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2018.09.14

【最近のウォーニングレター】ASTROM通信<154号>

 ~安全な医薬品の安定供給をご支援する~
こんにちは 
ASTROM通信担当の橋本奈央子です。

猛暑がおさまったかと思ったら急に涼しくなってきましたが、いかがお過ごしでいらっしゃいますか。

さて、今回もFDA(米国食品医薬品局)の製造品質局から最近出たウォーニングレター(4件)について
見ていきたいと思います。
この4件のうちの1件は、前回に引き続き、日本の医薬品製造所のデータ・インテグリティについて
の指摘となっています。
海外の規制当局が、どんな点をデータ・インテグリティの欠落ととらえているか、是非参考にして
いただければと思います。


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最近のウォーニングレターの概要  
注:文中のXXはウォーニングレターでマスキングされている文言です。
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■WL:320-18-64 カナダの製造所の査察(2017/9/25~2017/9/27)でみつかった原薬製造における
重大なCGMP違反に関する2018/7/24付ウォーニングレターには、下記の指摘事項があげられています。
1.規格に一致することを保証するための試験の実施と、その結果の分析証明書(COA)上での正確な
  報告の不実施
貴社は、XXの原薬の多数のロットを、必要とされる同一性に関するリリース試験を完了することなく
出荷した。貴社のCOAは、これらの製品は要求される全ての規格を満たすと報告した。我々は、原薬XX
のロットXXのCOAと試験室のノート、及び、少なくとも2015年まで遡って複数ロットをレビュした。
試験室のノートはCOAの情報を裏付ける分析データが不足していた。貴社は、我々査察官に、COAは
同一性試験に“合格した”と述べているが、その試験を実施しなかったことを認めた。貴社は要求
された試験を実施しなかったが、虚偽の情報をのせたCOAとともに、これらの原薬をアメリカ市場に
出荷した。
貴社は回答の中で、2015年以降に製造されたロットに関する同一性試験の結果を提供した。貴社は、
我々の査察で貴社が最初に試験を実施していないこと発見した後に、これらの回顧的分析を実施した。
貴社は2015年以降に製造され査察中に見つかったロットは試験したが、使用期限内にある全ての出荷
されたロットの試験は実施しなかったので、貴社の回答は不十分である。さらに、貴社は、その他の
製品について、品質特性に関する試験結果を偽って報告されていないかどうかを判断するために全て
のリリースされた記録の徹底的なレビュを実施しなかった。
顧客と規制当局は、原料の品質と供給源についての重要な情報に関し分析証明書を信頼する。COAの
信頼できない情報は、サプライチェインの報告義務や品質保証を損ない、顧客を危険にさらすかも
しれない。
この文書への回答の中で以下の情報を提供せよ。
・データの記録と報告の不正確な範囲の包括的な調査
 データ・インテグリティの欠落の範囲と根本原因の詳細な記述を含めよ。
・原薬の品質に関わるデータ・インテグリティの逸脱の潜在的な影響に関する現在のリスクアセス
 メント
 貴社のアセスメントに、データ・インテグリティの欠落による患者へのリスクの分析を含めよ。
・貴社のグローバルな是正処置及び予防処置の詳細を含む管理戦略
 詳細の是正処置の計画では、試験室のデータ及び製造記録を含む貴社で生成された全てのデータ
 の信頼性と完全性をいかに保証するかを述べよ。
2.貴社の品質部門が、貴社の製造所で製造された原薬がCGMPに従っていることを保証するための
  責任の不履行
貴社の品質部門は、原薬XXがCGMPに従って製造されたことを保証するために複数の重要な作用を果た
