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2017.09.15

【英国のEU離脱について】ASTROM通信<130号>

 ~安全な医薬品の安定供給をご支援する~

こんにちは
ASTROM通信担当の橋本奈央子です。

日暮れが早くなったなと実感するこの頃ですが、いかがお過ごしでいらっしゃいますか?
さて、今回は、英国のEU離脱に関する話題を3件取り上げたいと思います。
1つ目はEMA本部の移転に関する話題、2つ目は英国のEU離脱に関するEUとEMAの考え方の違い、
3つ目は英国のEU離脱に関しEMAが発表したQ&A集についてです。
EU地域の拠点を英国に置いている製薬会社様には大きな影響がありますし、英国経由でEU向け
に輸出している製薬会社様にも変更手続が発生しますので、影響の有無や影響の度合いを確認
する意味で目を通していただければと思います。
最後までお付き合いいただければ幸いです。


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1.EMA本部の受入の申し出について(2017年8月22日発)
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欧州医薬品庁(EMA : European Medicine Agency)は、EU内の薬の科学的評価、監督、安全性の
モニタリングについて責任を負う。そのEMAは、英国の欧州からの離脱により移転する必要がある。
移転先として、EMAに対し19の申し出があった。
2017年8月1日時点でEMAの受入を申し出ている都市は以下の通りである。
オランダ・アムステルダム/ギリシア・アテネ/スペイン・バルセロナ/ドイツ・ボン/
スロバキア・ブラティスラバ/ベルギー・ブリュッセル/ルーマニア・ブカレスト/
デンマーク・コペンハーゲン/アイルランド・ダブリン/フィンランド・ヘルシンキ/
フランス・リール/マルタ/イタリア・ミラノ/ポルトガル・ポルト/ブルガリア・ソフィア/
スウェーデン・ストックホルム/オーストリア・ウィーン/ポーランド・ワルシャワ/
クロアチア・ザグレブ
委員会の評価は、2017年9月30日にネット上で公表され、欧州理事会(EC : European Council)は、
評価に基づき2017年10月に総務会で政治的な考察を行う。投票は無記名で、27の加盟国により実施
される予定である。
最終決定は、総務会で行い、2017年11月20日に発表される。
評価は以下の項目を含む6つの基準に基づく。
・運用上の保証(適切なオフィスが利用できること)
・場所のアクセスのしやすさ(フライトの接続の頻度と時間)
・EMAの職員の子供たちのための学校(多言語の学校の利用可能性を含む)
・職員の家族のための労働市場と医療施設の利用(非常に有能なスタッフを維持し引き付けるため)
・地理的分布
受入の申し出国の公開に加え、EMAはその事業継続計画の一環として、一時的にいくつかの活動を
停止すると言った。
新しい公に利用可能なEU内の全ての医薬品市場のオンラインの情報源の開発
・申請者に、安全で効率的な方法でヒト用及び動物用の薬の許可申請に関連する文書の電子的提出
 を認めるe-submissionプロジェクトへのEMAの寄与
・EMAの今後の透明な手段を提示するロードマップの開発
2018年以後のEUの医薬品規定当局がベンチマーキングに参加すること

■出典
 https://www.gmp-publishing.com/en/gmp-news/gmp-aktuell/ema-application-headquarters.html


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2.英国のEU離脱について(2017年9月5日発)
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英国医薬品庁(MHRA : Medicines and Healthcare products Regulatory Agency)は、英国のEU離脱後
に物事が正しい方向に動くために、EU国民投票の結果に対処している。
2017年8月21日、MHRAにより、企業や消費者のいかなる混乱も防ぎ、EUから円滑で秩序だった脱退を
するための願いを明確に述べた
政策方針書“Continuity in the availability of goods for the EU and the UK”(EUと英国の
商品の入手可能性の継続性)が発行された。英国の規制当局によれば、将来最も自由な経済関係へ
移行することを目標としている。
目標を達成するために、英国は、政策方針書の中で4つの提案をしている
1.EU離脱の日に、追加の要件または制限なしに、EUと英国の市場において商品の入手可能性を保証
  するために、離脱前に単一市場にある商品は英国とEU内を自由に循環され続けなければならない。
2.離脱前に法令を順守している企業は、離脱後に、英国及びEU市場で商品を販売するために、重複した
  不要な活動を要求されるべきでない。これは、離脱前の承認、証明、登録の有効性の認めることを含む。
3.流通している商品が法律に従い続けることを保証し、市場の監督官庁が法令に準拠していない製品に
  関しては必要な行動がとることを保証できるよう、協定は製品の継続的な監視を促進しなければならない。
4.商品がサービスと一緒に提供される場合、商品の協定を損ねるようなサービスの提供の制限をする
  べきでない。

