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2021.10.15
【最近のウォーニングレター】ASTROM通信<228号>
~安全な医薬品の安定供給をご支援する~
こんにちは
ASTROM通信担当の橋本奈央子です。
新型コロナの第5波がおさまりホッとしているこの頃ですが、いかがお過ごしでいらっ
しゃいますか。
さて、今回は、FDA(米国食品医薬品局)から日本の製薬会社を含む、アメリカ国外の製造所に
出されたウォーニングレター2件について見ていきたいと思います。
最後までお読みいただければ幸いです。
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最近のウォーニングレターの概要
注:文中のXXはウォーニングレターでマスキングされている文言及び具体的な社名・品名等です。
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■#320-21-49■
FDAがOTC医薬品を製造しているオーストラリアの製薬会社から2020年4月16日に提出
された記録及び情報をレビュし、医薬品製造の重大なCGMP違反について発した2021/6/9付
ウォーニングレターには、下記の指摘事項があげられています。
●指摘1
貴社は、リリース前に医薬品の各ロットについて、各有効成分の同一性、濃度を含む
最終規格への一致についての試験の判断を怠った。
<指摘1詳細>
貴社はOTC医薬品XXをFDAのリストに載せている。FD&C Act 704(a)(4)に基づいた我々の
記録やその他の情報の提出要求に対する貴社の回答は、貴社がアメリカ向けに出荷した
医薬品の適切な最終製品試験を実施していないことを示していた。
例えば、我々は貴社に、アメリカ市場向けに販売される前に貴社の医薬品の各ロットに
ついて、有効成分の分析試験が実施されているかどうか確認するために質問をした。
貴社は、最終製品の各ロットに関し、有効成分の分析試験が最近実施されていないと
回答した。
適切な試験をせずに、リリース前に貴社の医薬品のロットが適切な規格に従うことを
裏付ける科学的なエビデンスがない。
我々は、貴社が704(a)(4)の要求に従い、アメリカ向けにXX製品のいくつかのロットを
出荷したこと認識している。
704(a)(4)の要求の前後の、アメリカに輸入された全ての医薬品について、以下の回答
を提出せよ:
・出荷判定前の貴社医薬品の各ロットを分析するために用いられる試験方法も含めた、
化学及び微生物の規格のリスト
・この文書の日付時点で使用期限内にあるアメリカに出荷された医薬品の全てロットの
品質を判断するために保管サンプルの化学及び微生物の試験を実施するアクション
プランとタイムライン
・各ロットの保管サンプルの試験から得られた全ての結果のサマリ
もしそれらの試験が基準を満たさない品質を示した場合、顧客への通知や製品の回収
のような迅速な正処置を実施せよ。
・貴社の試験業務、手順、方法、装置、文書、分析者の能力の包括的で独立したアセス
メント
このレビュに基づき、貴社の試験システムを改善し、効果を評価するための詳細な
計画を提出せよ。
●指摘2
貴社は、医薬品の各成分の同一性を検証するために少なくとも1つの試験を実施する
ことを怠った。
<指摘2詳細>
貴社が提出した記録と情報は、貴社がOTC医薬品を製造するために使用する有効成分
の入荷ロットについて、同一性を判断するために試験をしていることを示していな
かった。
例えば、我々の最初の704(a)(4)の情報の要求に対する成分の各ロットの同一試験に
関する回答は、貴社が入荷した原材料の分析証明書(COA)をチェックしているが、
同一性試験を実施していないことを示している。さらに、2021年1月28日のメールで、
貴社は、同一性試験は、使用前に有効成分の同一性試験が実施されていないことを
追認した。
貴社が医薬品の製造において、使用前に各成分のロットの同一性を検証するために
少なくとも1つの試験を実施するならば、品質特性に関するベンダのCOAを信頼する
ことができる。
704(a)(4)の要求の前後の、アメリカに輸入された全ての医薬品について、以下の
回答を提出せよ:
・成分、容器、蓋の全ての供給者が適格性を評価され、原材料に適切な使用期限
またはリテスト日付が付与されているかどうかを判断するための、貴社の原材料
システムの包括的で独立したレビュ
レビュは、入荷した原材料の管理が、不適切な成分、容器、蓋の使用を避けるため
に適切かどうかも判断すべきである。
・製造で使用するための成分の入荷した各ロットを試験しリリースするために貴社
が使用する化学及び微生物の品質管理の規格
・同一性、濃度、品質、純度に関する全ての適切な規格への一致について、貴社が
各成分のロットをいかに試験するつもりかの記述
もし、濃度、品質、純度に関し、各成分のロットを試験する代わりに供給者のCOA
から得られる結果を受け入れるつもりであれば、初期のバリデーションと定期的
な再バリデーションを通じて供給者の試験結果の信頼性をいかに確実に証明する
かを明記せよ。さらに、入荷した成分の各ロットについて、少なくとも1つの特定
の同一性試験を常に実施するという約束を含めよ。
・各成分の製造業者から得られるCOAの信頼性を評価するための、全ての成分の試験
から得られる結果のサマリ
COAのバリデーションプログラムを述べた貴社のSOPも提出せよ。
・貴社が製造した医薬品を試験する契約設備の適格性評価と監督に関する貴社の
プログラムのサマリ
●指摘3
貴社は、医薬品の安定性を評価し適切な保管条件や使用期限を判断するために
安定性試験の結果を使用する目的で設計・文書化された安定性試験プログラムを
制定しそれに従うことを怠った。
<指摘3詳細>
貴社は、付与された使用期間を通じて、貴社の医薬品の化学的特性が許容できる
状態のままであることを証明するために適切な安定性データを提供することを
怠った。
例えば、我々の704(a)(4)の要求に対する回答の中で提出された医薬品XXに関する
安定性試験の報告は、有効成分に関する試験を含んでいなかった。さらに貴社は、
医薬品の各ロットの安定性について、有効成分の分析試験を実施しなかったこと
を認めた。
適切な安定性データがなく、貴社は医薬品に付与された有効期間を通じて、
貴社の医薬品が制定した規格と予め定めた全ての品質基準を満たすことを保証
することができない。
704(a)(4)の要求の前後の、アメリカに輸入された全ての医薬品について、以下の
回答を提出せよ:
・貴社の安定性プログラムの妥当性を保証するための、包括的で独立したアセス
メントと是正処置・予防処置
貴社の改善されたプログラムは、これに限定されないが以下のことを含むべき
である。
〇安定性を示す方法
