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2018.03.30

【MHRA発GXPデータ・インテグリティ・ガイダンス】ASTROM通信<143号>

 ~安全な医薬品の安定供給をご支援する~

こんにちは
ASTROM通信担当の橋本奈央子です。

桜の花も、もう散り始めてしまいましたが、いかがお過ごしでいらっしゃいますか。

さて今回は、2018年3月9日にMHRA(英国医薬品庁)が発出したGXPデータ・インテグリティ・
ガイダンスについて取り上げたいと思います。

ご存知の通り、データ・インテグリティは、昨今非常に重要視されていて、2016年8月には
EMAがデータ・インテグリティに関するQ&A集を出しましたが、今回のGXPデータ・インテ
グリティ・ガイダンスは、それを踏まえたガイダンスとなります。
イギリスはEUを離脱はしますが、このガイダンスにはヨーロッパの当局のデータ・インテ
グリティに関する最新の見解がまとめられていますので、是非最後までお読みいただければ
幸いです。


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GXPデータ・インテグリティ・ガイダンスの概要
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2018年3月9日、MHRA(英国医薬品庁:Medicines and Healthcare products Regulatory Agency)
より、8章、21ページからなるGXPデータ・インテグリティ・ガイダンスが発出されました。
ここでいうGXPとは、MHRAにより管理されるさまざまな実施基準(good practice)をさし、
GCP(Good Clinical Practice)、GDP(Good Distribution Practice)、
GLP(Good Laboratory Practice)、GMP(Good Manufacturing Practice)、
GPvP(Good Pharmacovigilance Practice)を対象とします。
MHRAは、ドラフト版の作成後、業界や全GXPの専門グループ等から1300件以上のコメントを受け
取り、それらを考慮し、2年をかけてこの正式版をまとめたため、読み応えのあるガイダンスに
なっています。


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GXPデータ・インテグリティ・ガイダンスの内容
※全訳ではありませんので、気になる部分は是非原文でご確認ください。
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1章 背景
規制関連データの生成方法は、技術の進歩や、サプライ・チェーン及び業務の複雑化により、
発展し続けてきた。これらを支援するシステムは、紙の記録を使ったマニュアルの処理から、
完全なコンピュータ化システムの使用にまで及ぶが、規制要件の主要な目的は同じで、患者の
安全と製品の品質を保証するために、生成されたデータの質と完全性に関する信頼性を持つこと
と、活動を再構成できることにある。

2章 序文
2.1 この文書はMHRAの規制を受ける業界及び公的機関に助言を与える。
   このガイダンスは、PIC/S、WHO、OECD(GLPのガイダンス及び勧告)、
EMA(欧州医薬品庁:European Medicines Agency)のガイドラインや規制と調和している。
2.2 このガイダンスは、MHRAの査察官、パートナー、パブリックコメントを経て開発された。
2.3 ユーザは、リスクからデータを保護する場合、その作業は、その他の順守すべき優先事項
と釣り合いが取れていることを保証しなければならない。
2.4 このガイダンスの対象はGXPである。但し、医療機器は含まれない。
2.5 このガイダンスは、MHRAのデータ・インテグリティに関する立場や、データ・インテグリ
ティを達成するための最低限の期待を理解する方法とみなされるべきである。
2.6 このガイダンスは、データのリスク、重大性、ライフサイクルを含むデータ管理のリスク
ベースのアプローチを促進することを目的とする。
2.7 このガイダンスは、主にデータの完全性を対象としていて、生成されるデータの品質は対象
としていない。
2.8 このガイダンスは、適用される規制や、各GXPのガイダンス、このガイダンス内で参照して
いる文書(例:ICH Q9)と併せて読まれるべきである。
2.9 ガイダンスで用語が定義されている場合、他の定義も存在するかもしれないが、可能な限り
適切にそれらと調和している。

3章 データ・インテグリティの原則
3.1 経営陣は使用するシステムやそれらが生成するデータに関する責任を負う必要がある。
組織文化は、データがいかなる形式でも(すなわち、紙でも電子でも)、完全で、一貫して
いて、正確であることを保証しなければならない。
3.2 人、システム、設備に関する組織内の配置は、適切な作業環境を下支えするために設計され、
運用され、適応されなければならない。すなわち、データの完全性の管理が効果的に行える
正しい環境が作られなければならない。
3.3 データ・ガバナンスのポリシーは、組織の最高レベルで承認されなければならない。
3.4 組織には、データ・インテグリティのリスクに基づいた満足できる管理状態を提供する
文書化されたシステムを実装し、策定し、運用することが期待される。適切なアプローチの
例として、データ・インテグリティ・リスクアセスメント(DIRA)を実施し、そこで、データ
を作る処理またはデータが取得される処理を正確に記述し、その形式や管理が明らかにされ、
データの重要性や固有のリスクが文書化されることである。
3.5 組織は、定期的なデータチェックにおいて法的アプローチを実施することは期待されていない。
システムは適切な管理レベルで維持されなければならない。また、より広範囲のデータ・ガバ
ナンスの手段は、定期的な監査がデータ・インテグリティの不具合を検知できることを保証し
なければならない。
3.6 データの完全性を保証するための取り組みや投入される資源は、データ・インテグリティの
不具合による患者または環境へのリスクや影響に釣り合っていなければいけない。
3.7 組織は、自動化システムまたコンピュータ化システムから紙ベースのマニュアルのシステムに
立ち戻ることが、適切なデータ・インテグリティの管理の必要性を取り除くものではないことを
認識しなければならない。
3.8 データ・インテグリティの欠点が明らかになったら、企業は、全ての関連する活動または
システムが独立してではなくその至るところで、適切な是正処置及び予防処置が実施される
ことを保証しなければならない。
3.9 重大なデータ・インテグリティの事件が発見されたら、規制当局への適切な通知がされなけ
ればならない。
3.10 ガイダンスは’ALCOA +’よりALCOAを参照する。ALCOAは帰属性、判読性、同時性、原本性、
正確性、’+’は完全性、一貫性、耐久性/普遍性、利用可能性を意味する。データ・ガバナ
ンスの方法は、データのライフサイクルを通じて、データが完全で、一貫性があって、
耐久性/普遍性があって、利用可能であることを保証すべきであるから、どちらの頭文字が
使われても、データ・インテグリティの期待に違いはない。

4章 データ・インテグリティの重要性と固有のリスクの制定
4.1 データは、品質、安全性、有効性の判断において様々な重要性を持つ。データの重要性は、
データがいかに判断に影響を与えるかを考慮することによって決定されるかもしれない。
4.2 データへのリスクは、権限もなく、削除・修正・除外される可能性や、それらの活動や事象
の検知の可能性により判断される。データのリスクは、一貫して実施され、十分に定義され、
明確な目的を持った単純な作業に比べて、複雑さ、開放型の一貫しない処理、主観的な解析
によって増えるかもしれない。
4.3 データは下記の手段により生成されてよい。
(i) マニュアルの観察や作業による紙の記録
(ii) シンプルな機械から、複雑で高度に設定可能なコンピュータ化システムまでの、装置を
使った電子的な方法
(iii) 紙ベースと電子記録の両方がオリジナルの記録を構成するハイブリッドシステム
(iv) 写真、画像、クロマトグラフィ―プレートのような、その他の方法
データ・インテグリティのリスクを減らすために適切に構成された利用可能な技術の使用
が検討されるべきである。
設定可能なソフトウエアがなく、電子的データを保存しないシンプルな電子的システムは、
キャリブレーションのみが要求されるだろうが、複雑なシステムは“意図した目的のための
バリデーション”が必要となる。
バリデーション作業は、複雑さやリスク(ソフトウエアの機能、設定、ユーザの介入の
チャンス、データ・ライフサイクルの考慮により決定される)により増える。
4.4 管理方法の作業と/または頻度の軽減は、データが製品・患者に与える影響が少ないこと
や、又はハイレベルのシステムや専門家でなければ修正するチャンスがないプロセスで取得
される環境であることにより正当化されるだろう。
4.5 データ・インテグリティ・リスクアセスメントは、手順に従うことや機能を実行することが
要求されるファクタを考慮すべきである。コンピュータ化システムだけでなく、それを支える
人、ガイダンス、訓練、品質システムも考慮することが期待される。だから、それゆえに、
自動化や、バリデートされたシステムの使用は、データ・インテグリティのリスクを取り除き
はしないが、リスクを下げるだろう。人の介入がある場合、組織の不十分な管理や、システム
のバリデートされた状態への過度の依存によるデータの不十分な検証により、リスクは増加
するだろう。
4.6 データ・インテグリティ・リスクアセスメントで改善が強く求められた部分は、アクション
の優先順位付けが文書化され、経営陣に伝えられ、レビュの対象とされなければならない。
長期の改善アクションに分類された場合は、暫定期間内で容認可能なデータ・ガバナンスを
実施するための短期間のリスク軽減方法が実行されなければならない。

