれ
ない。未解決の違反は、他の連邦機関の契約授与も妨げるかもしれない。
違反への対処の不履行は、FDAの輸出証明の発行の差し控えにもつながるかもしれない。全ての
違反に完全に対応がされ、我々が貴社のCGMPの遵守を確認するまで、FDAは貴社の医薬品製造
業者としての新しい申請やリストの補完の承認を保留するだろう。我々は、貴社が全ての違反に
対する是正処置を完了したことを確認するために再査察を行うかもしれない。
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■CMS#617201■
2021年5月5日~5月7日、5月10日、5月13日~5月14日、5月18日、5月21日、5月24日~5月28日、
6月3日、6月9日~6月10日、6月23日のニューヨーク州の製造所の査察でみつかった医薬品製造
の重大なCGMP違反について発した2022年1月7日付ウォーニングレターには、下記の指摘事項が
あげられています。
●指摘
貴社は、そのロットが既に出荷されたかどうかに関わらず、その規格を満たすために、ロット
またはその成分の説明のつかない不一致や不具合を徹底的に調査することを怠った。
<指摘詳細>
貴社の規格外(OOS)の試験結果の調査は不十分であった。貴社は、OOSの結果をタイムリーな方法
で調査し、適切に根本原因を特定し、影響を受けた可能性のあるロットに調査を拡大し、是正
処置・予防処置(CAPA)を実施し、CAPAの効果を評価することを怠った。
A.2020年2月6日、医薬品XXロット12000124のクロルヘキシジングルコン酸塩(CHG)の分析試験結果
について、調査OOS20-0032-NYが開始された。
報告されたCHGの割合は1.57%だった。
貴社の品質部門(QU)は、分析者がサンプルの調製に使用したガラス器具を保持していなかった
ため、適切な裏付けのエビデンスなしに、OOSの結果をピペット操作のエラーまたは誤った希釈
のせいにした。さらに、貴社は、元のサンプルXXでなく、XXのサンプルを再試験した。貴社は、
製造工程のレビュをするための調査XXを開始することを怠り、CAPAを開始しなかった。ロットXX
は再試験の合格結果をもとにリリースされた。
B.2020年3月19日、医薬品XXロット11900228ESのCHGに関する調査OOS2-0099-NYが開始された。
2020年3月25日、貴社は、オリジナルのサンプルの貯蔵液のXXをXXし、XXとXXの2つの追加の
OOSの結果を報告した。貴社の試験の調査は、OOSの結果に関し、理由とする試験の根本原因を
文書化しなかった。貴社は約XXのXXを再試験した。これらのXXの結果は規格内だった。
2020年7月17日、貴社のQUは、最初のOOSの結果が得られた約4か月後この調査を完了にした。
貴社は裏付ける証拠もなく、最初のOOSの結果は、分析者とHPLCの機器の中の分析のばらつき
によると結論づけた。また、同じHPLCの装置を使って分析されたその他のロットのアセスメント
を実施しなかった。貴社は、製造工程をレビュするためのXXの調査を開始することを怠り、
CAPAを開始せず、その他のロットが影響を受けたかどうか判断しなかった。
C.OOSの結果が得られた後、医薬品XXロット11800257JSに関する調査OOS20-0210-NYが開始された。
2020年3月19日、貴社は、CHGの分析に関し、誤った合格の分析値XX(規格XX)を報告した。XXに、
貴社の品質管理部門は試験結果をレビュし、試験結果XXは誤って計算され、その結果はOOSで、
XXと判断されているべきであった。
2020年6月19日にOOSの調査が開始された。貴社は根本原因を分析者によりされた計算エラーの
せいにした。2020年6月23日と2020年8月12日に、新しいサンプルが試験され、合格の結果が
得られた。貴社は最初のOOSの結果を無効にし、先延ばしの説明もなしに、OOSの調査が開始
された2か月の2020年8月19日に調査を完了にした。貴社は、製造工程をレビュするためにXXの
調査を開始することを怠り、CAPAを開始せず、その他のロットが影響を受けたかどうか判断
しなかった。
さらに、2021年7月16日に当局に提出されたNDA21524に関する年次レポートの我々によるレビュ
で、貴社がXXの間隔でXXの結果を合格と不正確に報告しているのがみつかった。
FAR(Field Alert Report:患者の健康を守るために、販売されている医薬品に関して問題が
ある場合、FDAに提供するレポート)も年次レポートの修正も当局に提出されなかった。