〇宣伝されている使用期限が妥当かどうかを判断するために各製品の代表的な
ロットが毎年プログラムに追加されるような継続的な安定性プログラム
〇各工程(タイムポイント)で試験される特定の特性の詳細な定義
・貴社の改善された安定性プログラムについて述べた全ての手順
●工程管理
貴社は、貴社の製造所で製造された各医薬品に関する重要な管理ポイントを示す
プロセスフロー図を持っていないことを認めた。重要工程パラメータの特定や、
工程管理のモニタリングに関する継続的なプログ
ラムがなく、貴社が安定した製造作業や一貫した製品品質を保証することはできない。
FDAのガイダンス文書である
Process Validation : General Principles and Practices, for general principles and elements for process validation
を見よ。
●品質システム
貴社の品質システムは不十分である。品質システムを実施するための助けとして、
FDAのガイダンス文書Quality Systems Approach to Pharmaceutical CGMP Regulations
を見よ。
●CGMPコンサルタントの推奨
我々が貴社で確認した違反の性質に基づき、貴社がアメリカ市場向けの医薬品製造を
再開するつもりなら、我々は貴社がCGMP要件を満たす手伝いをするために21 CFR 211.34
に規定されている適格なコンサルタントを雇うことを強く勧める。また我々は、貴社
がFDAと共に貴社のコンプライアンス状態の解決を達成しようとする前に、適格な
コンサルタントが貴社のCGMP遵守に関し貴社の全ての作業の包括的な監査を実施し、
貴社の是正処置・予防処置の完了と効果を評価することを勧める。
貴社のコンサルタントの使用は、CGMPを順守するための貴社の義務を軽減するもの
ではない。貴社の経営陣には、継続的なCGMP順守を保証するために、全ての不備と
システムの欠陥を解決する責任が残る。
●結論
この文書で挙げた違反は、貴社の製品に関する違反の包括的なリストでもない。
貴社には、これらの違反を調査し、原因を判断し、再発を防止し、その他の違反を
防止する責任がある。
FDAは貴社で製造された全ての医薬品について、製造、加工、包装、保管のために
用いられている方法と管理がFD&C Act 501(a)(2)(B)の意味の範囲内でCGMPを遵守
していないので、2021年3月23日に輸入警告措置66-40をとった。不良であるか、
不正商標表示をしていると思われる医薬品は、FD&C Act 21 U.S.C.381(a)(3)の
801(a)(3)に従う物理的な試験がなければ、引き留められるか輸入拒否がされる
かもしれない。
違反が解決されたことを示すエビデンスがあり、当局が今後の輸入品がFD&C Actを
遵守するという信頼をするまで、貴社で製造された全ての医薬品は輸入警告リスト
に残る。基準に適合していない状況に対処されたとFDAが認める前に査察を行う
かもしれない。
全ての違反を速やかに是正せよ。全ての違反に完全に対応され、我々が貴社の
CGMPの遵守を確認するまで、FDAは貴社の製造業者としての新薬の申請やリストの
補完の承認を保留するだろう。我々は、貴社が全ての違反に対する是正処置を完了
したことを確認するために再査察を行うかもしれない。
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■#320-21-55■
2021年2月15日~19日、2021年2月22日、2021年2月24日~25日に日本の医薬品の製造所
を査察し、医薬品製造の重大なCGMP違反について発した2021/8/19付ウォーニングレター
には、下記の指摘事項があげられています。
●指摘
貴社は、そのロットが既に出荷されているかどうかに関わらず、規格を満たすため
にロットやその成分の説明のつかない食い違いや不具合を徹底的に調査することを
怠った。
<指摘詳細>
A.貴社は、外因性の微粒子汚染の再発事象を含む、無菌医薬品の中の重大な微粒子
の不具合を適切に調査しなかった。
2019年から2020年の間、注射液XXの多数のロットで、重大な微粒子汚染の不具合が
みつかり、それらの多数は貴社の手順と、外部(即ち外因性)の影響とされた。
ロット内に外因性の微粒子が確認された際、貴社は、根本原因を判断するための
タイムリーな調査と、医薬品への影響の評価を行うことを怠った。我々のレビュは、
調査のための貴社の工程内の品質基準、限界、分類、トリガが、内因性と外因性の
微粒子汚染を十分に区別していないことを明らかにした。
2021年6月18日にFDAに提出された最近の調査の最新情報(FDAの査察後4か月)は、
貴社の手順が改善され、供給者の監査を実施していることを示している。貴社の
調査は、貴社の洗浄及び殺菌プロセスが、ストッパまたはバイアルに付着した
XXの一部のいくらかの微粒子を除去できなかった”可能性が高い“と結論付けた
が、貴社は汚染の上流の根本原因に適切に対処することと、是正処置・予防処置
(CAPA)をタイムリーに実施することを怠った。
さらに貴社は、この汚染に関し、免疫原性の反応により有害事象を誘発する可能性
を含む、目に見える微粒子の特定の検証中に見つかったXX第一鉄複合体の多数の
事象に対処することを怠った。貴社は、XXは医薬品の製剤設計によるものと思われる
と述べた。
貴社の回答は、セルロースの繊維、ガラス繊維、XX、黒と白の微粒子、さまざまな
色の微粒子のような汚点のような、目に見える微粒子が見つかった査察中に指摘
された12ロットについて論じていた。貴社は使用期限内のXXロットを包含するため
に調査を広げ、外因性または“ストッパでない素材”の更なる事象を確認した。
注目すべきは、ストッパの汚点の不具合は2017年にも調査されていた。しかし、
貴社のストッパの供給者は、その時点でそれらのプロセスは原因ではないと述べ、
貴社のCAPAは問題を解決するために不適切だった。
貴社の回答は不十分である。貴社は外因性・内因性の微粒子の汚染問題の両方を
適切に調査することを怠った。貴社は根本原因を特定し、起こり続ける貴社の
注射剤の中の外因性微粒子汚染の事象に対処するためにタイムリーに効果的な
CAPAを実施しなかった。外因性微粒子汚染はまれに起こるべきもので、完全に調査
されるべきである。
この文書への回答の中で以下の情報を提出せよ:
・逸脱、食い違い、苦情、規格外の結果、不具合を調査するための全体的なシステム
の包括的で独立したアセスメント
このシステムを改善するための詳細なアクションプランを提出せよ。
貴社のアクションプランはこれに限定されないが、調査能力、範囲の決定、
根本原因の評価、CAPAの効果、品質部門の監督、文書化手順の大幅な改善を含む
べきである。貴社が、調査の全てのフェーズが適切に実施されることをいかに