すことを怠った。例えば、貴社の品質部門は、出荷前に、原薬のバッチが制定された規格や基準に
確実に従うために実施される全ての試験から得られる完成されたデータを含む記録がレビュされた
ことを保証することを怠った。貴社の品質部門は、サンプルの重さや、含有物の試験の準備の詳細
を文書化しなかった。
貴社の品質部門は、安定性試験用のサンプルが、管理された温度や湿度で保管されることを保証する
ことを怠った。貴社は、温度や湿度をモニタリングせず品質管理試験室内の棚にXXの保管サンプルと
安定性試験用サンプルを保管した。
更に、貴社の品質部門は原薬を製造するために使用される建物や設備の清浄度を保証しなかった。
貴社は、貴社の包装材料の保管エリア内の有害生物を防ぐための十分な管理に欠けていた。少なく
とも2回、我々査察官は、原薬の包装に使用される、ラップして積み上げられた容器の中と上に虫と
蜘蛛の巣を発見した。
また、貴社の品質部門は、洗浄バリデーションの記録が正確で、適切な文書を含むことを保証しな
かった。例えば、貴社は原薬を製造するために使用するXXの洗浄をバリデートするための検証に
おいて、すすぎの回数を文書化しなかった。
貴社は回答の中で下記のことを実施するつもりであると述べた。
・情報が試験室のノートに記録されているものであることを明確にするための文書化手順の改訂
・安定性試験用チャンバーの購入と、安定性試験プログラムの改善
・包装材料を清潔にし、有害生物の侵入を防ぐ倉庫内の場所に移動すること、及び、包装材料の
 検査の要件に基づいた職員の教育
・文書化されたすすぎ回数の洗浄バリデーションの繰り返し、及び、該当する洗浄手順とチェック
 リストの改訂
貴社の回答は、十分な詳細情報、または貴社が提案した是正処置・予防処置(CAPA)により貴社の
作業がCGMPに準拠することを示すエビデンスを提供しなかった
この文書への回答の中で、品質部門の役割と責任が明確に定義されて制定されることを保証する
ために実行したCAPA計画と手順を提供せよ。そこには、これに限定されないが、品質保証部門が
適切な権限と、その責任を果たすために必要なリソースを持つことを保証することが含まれるべき
である。
また、下記の情報を提供せよ。
・試験室のノートに記録されるべき詳細の情報を明確に述べた、改訂された文書化手順
・安定性試験用チャンバーを貴社が購入し適格性を評価したことを示すためのエビデンスと、改善
 された安定性試験のプロトコル
・原材料の適切な保管と検査に関する貴社の手順
・貴社の新しい洗浄バリデーションの研究をまとめたレポート
・貴社の改訂された洗浄手順とチェックリスト
●CGMPコンサルタントの推奨
我々が貴社で発見した違反の性質に基づき、我々は、CGMP要件を満たす手助けをする適格なコンサル
タントを雇うことを強く勧める。我々は、適格性のある第三者がデータ・インテグリティを含むCGMP
の順守に関して貴社の全ての作業を包括的に監査し、全ての是正処置・予防処置の完了と効果を評価
することを勧める。
貴社のコンサルタントの使用は、CGMPを順守するための貴社の義務を軽減するものではない。貴社の
経営陣には、全ての不備を解決し、継続的なCGMP順守を保証する責任が残る。
●結論
この文書に引用された逸脱は、すべての包括的なリストではない。貴社は、原因を究明し、再発を
防止し、他の逸脱を防止するために、これらの逸脱を調査する責任を負う。
貴社が全ての逸脱を完全に是正し、我々が、貴社がCGMPに準拠していることを確認するまで、FDAは
いかなる新しい申請や医薬品製造者としての貴社の追補リストの承認を保留する。
出典:https://www.fda.gov/ICECI/EnforcementActions/WarningLetters/ucm615346.htm

■WL:320-18-65 中国の製造所の査察(2017/9/11~2017/9/14)でみつかった原薬製造における重大
なCGMP違反に関する2018/7/26付ウォーニングレターには、下記の指摘事項があげられています。
1.装置の洗浄とメンテナンスの手順の適切なバリデートの不履行