貴社が実施した3つの調査全てにおいて、科学的に正当な理由もなく、分析エラーがもともとの
OOSに関し、最も可能性の高い根本原因とされた。貴社は調査の結論で、製品開発、製造のバリ
デーション、前に得られた不合格の結果、分析試験方法の包括的な評価を含むXXの製造のレビュ
やCAPAを開始することを怠った。
貴社の回答は不十分である。貴社は、可能性のある根本原因を示したが、試験のエラーが発生
していたという貴社の結論を裏付ける科学的なエビデンスに欠けていた。貴社は、適切なCAPAを
開始することも怠った。リリース試験に関してOOSの結果があったロットが再試験の合格の結果
に基づきリリースされた。
OOSのロットの安定性のタイムポイントに関し、出荷された他のロットが不具合に関連している
かどうかを判断する評価もなかった。さらに貴社の回答は、OOSの結果が不適切に無効化されたか
どうかの評価をしていなかった。(2019年5月5日から2021年5月4日に、およそ78のOOSの結果の
うち約55が無効化された)
我々は、OOSの試験結果XXの調査に関連する標準操作手順(SOP)を改訂している貴社の努力を認識
している。しかし、改訂されたSOP XXの9版には不備が残っている。手順は、OOS XXの調査が、
いかに、そして、いつ開始されるべきかが明確ではなく、試験のエラーにより無効化されたOOS
の結果が明確なエビデンスのみに基づくことを保証していない。
また、貴社の回答は、OOSの調査がタイムリーな方法で確認され処理されることを保証するため
の貴社の品質システムの包括的なアセスメントを含んでいない。
不合格、OOS、傾向外(OOT)、または、その他の予期しない結果の取り扱いと、貴社の調査の文書化
に関する情報については、
FDAのガイダンス文書Investigating Out-of-Specification(OOS) Test Results for Pharmaceutical Production
を見よ。
我々は、貴社がFDA-483で挙げられたOOSの調査に関するCAPAを実装しようとしていることを認識
している。しかし、貴社のCAPAの計画は、出荷のためにリリースされた上記のロットに関して提案
されたアクションと、現在アメリカ市場にあるロットの品質が損なわれていないことを保証する
ための保管サンプルの試験が含まれていない。
さらに、我々は、分析の規格を満たさなかったポピドン-ヨウ素の複数のロットの自主回収を開始
するという貴社の判断を認識している。しかし貴社は、同様に分析規格を満たさなかった他の
製品XXに回収の範囲を広げなかった。
貴社は回答の中で以下の情報を提供せよ:
・逸脱、不一致、苦情、OOSの結果、不具合の調査に関する貴社の全体的なシステムの包括的で
独立したアセスメント
このシステムを改善するための詳細なアクションプランを提出せよ。貴社のアクションプランは、
これに限定されないが、調査の能力、範囲の決定、根本減員の評価、CAPAの効果、QUの監視、
文書化手順の大幅な改善を含むべきである。調査の全ての段階が適切に実施されることを貴社が
いかに保証するかについて検討せよ。
・OOSの試験の調査がいつXXの調査(例:製造及びサンプリングの手順のレビュ、追加の試験、調査
結果の説明、CAPAの開始)を始動させるかについて述べた改訂された手順を提出せよ。
・アメリカ向け製品で現在アメリカ市場にあり、過去3年の査察の初日の文書の日付時点で使用期限
内にある全ての無効化されたOOS(工程内、リリース/安定性試験を含む)の結果の回顧的で独立した
レビュと、各OOSに関し以下のことを含む分析結果をまとめたレポート:
〇無効化されたOOSの結果に関する科学的に正当な理由やエビデンスが、決定的または決定的で
ない状態でも原因となる試験のエラーを証明しているかどうかを判断せよ。
〇試験の根本原因を最終的に証明した調査に関し、論理的根拠を提供し、改善のために同じ
または同様の根本原因に対して脆弱なその他の全ての試験方法が特定されていることを保証
せよ。
〇回顧的レビュで試験が根本原因であると特定されていないか、根本原因でないとわかった全て
のOOSの結果について、製造の徹底的なレビュ(例:バッチレコード、製造手順の妥当性、
装置/設備の適合性、原材料のばらつき、工程の能力、逸脱の履歴、苦情の履歴、ロットの
不具合の履歴)を含めよ。
各調査に関し、可能性のある製造の根本原因と、製造作業の改善のサマリを提出せよ。
・使用期限内の全ての医薬品のロットの保管サンプルの試験から得られた結果のサマリ
貴社はこれに限定されないが、各ロットの有効成分の同一性と濃度を含む、全ての適切な品質