保証するか述べよ。
・以下のことを含む販売されたロットに関する最新のリスクアセスメント:
〇使用期限内のロットの中に見つかった外因性微粒子の評価
〇貴社の調査の一環として調査されるバイアルを選ぶためのサンプリング手順の
プロトコルと基準
〇安全性と貴社の製品の効能に対する鉄XX複合体の潜在的な影響
・これに限定されないが、以下のことを含む、全ての注射物質の不良限界の独立
したレビュ:
〇100%の検査と合格品質基準(AQL)の限界と関連する論理的根拠
〇外部の微粒子に関し、調査開始のトリガとなり得る全ての品目の包括的なリスト
を提出せよ。
・根本原因と全てのCAPAの活動を含む、注射液XXの外因性微粒子の汚染の最新の調査
B.XX内で当局に報告されたデータ・インテグリティ違反の調査は貴社の製造所の
問題の範囲を判断するのに不十分である。
貴社は、下記の繰り返し起こる事象を確認した:
・オペレータは、ISO 7 エリア(グレードB)を去る前に、更衣表面を職員モニタリング
プレートに接触することを着実に保証するのを怠った。
・オペレータは、ISO 5 エリア(グレードA)とISO 7 エリア(グレードB)にある装置表面
を、環境モニタリングプレートに接触することを着実に保証するのを怠った。
・表面をモニタする際、オペレータはサンプリング前にXXで装置の表面をふき取って
いた。
・微粒子の結果がアラートレベルより高い時、ISO 5 エリア(グレードA)の非生存粒子
のデータがISO 7 エリア(グレードB)として報告された。
・オペレータは携帯の微粒子カウンタを使ってISO5(グレードA)の空中の微粒子の値を
報告することを怠り、代わりに、空中の微粒子のモニタリングを繰り返した。
貴社の調査は、データ・インテグリティの違反の範囲に関する十分な情報が欠けて
いる。貴社の調査は、“空中の微粒子の測定記録の改ざん”の範囲と、製造所内で
発生している他のデータ・インテグリティの違反の包括的なアセスメントに欠けて
いた。オペレータ及び装置表面の環境モニタリング(EM)データと、非生存粒子の
モニタリング環境は信頼できず、製品の無菌保証の懸念を引き起こした。
貴社の調査は、データ・インテグリティの違反はまれでないことも示していた。
貴社は、全てのXXの環境モニタリングオペレータが非生存粒子の測定データの改ざん
に関与しているうえに、XXのXXのオペレータが接触プレートの測定の改ざんに関与
していることに気づいた。
我々の査察でも、管理されていない試験のワークシートや、試験文書の照合に関する
不完全なシステムを含む、文書の信頼性の更なる脆弱性を挙げた。
貴社の調査に基づき、2016年から2020年に製造されたXXの合計XXロットは、これら
の実務の影響を受けていることがありえる。しかし、影響を受けた可能性のある
ロットの範囲についての貴社の回答において、判断を裏付けるためのデータが
不十分であった。
無菌工程の作業の管理状態を評価し維持するために、正確な微生物のデータが基本
である。無菌工程の作業における微生物の逸脱の認識は、環境のコントロールを
維持する迅速なアクションを発動させるのに絶対不可欠である。さらに、アクション
レベルの逸脱のタイムリーで徹底的な評価、汚染の潜在的なルートの特定、適切な
追跡調査方法の決定は、製品への汚染リスクを防ぐために必要である。
正確なデータの報告の不履行は、製造所から出荷された医薬品の無菌保証を損ない、
患者へのリスクを増加させたかもしれない。
貴社は回答で、製品の影響のリスクアセスメントは実施され、製品の無菌状態は
損なわれていないと述べた。しかし、貴社の製造所で発生したデータ・インテグリ
ティの違反の範囲と性質を考えると、貴社のこの結論に関する適切な正当化の理由
が欠けていた。さらに、貴社の回答は、環境データと”無菌業務と無菌性保証の
教育と監視“のレビュに集中しているが、その範囲は、データ・インテグリティの
その他の不完全な分野に十分に対応していない。
貴社の回答は、根本原因は、“CGMP、データ・インテグリティの重要性、逸脱の
取り扱いの難しさを理解していない従業員”に関連していると言及している。
我々は、データ・インテグリティの不備を特定し、貴社の製造所で全ての職員の
報告義務を改善するためのアクションを開始した日を認識している。しかし、
無菌作業を実施・監督する従業員の能力を保証し、貴社の製造作業全体の
品質システムの効果とデータ・インテグリティの監視を改善するためには、更なる
アクションが必要である。
この文書への回答の中で以下の情報を提供せよ:
・製造中の適切な無菌手順とクリーンルームでの行動を保証するための計画
全ての製造ロットについての所定の効果的な監督者の監視を保証するための手順
を含めよ。
また、無菌工程とその作業中のQUの監視(例:日々の活動、監査)の頻度を述べよ。
・貴社の医薬品の品質と無菌性に影響を与える可能性のある無菌技術とクリーン
ルームの行動がいかに不十分かを評価する徹底的な回顧的レビュとリスクアセス
メント
・これに限定されないが以下のことの独立したアセスメントを含む貴社の無菌工程、
装置、設備に関する全ての汚染の危険の包括的なリスクアセスメント
○ISO 5 エリア内の全ての人の作用
○装置の配置と人間工学
○ISO 5 エリア内及び周辺の部屋の空気品質
○施設のレイアウト
○職員の流れと原材料の流れ(無菌作業を実施しサポートするために使用される
全ての部屋全体)
・汚染の危険のリスクアセスメントで見つかったことに対応するためのタイムライン
を伴った詳細な改善計画
無菌工程作業の設計と管理になされる明確で具体的な改善を述べよ。
・アメリカ市場にある使用期限内の、貴社の製造所で製造された無菌医薬品の全て
のロットの保管サンプルの試験(無菌試験と貴社のリスクアセスメントで特定された
その他の試験を含む)の実施計画
・QUが効果的に機能するために権限とリソースが与えられていることを保証する
ための包括的なアセスメントと改善計画
アセスメントは、これに限定されないが以下のことを含めよ:
○貴社で使用されている手順が安定していて適切かどうかの判断
○適切な手順の遵守を評価するためのQUの貴社の作業全体の監督の規定
○QUの出荷判定前の、各ロットとそれに関連する情報の完全で最終的なレビュ
○全ての製品の同一性、濃度、品質、純度を保証するための、QUの調査の監督と
承認及びその他の職務の放免
これに限定されないが、新たに発生した製造/品質の問題に積極的に対処し、継続的
な管理状態を保証するためのタイムリーな資源の提供を含む、最高経営者による
品質保証と信頼できる作業のサポートの方法について述べよ。
・製造所および装置の、所定の用心深い作業のマネジメントを実行するための貴社の
CAPAの計画
この計画は、特に、装置/設備または文書の問題の迅速な検知、確実に活動を実施