5章 データ・インテグリティを保証するためシステムと手順の策定;正しい環境の作成
5.1 システムと手順は、データ・イングリティの原則の順守を容易にする方法で策定されなければ
ならない。そのためには、これに限定されないが、下記のことが望まれる。
・データが複数の場所を通じて使われる場合、使用時に、タイムゾーンを識別し特定し、(活動の)
再構成とトレーサビリティを保証するためにイベントの時間を記録するための適切に管理/同期
されたクロックへのアクセス
・非正式なデータの記録と、後での正式記録への転記が起きないように活動が行われる場所での記録
の利用可能性
・ローデータ/ソースデータの記録のためのブランクペーパーへのアクセスは適切に管理されなけれ
ばならない。突き合わせ、またはページ番号のついた管理されたブックの使用が、記録の再作成を
防ぐために必要かもれない。これが実用的でないカルテ(GCP)のような例外はあるかもしれない。
・許可のないデータの修正を防ぐユーザアクセス権限(防止が不可能な場合は監査証跡)
 バーコードスキャナ、IDカードリーダ、プリンタのようなコンピュータ化システムを使った、
マニュアルのデータ入力や人の介入をなくす外部装置やシステムインタフェースの使用
要求された通りの作業の実施やデータの記録を可能にする作業環境の提供(例:適切な空間、
十分な作業時間、適切に機能する装置)
・データレビュ作業を行う職員のオリジナルの記録へのアクセス
・管理された印刷物の突き合わせ
・全ての適切な職員へのデータ・インテグリティの原則の十分な教育
・リスクアセスメント作業における専門家(Subject Matter Expert)の参加
・データ・ガバナンスに関係する品質測定基準の管理監督
5.2 他の作業者の代わりに作業を記録する筆記者の使用を検討することができる。例えば、
・同時の記録が製造や作業を危うくする作業 例:無菌作業者によるライン介入の文書作成
・解剖(GLP)
・文化的または読み書き/言語の制約に対応するため:例えば、ある作業者が作業を実施し、第二の
人間により立ち会われ記録される場合
   データの重要性により導かれる作業の適切な管理を保証する一方で、アクセス、使いやすさ、
使う場所の容易さも検討もされるべきである。
   これらの状況では、第二の人間による記録は、作業が実施されているのと同時であるべきで、
また、記録は作業を実施した人間と記録を完成した人間を識別すべきである。作業を実施した
人間は、可能であれば記録に連署すべきだが、この連署作業が過去に遡っても容認される。
監督(筆記者)の文書の完成作業は、作業が適用される活動を指定する承認された手順の中で
記述されるべきである。

6章 用語の定義と要求事項の解説
6.1 データ(★省略:原文をご確認ください)
6.2 ローデータ(ICH GCPで定義された”ソースデータ”と同義)(★省略:原文をご確認ください)
6.3 メタデータ(★省略:原文をご確認ください)
6.4 データ・インテグリティ(★省略:原文をご確認ください)
6.5 データ・ガバナンス(★省略:原文をご確認ください)
6.6 データ・ライフサイクル(★省略:原文をご確認ください)
6.7 データの記録と収集(★省略:原文をご確認ください)
6.8 データ転送/データ移行(★省略:原文をご確認ください)
6.9 データ処理(★省略:原文をご確認ください)
6.10 データの除外(GPvPは適用外)(★省略:原文をご確認ください)
6.11 オリジナルの記録と真のコピー
 6.11.1 オリジナルの記録(★省略:原文をご確認ください)
 6.11.2 真のコピー(★省略:原文をご確認ください)
6.12 コンピュータ化システムのトランザクション(★定義は省略)
複数の操作が、単一のトランザクションに結合されることは避けるべきである。
6.13 監査証跡(★定義は省略)
・データの変更には日付と時間が付けられなければならない。(当てはまる場合は、タイムゾーン
も付ける)
いかなる変更の理由も記録されなければならない。
・監査証跡は(リスクアセスメントで必要と判断された場合)、スイッチを入れて作動されなけれ
ばならない。ユーザは監査証跡を修正したりスイッチをオフにしたりできるべきでない。
システムアドミニストレータが修正したりスイッチをオフにしたりする場合はそのアクションは
保持されなければならない。
・監査証跡機能が存在しない場合、例えば、手順をSOPに定義しログブックを使用するといった
別の管理でも達成できるかもしれない。別の管理が有効であることが示されなければならない。
6.14 電子署名(★定義は省略)
電子署名の利用は次のことを考慮して適切に管理されるべきである
 ◎どのように署名を個人に帰属させられるか
 ◎署名が変更されることや、巧みに操作されることができないように、どのように署名のアクション
がシステム内に記録されるか
 ◎署名の記録が入力内容と関連づけられ、いかに検証されるか
 ◎電子署名のセキュリティ、すなわち、署名が、署名の所有者によってのみ使用されること
・電子署名の使用は、国際的な基準の要件に従わなければならない。電子署名またはE-署名システム
は、署名のマニフェステイション、すなわち、誰が署名したか、日付(重要であれは時刻)、署名の
意味(例:確認or承認)を明らかにした、見ることのできる記録の表示を提供しなければならない。
・文書が電子的に署名されたことを示す、バリデートされた電子署名処理以外の方法による署名画像や
脚注の挿入は適切でない。文書が電子的に署名されたら、署名と関連付けられたメタデータが保持
されなければならない。
6.15 データのレビュと承認
重要なデータとメタデータ、バツ印で消された文字(紙の記録)と監査証跡(電子記録)のよう
な特別な記録の中身をレビュする取り組みは、適用される規制要件を満たし、リスクベースで
あるべきである。
データのレビュと承認の手順を述べた手順書が存在すべきである。
手順書には、データのレビュにおいて、間違いや脱落が見つかった場合にとられるべきアクション
を記述すべきである。この手順は、データの修正や説明を可能にすべきである。
6.16 コンピュータ化システムのユーザアクセス/システムアドミニストレータの役割
・ある種のコンピュータ化システムは、単一ユーザのログインや限られた数のユーザのログインしか
サポートしていない。適切な代わりとなるコンピュータ化システムが利用できない場合は、サード
パーティのソフトウエアや、トレーサビリティを提供する紙ベースの方法によって同等の管理ができ
るかもしれない。代わりの管理方法の適合性は正当化され文書化されなければならない。ハイブリッド
システムは、脆弱でデータ変更の出所が不明なので、データレビュを増やすことを要求されるかもしれ
ない。企業には、現在の規制の期待に従ったシステムを導入することが期待される。
・システムアドミニストレータは、組織の大きさや性質を考慮に入れ、最小の人数に制限すべきである。
 全体的なシステムアドミニストレータ権限は日常的に使用可能であるべきでない。
・システムアドミニストレータ権限(データの削除、データベースの修正またはシステムの設定の変更
を許可する)は、データに直接の利害関係を持つ個人(データの作成、確認、承認)には与えられる
べきでない。
6.17 データの保管
・データの保管は、アーカイブまたはバックアップになるだろう。
・紙で作成されたデータは、バリデートされたスキャン手順の使用により保管されるだろう。
 6.17.1 アーカイブ(★定義は省略)
 ・アーカイブされたデータは、オリジナルの記録または真のコピーかもしれない。それらは、検知
  されずに変更されたり削除されたりしないよう保護されなければならない。また、火事や有害生物
  のような予期しない損害からも保護されなければならない。
 ・レガシーシステムがもはやサポートされない場合、データのアクセス可能性の目的でソフトウエアの
  保持の検討がされるべきである。これは、仮想環境でソフトウエアを保持することにより達成される
  かもしれない。
 6.17.2 バックアップ(★定義は省略)
 ・バックアップとリカバリの手順は、バリデートされ、定期的にテストされなければならない。
  各バックアップは、それが正しく機能したことを保証するために、例えば、オリジナルの記録と
  データのサイズが合うことの確認などにより、確認されなければならない。
6.18 ファイル構造
   データ・インテグリティ・リスクアセスメントは、ファイル構造の明確な理解を必要とする。
   GXP環境の中でデータが構築される方法は、データが何のために使われるか、どんなエンドユーザ
   が持つかによるかもしれない。
   属性により異なるファイル構造は、異なる管理やレビュ方法を必要とするかもれない。また、
   異なる方法でメタデータを保管するかもしれない。
6.19 意図した目的のためのバリデーション(GMP:Annex11,15も参照のこと)
   コンピュータ化システムは、規制要件と関連するガイダンスを順守すべきである。これらは、
   意図した目的のためにバリデートされていなければならず、それは、工程内でコンピュータ化シス
   テムの機能の理解を必要とする。この理由により、システム設定やユーザの意図した目的から
   離れたベンダの提供するバリデーションデータの採用は、容認できない。工程やエンドユーザの
   ITインフラから離れたベンダの試験は、機能の確認だけに限定され、性能適格性評価(PQ)の
   要件を満たさないだろう。
6.20 ITサプライヤとサービスプロバイダ(クラウドプロバイダや仮想サービス/プラットフォーム
   (SaaS、PaaS、IaaSも含む)を含む)
   クラウドや仮想サービスを用いる場合、提供されるサービス、所有権、データの保管とセキュリ
   ティの理解に注意が払われるべきである。
   その地理的な場所に適用可能な法律の影響も含んで、データが保管される物理的な場所が考慮され
   るべきである。
   委託者と受託者の責任は、技術合意書または契約書内で定義されるべきである。これは、要求に
   より、データの所有者や国の所轄官庁がデータ(メタデータや監査証跡を含む)へのタイムリー
   なアクセスを保証すべきである。プロバイダとの契約では、保管期間を通した、データのアーカイブ
   の責任や継続した可読性を定義するべきである。
   ソフトウエア/システムをオリジナルのバリデート状態に復元するために、バリデーションや変更
   管理の情報を含む適切な取り決めが、存続するべきである。
   事業継続の取り決めも契約の中に含まれ、テストされるべきである。サービスプロバイダの監査の
   必要性は、リスクに基づくべきである。