貴社は、非専用製造装置の洗浄手順が、XXを含む原薬同士の潜在的な交叉汚染の発生を防ぐのに適切
であることを示すための洗浄バリデーション検討を実施しなかった。貴社は、この装置で中間体も
加工した。
さらに、貴社は、中間体XXと原薬を製造するために使用する重要な非専用製造装置の大半の洗浄バリ
デーションを実施することを怠った。
反応器XXが重要な多目的使用装置の例である。
査察中、貴社の職員は、製造の合間は、装置の洗浄について文書化することは要求されていないと
述べた。例えば、XXのバッチXXに関し、貴社は、バッチの製造の前に装置の洗浄が実施されたことを
示すための洗浄記録を1枚だけ提供することができた。
貴社は回答の中で、非専用装置の洗浄バリデーションを実施する予定であると述べた。しかし、貴社
は、装置が、製造の合間に適切に洗浄されることを保証するための計画を提供することを怠った。
この文書への回答の中で下記の情報を提供せよ。
・医薬品の製造に使用する全ての装置の改訂された洗浄バリデーションの手順と報告、及び、制定
 された合格基準
 また、これに限定されないが、洗浄作業の文書化を含む、装置の洗浄とメンテナンスに関する改訂
 された手順を含めよ。
・不適切な洗浄手順の影響を受ける可能性のあるアメリカ市場に販売される中間体と原薬の全ての
 ロットを判断するためのリスクアセスメント
 このアセスメントには、これに限定されないが、潜在的な交叉汚染のリスクがある全ロットの
 保管ロットの分析を含めるべきである。
・必要な場合、アメリカのサプライチェインにある潜在的に交叉汚染のリスクがある中間体及び原薬
 のロットに対処するための顧客への通知、保管サンプルの試験手順、向上された苦情のモニタリング、
 回収を含む、貴社が提案する市場に対するアクションプラン
・バリデーションの検証を終える前に、これに限定されないが、異なる原薬または中間体の切り替え前
 に洗浄の効果を保証するための洗浄の検証試験の実施を含む、適切な洗浄を保証するための暫定的な
 アクションプランを提出せよ。また、各原薬または中間体に関する貴社の合格基準を含めよ。
・貴社の製造所で製造される薬(原薬及び中間体)同士の交叉汚染のリスクを特定するための包括的
 で独立したレビュ
 交叉汚染を防ぐために貴社の設備や工程の設計の適格性を評価せよ。また、貴社の装置、原薬、
 職員、廃棄物のフローの評価を提供せよ。システム的な改善及びタイムラインと共に、詳細の是正
 処置・予防処置(CAPA)を提供せよ。
2.貴社の原薬が制定された品質や純度の基準に従うことを確実にするために全ての試験手順が科学的
  に合理的で適切であることを保証することの不履行
貴社は原薬XXに関する適切な分析試験を実施することを怠った。例えば、貴社は、システムの適格性
試験の実施や基準の使用をすることなく、関連物質の分析及び残留溶媒の試験を実施した。さらに、
貴社の分析者は、文書化された手順もなしに、クロマトグラムのマニュアルの積分を実施した。
貴社は回答の中で、分析者に基準の使用と、システム適合性試験の実施と、クロマトグラフの積分に
関する適切な手順の使用を求める手順を制定したと述べた。しかし、貴社は、基準を使用した手順と
システム適合性の情報を提出しなかった。また、貴社の回答は、新しい手順を実装する前に生成された
データのマニュアルの積分の影響についての回顧的な評価が欠けていた。
この文書への回答の中で下記の情報を提供せよ。
・適切な指示・適合性の基準の方法を備えていることを保証するために使用され、目的に合っているか
 を判断するためにバリデートされてきた、全試験方法の評価
・システム適合性や基準に欠けた方法を使って分析された、リテスト日前の全てのバッチに関する
 再分析の計画
・全てのクロマトグラフのマニュアルの積分の事例の包括的なレビ
 分析のために使用されたマニュアルの積分パラメータの科学的な正当性を提供せよ。科学的正当性
 の欠けた積分に関し、適切な再積分パラメータを使った再積分の計画を提出せよ。再積分の結果が、