一方、EMAは、英国のEU離脱について異なる絵を描いて準備をしている。
“Notice to marketing authorisation holders of centrally authorised medicinal products for
  human and veterinary use”(ヒト及び動物用医薬品に関し中央に認定された医薬品市販承認取得者への
通知)において、英国は2019年3月30日から“第三国”になると明確に述べられている。これは、ECにより
発行されたQ&Aに書かれ、EMAも承認している:英国のEU離脱後は英国で製造された医薬品及び原薬は輸入
されたものとみなされる。また、バッチの出荷判定は、EU内に設置された場所に移動しないといけない。

■出典
 https://www.gmp-publishing.com/en/gmp-news/gmp-aktuell/mhra-industry-brexit.html


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3.EMA発出「集中化手続の枠組内におけるヒト及び動物用医薬品に関する英国の
EU離脱についてのQ&A」の抜粋
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2017年5月2日、ECおよびEMAは、
“Notice to marketing authorisation holders of centrally authorised medicinal products for
 human and veterinary use”(ヒト及び動物用医薬品に関し中央に認定された医薬品市販承認取得者への
通知)を発行した。そこでは次のことを述べている:英国は2017年3月29日にEUから離脱する通知を提出した。
離脱の合意において別の日を設定するかECが期限を延期しない限り、2019年3月20日00:00から、英国にEUの
法律を適用することは終わり、英国は“第三国”になるだろう。
この観点で、ヒト及び動物用医薬品に関し中央に認定された医薬品市販承認取得者に、適時考慮される必要の
ある法的影響を知らせる。英国のEU離脱の影響に準備することは、ヨーロッパや国の統治に関する問題だけで
なく、民間の団体にも関係する問題である。
Q&Aの最初のリストは、ECとEMAにより合同で起草され、欧州経済地域(EEA)内で制定された要求に関する情報
をテーマとしている。Q&Aは近い将来さらに改訂され完成されるだろう。
1.自社が英国内の医薬品市販承認取得者だったらどうなるか?
EC規則No.726/2004の2条によると、医薬品市販承認取得者はEU内に設置されないといけない。EEAの協定を
通して、協定はノルウェイ、アイスランド、リヒテンシュタインも含むよう拡大される。
中央に認定された医薬品市販承認取得者は、通常、その承認をEEAに移さなければいけない。これは販売承認の
決定の住所を、新しい住所に変えることを意味する。
2.自社が英国内の(ヒト用医薬品の)稀少疾病医薬品の指定取得者だったらどうなるか?
EC規則No.141/2000の2条によると稀少疾病医薬品の指定出資者がEEA内に設置されないといけない。指定された
稀少疾病医薬品の指定取得者はその指定をEEA内に設置された指定取得者にするか、設置場所をEU加盟国または
EEA内に変更し、稀少疾病医薬品の指定取得者の名前及び/または住所変更の文書を提出する必要がある。
3.自社が、稀少利用・稀少種向け/限定市場(MUMS : Minor Use Minor Species / limited market)の
  動物用医薬品の製品を持つ英国企業だったらどうなるか?
出資者/申請者が英国にいるならば、英国のEU離脱の日からインセンティブは適用されず、第三国に設置された
出資者/申請者であるとして、EEAにおけるMUMS/限定市場の分類を求めたり受けたりすることはできない。
しかし、MUMS/限定市場の分類は製品/表示と結びついているので、製品と一緒に移動可能である。
移動を正式に認めるために、EMAは、MUMS/限定市場の分類製品とMUMS/限定市場の分類が、元の出資者/申請者
からEEA内の出資者/申請者に移転されたことを、元の出資者/申請者からEMAに対して公式に知らせる文書を
求めている。この文書では、MUMS結果文書の参照番号を明らかにしなければならない。
すでに認可されているMUMS/限定市場の動物用医薬品に関し、販売承認の移転は、別の手続きなので、
MUMS/制限指定の移転は含まないことに注意することが重要である。
したがって、認可済のMUMS/限定市場の動物用医薬品に関し、市販承認取得者は、販売承認の移転の移転と、
それとは別にMUMS/限定市場分類の移転を行う必要がある。
4.自社のファーマコビジランスのためのクオリファイドパーソン(QPPV : Qualified Person for