7章 用語集
このガイダンス内で使用される用語の説明が載っています。

8章 参照
このガイダンスで参照している文書が載っています。

本文:
https://www.gov.uk/government/uploads/system/uploads/attachment_data/file/687246/MHRA_GxP_data_integrity_guide_March_edited_Final.pdf

その他出典:
https://mhrainspectorate.blog.gov.uk/2018/03/に09/mhras-gxp-data-integrity-guide-published/
https://www.gmp-publishing.com/en/gmp-news/gmp-aktuell/mhra-data-integrity-gxp-final-2018.html


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まとめ
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いかがでしたでしょうか。
ガイダンスの中に、個人的に何点か気になる点がありましたので、以下にピックアップしたいと思います。
●紙の記録
データ・インテグリティに関する指摘を受けると、よく、 “そんなにデータ・インテグリティ、データ・
インテグリティというのなら、いっそコンピュータを使うのをやめて紙の記録に戻そう”とおっしゃる方
がいらっしゃいますが、残念ながら、ガイダンスの3.7章に、自動化システムまたコンピュータ化システム
から、紙ベースのマニュアルのシステムへ戻っても、データ・インテグリティの管理が必要だと明記されて
いますので、ご注意ください。

●経営陣の責任
3.1章でデータ・インテグリティに関する経営陣の責任が明記されています。
FDAがウォーニングレターの中でデータ・インテグリティに関する指摘をする際、企業のデータ・インテ
グリティに関する管理戦略について回答を求めていることからもわかるように、データ・インテグリティの
不備は、現場の一担当者がどうにか対処して済ませられる次元の話ではなく、会社として真剣に取り組む
べき重大な問題であるのがよくわかります。

●クロック問題
最近、時刻の管理に関して指摘を受けたという製薬会社様の話を非常によく聞きますが、5.1章に、
クロックの話やタイムゾーンの識別の話が出てきています。どんなに同時性を意識して記録を作成しても、
そもそもシステムの時刻がずれていたのでは、データ・インテグリティは保証できません。
適切に管理/同期されたクロックが不可欠です。
また、グローバルな会社様は、タイムゾーンにも注意を払う必要があります。

●当局の期待
ありがたいことに、MHRAは、監査証跡の残せないシステムやアクセス制限が出来ないシステムを絶対禁止
とはいっていません。しかし、“企業には、現在の規制の期待に従ったシステムを導入することが期待
される (6.16章) ”や、“自動化やバリデートされたシステムの使用は、データ・インテグリティの
リスクを取り除きはしないが、リスクを下げる(4.5章)”といった記述を見ると、MHRAが十分な機能を
備えたコンピュータ化システムの導入を望んでいることは明らかなように思います。

●クラウド登場
6.20章において、クラウドや仮想サービスを用いる場合、提供されるサービス、所有権、データの保管と
セキュリティを理解することが求められています。
クラウドや仮想サービスの利用は、システム管理者の作業負荷が軽減でき、コスト削減がはかれると
いうメリットに目がいきがちですが、サービスプロバイダに全てお任せというわけにはいかないという
ことを忘れてはいけないと思います。

個人的に気になる点をピックアップしましたが、他にもデータ・インテグリティに関する重要なことが
書かれているガイダンスです。
時間のある時に是非目を通しておかれることをお勧めします。


☆次回は、4/13(金)に配信させていただきます。


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【発行責任者】
株式会社プロス
ASTROM通信』担当 橋本奈央子

2018.03.15

【EUガイドライン改訂情報 及び 最近のウォーニングレター】ASTROM通信<142号>

 ~安全な医薬品の安定供給をご支援する~

こんにちは
ASTROM通信担当の橋本奈央子です。

桜の開花が待ち遠しい季節になってきましたが、いかがお過ごしでいらっしゃいますか。

さて今回のメールマガジンでは、下記の2つのテーマについて取り上げたいと思います。
1. EMAが発表したGMPガイドラインの改訂計画
EMA(European Medical Agency:欧州医薬品庁)が発表した“2018年のGMP/GDP査察官のワーキン
ググループの作業計画”に含まれるEU GMPガイドライン等のGMP関連ガイドラインの改訂計画につ
いて取り上げます。
EU GMPガイドラインは、PIC/S GMPガイドラインに大きな影響を与えます。そのため、今後のPIC/S
GMPガイドラインの改訂の方向性を知っておく意味で是非ご一読いただければと思います。
2.最近FDA(米国食品医薬品局)から出たウォーニングレター3件
今回のウォーニングレターには、日本の企業向けのものも含まれています。
アメリカ市場に輸出がありFDAの査察を受ける機会のある会社様はもちろん、それ以外の会社様も、
どんなことでGMP上の指摘を受ける可能性があるのかをご確認いただき、参考にしていただければと
思います。


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EMAが発表したGMPガイドラインの改訂計画
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2017年11月30日、EMA(European Medical Agency:欧州医薬品庁)が、“2018年のGMP/GDP査察官の
ワーキンググループの作業計画”を発表しました。
その中で、PIC/S GMPガイドラインにも大きな影響を与えるEU GMPガイドラインや、GMP関連ガイド
ラインに関する追加・改訂の計画がありましたので、今回はそれを取り上げたいと思います。