 貴社が制定した原薬の合格基準に従うかを評価せよ。もし規格外試験結果(OOS)が見つかった場合、
 販売された製品の品質を保証し患者を守るために貴社がとった、もしくは、とろうとしている顧客
 への通知や回収などのアクションについて述べよ。
・貴社の試験室の手順、方法、装置、分析者の能力の包括的で独立したレビュを提供せよ。このレビュ
 に基づき、貴社の試験室のシステムを完全に改善するために詳細なCAPAの計画を提供せよ。CAPAの
 要素には、これに限定されないが、方法のバリデーションや試験結果のレビュや承認について、
 品質保証の監督を強化するために貴社がとろうとしている方法を含めよ。計画には、実施された
 CAPAの効果の評価に関する貴社の手順を含めるべきである。
3.原薬の安定性をモニタし、適切な保管条件やリテスト日・使用期限を確認するためにモニタの
  結果を使用するための文書化した安定性プログラムの設計の不履行
例えば貴社は、原薬XXのリテスト日を裏付けるための安定性試験データを持っていない。また、貴社
は、原薬の継続的な年次の安定性モニタリングを実施していなかった。
回答の中で、貴社は、次の製造キャンペーンの間に、原薬XXの安定性のモニタリングを開始すると
いう計画を述べた。貴社は、その間のリテスト日に関する正当性を提出することを怠った。
この文書への回答の中で、アメリカ市場向けに製造される原薬の完全な安定性プログラムの開発と
実施をするためのタイムライン付きのアクションプランを提出せよ。プログラムは、各原薬に指定
された全てのリテスト日や工程の滞留時間を裏付けるために設計されなければならない。アメリカ
市場に販売された全ての原薬の安定性を評価せよ。
4.貴社の製造工程が、再現可能な方法で、あらかじめ定められた品質特性を満たす原薬を製造でき
  ることを示すことの不履行
貴社は、いくつかの原薬に関し、工程の性能適格性評価を実施することを怠った。また他の原薬に
ついては、それらの原薬に関し、貴社の製造工程で重要な変数(例:パラメータ)を適切に評価
しないまま、部分的な工程の性能適格性評価を実施した。さらに、貴社は、安定した製造作業と
一貫した品質を保証するための工程管理のモニタリングに関する継続的なプログラムを持っていない。
回答の中で、貴社は、原薬のプロセスバリデーションを終えるつもりであると述べた。しかし、貴社
は、貴社の原薬が再現可能な方法で製造されることをいかに保証するかを明確に述べていなかった
ので、貴社の回答は不十分である。また、貴社は、製造工程が薬の品質に悪影響を及ぼしていないか
を判断するための回顧的レビュの情報を提出しなかった。
この文書への回答の中で、貴社のバリデーション手順とバリデーション報告を提供せよ。また、
アメリカ市場に販売された全ての原薬の製造工程に関する性能適格性評価のステイタスの最新情報
と、貴社の製造工程の継続的な管理状態を保証するためのプログラムを提供せよ。
●製造所の繰り返しの指摘
実施した2011年9月12日~15日、2014年9月1日~9月4日の査察中、FDAはCGMPに関する類似の査察
結果を挙げた。貴社は、回答の中でこれらの査察結果に関し詳細の改善を提案した。これらの繰り
返される不履行は、貴社の経営陣の中間体及び原薬の製造の監督と管理が不十分であることを示して
いる。
●CGMPコンサルタントの推奨
我々が貴社で発見した逸脱の性質に基づき、我々は、CGMP要件を満たす手助けをする適格なコンサル
タントを雇うことを強く勧める。また、我々は、貴社のコンプライアンス状態の解決をする前に、
第三者が貴社のCGMPを遵守に関し、貴社の全ての作業を包括的に監査し、貴社の全ての是正処置
及び予防処置の完了と効果を評価することを勧める。
貴社のコンサルタントの使用は、CGMPを順守するための貴社の義務を軽減するものではない。貴社
の経営陣には、全ての不備を解決し、継続的なCGMP順守を保証する責任が残る。
●結論
FDAは2018年1月10日、貴社に輸入警告措置をとった。