するための適切な職員配置、必要な時の機能の改善、適切な予防的保全計画の遵守、
効果的な交換の実施、装置/施設のインフラのタイムリーな技術的改修、日々の
製造の監督と総合的な作業の管理のシステムの改善を保証すべきである。
●データ・インテグリティの改善
貴社の品質システムは、貴社が製造した薬の安全性、効果、品質を裏付けるデータの
正確性・完全性を適切に保証していない。CGMPに従ったデータ・インテグリティの
手順を制定して遵守するためのガイダンスとして、FDAのガイダンス文書
Data Integrity and Compliance With Drug CGMPを見よ。
我々は、貴社が貴社の作業を監査し、FDAの要求を満たすことを助けるコンサルタント
を雇っていることを認識している。
この文書への回答の中で以下の情報を提供せよ。
A.データの記録と報告の不正確性の範囲の包括的な調査
貴社の調査は以下のことを含むべきである:
・調査手順と方法論の詳細;アセスメントの対象となる全ての試験室、製造作業、
システムの概要;貴社が除外を提案している作業の正当性を示す理由
・データの不完全性の性質・範囲・根本原因を特定するための現在及びかつての
従業員の面接
我々は、これらの面接が適格な第三者により実施されることを推奨する。
・貴社の製造所におけるデータ・インテグリティの欠陥の範囲のアセスメント
記録の省略、変更、削除、記録の破棄、非同時の記録の完成、その他の欠陥の
特定をせよ。
貴社が発見したデータ・インテグリティの欠落箇所について、貴社の製造所の
全ての操作を述べよ。
・製造データのインテグリティの欠陥の性質についての包括的な回顧的評価
我々は、違反の可能性のある分野の特別な専門知識を持った適格な第三者が、
すべてのデータ・インテグリティの欠陥について評価することを推奨する。
B.発見された不具合の貴社の医薬品の品質への影響の可能性に関する現在の
リスクアセスメント
アセスメントにはデータ・インテグリティの欠落の影響を受けた薬の出荷により
引き起こされた患者のリスクと、継続的な作業によるリスクの分析を含めるべきで
ある。
C.全体的な是正処置及び予防処置の計画の詳細を含む貴社の管理の戦略
貴社の戦略には下記のことを含めよ:
・分析データ、製造記録、FDAに提出した全てのデータを含む貴社が生成した全て
のデータの信頼性と網羅性を保証するために貴社がどのようにするつもりかを
述べた詳細な是正処置計画
・現在のアクションプランの範囲と深さが、調査とリスクアセスメントで見つ
かったことに釣り合うことを示すエビデンスを含んだ、データ・インテグリティ
の欠落の根本原因の包括的な記述
データ・インテグリティの欠落に責任のある個人が、貴社のCGMP関連または
薬の申請データに依然として影響を与えるかどうかを示すこと。
・顧客への通知、製品の回収、追加試験の実施、安定性を保証するための安定性
プログラムへのロットの追加、医薬品の申請アクション、改善された苦情の
モニタリングのような、患者を保護し、薬の品質を保証するためにとられた
処置、または、これから取ろうとしている処置を述べた暫定的な手段
・貴社のデータの完全性を保証するための、全ての改善の努力と、手順、工程、
方法、管理、システム、経営者の管理、人的資源(例:訓練、職員の改善)
の強化を述べた長期的手段
・上記活動が既に進行中または完了といったステイタスの報告
●CGMPコンサルタントの推奨
我々が貴社で確認した違反の性質に基づき、我々は、貴社の作業を評価し貴社が
CGMP要件を満たす手伝いをするために適格なコンサルタントを雇うことを強く
勧める。また我々は、貴社がFDAと共に貴社のコンプライアンス状態の解決を
達成しようとする前に、適格なコンサルタントが貴社のCGMP遵守に関し貴社の
全ての作業の包括的な監査を実施し、貴社の是正処置・予防処置の完了と効果を
評価することを勧める。貴社のコンサルタントの使用は、CGMPを順守するための
貴社の義務を軽減するものではない。貴社の経営陣には、継続的なCGMP順守を保証
するために、全ての不備とシステムの欠陥を解決する責任が残る。
●結論
この文書で挙げた違反は、貴社の製品に関する違反の包括的なリストでもない。
貴社には、これらの違反を調査し、原因を判断し、再発を防止し、その他の違反を
防止する責任がある。
もし貴社が貴社の製造所で生産される医薬品の供給に混乱を引き起こしそうな
アクションを検討しているならば、FDAが貴社の作業が法律に従うために最も効果的
な方法で働くために、FDAはCDERの医薬品不足スタッフにすぐに連絡をとることを
要求する。医薬品不足スタッフへの連絡は、貴社の医薬品製造の中断または休止を
報告する義務を果たすこともできる。これは、FDAが出来るだけ早く貴社の製品の
不足を防ぎ、貴社の製品に依存する患者の健康を守るために必要なアクションを
考えることを可能にする。
全ての違反を速やかに是正せよ。全ての違反に完全に対応され、我々が貴社のCGMP
の遵守を確認するまで、FDAは貴社の製造業者としての新薬の申請やリストの補完の
承認を保留するだろう。我々は、貴社が全ての違反に対する是正処置を完了したこと
を確認するために再査察を行うかもしれない。
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まとめ
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いかがでしたでしょうか。
日本の製薬会社向けのウォーニングレターとなると、非常に気になるところです。
データ・インテグリティの不備は、単にデータの管理の話にとどまらず、品質と
密接に関係しているということをあらためて感じました。
無菌医薬品の中の微粒子混入といえば、今年の8月に異物混入のあった新型コロナ
ワクチンが日本国内で使用され、問題のロット及び混入リスクのあるロットの使用
が禁止になるという事案がありました。
この件で不安な思いをされた方もいらっしゃったのではないでしょうか。実は私も
異物混入リスクのあるロットを接種し、結構不安を感じました。
そのため、いつにも増して今回のウォーニングレターの内容が他人事とは思えま
せんでした。
パンデミック下ということもあってか輸入禁止等の措置はとられていませんが、
FDAは是非この企業に査察に行ってほしいと思ってしまいました。(FDAに査察に
行ってほしいと思うなんて滑稽ですが。。。)
☆次回は、11/1(月)に配信させていただきます。
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【発行責任者】
株式会社プロス
『ASTROM通信』担当 橋本奈央子ここにエントリー本文を書きます。
2021.10.01
【PIC/Sデータ・インテグリティ関連ガイドラインについて(5)】ASTROM通信<227号>
~安全な医薬品の安定供給をご支援する~