1.新EUガイドライン
1)EU GMPガイドライン Annex 21(医薬品の輸入)
目標期日:2018年第4四半期
  コメント:公布のための最終版をECに提出する
2)GMP及び医薬品販売承認取得者
  目標期日:2018年第4四半期
  コメント:GMP順守と、医薬品販売承認取得者及び医薬品製造承認取得者の責任と活動の関係に
       関するリフレクションペーパーを仕上げる
3)医薬品、原薬、添加剤、主要容器の滅菌のガイドライン
  主要集団:品質ワーキンググループ
  目標期日:2018年第2四半期にガイドライン最終版を発行
  コメント:2016年10月13日にドラフトガイドラインのパブリックコメントは終了
2.EU ガイドラインの改訂
1)EU GMPガイドライン序文
  目標期日:2018年第4四半期
  コメント:IMP(Investigational Medicinal Products)、ATMP(Advanced Therapy Medicinal
       Products)、原薬を含む、EU GMPガイドラインの全体的な構造に影響を与える、最近
       のGMPに関する法的基盤の変更を考慮した最終版をECに提出す
2)EU GMPガイドライン 1章(医薬品品質システム)
  目標期日:2018年第4四半期
  コメント:HMA(Heads of Medicines Agencies)とEMAの作業部会のようなイニシアチブ、業界
       内のガイドラインを考慮しつつ、薬不足を防止するためのリスクベースドアプローチ
       の採用を業界に奨励するために1章を改正するための提案を起草す
3)EU GMPガイドライン 4章(文書化)
  目標期日:2018年第4四半期
  コメント:GMPの観点からデータ・インテグリティを保証するために4章を改正するための提案を
       起草する。これは、Annex11(コンピュータ化システム)の同様の検討と並行して行わ
       れるだろう。
4)EU GMPガイドライン Annex1(無菌医薬品の製造)
  目標期日:2018年第4四半期
  コメント:逆浸透と生体膜による注射用水の製造を扱ったQ&Aに含められるガイドラインを具体化
       する。
       発行のための最終版をECに提出する。
5)EU GMPガイドライン Annex11(コンピュータ化システム)
  目標期日:2018年第4四半期
  コメント:GMPの観点からデータ・インテグリティを保証するために改正するための提案を起草
       する。
       これは、4章(文書化)の同様の検討と並行して行われるだろう。
6)最終剤型の製造のガイドライン
  主要集団:品質ワーキンググループ
  目標期日:2018年第1四半期に6ヶ月のパブリックコメント募集のためにドラフトガイドラインを
       リリースする
  コメント:コンセプトペーパーのパブリックコメントは2015年10月17日に終了
7)医薬品に使用する水の品質のガイドライン
  主要集団:品質ワーキンググループ
  目標期日:2018年第3四半期に6ヶ月のパブリックコメント募集のためにドラフトガイドラインを
       リリースする
  コメント:コンセプトペーパーのパブリックコメントは2017年6月6日に終了
3.ICHガイドライン
1)ICH Q12(医薬品のライフサイクルマネジメント)
  目標期日:現在進行中
  コメント:2017年11月にStep 2bを開始
       2017年6月にStep 2aを開始
       2014年9月にStep1を開始
       GMP査察及び医薬品品質システムに特に重きをおいたガイドラインを開発する専門家
       作業部会のEUメンバをサポートする。
4.その他のガイドライン
1)改訂された共有設備のガイドライン実施のためのQ&A
  目標期日:2018年第2四半期
  コメント:Q&Aを発行する

⇒昨今非常に注目を集めているデータ・インテグリティの目的で、EU GMPガイドライン4章(文書化)
 とAnnex11の改訂が計画されています。
 ドラフトの提案を計画している段階なので、正式に改訂されるまでにはかなり時間があると思い
 ますが、EU GMPガイドライン4章の文書化や、Annex11のコンピュータ化システムは、日々の業務と
 密接に関わりのある部分なので、改訂されれば影響は非常に大きいと思われます。

出典:http://www.ema.europa.eu/docs/en_GB/document_library/Other/2009/10/WC500004875.pdf


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最近のウォーニングレターの概要
注:文中のXXはウォーニングレターでマスキングされている文言です
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■WL:320-18-25 香港の製造所の査察(2017/9/18~2017/9/22)でみつかった医薬品製造における重大
なCGMP違反に関する2018/1/11付ウォーニングレターには、下記の指摘事項があげられています。
1.貴社は、品質管理部門に適用する文書化した責任と手順を制定し、それらの手順に従うことを怠った。
  貴社には、これに限らないが、以下のものを含む様々な機能に関する適切な文書化された手順が不
  している。
・顧客の苦情
・回収
・年次製品レビュ
・OOS(Out-of-specification)または逸脱の調査
・変更管理
・CGMP関連の訓練
・バッチの記録の発行
・バッチの記録のレビュの文書化
・清掃
・保管条件
この文書への回答の中で、CGMPの法令に一致した強固な品質システムを制定し、支え、維持するための
包括的な計画を提出せよ。計画のタイムラインも含めよ。
2.貴社は、さまざまな供給者から得る有効成分や添加剤を含む成分の同一性を保証することを怠った。
  貴社は、貴社のOTC医薬品の製造に使用する前に、医薬品の有効成分の同一性試験XXを実施していな
  い。また貴社は、分析証明書に頼る前に、供給者の適格性を評価することを怠った。
  この文書への回答の中で、標準操作手順書(SOP)を提出し、貴社がいかに供給者の適格性を評価し、
  入荷する全ての成分の同一性を実施するつもりかを詳細に述べよ。さらに、回顧的な試験の計画と、
  アメリカに販売された医薬品に使用された成分の影響評価を提出せよ。
3.貴社は、貴社が製造した製品が、それらが持つとされる同一性、力価、品質、純度を持つことを保証
  するための製品と工程管理に関する適切に文書化された手順を制定していなかった。また、貴社の
  品質管理部門は、変更を含む手順のレビュと承認をしなかった。
貴社は、製造工程がバッチ間とバッチ内のばらつきを最小化することにより、好ましい品質の医薬品を
一貫して製造できることを示すための貴社の製品に関するプロセスバリデーションを実施しなかった。
貴社の回答は、貴社がXX用とXX用の新しいタンクが取り付けられるまでにプロセスバリデーションを
実施するつもりであることを示していた。貴社の今の製造工程が管理された状態で医薬品を製造できる
ことを裏付けるデータがないので、これは受け入れられない。
この文書への回答の中で、ライフサイクルを通じて管理状態を継続的に保証するためのプロセスバリデー
ションの計画を述べよ。貴社の工程の性能適格性評価の手順、これらの実施のタイムライン、ライフサイ
クルを通じてバッチのばらつきを最小化し一貫した製品品質を保証するために、操作のばらつきの原因を
いかに用心深くモニタするかについての情報も含めよ。
4.貴社は、医薬品の製造、加工、包装、保管に使用される設備の適切な性能を保証しキャリブレー
  ションのチェックと検査の記録を保持するため、文書化されたプログラムに従って、設備を定期的に
  キャリブレートし、検査し、チェックすることを怠った。
貴社は秤量器、XXタンクとXXタンクのXXとXXの装置のキャリブレートをしなかった。
貴社の回答は、貴社が新しいタンクを調達後にそのタンクのXXの装置のキャリブレートのみ実施するつもり
であることを示していた。貴社の今の設備が意図した通りに機能していることを保証するために是正処置を
提出しなかったので、これは受け入れられない。
この文書への回答の中で、全ての既存の、または、新しい設備の適格性評価とキャリブレーションの包括的
な計画と、関連するSOPを提出せよ。改善中、貴社のキャリブレートされていない設備が意図した通りに
機能しないことを見つけた場合、アメリカに販売された使用期限内の医薬品だけでなく、貴社の管理内に
ある医薬品についても、その影響とリスクアセスメントを提出せよ。
●コンサルタントの推奨
我々が貴社で発見した違反の性質に基づき、我々は、CGMP要件を満たす手助けをする適格なコンサルタント
を雇うことを強く勧める。コンサルタントは、貴社の全てのシステム、工程、最終的には貴社が製造する
製品がFDAの要件に一致することを保証するために、製造作業を包括的に評価しなければならない。
貴社のコンサルタントの使用は、CGMPを順守するための貴社の義務を軽減するものではない。貴社の経営陣
には、全ての不備を解決し、継続的なCGMP順守を保証する責任が残る。
●ラベルと処方の懸念
XXのような、貴社のラベル表示された有効成分のいくつかは、FDAの承認された医薬品の有効成分のデータ
ベースに含まれていないし、他のOTC医薬品の有効成分として使われていることも知らない。
●結論
FDAは2018年1月8日、貴社に輸入警告措置66-40をとった。
出典:https://www.fda.gov/ICECI/EnforcementActions/WarningLetters/ucm592846.htm