出典:https://www.fda.gov/ICECI/EnforcementActions/WarningLetters/ucm616310.htm

■WL:320-18-66 インドの製造所の査察(2018/2/26~2018/2/28)でみつかった医薬品製造における
重大なCGMP違反に関する2018/7/27付ウォーニングレターには、下記の指摘事項があげられています。
1.貴社は、出荷前に、医薬品の各バッチについて、各有効成分の同一性、力価を含む規格を十分
  に満たすかどうか試験室の判断を行うこと、また、好ましくない微生物がないことが求められる
  医薬品の各バッチについて、必要な試験を行うことを怠った。 
貴社は、有効成分の同一性と力価に関する試験をせずに、OTC医薬品を出荷した。この試験なしに、
貴社の製品が規格に一致するかどうかを判断することはできない。
また、貴社の職員は査察中に我々査察官に、出荷するための判断を支える貴社の分析証明書(COA)
に記録された微生物試験の結果は偽造されていて、試験は実施されていなかったとしらせた。
さらに、貴社には、貴社が実施し記録する最終製品の試験に関する手順が不足していた。
この文書への回答の中で以下の情報を提供せよ。
・販売を判断する前にOTC医薬品の各ロットを分析するために使用される全ての化学及び微生物の
 試験方法と規格
・アメリカ国内に販売された有効期限内の全てのOTC医薬品の保管サンプルの試験から得られる試験
 結果のサマリ
 有効成分の同一性と力価の試験結果及び、全ての適切な化学及び微生物の品質特性を含めよ。
2.貴社は、同一性、純度、力価、品質に関する文書化された規格への一致について、各成分の
  サンプルを試験することを怠った。
貴社は、入荷した有効成分を含む原材料について、同一性、純度、力価、その他の品質特性について
試験することを怠った。また、貴社は、適格性が評価されていない供給者から得たCOAの信頼性を
立証しなかった。さらに貴社の、入荷、取扱い、保管、サンプリング、試験の手順は不十分であった。
この文書への回答の中で、以下の情報を提供せよ。
・全ての入荷した成分のリリースに関する品質管理の規格と、各ロットについて実施する試験の
 品質管理の規格
・各原材料の製造業者から得た分析証明書をバリデートするための、全ての入荷した成分の全ての
 試験から得られる試験結果のサマリ
・貴社が製造したOTC医薬品を試験する契約設備の適格性評価と監視のための手順のサマリ
・各供給者から得られた全ての容器、蓋、成分が適格に評価されているかを判断するための原材料
 システム、有効期限またはリテスト日の包括的で独立したレビュ
 不適切な容器、蓋、成分の使用を防ぐための、入荷した原材料のロット管理が適切かどうかの
 包括的で独立したレビュ
3.貴社は、バッチの均一性を保証するための、製造指図記録の作成に関する手順を制定し従うこと
  を怠った。貴社は、製造された製品の各ロットの製造指図記録に関連する完全な情報と共に
  製造指図記録を作成することを怠った。
貴社の製造指図記録は不十分である。それらは下記の情報を含んでいない。
・製造指図
・秤量されロットに加えられた成分の実際の量
・使用される主要装置及びラインの確認
・サンプリングの情報
・収量
・使用前後のエリアの検査や、関連する容器、蓋、ラベルの情報を含む包装及びラベル貼付の記録
この文書への回答の中で、適切で承認された製造指図記録のない、アメリカ市場に出荷された製品
のリスクアセスメントを提供せよ。また、貴社が、製造記録が要求された通りに完成され、出荷前
に品質部門によりレビュされることを確実にするために実装された、または、改訂された手順を
提出せよ。
4.貴社は、すべての成分、製品容器、蓋、中間材料、包装材料、ラベル、別の会社により契約の
  もとで包装または保管されたものを含む製造され加工され包装された製品が、合格か不合格を
  判断する責任と権限を持った品質管理部門を制定することを怠った。貴社は、品質管理部門に
  適用可能な文書化された責任と手順を制定することを怠った。