特性を試験すべきである。もし、試験でOOSの結果が発生したら、顧客への通知や自主回収の
開始を含む、貴社がとろうとする是正処置を示せ。
●Field Alert Report違反
査察で、貴社がNDA21524のもとで、出荷されたロット12000124, 11900228ES, 11800257JSに
関する不合格の分析結果に関し、21 U.S.C 355(k)の505(k)に要求されている通り、
21 CFR 314.81(b)(1)(i),(ii)に則ってFDAにNDA FARを提出することを怠ったことが明らかに
なった。申請者は、出荷した医薬品内に、細菌学的汚染や、重大な化学的・物理的・または
その他の変更や劣化、または、出荷された1つかそれ以上のロットが申請書内で制定された規格
を満たさない不具合に関する情報を受領後3営業日以内に提出することが求められている。
21 CFR 314.81(b)(1)の目的は、既に出荷された医薬品による潜在的な安全上の危険を防ぐため、
申請保有者により重大な問題について当局に注意喚起がされるように、早期の警告システムを
確立することにある。
我々は貴社にXXに関して確認された全てのOOSの事象の回顧的なレビュの実施と、既に出荷され、
21 CFR 314.81(b)(1)に従ってFARが提出されるべきだが当局に提出されていないロットの
アセスメントの実施を求める。
貴社はSOPを開発し、SOPの実装とFARの取り扱いに関する手順と責任の詳細について関連する全て
の従業員への適切な教育を実施しなければならない。
●CGMPコンサルタントの推奨
貴社の是正の不履行を含む、我々が貴社で発見した違反の性質に基づき、我々は、CGMPの要件を
満たすように貴社を支援するために21 CFR 211.34に記載されている適格性のあるコンサルタント
を雇うことを強く勧める。貴社のコンサルタントの使用は、CGMPを順守するための貴社の義務を
軽減するものではない。貴社の経営陣には、継続的なCGMP順守を保証するために、全ての不備と
システムの欠陥を解決する責任が残る。
●医薬品の回収
2021年7月18日、XXを販売しているXX社は、貴社により報告されたOOSの分析試験結果により当局
にFARを提出し、医薬品XXの自主回収を開始した。
●ポピドン-ヨウ素の製造停止
我々は、貴社がこの製造所でのポピドン-ヨウ素の製造の中止を約束したと認識している。この
文書への回答の中で、貴社が今後この製造所でアメリカ市場向けにポピドン-ヨウ素の医薬品の
製造を再開するつもりかどうかを明白にせよ。
もしアメリカ市場向けにポピドン-ヨウ素の医薬品の製造を再開することを計画するなら連絡せよ。
●結論
この文書で挙げた違反は、貴社の製品に関し貴社の製造所に存在する違反の包括的なリストでも
ない。貴社には、違反を調査し、原因を判断し、再発やその他の違反の発生を防止する責任が
ある。
もし貴社が貴社の製造所で製造される医薬品の供給の断絶につながる可能性のあるアクションを
検討している場合、すぐに連絡せよ。
全ての違反を速やかに是正せよ。この問題への即座の適切な対処の不履行は、制限のない差し
押さえ、強制命令を含む、さらなる通知のない制限または法的なアクションにつながるかも
しれない。未解決の違反は、他の連邦機関の契約授与も妨げるかもしれない。
違反への対処の不履行は、FDAの輸出証明の発行の差し控えにもつながるかもしれない。全ての
違反に完全に対応がされ、我々が貴社のCGMPの遵守を確認するまで、FDAは貴社の医薬品製造
業者としての新しい申請やリストの補完の承認を保留するだろう。我々は、貴社が全ての違反
に対する是正処置を完了したことを確認するために再査察を行うかもしれない。
◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆
まとめ
◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆
いかがでしたでしょうか。
・出荷した物の返品が発生した際の手順の不備
・プロセスバリデーションの不備
・試験方法のバリデーションの不備
・安定性試験実施の不備
・品質管理部門の不備
・OOSの調査の不備
に関し、具体的な指摘があがっていました。
是非、皆様の業務の参考にしていただければ幸いです。
☆次回は、4/15(金)に配信させていただきます。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
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