■WL:320-18-26 日本の製造所の査察(2017/7/18~2017/7/21)でみつかった原薬製造における重大なCGMP
違反に関する2018/1/18付ウォーニングレターには、下記の指摘事項があげられています。
1.原薬の各バッチについて、規格に一致することを判断するための適切な試験室の試験が実施されること
  を保証することを怠った。
貴社は多数の医薬品を、要求される全ての試験を実施せずにリリースした。貴社は、医薬品は、同一性と
含有量に関する試験がされ、要求される規格を満たしたと主張した。しかし、これらの試験は決して実施
されておらず、貴社は、医薬品が規格に一致するという保証を持っていなかった。貴社の行動は、消費者
を少なくとも2つの方法、すなわち、1つは無効な可能性のあるXXの使用を通じて、またもう1つはXXや
XXのような有毒な不純物に触れる可能性を通じて、危険にさらしていた。
貴社は回答の中で、前の品質管理マネージャは、“もし、原材料の製造者により提供された分析証明書
で、原材料のXXの同一性試験が確認されていれば”、同一性試験は必要でないと決め、“当時、その品
質管理マネージャは、試験をせずに製品を合格とした“と言った。貴社が改訂した分析証明書の発行に関
するSOPは、ローデータの確認を必要としている。
貴社は、いかにそれらのデータを確認するつもりでいるか、誰が試験実施の責任を負っているか、貴社が
このデータの完全性を保証するつもりでいるかを示していないので、貴社の回答は不十分である。貴社は
また、貴社が販売した医薬品の品質に関するリリース試験不足の影響について、リスクアセスメントを
実施することを怠った。
この文書への回答の中で、下記の情報を提供せよ。
・各成分が、文書化された同一性、純度、力価、品質に関する全ての規格に一致することを試験するため
 に貴社がどのように計画しているかの詳細の記述
規格に一致することを判断するための原薬バルクの試験を実施するために貴社がどのように計画して
 いるかの詳細の記述
・だれが、原材料及び原薬の最終製品の試験を実施するつもりか、また、テスト方法の適合性とテスト
 の結果の信頼性を保証するために貴社がどのように計画しているかの詳細の説明
・不正確な分析証明書をもとにリリースした、リテスト日以内で、アメリカ国内に販売された原薬の
 リスクアセスメント
2.分析証明書のテスト結果を完全に報告することを怠った。
査察中我々は、2011年6月から2016年2月の間で製造されリリースされた原薬XXのバッチの分析証明書を
レビュした。貴社の品質管理部門は、これらのバッチについて、全ての必要な試験が実施されていること
を示す分析証明書に署名した。しかし査察中、貴社は、我々査察官に、分析証明書に結果を報告した全て
の試験を実施することなく分析証明書に署名したと言った。例えば、貴社の分析証明書は、貴社が決して
実施しなかった同一性及び不純物の試験結果を報告した。
貴社は、貴社が貴社の顧客に対して発行する分析証明書を偽造した。規制当局及び顧客は、品質と医薬品
の供給源と成分について分析証明書の情報を信頼する。分析証明書上で、貴社の医薬品に関する情報を
偽造することは、サプライチェインの説明責任とトレーサビリティを損ない、顧客をリスクにさらしうる。
査察により、貴社が2011年6月から2016年2月の間に製造した原薬XXの全てのバッチの自発的な回収を実施
したことを認識している。
査察に対する貴社の回答の中で、貴社は、分析証明書を発行する前にローデータをチェックすることを求
めるSOPはないので、品質管理マネージャは、同一性試験は、原材料の分析証明書により決定できること
にしたと言った。さらに、貴社は、品質管理マネージャが貴社の製品分析データシートからこれらの試
の結果に関する欄を削除し、品質管理に関わる後続の職員は、この逸脱に気づいていたが、それが正され
ることなく続いたと述べた。
貴社は、貴社の製造所における偽造の範囲を確認し、分析証明書の偽造につながる状態を正すための計画
の詳細を提供していないので、貴社の回答は不十分である。
●コンサルタントの推奨
我々が貴社で発見した違反の性質に基づき、我々は、CGMP要件を満たす手助けをする適格なコンサルタ
ントを雇うことを強く勧める。貴社のコンサルタントの使用は、CGMPを順守するための貴社の義務を軽減
するものではない。貴社の経営陣には、全ての不備を解決し、継続的なCGMP順守を保証する責任が残る。
●データ・インテグリティの改善
貴社の品質システムは、貴社が製造した医薬品の安全性、効果、品質を裏付けるためのデータの正確性
と完全性を保証していない。我々は、貴社の改善を手伝う適格なコンサルタントを雇うことを強く勧め
る。この文書への回答の中で、次のことを提出せよ。
A.データの記録と報告の不正確さの範囲の包括的な調査
B.発見された問題が貴社の医薬品の品質に与えうる影響に関する現在のリスクアセスメント
  貴社のアセスメントは、データ・インテグリティの欠落の影響をうけた医薬品の出荷による患者の
  リスク及び継続的に行っている作業がもたらすリスクの分析を含めるべきである。
C.包括的な是正処置及び予防処置の詳細を含む貴社の管理の戦略
●結論
FDAは2017年10月25日、貴社に輸入警告措置66-40をとった。
出典:https://www.fda.gov/ICECI/EnforcementActions/WarningLetters/ucm593679.htm

■WL:320-18-27 台湾の製造所の査察(2017/9/11~2017/9/15)でみつかった医薬品製造における重大
なCGMP違反に関する2018/1/25付ウォーニングレターには、下記の指摘事項があげられています。
1.貴社は、出荷前に、製品の各バッチが各有効成分の同一性、力価を含んだ最終規格に十分に一致
  するという試験室の判断を怠った。
貴社は、有効成分XXの同一性、力価の試験をせずに、OTC医薬品XXを出荷した。この試験がないので、
貴社は、出荷前に、貴社の製品が規格に一致するという科学的エビデンスを持っていない。
貴社の回答は、貴社のOTC医薬品XXの力価及び同一性を確認するための含有量の分析をどのように実施
するかを明確に述べていない。また、貴社は回答の中で、貴社はOTC医薬品XXを製造するのに、“化粧
品の製品規格”に従うつもりであると述べた。
もし、貴社がOTC医薬品XXをアメリカ市場内で販売するのであれば、この医薬品は、化粧品ではなく医
薬品のCGMPに従って製造されなければならない。
この文書への回答の中で、貴社のOTC医薬品XXの同一性と力価を試験するための試験規格とバリデート
された試験方法を提出せよ。また、使用期限内にあるアメリカ市場向け製品の全てのバッチについて、
それらが最終規格を満たすことを保証するために、保存サンプルを試験せよ。
2.貴社は、さまざまな供給者から得る有効成分及び添加剤を含む成分の同一性を保証することを
  怠った。
貴社は、入荷した、貴社のOTC医薬品XXの製造に使用する医薬品の有効成分やその他の成分について、
同一性を含む基準を満たすことを保証するための試験を怠った。貴社はまた供給者の適格性評価プロ
グラムを持っていない。貴社はさまざまな供給者から成分を調達するが、各供給者の分析証明書の
信頼性を評価するためのいかなる試験も実施しなかった。
貴社の回答は、入荷原材料の検査に関し改訂されたSOPを含んでいた。しかし、貴社がいかに、入荷原材
料のバッチの同一性を分析するか、また、いかに供給者の分析証明書の信頼性を検証するかが不明確で
ある。
この文書への回答の中で、供給者の分析証明書の信頼性を保証するための、全ての入荷した成分の全て
の試験から得られる試験結果を要約せよ。また、原材料(すなわち、医薬品の成分)の入荷した各ロット
について、同一性に関する試験を行うことを約束せよ。
3.貴社は、医薬品が適切な安定性試験によって裏付けされた使用期限に耐えることを保証することを
  怠った。
貴社は、貴社のOTC医薬品XXが、ラベルに表示された使用期限を通じて、有効成分などが制定された
全ての標準を満たすことを示す安定性データを持っていなかった。
貴社は契約ラボと安定性プログラムについて考察していると述べたが、貴社は、この是正処置を終える
のに追加の時間を要求した。
貴社は回答の中で、安定性の手順の改訂情報と、実施のためのライムラインを提出せよ。
4.貴社は、貴社が製造した製品が、それらが持つとされる同一性、力価、品質、純度を持つことを
  保証するための製品と工程管理に関する、適切に文書化された手順を制定していなかった。
貴社は、貴社のOTC医薬品XXの工程の性能適格性評価を実施していなかった。また、安定した製造作業
と一貫した医薬品の品質を保証するための工程の継続的な工程管理モニタリングプログラムも不足して
いる。
貴社は回答において、貴社の従業員のための訓練を開発するために追加の時間が必要だと述べた。貴社
は、出荷前のプロセスバリデーションの不備や、製造工程を評価する計画の不備に取り組むことを怠っ
ているので、貴社の回答は不十分である。
この文書への回答の中で、貴社の製造工程が一貫した品質をもたらすことを保証するためのプロセス
バリデーションの実施のタイムラインを提出せよ。
●コンサルタントの推奨
我々が貴社で発見した違反の性質に基づき、我々は、CGMP要件を満たす手助けをする適格なコンサル
タントを雇うことを強く勧める。貴社のコンサルタントの使用は、CGMPを順守するための貴社の義務を
軽減するものではない。貴社の経営陣には、全ての不備を解決し、継続的なCGMP順守を保証する責任が
残る。
●結論
FDAは2018年1月8日、貴社に輸入警告措置66-40をとった。
出典:https://www.fda.gov/ICECI/EnforcementActions/WarningLetters/ucm594413.htm