貴社は、適切な品質管理部門が欠けている。また、品質管理部門の多数の機能に関する適切な手順を
持つことを怠った。貴社は、下記の製造作業に関し、不適切な手順を使うか、もしくは手順が存在
していなかった。
・品質部門の作業
・製造
・試験室の試験
・原材料の取扱い
・訓練
・包装及びラベル張り
・装置の洗浄
・安定性試験
この文書への回答の中で、包括的なアセスメント、及び、貴社が適切な権限・責任・リソースを
持った効果的な品質部門を制定することを確実にするための是正処置及び予防処置(CAPA)の計画を
提供せよ。
●品質部門の権限
この文書内の重大な査察結果は、貴社の品質部門がその権限と責任を完全に果たせていないことを
示している。貴社は、品質部門がその責任を果たし一貫して医薬品の品質を保証するために、適切な
権限と十分なリソースを提供しなければならない。
●データ・インテグリティの改善
貴社の品質システムは、貴社が製造した薬の安全性、効果、品質を裏付けるデータの正確性・完全性
を適切に保証していない。この文書への回答において、次の情報を提供せよ。
A.アメリカ市場に販売された薬のデータのレビュの結果を含む、データの記録と報告における
  不正確さの範囲の包括的な調査
  貴社のデータ・インテグリティの欠落の範囲と根本原因の詳細な記述も提出せよ。
B.貴社の薬の品質で発見された不十分な手順に関する潜在的な影響についての現在のリスクアセス
  メント
  アセスメントにはデータ・インテグリティの欠落の影響を受けた薬の出荷により引き起こさ
  れた患者のリスクと、継続的な操作によるリスクの分析を含めるべきである。
C.全体的な是正処置及び予防処置の計画の詳細を含む貴社の管理の戦略
  詳細な是正処置計画には、試験のデータ、製造記録、FDAに提出した全てのデータを含む貴社で
  生成された全てのデータの信頼性と網羅性を貴社がどのように保証するつもりかを述べよ。
●CGMPコンサルタントの推奨
我々が貴社で発見した違反の性質に基づき、我々は、CGMP要件を満たす手助けをする適格なコンサル
タントを雇うことを強く勧める。また、我々は、貴社のコンプライアンス状態の解決をする前に、
適格性のあるコンサルタントが貴社のCGMPを遵守に関し、貴社の全ての作業を包括的に監査し、
貴社の全ての是正処置及び予防処置の完了と効果を評価することを勧める。
貴社のコンサルタントの使用は、CGMPを順守するための貴社の義務を軽減するものではない。貴社の
経営陣には、全ての不備を解決し、継続的なCGMP順守を保証する責任が残る。
●承認されていない新薬
貴社のXXは、診療、治療、緩和、手当または病気の予防を意図し、体の組織や機能に影響すること
を目的した”医薬品“だが、必要とされる量の有効成分を含んでいない。
●虚偽表示
貴社のXXのラベルに、国内の住所や電話番号を開示することを怠った。
●結論
FDAは2018年6月11日、貴社に輸入警告措置をとった。
出典:https://www.fda.gov/ICECI/EnforcementActions/WarningLetters/ucm615992.htm

■WL:320-18-70 日本の製造所の査察(2017/9/4~2017/9/8)でみつかった原薬製造における重大
なCGMP違反に関する2018/8/10付ウォーニングレターには、下記の指摘事項があげられています。
1.貴社の品質部門は、貴社の製造所で正当された原薬がCGMPに従うことを保証する責任を果たす
  ことを怠った。
貴社は規格外試験結果(OOS)またはその他の不合格結果を得た後、リテストやデータの操作を行った。
例えば、調査2016-C-023は、原材料XXのHPLC分析に関し、システム適合性試験(SST)が規格に一致
せず、いくつかのデータはSSTの規格に一致するように操作されたことを示した。貴社は、“CGMPの
逸脱の重大性の認識の不足”と、“試験データを容易に操作できたこと”を根本原因とした。貴社の
調査は、雑なサンプルを分析したと述べ、それは規格を満たしたと結論づけた。貴社は更なる根本
