ASTROM通信バックナンバー
月別アーカイブ
2019.09.15
【最近のウォーニングレター】ASTROM通信<178号>
~安全な医薬品の安定供給をご支援する~
こんにちは
ASTROM通信担当の橋本奈央子です。
朝晩はかなり涼しくなってきましたが、いかがお過ごしでいらっし
さて、今回も、FDA(米国食品医薬品局)の製造品質局から、製
レター(2件)について見ていきたいと思います。
今回は、FDAの査察に備えて品質文書を偽造したことで話題にな
レターが含まれています。
最後までお読みいただければ幸いです。
◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆
最近のウォーニングレターの概要
注:文中のXXはウォーニングレターでマスキングされている文言
◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆
■WL:320-19-31 中国の製造所の査察(2019/3/18~2019/3/22)
重大なCGMP違反に関する2019/8/2付ウォーニングレタ
1.貴社は、すべての成分、医薬品の容器、蓋、中間材料、包装材
を判断するための責任と権限を持った品質管理部門を制定すること
貴社の施設の査察中、貴社の品質スタッフが我々査察官に多数の品
文書に対する懸念に基づいて我々査察官がこれらの文書の正当性に
質問した。貴社のジェネラルマネージャと品質マネージャは、提供
“この査察のために”偽造されたものだと述べた。
偽造文書としては、洗浄バリデーション報告、多数の製品のバッチ
更に貴社はこれに限定されないが以下のものを含む製品の製造に関
記録を提供できなかった。
・装置の適格性評価(21 CFR 211.63)
・原材料の適格性評価 及び 原薬の試験(21 CFR 211.84)
・最終製品と原材料の試験の適格性評価(21 CFR 211.165)
・製品の安定性プログラム(21 CFR 211.166)
・バッチレコード(21 CFR 211.188)
・プロセスバリデーション(21 CFR 211.100)
貴社は回答の中で、いくつかの手書きのCGMP文書を提出した。
ればFDAはそれらの正当性について懸念する。
貴社は不備の範囲を完全にレビュし、貴社のシステムを包括的に修
貴社の医薬品の製造作業の継続的な管理を保証する手順とプログラ
貴社の回答は不十分である。
この文書への回答の中で、以下のものを提供せよ。
・貴社の品質部門が効果的に機能するための権限とリソースを与え
包括的なアセスメントと修正の計画
アセスメントには、これに限定されないが、以下のことを含むべき
○貴社で使用されている手順が安定していて適切であるかどうかの
○適切な手順の遵守を評価するための品質部門による貴社の作業全
〇品質部門の出荷判定前の、各ロットとそれに関連する情報の完全
〇調査の監督と承認、及び、すべての製品の同一性、濃度、品質、
あらゆる品質部門の職務の実行
・逸脱、食い違い、苦情、規格外(OOS : Out-of-Specification)の結果、不具合の調
の総合的なシステムの包括的で独立したアセスメント
このシステムを修正するための是正処置・予防処置(CAPA)を
に限定されないが、調査能力の大幅な向上、調査範囲の決定、根本
文書化された手順を含むべきである。CAPAの計画には、調査の
が効果的であることをいかに保証するかについても取り組むべきで
・成分、容器、蓋の全ての供給業者に適格性があり、原材料に適切
されているかどうかを判断するための、貴社の原材料システムの包
レビュは、入荷した原材料の管理が、不適合の成分、容器、蓋の使
どうかの判断も含むべきである。
・文書化手順のどこが不十分かを判断するための貴社の製造及び試
システムの完全で独立したアセスメント
作業全体を通じて、帰属可能で判読可能で完全で原本性があり正確
いることを保証するために、貴社の文書化手順を包括的に修正する
・サードパーティのコンサルタントにより実施されたデータ・イン
アセスメントには、独立した評価の対象である貴社の作業の全ての
メントの深さと範囲を含む手順のコピーを含めよ。
完全な修正の要望に関し、以下の、”データ・インテグリティの修
●CGMPコンサルタントの推奨
我々は、我々が貴社で確認した違反の性質に基づき、貴社がCGM
21 CFR 211.34章に規定された適格なコンサルタントを雇うことを強
がFDAの求める状態を遵守しようとする前に、適格なコンサルタ
について包括的な監査を実施し、貴社が実施してきた全ての是正処
することを勧める。
貴社のコンサルタントの使用は、CGMPを順守するための貴社の
経営陣には、全ての不備と不具合を解決し、継続的なCGMP順守
コンサルタントは、貴社の修正された品質システムが要件を満たし
文書が正当であるという証明を提出せよ。
●品質システム
貴社の品質システムは不十分である。21 CFR のPart210,211のCGMP要件を満たすための品質シス
とリスクマネジメントアプローチを実装するための手助けとして、
“Quality Systems Approach to Pharmaceutical CGMP Regulations”を見よ。