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まとめ
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いかがでしたでしょうか。
1つ目のGMPガイドラインの改訂計画、特にEU GMPガイドライン4章及びAnnex11の改訂は気になる
ところです。日本の規制要件にも大きな影響があると思われますので、今後のドラフト版や、
パブリックコメント募集時期などもチェックしていきたいと思います。

☆次回は、3/30(金)に配信させていただきます。


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本メルマガは、名刺交換させていただいた方に、毎月1日、15日(土日祝日に重なった場合 は前日)
に配信いたしております。
今後このような情報が必要ない方は、お手数ですが、こちらに配信停止依頼のメールを お願い
いたします。
hashimoto@e-pros.co.jp

【発行責任者】
株式会社プロス
ASTROM通信』担当 橋本奈央子

2018.03.01

最近のウォーニングレター】ASTROM通信<141号>

 ~安全な医薬品の安定供給をご支援する~

こんにちは
ASTROM通信担当の橋本奈央子です。

だんだん日が長くなってきたことを実感するこの頃ですが、いかがお過ごしでいらっしゃいますか。

さて今回のメールマガジンでは、最近FDA(米国食品医薬品局)から出たウォーニングレター5件について取
り上げたいと思います。
今回のウォーニングレターには、中国企業向けの3件以外に、PIC/S加盟国であるオーストラリアとオー
ストリアの企業向けのものも含まれています。

アメリカ市場に輸出がありFDAの査察を受ける機会のある会社様はもちろん、それ以外の会社様も、どん
なことでGMP上の指摘を受ける可能性があるのかをご確認いただき、参考にしていただければと思います。


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最近のウォーニングレターの概要
注:文中のXXはウォーニングレターでマスキングされている文言です
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■WL:320-18-20 中国の製造所の査察(2017/5/22~2017/5/26)でみつかった医薬品製造における重大な
CGMP違反に関する2017/12/18付ウォーニングレターには、下記の指摘事項があげられています。
1.貴社は、全ての成分、容器、蓋、中間材料、包装材料、ラベル、医薬品を承認したり不合格と判定したり
   する責任と権限を持ち、エラーが発生していない、もしくは、もしエラーが発生した場合、それが完全に
  調査されていることを保証するために全ての製造の記録をレビュする権限を持った品質管理部門を制定
  することを怠った。貴社は品質管理部門に適用する文書化された責任と手順を制定することを怠った。
貴社には適切な品質管理部門が欠けている。例えば、貴社の品質管理部門は、医薬品の出荷前に完成された
製造記録を適切にレビュしていなかった。
また、貴社は、CGMPの訓練、変更管理、年次製品レビュ、アメリカ向け製品の回収、その他の様々な基本的な
医薬品製造作業に関する多くの責任に関する、適切な文書化された手順を制定するのを怠った。
この文書への回答の中で、以下の情報を提供せよ。
品質管理部門が適切な権限とその責任を果たすのに必要なリソースを持つことを保証するために、品質管理
 部門の役割と責任が明確に定義され制定されることを確実にするための是正処置
貴社の製造作業中の医薬品の品質をモニタするために品質管理部門により制定された手順のコピー
2.貴社は、ロット間の同一性を保証するために定める製造指図書の原本を整えることを怠った。
貴社は、例えば、XXスピード、XX時間、XXの成分の追加順序を含む製品指図・記録の原本が不足していた。
貴社の製造記録には、パッチXXの溶液XXに適用している原薬XXとXXに関する使用指示も欠けていた。
この文書への回答の中で、パッチXXに関する重要かつバリデートされた製造ステップにおける製造指図書の原本
及びパッチXXの製造済ロットの指図・記録を提出せよ。
3.貴社は、成分、製品容器、蓋、中間材料、ラベル、医薬品が、同一性、力価、品質、純度の規格に従うこと
  を保証するために定める科学的に合理的で適切な仕様、規格、サンプリング計画、試験手順を制定すること
  を怠った。
貴社のロットXXは、有効成分としてXX%のXXを含むとしているが、貴社は、最終パッチに関するXXの試験は、
製品内のXXの含有量を測定して数値化せず定性的方法に頼っていると述べた。さらに、ロットXXの製造記録に
関する我々のレビュで、出荷判定されたロットXX,XX,XXのXX原薬に関する試験結果がないことが明らかになった。
この文書への回答の中で、全ての製品のロットが出荷前に予め定められた仕様を満たすことを保証するための
是正処置計画を提出せよ。各出荷判定試験に関し、原薬の含有量に関する定量的試験を含む、試験の手順と
バリデートされた試験方法を提出せよ。
4.貴社は、貴社が製造した製品が、それらが持つとされる同一性、力価、品質、純度を持つことを保証する
  ための製品と工程管理に関する、適切に文書化された手順を制定していなかった。
貴社は、パッチXXの製造工程をバリデートしていなかった。貴社は、安定した製造作業と一貫した品質を保証
するための工程管理のモニタリングに関する継続的なプログラムに欠けている。
この文書への回答の中で、継続的な管理状態を保証するためのバリデーション計画を提出せよ。全ての製品の
工程の性能適格性評価の実施に関するタイムラインを含めよ。また、継続的なロット間のばらつきをモニタ
リングするためのアプローチを述べよ。
5.貴社は、医薬品の性質のための適切な洗浄とメンテナンス、公的またその他制定された要件を超えて医薬品
  の安全性、同一性、力価、品質、純度を変える誤動作や汚染を防ぐために適切な間隔で装置や器具を消毒、
  かつ/または、滅菌することを怠った。
この文書への回答の中で、下記のことを提出せよ。
・貴社の医薬品の製造に使用される全ての装置のメンテナンス、洗浄、消毒に関する改訂された手順
・貴社の洗浄バリデーションの手順と、手順が適切であることを示すための評価結果を含んだ、メンテナンス
 と洗浄の手順が効果的で持続可能であることを示すエビデンス
●コンサルタントの推奨
我々が貴社で発見した違反の性質に基づき、我々は、CGMP要件を満たす手助けをする適格なコンサルタント
を雇うことを強く勧める。貴社のコンサルタントの使用は、CGMPを順守するための貴社の義務を軽減するもの
ではない。貴社の経営陣には、全ての不備を解決し、継続的なCGMP順守を保証する責任が残る。
●パッチXXのラベル
XXのような、貴社のラベル表示された添加物のいくつかは、FDAの承認された医薬品の添加物のデータベース
に含まれていないし、他のOTC医薬品の添加物として使われていることも知らない。
●結論
FDAは2017年10月19日、貴社に輸入警告措置66-40をとった。
出典:https://www.fda.gov/ICECI/EnforcementActions/WarningLetters/2017/ucm591840.htm