  Pharmacovigilance)が英国内に住んで自身の業務を行っている場合どうなるか?
EC指令2001/83の8条及び2001/82の74条によれば、ファーマコビジランスのためのクオリファイドパーソンは、
EEA内に住み、業務を実施しないといけない。従って、QPPVはEEA内に居住地を変えて業務を実施するか、
EEA内に住み業務を実施する新しいQPPVが任命される必要がある。ヒト用医薬品の連絡先の詳細(電話番号、
FAX番号、住所、メールアドレス)を含むQPPVの変更は、57条のデータベースを通じてのみ更新できる。
動物用医薬品の変更は、変更手続(変更ガイドラインC.I.9)を通じで更新さればければならない。
5.ヒト用医薬品のファーマコビジランスシステムのマスタファイル(PSMF : Pharmacovigilance System
  Master File)が英国内にある場合どうなるか?
委員会の実施規則(EU)No.520/2012によれば、PSMFはEEA内になければならない。ファーマコビジランスの
監督官庁は、ファーマコビジランスシステムのマスタファイルがある加盟国の所轄官庁である。従って、
市販承認取得者は、PSMFの場所をEEAの加盟国に変更する必要があるだろう。PSMFの場所の変更(通り、町、
郵便番号、国)は57条のデータベースを通じてのみ更新できる。
6.原薬の製造所が英国内にある場合どうなるか?
英国のEU離脱の日から英国内で製造された原薬は輸入原薬とみなされる。
EC指令2001/83及び2001/82は、出発原料に関するGMPの詳細ガイドラインに従って製造された原薬のみ
出発原料として使用することが義務づけられていると述べている。
さらに、EC指令2001/83の46b(2)によれば、ヒト用医薬品に使われる原薬は、EEA内で輸入されたものか、
工場のGMPの標準や管理がEEA内の工場と同等であると確認した、第三国の輸出国の所轄官庁から得た
確認書が添付されたものに限らなければならない。
7.自社の最終製品の製造所が英国内にある場合どうなるか?
英国のEU離脱の日から英国内で製造された医薬品は輸入医薬品とみなされる。
EEAの所轄官庁は、第三地域から輸入された医薬品が、EC指令2001/83の40(3) 及び2001/82の44(3)に従って、
承認の対象となることを保証しなければならない。EC指令2001/83の41条・42条、2001/82の45条・46条に
定義されたたくさんの条件(例:EEA内のクオリファイドパーソンの使用、GMP査察)を満たした時、承認される。
中央に認定された医薬品に関し、市販承認取得者は、EEA内に設立され承認された輸入者を定め、対応する
変更書(変更ガイドラインB.II.b.2)を提出する必要がある。
さらに、EC指令2001/83の51(1)(b)及び2001/82の55(1)(b)に従い、承認取得者は、各製造バッチをEEA内へ
輸入の際、製造販売許可要件に従い医薬品の品質を保証するために、少なくとも全ての有効成分の定性分析、
定量分析、その他の全ての必要な試験やチェックを受けられるバッチ管理サイトを定める必要がある。
中央に認定された医薬品に関し、市販承認取得者は、現在の英国にあるバッチ管理サイトの場所を、EEA内に
設置された場所に変更し、対応する変更書(変更ガイドラインB.II.b.2)を提出する必要がある。
8.英国内に出荷判定サイトがある場合どうなるか?
EC指令2001/83の51(1)条及び2001/82の55(1)条によれば、製造及び輸入許可取得者のクオリファイドパーソン
はEEA市場に出す目的の医薬品の各バッチがEU GMP要件及び製造販売承認承認要件に従って製造されたことを
証明する責任がある。中央に認定された医薬品に関し、市販承認取得者は、英国にある出荷判定サイトを
EEA内に設置された場所に移し、対応する変更書(変更ガイドラインB.II.b.2)を提出する必要がある。
9.自社は、英国にある中小企業(SME)だが、委員会規則(EC)No.2049/2005(SME規則)に従って、
  財政及び行政の援助をまだ利用することはできるか?
財政及び行政の援助の適格者であるために、会社はEEA内に設立され、SMEの定義を満たさなければならない。

■出典
http://www.ema.europa.eu/docs/en_GB/document_library/Other/2017/05/WC500228739.pdf


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まとめ
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いかがでしたでしょうか。
EMAの職員は待遇がいいのだなと感心してしまいましたが、それはさておき、英国のEU離脱により、英国に
拠点を置いている製薬会社様には大きな影響があることがわかります。
EMAから近いうちにQ&Aの最終版が発出されるそうですので、関係する製薬会社様は確認されたほうがよいと
思われます。