こんにちは
ASTROM通信担当の橋本奈央子です。
台風が気になるところですが、いかがお過ごしでいらっしゃいますか。
今回も前回に引き続き、2021年7月1日に発効したPIC/Sガイドライン、「GMP/GDP環境での
データ管理とインテグリティに関する適正管理基準(PI 041-1」について見ていきたいと
思います。
これまで4回にわたって取り上げてきましたが、今回が最終回となります。
最後までご覧いただければ幸いです。
出典
https://picscheme.org/docview/4234
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PIC/S GUIDANCE
GOOD PRACTICES FOR DATA MANAGEMENT AND INTEGRITY IN REGULATED GMP/GDP ENVIRONMENTS ◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆
10章 外注活動に関するデータ・インテグリティ
10.1 全般的なサプライチェインの検討
10.1.1 現代のサプライチェインは、しばしば、医薬品の安全性と継続的な供給を保証する
ために一体となって働く複数のパートナー企業から構成される。典型的なサプライ
チェインは、しばしば、異なる組織と場所にある、原薬の製造業者、製剤の製造業者、
分析試験機関、卸売販売業者、流通組織の関与を必要とする。これらのサプライ
チェインは、しばしば、外部委託されたサービス、ITサービスやインフラ、専門知識
やコンサルティングサービスを提供する追加の組織によりサポートされている。
10.1.2 データ・インテグリティはサプライチェインの安全性とインテグリティを保証する
ために重要な役割を果たす。委託者のデータ・ガバナンスの手段は、サプライチェイン
のパートナーによって提供される信頼できない、もしくは偽造されたデータや原材料
により著しく弱められる可能性がある。この原理は原材料の供給者、受託製造業者、
分析サービス、卸売販売業者、契約したサービスプロバイダやコンサルタントを含む
全ての外注活動に当てはまる。
10.1.3 サプライチェインのパートナー及び外注活動の初期の評価と定期的な再適格性評価には、
データ・インテグリティのリスクと適切な管理手段の考慮を含むべきである。
10.1.4 組織にとって、サプライチェインから得る情報(例:記録のサマリやコピー/プリント
アウト)のデータ・インテグリティや、リモートの監視の試みの限界を理解することが
重要である。これらの限界は、このガイドラインの8.11章で考察されたことと似ている。
これは、品質リスクマネジメントのアプローチを使って、データ・インテグリティの
検証や監督にリソースを集中させるために役立つ。
10.2 定期的な文書の検証
10.2.1 サプライチェインは、組織から組織に渡る文書やデータの使用が頼りである。委託者が、
報告された結果に関する全てのローデータをレビュすることは、しばしば実際的では
ない。品質リスクマネジメントの原則を使い、外部委託された供給者と受託業者のため
の安定した適格性評価のプロセスに重点が置かれるべきである。
10.3 サプライチェインのデータ・インテグリティの評価に関する戦略
10.3.1 会社は、サプライチェインや外注活動のリスクの定期的なレビュを実施し、データ・
インテグリティの管理が必要な範囲を評価すべきである。それらのレビュの頻度は、
リスクマネジメントの原則に従い、受託業者により提供されるサービスの重要性に基づく
べきである。リスクのレビュ中、以下のことを含む情報について考慮すべきである。
・データ・ガバナンスの方法に重点を置いた、製造所の監査の結果
・データ・インテグリティやセキュリティに関する国際的な標準やガイドラインの準拠
の照明
・定期的なレポートの中で提出されるデータのレビュ:例えば
○レビュの範囲
契約者もしくは供給者から報告される分析データと、同じ原材料の分析から得た
社内データの比較
○理論的解釈
データの改ざんを示すかもしれない矛盾したデータを探すこと
10.3.2 品質協定(またはそれと同等のもの)は、サプライチェインを通じてデータ・インテ
グリティを保証するための特別の規定と共に、製造業者と原料の供給者、サービス
プロバイダ、受託製造組織(CMO)、(販売の場合は)医薬品の供給者の間で整えられる
べきである。これはデータ・ガバナンスの期待を設定し、受託業者による委託業者への
エラー/逸脱の透明な報告により達成されるだろう。受託業者の製造所で確認された
データ・インテグリティの全ての不具合を委託業者に通知する要件もあるべきである。
10.3.3 製造業者により(またはその代わりにサードパーティにより)実施される、原薬の
供給者や製造業者、重要な中間体の供給業者、 主要な印刷包装資材の供給者、受託
製造業者やサービスプロバイダの監査では、契約組織におけるデータ・インテグリティ
の手段の検証を含むべきである。データ・インテグリティの遵守と、管理の原則が評価
され証明されることができるよう、受託業者は査察中に委託業者の代わりに生成された
データへの合理的なアクセスが出来ることが期待される。
10.3.4 監査と定期的な調査は、品質リスクマネジメントのアプローチに従い、委託業者の品質
部門による、電子データとメタデータの発生源の適切な検証を含むべきである。
これは、以下の方法により達成されるだろう。
○現場査察
受託組織の挙動や、データ・ガバナンス、データ・ライフサイクル、リスクと重大性
の理解のレビュ
○原材料試験 対 分析証明書
分析試験と供給者が報告した分析証明書の結果の比較
正確性、精度、純度の結果の食い違いを調べよ。これは、原材料や供給者のリスク
により、普段から、定期的、抜き打ちで実施してもよい。重要であれば、サンプルの
定期的な検定試験も検討されるとよい。
○リモートのデータレビュ
委託業者は、ロットの製造や試験に使用するために、契約設備/供給者が彼ら自身の
ハードウエアやソフトウエアの使用を提案することを検討するかもしれない。
委託業者は、契約設備の職員により生成されるデータの品質とインテグリティを
リアルタイムでモニタしてもよい。
この場合、委託業者のデータの監視が、受託業者により生成されたデータの修正を
許さないことを保証するために、職務の分離がされるべきである。
○品質のモニタリング
品質と実績のモニタリングは、データ改ざん(例:頻繁な、規格の限界まで一致した
原材料)の誘因を示すかもしれない。
10.3.5 委託業者は、顧客を特定しないよう全ての顧客の秘密の情報を記号化することを保証
するために、受託業者と協力してもよい。これは、他の顧客に対する守秘義務を破る
ことなく、委託業者の製造所において、電子データ及びメタデータの原始データの