■WL:320-18-21 オーストラリアの製造所の査察(2017/3/27~2017/3/31)でみつかった医薬品製造における
重大なCGMP違反に関する2017/12/19付ウォーニングレターには、下記の指摘事項があげられています。
1.貴社は、ロットが既に販売されたかどうかにかかわらず、説明のつかない規格との不一致、ロットや成分
  の規格への不適合について、徹底的な調査を怠った。
貴社は、出荷判定試験及び安定性試験で不合格になったXXの2ロットに関し、十分に調査することを怠った。
これらの製品の不合格は、粘度と外観を含む。安定性試験の間、貴社は、包装の欠陥も確認したが、これらの
医薬品の品質問題の調査を開始しなかった。また貴社が調査した時、製造工程と関連する記録を適切に評価する
こと、根本原因を特定すること、効果的な是正処置及び予防処置(CAPA)を実行することを怠った。
例えば、貴社は、安定性試験の3ヶ月時点でチューブの膨張を発見したが、微生物の増殖や損傷の兆候かも
しれないこの重大な欠陥の調査をしなかった。
我々の発見に応え、貴社の顧客は2017年11月28日に使用期限の残っているこの製品の回収を行った。
2.貴社は、貴社が製造した製品が、それらが持つとされる同一性、力価、品質、純度を持つことを保証する
  ための製造と工程管理に関する適切に文書化された手順を制定していなかった。
XXを製造するのに用いられる工程が、一貫性があり信頼ができることを示さなかったので、その結果として、
貴社製品のロットは、力価、品質、純度が大きくばらつきがちである。
例えば、貴社は適切なプロセスバリデーションが不足していた。貴社のバリデーション報告は、単独PQの
ロットXXの回顧的な分析をまとめていた。貴社は、2015年にこのロットを製造し出荷した。
このロットは、外観と粘度を含む複数の品質特性の安定性が不合格だった。我々が貴社の製造所を査察する
直前である2017年3月17日に貴社のバリデーション報告が承認された。一様な性質と品質の医薬品を一貫して
生産するために管理されるべき変動の原因となりうる全てのことに対応しなかったため、プロセスバリデー
ションのエビデンスに欠けていた。
経営陣は、貴社はこの製品の製造に苦労していて、よりよい製品を得るための研究と工程の理解をいまだに
実施していると述べた。貴社は、一定の品質を保証するための理解が不足していることを認めているにも
関わらず、それでも顧客にXX製品を商業的に売っていた。
製造工程の重要なステージは、入荷原材料、中間材料、最終製品が、それらの品質特性と仕様を満たすことを
保証するようにデザインされなければならない。プロセスバリデーションは、ライフサイクルを通して、
デザインの安定性と工程の管理状態を評価しないといけない。性能適格性評価は商業的な販売の前に必要と
される。その後、製品のライフサイクルを通じて安定した製造作業を保証するために、工程の性能と製品品質
の継続的で慎重な管理が不可欠である。
3.貴社は、医薬品の安定性を評価するための文書化された試験計画に従うことを怠り、また、適切な保管
条件と使用期限を決定するために安定性試験結果を使用することを怠った。
貴社は、貴社の医薬品XXの化学的・物理的性質がラベルに表示された使用期限内を通じて条件を満たしている
ことを示すための安定性データを持っていなかった。査察中にレビュした2ロットは、複数の安定性試験項目と
安定性試験実施時点で不合格だった。貴社は、医薬品XXのこれら2ロットをアメリカに販売した。
ロットXXは、複数の時点で、粘度に関し不合格だった。貴社は、9ヶ月時点で全てのサンプルの相分離を確認
した後、ロットXXに関する安定性試験を終了した。
査察時点で、貴社はこれらのロットについて、顧客への通知や市場からの製品の回収のような適切な行動を
とっていなかった。
●不適切な回答
FDAの査察結果に対する貴社の2017年4月13日の回答は不十分である。貴社は、貴社の作業がCGMPに完全に従う
ために行っている是正処置の十分なエビデンスを提供しなかった。この文書への回答の中で、次のことを提供
せよ。
・貴社の調査手順を徹底的に修正するためにとった行動の要点と、改善された手順
・全製品の品質不適合についての改善された手順を使った調査
 全ての試験結果のレビュに関する詳細の要点、不適合の根本原因、アメリカ市場に販売された影響のある
 ロット、関連するCAPA
・製品のライフサイクルを通じ継続的な基準に基づいて、ばらつきの原因を適切に特定し、ロット内及び
 ロット間のばらつきの監視を保証するデータ駆動型の科学的に合理的なプロセスバリデーションプログラム
・製品の工程の適格性評価実施に関するタイムライン
・安定性プログラムの手順
これらのロットが使用期限を通じて安定していることを示すための予測的適格性評価の一環として、順調に
 製造されたXXロットのデータ
アメリカに販売しようと計画したものを含むXXのXXロットの廃
アメリカに販売された医薬品を試験するために使用されたXX試験が、現在の米国薬局方のXX試験と同等か、
 より良いことを示すためのデータ
・CGMP要件の順守の徹底的な評価と、完全な改善を保証するためのCAPAの計画
貴社は、回答中のこれらの項目に徹底的に取り組むべきである。
●品質部門の権限
この文書内の調査結果は、貴社の品質部門がその権限及び/または責任を完全に果たしていないことを示す。
貴社は、品質部門に適切な権限、十分なリソース、その責任を果たし一貫して医薬品の品質を保証するための
スタッフを与えなければいけない。
●受託業者としての責任
医薬品はCGMPに従って製造されなければならない。FDAは、多数の医薬品製造業者が、製造所、試験ラボ、
包装業者、ラベル業者などの独立した受託業者を使用していることを知っている。FDAは、受託業者を製造業者
の延長とみなしている。貴社と貴社の契約者XXは、XX医薬品の製造に関する品質協定があり、貴社は、
契約製造所として貴社の製造する医薬品の品質に責任がある。貴社は、安全性、同一性、力価、品質、純度を
確保するために医薬品が連邦食品・医薬品・化粧品法に従って作られていることを保証する必要がある。
●コンサルタントの推奨
我々が貴社で発見した違反の性質に基づき、貴社は、貴社のシステム、工程、最終的には貴社の製造する製品
がFDAの要求に従うことを保証するために、包括的でグローバルな評価を受けなければならない。
我々は、CGMP要件を満たす手助けをする適格なコンサルタントを雇うことを強く勧める。
我々は、適格なコンサルタントがFDAに、CGMPの要件に従うために、貴社の製造所、方法、管理、品質システム
の包括的な改善を支える努力について述べた詳細なレポートを提出することを要求する。
貴社のコンサルタントの使用は、CGMPを順守するための貴社の義務を軽減するものではない。貴社の経営陣
には、全ての不備を解決し、継続的なCGMP順守を保証する責任が残る。
●結論
FDAは2017年9月28日、貴社に輸入警告措置66-40をとった。
出典:https://www.fda.gov/ICECI/EnforcementActions/WarningLetters/2017/ucm591826.htm

■WL:320-18-22 オーストリアの製造所の査察(2017/7/17~2017/7/19)でみつかった医薬品製造における重大
なCGMP違反に関する2017/12/20付ウォーニングレターには、下記の指摘事項があげられています。
1.貴社は、全ての成分、容器、蓋、中間材料、包装材料、ラベル、医薬品を承認したり不合格と判定したり
  する責任と権威を持った品質管理部門と、品質管理部門に適用する手順を制定することを怠った。
貴社には、適切な品質管理部門が欠けていた。
また貴社は、品質部門の多数の機能に関する文書化された手順を制定することを怠った。例えば、以下の製造
作業に関する手順や文書がなかった。
・プロセスバリデーション
・洗浄バリデーション
・年次製品品質レビュ
・包装及びラベリングの手順
・ラインクリアランス
・測定装置のキャリブレーションと使用
・サンプリング
・変更管理
・逸脱
・OOS(Out-of-Specification)の調査
2.貴社は、ロット間の同一性を保証するために定める製造指図書の原本を整えることを怠った。
貴社は、貴社製品XXに関するいかなる製造指図・記録の原本またはロットの製造指図・記録を整えなかった。
ロットの製造記録なしに、貴社は、製品のロット間の同一性を保証できない。
3.貴社は、製品の各ロットに関し、出荷前に、各有効成分の同一性、力価を含む最終規格に十分に一致する
  という試験室の判断を怠った。
貴社は、最終製品XXを、有効成分XXの同一性や力価を試験せずに出荷した。この試験がなければ、貴社は貴社の
製品が規格に一致するか判断ができない。
4.貴社は同一性、純度、力価、品質に関する全ての文書化された規格に一致するかどうかの確認のために
  各成分のサンプルの試験をすることを怠った。
貴社は、XXの製造に使用する、入荷した有効成分やその他の成分が規格に一致することを保証するために、
サンプルの試験を怠った。貴社は、同一性試験を行わず、入荷した各成分の同一性に関する供給者の分析証明書
に頼った。
●結論
FDAは2017年10月20日、貴社に輸入警告措置66-40をとった。
出典:https://www.fda.gov/ICECI/EnforcementActions/WarningLetters/2017/ucm591990.htm