●データ・インテグリティの改善
貴社の品質システムは、貴社が製造した薬の安全性、効果、品質を
を適切に保証していない。CGMPを遵守したデータ・インテグリ
ガイダンスとして、FDAのガイダンス文書“Data Integrity and Compliance With Drug CGMP”を見よ。
我々は、貴社の改善を助ける適格性のあるコンサルタントを雇うこ
回答において、次の情報を提供せよ。
A.データの記録と報告の不正確性の範囲の包括的な調査
貴社の調査には、以下のことを含めるべきである。
・調査の手順と方法論の詳細
アセスメントでカバーされる全ての試験室・製造作業・システムの
しようとしている作業の正当性
・データの不正確さの性質、範囲、根本原因を特定するための、現
我々はこれらのインタビュが、適格性のあるサードパーティによっ
・貴社の製造所におけるデータ・インテグリティの不備の範囲のア
省略、変更、削除、記録の破壊、非同時の記録の完成、その他の不
データ・インテグリティの欠落している貴社の製造所の全ての作業
・試験と製造に関するデータ・インテグリティの不備の性質の包括
我々は、潜在的な不履行が確認された分野の専門知識を持った適格
のデータ・インテグリティの欠落を評価することを勧める。
B.貴社の医薬品の品質において発見された不具合の潜在的な影響
貴社のアセスメントには、データ・インテグリティの欠落の影響を
引き起こされるリスクの分析と、継続的な作業により引き起こされ
ある。
C.グローバルな是正処置・予防処置の計画の詳細を含む、貴社の
貴社の戦略には以下のことを含めるべきである。
・分析データ、製造記録、FDAに提出される全てのデータを含む
信頼性と網羅性を、貴社がどのように保証するかを述べた詳細な是
・現在のアクション・プランの範囲と深さが、調査とリスクアセス
デンスを含むデータ・インテグリティの欠落の根本原因の包括的な
データ・インテグリティの欠落の責任がある個人が、貴社でCGM
データに影響を与得ることができる状態のままかどうかを示せ。
・顧客への通知や製品の回収、追加試験の実施、安定性を保証する
ロットの追加、製品の申請アクション、強化した苦情モニタリング
医薬品の品質を保証するために、貴社がとった、または、とろうと
た暫定的な手段
・貴社のデータの完全性を保証するための、手順、工程、方法、管
資源(例:教育、職員の改善)に対する改善努力と強化を述べた長
・既に進行中または完了した上記の全ての活動に関する状況報告
●不正商標表示の医薬品に関する違反
貴社の日焼け止めローションは、病気の診断・治療・緩和・手当・
身体の構造や機能に影響を与えることを目的としているので、医薬
や注意や適切な使用指示が含まれていない。
●医薬品の回収
我々は、FDAの査察で見つけたものに基づき、アメリカ市場に出
同意したと認識している。
●結論
この文書で挙げた違反は、包括的なリストではない。貴社には、こ
し、再発を防止し、その他の違反を防止する責任がある。
FDAは2019年6月13日、貴社に輸入警告措置66-40を
貴社が全ての違反を完全に解決し、我々がCGMPの遵守を確認す
としてのいかなる新しい申請やリストの補完の承認を保留する。
出典:https://www.fda.gov/inspect
■WL:320-19-32 インドの製造所の査察(2019/2/11~2019/2/20
重大なCGMP違反に関する2019/8/2付ウォーニングレタ
●貴社は、ロットが既に出荷されたかに関わらず、説明のつかない
ロットまたはその成分の徹底的な調査を行うことを怠った。
貴社は定められたロットのリリース試験中に得られた以下の無菌の
・2018年6月4日に実施されたXXmg, XXmLの注射剤XX、ロットXXの無菌試験で、セレウス菌の成
報告された。
・2017年11月24日に実施されたXXmg, XXmL, XXの注射剤XX、ロットXXの無菌試験で、Lysinbaci
fusiformisの成長が報告された。
貴社の無菌の不具合の調査によれば、両事象に関する最も可能性の
だった。
貴社の調査は、無菌試験中の微生物の汚染の可能性には十分に対処
重視しなかった。
貴社の無菌の不具合の調査は、その結論を裏付ける十分なデータが
・無菌試験は、ISOのクラス5の層流の環境内の密閉された試験
これらの状態は、無菌試験中の偶発的な汚染の取り込みの可能性を
ような密閉された試験システムの中で発生したかもしれない特別な
・負の制御において、微生物汚染は発見されなかった。
・ISOのクラス5の環境内の環境モニタリングデータは、無菌試
かった。
・貴社の調査は、無菌試験中の無菌の欠陥を確認できなかった。
・貴社の調査は、無菌試験の実施の際に使用された試験手順、原材
を確認できなかった。
・製造の不具合の可能性は、適切に対処されなかった。
貴社は、製造の根本原因の可能性について十分に調査しなかった。
例えば、不合格の無菌試験中、隔離されていた微生物が、過去に試
のだが、同じ微生物が無菌の不具合の6ヶ月前に製造エリアでも回
にXXgm,XXmlのUSP注射剤XX、ロットXXの無菌試験
XXエリアの充填ラインで2017年9月1日に回収されていた。