レビュを促進するだろう。より大きなデータセットのレビュにより、委託業者の
データ・ガバナンスの方法をより安定して評価することを可能にするだろう。それは、
予想されるばらつきを示さないデータセットやデータなど、繰り返されるデータ・
インテグリティの不具合の指標の検索も可能にする。
10.3.6 供給される文書の真正性や正確性を保証するために、注意が払われるべきである。
(8.11章参照)
契約者とサプライチェインの適格性の判断をする際に、“真正なコピー”と
“サマリーレポート”のデータの間のデータ・インテグリティの相違やトレーサビリ
ティのリスクが考慮されるべきである。
11章 データ・インテグリティの指摘事項に対する規制上の行動
11.1 不備の参照
11.1.1 データのインテグリティは、GMPにとって基本的なことであり、適正なデータ・
マネジメントの要件は、医薬品のGMP/GDPのための現在のPIC/Sガイドラインの中に
組み込まれている。以下の表はこれらの既存の要件のうちのいくつかの強調している
参照ポイントを示している。
■ALCOAの原則
●帰属性
PIC/S GMPガイドラインPE009(Part1) : 4.20 c&f、4.21 c&i、4.29 point5 PIC/S GMPガイドラインPE009(Part2) : 5.43、6.14、6.18、6.52
Annex11(コンピュータ化システム) : 2、12.1、12.4、15
PIC/S GDPガイドラインPE011 : 4.2.4、4.2.5
●判読性
PIC/S GMPガイドラインPE009(Part1) : 4.1、4.2、4.7、4.8、4.9、4.10
PIC/S GMPガイドラインPE009(Part2) : 6.11、6.14、6.15、6.50
Annex11(コンピュータ化システム) : 4.8、7.1、7.2、8.1、9、10、17
PIC/S GDPガイドラインPE011 : 4.2.3、4.2.9
●同時性
PIC/S GMPガイドラインPE009(Part1) : 4.8
PIC/S GMPガイドラインPE009(Part2) : 6.14
Annex11(コンピュータ化システム) : 12.4、14
PIC/S GDPガイドラインPE011 : 4.1、4.2.9
●原本性
PIC/S GMPガイドラインPE009(Part1) : 4.9、4.27、 Paragraph”記録“
PIC/S GMPガイドラインPE009(Part2) : 6.14、6.15、6.16
Annex11(コンピュータ化システム) : 8.2、9
PIC/S GDPガイドラインPE011 : 4.2.5
●正確性
PIC/S GMPガイドラインPE009(Part1) : 4.1、6.17
PIC/S GMPガイドラインPE009(Part2) : 5.40、5.42、5.45、5.46、5.47、6.6
Annex11(コンピュータ化システム) : Paragraph”原則“、4.8、5、6、7.2、10、11
PIC/S GDPガイドラインPE011 : 4.2.3
●完全性
PIC/S GMPガイドラインPE009(Part1) : 4.8
PIC/S GMPガイドラインPE009(Part2) : 6.16、6.50、6.60、6.61
Annex11(コンピュータ化システム) : 4.8、7.1、7.2、9
PIC/S GDPガイドラインPE011 : 4.2.3、4.2.5
●一貫性
PIC/S GMPガイドラインPE009(Part1) : 4.2
PIC/S GMPガイドラインPE009(Part2) : 6.15、6.50、
Annex11(コンピュータ化システム) : 4.8、5
PIC/S GDPガイドラインPE011 : 4.2.3
●耐久性
PIC/S GMPガイドラインPE009(Part1) : 4.1、4.10
PIC/S GMPガイドラインPE009(Part2) : 6.11、6.12、6.14
Annex11(コンピュータ化システム) : 7.1、17
PIC/S GDPガイドラインPE011 : 4.2.6
●利用可能性
PIC/S GMPガイドラインPE009(Part1) : Paragraph”原則“、4.1
PIC/S GMPガイドラインPE009(Part2) : 6.12、6.15、6.16
Annex11(コンピュータ化システム) : 3.4、7.1、16、17
PIC/S GDPガイドラインPE011 : 4.2.1
11.2 不備の分類
注意:以下のガイドラインは、データ・インテグリティの不備の報告と分類の整合性の助けと
なることを目的とし、その内部の方針や国の規制のフレームワークに従って行動する査察当局
の能力に影響を与える意図はない。
11.2.1 データ・インテグリティの不具合に関係した不備は、製品品質にさまざまな影響を
与えるだろう。不具合の蔓延の度合いも、一人の従業員の行動から、査察される組織
に固有の怠慢まで多様だろう。
11.2.2 不備の分類に関し、PIC/Sガイドラインのドラフトは以下のように述べている:
“重大な不備とは、人または動物の患者に有害な製品や、食料生産動物に有害な残量物
が生じる製品を製造することで重大なリスクをもたらす、もしくは、リスクにつながる
実務や手順である。重大な不備は、製造業者が製品またはデータの不正、虚偽、改ざん
に関与した場合にも発生する。”
11.2.3 不正、虚偽、改ざんに関する不備の分類が“重大”に関わらず、データ・インテグリ
ティの不備は、以下のことにも関係しうると推測される。
●正しくない手順から生じるデータ・インテグリティの不具合
●必要なデータ管理手順がないことにより、不具合(実際の不具合のエビデンスのない)
の発生する可能性
11.2.4 これらの場合、以下のこと(指示的リストのみ)を考慮することにより、不備の分類
を決めることが適切だろう。
〇患者の健康への実際の、もしくは、潜在的なリスクを与える製品への影響:重大な不備
・出荷時もしくは使用期限内に、販売承認規格を満たさない製品
・QCの試験、重大な製品またはプロセスパラメータの報告時に、実際の規格外の結果
ではなく、‘望ましい’結果を報告すること
・経営陣の認識や支援のある/なしに関わらずデータの広範囲の意図的な改ざんや偽造、
医薬品品質システムの信頼性の土台を壊し、製造所により製造もしくは管理された
医薬品の品質と安 全性の全ての信頼を損なう度合い
〇患者の健康にリスクを与えない製品への影響:メジャな不備
・誤ったデータの報告(例:もともと‘規格内’の結果を、より好ましい傾向に変更
する)
・品質試験や重大な製品またはプロセスパラメータに関係ないデータの報告の際、
実際の規格外の結果の代わりに‘望ましい’結果を報告すること
・不十分に設計されたデータ収集システム(例:情報を後で転写するために紙きれを