原因の詳細と、原材料を試験するためにSSTが不合格のシステムを使った影響を提出しなかった。
貴社の回答は、販売された製品にOOSは見つからなかったと述べたが、この結論を裏付けるデータを
提出しなかった。貴社は、別のデータ・インテグリティの問題を確認したが、貴社が実施した是正
手段に関する詳細を提供することを怠ったので、貴社の回答は不適切である。
この文書への回答の中で、逸脱・不具合・OOSの結果、苦情、その他の不合格の結果の調査のための
全てのシステムの徹底的なアセスメントの情報を提供せよ。さらに、制定した規格または製造の基準
に一致しないロットを出荷したかどうかを判断するために、使用期限内の全ての出荷済ロットの
回顧的レビュの結果を提供せよ。
2.不正なアクセスやデータの変更を防ぐためのコンピュータ化システムの十分な管理を行うこと
  を怠り、データの削除を防ぐための適切な管理を怠った。
貴社のHPLCシステムの管理は不十分である。いくつかのHPLCシステムは、監査証跡の機能がないか、
監査証跡を有効にしていなかった。更に、HPLCを操作するために、各自のユーザ名やパスワードを
義務付けなかった。貴社は、固有のユーザ名やパスワードを作らなかったため、前の操作者が始めた
作業を別の操作者が続けることができたと述べた。
年次製品照査の中で、貴社は、標準偏差や工程能力などの製造データの計算と統計的評価を行うため
に、保護されていないエクセルのワークシートを使用した。これらの電子ファイルは、不正な変更を
防ぐために保護されておらず、変更の履歴もない。
貴社のデータ管理の欠如は、貴社のデータの信頼性に疑問を生じさせる。
貴社は回答で、監査証跡機能のないこれらのHPLCシステムの操作を停止したと述べた。貴社は回答で、
電子ワークシートの管理の手順を作るつもりであると述べた。管理されていないHPLCシステムや、
製品の保護されていないワークシートから得たデータを使用することの影響を評価していなかった
ので、貴社の回答は不十分である。
この文書への回答の中で、貴社の試験室の装置で生成された電子データに関する管理と手順の包括的
で独立したレビュの情報を提出せよ。このレビュに基づき、これに限定されないが、データの生成・
修正・維持・保存、システムのセキュリティを含む、試験室のシステムを改善するための詳細な
是正処置・予防処置(CAPA)の計画を提出せよ。貴社の計画には、CAPAの効果を評価するために使用
する手順も含めよ。
●複数の製造所での繰り返しの指摘
FDAは、先のウォーニングレター(WL320-10-009)にて、貴社の品質部門が十分な調査とOOSの文書化
を行わなかったことについて、類似のCGMPの逸脱を指摘した。FDAは、2017年9月の査察中に貴社のXX
製造所で類似のCGMPの逸脱を指摘した。これらの繰り返される不履行は、医薬品の製造に関する貴社
の経営陣の監督と管理が不十分であることを示している。
貴社の経営陣には、全ての不備を完全に解決し、継続的にCGMPに従うことを保証する責任が残る。
貴社は、システムと工程、最終的には製造された製品がFDAの要求に従うことを保証するために、
すぐに包括的に、貴社の全体的な製造作業を評価すべきである。
●データ・インテグリティの改善
貴社の品質システムは、貴社が製造した薬の安全性、効果、品質を裏付けるデータの正確性・完全性
を適切に保証していない。我々は、貴社の作業を監査し、FDAの要件を満たす手伝いをするコンサル
タントを使用することを認める。貴社が使用する第三者の各コンサルタントは、データ・インテグリ
ティの改善を含む、アサインされた特定の機能に関し適格でなければならない。
この文書への回答において、次の情報を提供せよ。
A.データの記録と報告における不正確さの範囲に対する包括的な調査
調査には下記を含めよ。
・調査手順と方法論の詳細:アセスメントの対象となる全ての試験室・製造作業・システムの概要、
 貴社が除外を検討している作業の正当性を示す理由