USP注射剤XX、ロットXXの無菌試験で回収されたセレウス菌
充填室で回収されていた。
試験室での発見にあまりに頼りすぎていた点で、環境データの貴社
貴社は、データが、試験設備内の汚染の管理のリスクの可能性を示
製造の不具合に十分に対処しなかった。特に、貴社の調査は、これ
の密閉工程のロバスト性を含む容器の密閉の完全性の危険に十分に
の回答文書は、容器の密閉の完全性の試験(CCIT:Conta
結果の回顧的レビュの表を提出したが、それは、容器の密閉の完全
食い違い、逸脱、苦情、調査の包括的な評価が欠けていた。
とりわけ、貴社は、過去に、CCITの試験にもともと合格した製
の不具合により製品の回収を行っていた。容器の密閉システムの完
ために重要である。
貴社は、ロットの一部(サブロット)を不合格にし、残りのサブロ
した。
我々は、FDAとの話し合い後の、貴社の、出荷したサブロットの
レータの設置の判断を認識している。また、我々は、貴社がこれら
実施し、文書内の根本原因の適切な詳細を提出するだけでなく、影
ロット(またはサブロット)に関する影響のアセスメントを実施す
手順を評価するという貴社の約束を認識している。
この文書への回答の中で、以下の情報を提供せよ。
・逸脱、普通でない事象、苦情、OOSの結果、不具合の調査に関
貴社の是正処置・予防処置(CAPA)の計画には、これに限定さ
の欠陥の原因になりうる作業のばらつきの原因のレビュの厳格化を
また、CAPAの効果の評価に関する貴社の手順を含めよ。
・食い違い、逸脱、苦情、メンテナンス、ロットの欠陥の履歴の詳
に関する調査と、容器の密閉の完全性の問題に関する記録の、包括
2016年7月以降の全てのレビュを含めよ。この評価に基づき、
のロバスト性を評価するための最新の回顧的レビュを提出せよ。
・今後の無菌の不具合の調査に、これに限定されないが、特に、貴
の一様性のレビュや、容器の密閉システムの完全性等、製造作業の
を含めることを保証する貴社の計画と手順
・この文書で話し合われた件以外で、2017年以降の複数の追加
サンプルの発見に起因する、貴社の無菌試験の方法の包括的なサー
提出せよ。明らかに誤りの不透明の測定値につながるばらつきの根
された方法のロバスト性に重点をおくべきである。
・貴社の殺菌装置全体の熱分布と致死率の一様性に重点を置いた、
パーティのレビュ
このレビュでは、物理及び生物的なデータの完全な評価をすべきで
のデータの分析と、貴社の殺菌サイクルの正当性に関するいかなる
温度マッピング/負荷実験、各ロットの微生物の指標に関するD-
の原因に関する詳細な分析を含めよ。2017年以降のバリデーシ
XX(または最も広いばらつきの位置)を明記せよ。
●繰り返しの違反
2017年8月7日~17日の前回の査察で、貴社が不十分に実施
CGMP違反の所見をあげた。繰り返しの不具合は、医薬品の製造
ことを示している。
貴社の経営陣は、全ての欠陥を完全に解決し、継続的なCGMP遵
システムと工程と、最終的に製造された製品がCGMP要件に従う
作業をすぐに包括的に評価すべきである。
●結論
この文書で挙げた違反は、包括的なリストではない。貴社には、こ
し、再発を防止し、その他の違反を防止する責任がある。
貴社が全ての違反を完全に解決し、我々がCGMPの遵守を確認す
業者としてのいかなる新しい申請やリストの補完の承認を保留する
出典:https://www.fda.gov/inspect
◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆
まとめ
◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆
いかがでしたでしょうか。
1件目の査察対策のために品質文書を偽造した件。
レター内の“文書化手順のどこが不十分かを判断するための貴社の
ている文書化システムの完全で独立したアセスメント”に関するパ
ALCOAの原則((Attributable(帰属性)、Le
Original(原本性)、Accurate(正確性))の記
データ・インテグリティの改善を求めるレターはたくさん見てきま
が書かれたレターを見た記憶がなかったので新鮮でした。
文書化作業の中でALCOAの1つ1つの要素を確実にしていかな
実現できないということあらためて実感しました。
☆次回は、10/1(火)に配信させていただきます。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
★弊社サービスのご案内
https://drmarketing.jp/cch/73/
★ブログ毎日更新中!
◆ PROS.社長の滋養強壮ブログ
https://drmarketing.jp/cch/73/
◆ 営業ウーマンの営業報告ブログ
https://drmarketing.jp/cch/73/
※URLクリック数の統計をとらせていただいております。
本メルマガは、名刺交換させていただいた方に、毎月1日、15日
今後このような情報が必要ない方は、お手数ですが、こちらに配信
hashimoto@e-pros.co.jp
【発行責任者】
株式会社プロス
『ASTROM通信』担当 橋本奈央子