使用すること)により発生する不具合
〇製品に影響を与えない;少しの不具合のエビデンス:メジャな不備
・データ・インテグリティの問題や、限定された機能間(例:品質保証、製造、品質
管理等)のトレーサビリティの喪失を生じさせるかもしれない、正しくない手順と
不十分に設計されたシステム
それ自身は製品品質に直接の影響がない。
〇製品に影響を与えない;不具合のわずかなエビデンス:その他の不備
・データ・インテグリティの問題や、個々の分野のトレーサビリティの喪失につな
がる、正しくない手順または不十分に設計されたシステム
・その他の点では受け入れられるシステムの限定された不具合
例:個人による重要でないデータの改ざん
11.2.5 全社的な不具合または限定された範囲/影響の不備があるかどうかについて、安定した
アセスメントを実施するために、重要な要素(データ・ガバナンスのプロセス、規定
に適合したデータの記録を助けるシステムの設計、監査証跡とITユーザのアクセスの
利用と検証等)の適合性の総合的な概念を作成することが重要である。
11.2.6 個々の状況(悪化する/軽減する要素)は、最終的な分類や規制対応に影響を与えるかも
しれない。不備の分類や、コンプライアンス問題の当局への報告に関する更なる
ガイダンスは、PI 040 PIC/Sガイドラインの不備の分類にて利用可能である。
12章 データ・インテグリティの不具合の改善
12.1 重大なデータ・インテグリティの問題への対応
12.1.1 データ・インテグリティの問題に関連して発見された緊急の問題と評価されたリスクを
第一に解決するために、検討がされるべきである。会社の問題への対応では、取られる
アクションの概要を述べるべきである。関与する製造業者からの対応には以下のことを
含むべきである:
12.1.1.1 データの記録と報告の不正確な範囲の包括的な調査に含むべきこと:
・詳細の調査の手順と方法論
アセスメントに含まれる全ての試験室、製造作業、製品とシステムの概要
規制を受けるユーザが除外を提案する作業に関する正当化の理由
・データの不正確さの性質、範囲、根本原因を特定するための現在及び過去の従業員
のインタビュ
これらのインタビュは、適格なサードパーティにより実施されるのがよい。
・設備内のデータ・インテグリティの不備の範囲の評価
省略、変更、削除、記録の破壊、非同時の記録の完成、その他の不備を特定せよ。
・適用される期限の正当化の理由と共に、事象の範囲(データ、製品、工程及び特定
のロット)、問題の時間枠の決定
・データ・インテグリティの欠落が発生した作業の全ての部分の記述と追加の考察が、
多国籍企業または複数の異なる製造所をまたがって作業する企業のグローバルな
是正処置についてなされるべきである。
・試験と製造に関するデータ・インテグリティの不備の性質の包括的で回顧的な評価、
根本原因または潜在的な根本原因の特定は、調査手順で定義された是正処置・予防
処置の基準を作るだろう。
潜在的な欠陥が確認された分野の特別な専門知識を持った適格なサードパーティの
コンサルタントの雇用が必要かもしれない。
・物質、医薬品、製品の品質で発見された不具合の潜在的な影響のリスクアセスメント
これらのアセスメントは、データ・インテグリティの欠落、継続的な作業による
リスク、製品の登録書類に関連するデータを含む規制当局に提出されたデータの
正確性の影響を受けた製品の出荷/販売により発生する患者の潜在的なリスク分析を
含めるべきである。
12.1.1.2 データ・インテグリティの脆弱性に取り組むための是正処置・予防処置、実施の時間枠、
及び以下のことを含めよ。
・顧客への通知、製品の回収、追加試験の実施、安定性を保証するために
安定性プログラムへのロットの追加、薬の申請活動、強化された苦情のモニタリング
など、患者を保護し、医薬品の品質を保証するためのアクションを述べた暫定的な
方策
暫定的な方策の効果がモニタされ、残存するリスクが経営陣に伝えられ、レビュを
受けるべきである。
・改善努力と、データ・インテグリティを保証するために設計された手順、プロセス、
方法、管理、システム、経営者の監督、人的資源(例:訓練、スタッフの改善)の
強化を述べた長期の方策
長期の方策が見つかった場合は、リスクを軽減するための暫定的な方策がとられる
べきである。
12.1.1.3 取られたアクションが問題を取り除いているかをモニタするために実施されたCAPA
の効果のチェック
12.1.2 可能であれば、視察団は、確認された不備の性質を伝えて問題の包括的な調査、問題の
全面開示、迅速な解決を約束する文書化された確認書を求めるために、関係する会社の
上位の代表者と会うべきである。
グローバルな是正処置・予防処置の詳細を含む経営戦略が、規制当局に提出されるべき
である。戦略には下記のことを含めるべきである:
・現在のアクションプランの範囲と深さが、調査やリスクアセスメントでみつかった
ものに見合うというエビデンスを含む、データ・インテグリティの欠落の根本原因
の包括的な記述
これには、データ・インテグリティの欠落に責任を負う個人が、GMP/GDP関連、
または薬の申請データに影響を与えることが出来る状態のままであるかを示さな
ければならない。
・規制を受けるユーザが、どうのように、分析データ、製造記録、所轄官庁に提出
または提示される全てのデータを含む、生成された全てのデータのALCOA+の属性を
保証するつもりかを述べた詳細な是正処置の計画
12.1.3 視察団は、データ・インテグリティの違反に関連したリスクを管理するために、査察
で特定した重大なデータ・インテグリティの問題の管理のための方策を実施すべきで
ある。
12.2 改善の指標
12.2.1 現地の査察には、深刻なデータ・インテグリティの問題に取り組むためにとられた
アクションの効果を検証することが求められる。リスクマネジメントの原則に従い、
効果的な改善を確認するためのアプローチの選択肢が検討されるかもしれない。
改善のいくつかの指標は次の通りである:
12.2.1.1 確認された問題の徹底的でオープンな評価のエビデンスと、組織レベルでの適切
な実施を含む、迅速で効果的な是正処置・予防処置の実施
12.2.1.2 顧客及び規制当局との問題のオープンなコミュニケーションのエビデンス
透明なコミュニケーションは、調査及び改善の段階を通じて維持されるべきで
ある。規制当局は詳細な調査の結果として、さらなるデータ・インテグリティの
不具合が報告されるかもしれないことをわかっている必要がある。これらの通知
に対する追加の反応は、継続的な報告を促進するために、公共の健康リスクに
比例しているべきである。
12.2.1.3 潜在的な問題と、改善の状況をオープンに報告するためのプロセスを包含し推奨
する、組織をまたがるデータ・インテグリティに対する期待のコミュニケーション
のエビデンス