・データの不完全性の性質・範囲・根本原因を特定するための現在及びかつての従業員の面接
 我々は、これらの面接が適格な第三者により実施されることを推奨する。
・貴社の設備におけるデータ・インテグリティの欠陥の範囲のアセスメント
 データの省略、変更、削除、記録の破棄、非同時の記録の完成、その他の欠陥の特定をせよ。
 貴社が発見したデータ・インテグリティの欠落箇所について、全ての設備の操作を述べよ。
・試験・製造・その他のデータ・インテグリティの欠陥の性質についての包括的で回顧的な評価
 我々は、違反の可能性のある分野の特別な専門知識をもった適格な第三者が、すべてのデータ・
 インテグリティの欠陥について評価することを推奨する。
B.貴社の薬の品質で発見された問題に関する影響の可能性についての現在のリスクアセスメント
アセスメントにはデータ・インテグリティの欠落の影響を受けた薬の出荷により引き起こされた
患者のリスクと、継続的な操作によるリスクの分析を含めるべきである。
C.全体的な是正処置及び予防処置の計画の詳細を含む貴社の管理の戦略
貴社の戦略には下記のことを含めよ。
・分析データ、製造記録、FDAに提出した全てのデータを含む貴社が生成した全てのデータの信頼性
 と網羅性を保証するために貴社がどのようにするつもりかを述べた是正処置計画の詳細
・現在の行動計画の範囲と深さが、調査とリスクアセスメントで見つかったことに釣り合うことを
 示すエビデンスを含んだ、データ・インテグリティの欠落の根本原因の包括的な記述
 データ・インテグリティの欠落に責任のある個人が、貴社のCGMP関連または薬の申請データに依然
 影響を与えるかどうかを示すこと。
・顧客への通知、製品の回収、追加試験の実施、安定性を保証するための安定性プログラムへの
 ロットの追加、薬の申請の活動、苦情のモニタリングの強化のような、患者を保護し、貴社の薬の
 品質を保証するためにとられた処置、及び、これから取ろうとしている処置を述べた暫定的な手段
・貴社のデータの完全性を保証するための、全ての改善の努力と、手順、工程、方法、管理、システム、
 経営者の管理、人的資源(例:訓練、職員の改善)の強化を述べた長期的手段
・上記活動が既に進行中または完了といったステイタスの報告
●結論
この文書で言及した逸脱は包括的なリストとしては表されていない。貴社は、これらの逸脱の調査、
原因の特定、再発の防止、その他の逸脱の防止に責任を負う。
貴社が全ての逸脱を完全に是正し、我々が、貴社がCGMPに準拠していることを確認するまで、FDAは
いかなる新しい申請や医薬品製造者としての貴社の追補リストの承認を保留する。
出典:https://www.fda.gov/ICECI/EnforcementActions/WarningLetters/ucm617419.htm


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まとめ
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ここにきて、日本の製造所に対して立て続けにウォーニングレターが出ています。
具体的には、2018/7/17は原薬の製造所(前回のメールマガジンを参照ください)が、また、
2018/8/10は医薬品の製造所が、データ・インテグリティの不備を指摘されています。

私自身、製薬会社様の所にうかがう機会が多いですが、生産量の増加に伴い工場や設備の増設は
真っ先に検討されても、データ・インテグリティの対策が二の次になっているケースが多いこと
を実感しています。

不正アクセスの防止や監査証跡機能の実装といった最低限の対策は、必要不可欠な時代になって
きていることを認識し、今、本気でデータ・インテグリティ対策に取り組まなければ、近い将来、
日本の製薬業が海外からの信頼を失いかねないのではないかと気がかりです。

☆次回は、10/1(月)に配信させていただきます。


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