■WL:320-18-23 中国の製造所の査察(2017/7/17~2017/7/21)でみつかった原薬製造における重大なCGMP違反
に関する2018/1/2付ウォーニングレターには、下記の指摘事項があげられています。
1.貴社は、XXとXXを含むXXを、潜在的な交差汚染を避けるために適切な状態のもとで包装することを怠った。
貴社は、原薬XXとXXの製造をするために分離した設備を使用することを怠った。貴社の経営者は、非専用装置を
使って同じ部屋で、XX(例えば、XX(米国薬局方)とXX(欧州薬局方))を計量して再包装したと述べた。
貴社の回答において、貴社は、非専用設備の使用を続け、作業の前後に洗浄したエリア内で、XXの取り扱い、
再包装、再ラベリングのための時間を指定するつもりであると述べた。
貴社の回答は不適切である。清掃は適切な分離の代わりにはならない。XXの交差汚染は、生命に関わるアレル
ギー反応や、その他の反応を起こし得る。貴社の現在の手順は、貴社の製造所における原薬XXの再包装された
他の原薬への交差汚染の受け入れがたいリスクの高さを示す。分離した空気処理システムと製造装置を使った、
専用の分離された製造設備の中でXXの全ての製造活動を実施すべきである。
XXの汚染の安全レベルは判断されていない。XX及びその他のXXの非常に低いレベルでも、それに晒された感染
しやすい患者は、厳しいアレルギー反応に苦しむかもしれない。そのような低いレベルは、現在の分析方法では
検出するのが難しい。
我々は、貴社により包装された原薬XXがXXに汚染されているかどうか回顧的に評価することを貴社に勧める。
しかし、XXを検出するためのいかなる試験も、方法の制約とサンプルのサイズにより、限定された信頼を与える
だけであることを意識せよ。
患者にリスクを与えるこの低い検知能力と、公差汚染を起きないようにするための製造管理の限界は、完全に
分離された設備の中で製造の最低の規格に合致する重要性を明確に示している。
さらなる情報については、我々の製造に関するガイドラインを参照せよ。
もし、貴社がXXの再包装を続けるのであれば、医薬品がXXの汚染のない設備で製造されることをいかに保証する
かを述べよ。この文書への回答の中に、設備の汚染を除去し、改修し、再適格性評価するための計画も含めよ。
また、汚染除去方法、環境試験の分析方法、合格判定基準、汚染除去計画を裏付けるために貴社が用いた調査を
含めよ。
もし、貴社がXX製品の再包装を続けるのであれば、XXからのこれらの製品の完全な分離に関する包括的な計画を
提出せよ。さらに、XXの汚染の可能性のある製品によってもたらされる危険に取り組むために貴社が提案する
行動計画を含めよ。
2.原薬の出荷前に、貴社の品質部門はロットの製造記録のレビュを怠った。
貴社は再包装のロットの記録を持っていなかった。さらに、貴社の品質部門には、原薬の再包装したロットの
レビュ、承認、出荷前の出荷判定に関する文書化された手順が不足していた。、
この文書への回答の中で、貴社の設備で再包装された原薬がCGMPに従うことを保証する、再包装したロットの
レビュと出荷判定に関する手順を提出せよ。
3.商業的に販売された原薬の完全なトレーサビリティを維持することを怠った。
貴社には、各ロットが貴社の原薬供給者から、貴社の再包装作業を経て、商業的な販売をされるまで、トレース
できることを保証する文書や手順が不足していた。
この文書への回答の中で、原薬のサプライチェインの完全性、トレーサビリティ、透明性を保証するための手順を
提出せよ。
●コンサルタントの推奨
我々が貴社で発見した違反の性質に基づき、我々は、CGMP要件を満たす手助けをする適格なコンサルタントを雇う
ことを強く勧める。
貴社のコンサルタントの使用は、CGMPを順守するための貴社の義務を軽減するものではない。貴社の経営陣には、
全ての不備を解決し、継続的なCGMP順守を保証する責任が残る。
●追加の原薬CGMPガイドライン
FDAは原薬がCGMPに合致して製造されているどうかの判断において、ICH Q7の概説に書かれた期待も考慮する。
●結論
FDAは2017年8月11日、貴社に輸入警告措置66-40をとった。
出典:https://www.fda.gov/ICECI/EnforcementActions/WarningLetters/ucm592373.htm

■WL:320-18-24 中国の製造所の査察(2017/7/24~2017/7/28)でみつかった原薬製造における重大なCGMP違反
に関する2018/1/9付ウォーニングレターには、下記の指摘事項があげられています。
1.貴社は、中間体と原薬の各ロットに関し、製造指図記録書を整え使用することを怠った。
貴社の品質管理部門は、これだけでないが、ロットXXとXXのロットの記録を含む20のロットの製造・指図記録を
保持し、設置することを怠った。貴社は回答の中で、ロットの記録はなくしたのではなく、適切にアーカイブ
されていると述べたが、製造したロットの記録のコピーのようなエビデンスを提出しなかったので、貴社の回答
は不十分である。
さらに、貴社の品質保証部門は、加えられた原材料の重量が不正確であるにもかかわらず、
ロットの記録0220151203と0220151204を承認した。貴社は回答の中で、作業者が手順に従わなかったが、
これを逸脱と認識しなかったと述べた。また、貴社は、職員が、逸脱について不十分な認識を持っていたと
述べた。貴社の製造工程がその手順に従い、再現可能であるために、ロットの記録の正確性と完全性を保証する
のは貴社の責任である。
2.貴社は、貴社の原薬及び中間体が制定された仕様や規格に従うことを保証するために実施された全ての試験室
  の試験から得られる完全なデータを保持することを怠った。
貴社は、2014年にアメリカに出荷したXXのロットXX及びXXに関する分析のローデータを保持し設置することを
怠った。貴社は回答の中で、分析データはバックアップをとっていなかったと述べた。貴社はまた、データを生成
した機器を2015年にXX支社に移動し、そこの従業員がデータを消したと述べた。CGMPの活動を復元し、必要に応じて、
逸脱や調査のためにローデータをレビュできることを保証するために、ローデータを保持することは不可欠である。
我々の発見は、貴社の適切な文書、訓練された人員、文書化された手順といった適切な製造作業の基本的な要素の
理解不足を示している。
●追加の原薬CGMPガイドライン
FDAは原薬がCGMPに合致して製造されているどうかの判断において、ICH Q7の概説に書かれた期待も考慮する。
●結論
FDAは2017年10月18日、貴社に輸入警告措置66-40をとった。
出典:https://www.fda.gov/ICECI/EnforcementActions/WarningLetters/ucm591944.htm


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まとめ
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いかがでしたでしょうか。
今回のウォーニングレターの内容を見ると、以前多かったデータインテグリティの指摘はなく、代わりに、
品質管理の問題を指摘しているケースが多かったように思います。
また、これは今回に限らないのですが、最近、委受託関連の管理のずさんさを指摘しているケースも結構
見受けられます。この機会に、例えば、供給者監査が定期的に行われているか、また、供給者の提供する
分析証明書と自社で行った分析結果に乖離がないかなどを確認してみるのもいいかもしれません。

ところで、今回のウォーニングレターは、全て輸入警告措置につながっていました。
指摘された内容が内容ということもあるのでしょうが、品質管理体制の甘い会社に対し、FDAが厳しい姿勢
で臨むようになってきていると感じます。

☆次回は、3/15(木)に配信させていただきます。


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お礼
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2月21日(水)~2月23日(金)に開催されたインターフェックス大阪にて、弊社ブースにお立ち寄りくだ
さった方々、どうもありがとうございました。
心よりお礼申し上げます。


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