12.2.1.4 規制を受けるユーザは、フォローアップ活動が全ての違反を完全に解決している
ことを保証するために、高度な電子的システムのデータの改ざんに対する脆弱性
の適切な評価が行われることを保証しなければならない。
12.2.1.5 このガイドラインの原則と一致したデータ・インテグリティの方針の実装
12.2.1.6 定期的なデータの検証手順の実装
13章 定義
Archiving(アーカイブ)
プロセスや活動の復元の目的のために、完成されたデータと関連するメタデータを
その最終的な形式での長期間、不変に保持すること
Audit Trail(監査証跡)
GMP/GDPの監査証跡は、GMP/GDP活動の復元を可能にする、GMP/GDPの重要な情報
(例えば、GMP/GDP関連データの作成、変更、削除)の記録のメタデータである
Back-up(バックアップ)
災害復旧の目的で保持される、現在の(編集可能な)データ、メタデータ、
システムの構成設定(例:分析実行に関連する様々な設定)のコピー
Computerised system(コンピュータ化システム)
報告または自動のコントロールに使用される、データの入力、電子データの処理、
情報の出力を含むシステム
Data(データ)
参照や分析のために、一緒に収集された事実、数量、統計値
Data Flow Map(データフローマップ)
情報システムのデータの流れのグラフィックな説明
Data Governance(データ・ガバナンス)
データが、生成、記録、処理、保持、使用されるフォーマットに関わらず、データ
のライフサイクルを通じて、完全で一貫して正確な記録であることを保証するため
のデータの全体的なアレンジメント
Data Integrity(データ・インテグリティ)
データが完全で、一貫していて、正確で、信用できて、信頼性があり、データの
これらの特性がデータのライフサイクルを通じて維持されている度合い
データは、帰属可能、判読可能、同時に記録され、オリジナル(または真正な
コピー)で正確であるように、安全な方法で収集され、保持されなければならない。
データ・インテグリティの保証には、理にかなった科学的な原則と、適正な文書化
の手順を含む適切な品質とリスクマネジメントシステムが必要である。データは
ALCOA+の原則に従わなければならない
Data Lifecycle(データ・ライフサイクル)
最初の生成、処理を通じた記録(変換または移行を含む)、使用、データの保持、
アーカイブ/検索、廃棄までのデータ(ローデータを含む)の有効期間内の全ての
フェーズ
Data Quality(データ品質)
生成されたデータは、生成するつもりで、意図した目的に合っているという保証
これは、ALCOA+の原則を含んでいる。
Data Ownership(データの所有)
特定のプロセスオーナーへの、データのコントロールに関する責任の割り当て
会社は、システムとデータの責任が適切に割り当てられ、責任が引き受けられて
いることを保証するためのシステムを実装しなければならない。
Dynamic Record(動的な記録)
電子記録のような、ユーザと記録の内容の間で相互作用的な関係を持った記録
Exception report(例外報告)
データのレビュ者による更なる注目や調査を求めるために、予め‘異常’と定め
られたデータまたは操作を特定し文書化するバリデートされた検索ツール
Good Documentation Practice(GdocP)(適正文書化手順)
紙・電子に関わらず、データ・マネジメント及びデータ・インテグリティの原則
を満たした、集合的、または、個々の文書化を保証する手段
Hybrid Systems(ハイブリッドシステム)
通常は紙ベースの記録を生成する定められた手動のシステムによって補われる、
通常は電子データを生成する電子システムからなる、データのマネジメントや
管理のためのシステム。
従って、ハイブリッドシステムからできる完成したデータセットは、電子と紙
のデータの両方からなる。ハイブリッドシステムは、正しい操作による両サブ
システムの効果的な管理に依存している
Master Document(原本)
オリジナルと認められ、配布または使用のためにそのコピーが管理された文書
Metadata(メタデータ)
他のデータの属性を記述するデータで、その背景や意味を提供する
通常は、データの構造、データの要素、相互関係、データのその他の特性(例:
監査証跡)を述べたデータである。メタデータは、個人(または、自動的に生成
された場合は、オリジナルのデータの発生源)に帰属可能である。メタデータ
は、オリジナルの記録の不可欠な部分を形成する。メタ―たにより提供される
前後関係がなければ、データは意味を持たない。
Quality Unit(品質部門)
医薬品品質システムの、特に、設計、効果的な実装、モニタリング、維持を
含む品質の監視に責任を負う、規制を受ける団体中の部門
Raw Data(ローデータ)
ローデータは、紙・電子的に記録されたかにかかわらず、情報の最初の保存と
して記録されるオリジナルのデータとして定義される。動的な状態でもともと
保存された情報は、その状態で利用可能であり続けなければならない。
Static Record(静的記録)
紙または電子の記録のように、固定され、ユーザと記録の内容の間で相互作用
をほとんど、もしくは、まったくもたない記録の形式
Supply chain(サプライチェイン)
製造から販売または使用場所までのあらゆる場所で医薬品の品質を保証する、
製造所、卸売及び流通場所の間の調整の全て
System Administrator(システム管理者)
コンピュータシステムや特定の電子コミュニケーションサービスの操作を管理
する人間
14章 改訂履歴
なし
◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆
まとめ
◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆
5回に分けて「GMP/GDP環境でのデータ管理とインテグリティに関する適正管理基準
(PI 041-1」を見てまいりましたが、いかがでしたでしょうか。
9章まででげっそりしているのに、10章で自社だけでなく委託先のデータ・インテグリ
ティも求められてさらにげっそりではないでしょうか。
しかし、データがあちこちでつながっている今の時代、1社だけがデータ・インテグリ
ティを実現しても、製薬業界のデータ・インテグリティの実現にはならないという
ことも感じました。
☆次回は、10/15(金)に配信させていただきます。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
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