最後までお読み頂き、ありがとうございました。
☆次回は、9/29(金)に配信させていただきます。


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【発行責任者】
株式会社プロス
ASTROM通信』担当 橋本奈央子

2017.09.01

【日本:三役の業務 & EU:最新のNon-Compliance Report】ASTROM通信<129号>

 ~安全な医薬品の安定供給をご支援する~

こんにちは
ASTROM通信担当の橋本奈央子です。

今日からもう9月。今年も残すところ4ヶ月になってしまいましたが、いかがお過ごしで
いらっしゃいますか。

さて、前回は、米国FDAのウォーニングレターを取り上げたので、今回は、下記2件の話題
を取り上げたいと思います。
1.「医薬品の製造販売業者における三役の適切な業務実施について」(平成29年6月26日
   薬生発0626第3号厚生労働省医薬・生活衛生局長) について
2.最近発行されたEUのノンコンプライアンスレポート(Non-Compliance Report)について
   ノンコンプライアンスレポートは、製造所の査察において、EU GMPに不適合と判断される
   不備が見つかった場合に発行されるもので、3部構成になっています。
   レポートのPart1に確認した当局の名前、製造業者の名前、製造所の住所等、Part2に
   ノンコンプライアントな製造オペレーション、Part3に不備の内容、EUの対策等が書かれ
   ています。
   査察結果を報告するという点ではウォーニングレターと似ていますが、ウォーニングレター
   に比べて、指摘の内容があまり詳しくありません。また、不備を、クリティカル(Critical)、
   メジャー(Major)、その他(Others)に分類して、クリティカルとメジャーが何件あったか
   を明記しているという特徴があります。
   今回は、2017年1月以降に発行された7件について、Part3部分をみていきたいと思います。

最後までお付き合いいただければ幸いです。


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1.「医薬品の製造販売業者における三役の適切な業務実施について」
(平成29年6月26日 薬生発 0626 第3号 厚生労働省医薬・生活衛生局長) について
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2ヶ月ほど前になるのですが、昨今の製造販売承認書と製造実態に相違が生じた事例、報告義務対象
の副作用情報を把握していたにもかかわらず定められた期限内に報告されていなかった事例、
医薬品医療機器法に抵触する事例が発生していることを受け、厚生労働省は、医薬品製造販売業者の
三役の今後の業務実施のあり方を示した「医薬品の製造販売業者における三役の適切な業務実施に
ついて」を発出しました。
<参考>
三役とは、総括製造販売責任者、品質保証責任者、安全管理責任者の総称です。
●総括製造販売責任者
医薬品医療機器法第 17 条第1項に定める医薬品等総括製造販売責任者をさします。
●品質保証責任者
医薬品、医薬部外品、化粧品及び再生医療等製品の品質管理の基準に関する省令(平成16年厚生
労働省令第 136 号。以下「GQP省令」 という。)第4条第3項をさします。
●安全管理責任者
医薬品、医薬部外品、化粧品、医療機器及び再生医療等製品の製造販売後安全管理の基準に関する
省令(平成16年厚生労働省令第 135 号。以下「GVP省令」という。)第4条第2項又は第13条第2項
をさします。

<通知の概要>
通知の概要をピックアップしました。
●製造販売業者がすべきこと
・総括製造販売責任者が責務を果たし、必要な場合に製造販売業者に意見できるよう、適切に職務上
 の位置づけを行うこと。
 総括製造販売責任者が製造販売業者に意見・人員や予算等の確保の要請等を行えるよう、原則として
 総括製造販売責任者を経営会議等に直接出席させること。
・総括製造販売責任者が業務経験を有し、統合的な理解力及び適正な判断力を有する者であることを
 考慮すること。
・三役を適切に監督できるよう職務上の位置づけを適切に行い、三役の指揮命令が機能する社内体制の
 整備に努めること。
・関連部門が三役と円滑に連携できるよう、三役の役割や権限を明確化し社内に通知すること。
 ★具体例★三役を人事発令し、三役の役割や権限を社内に公示する。
・三役の責務遂行のため教育訓練を定期的に行うと共に、将来的な三役の候補となりうる人材の育成に
 努めること。
三役が適正かつ公正に業務を遂行するために必要な人員を配置すること。
・総括製造販売責任者及び品質保証責任者、製造業者の職員個人の意図的な不正行為を防止するための
 対策を検討させること。
 ★具体例★(製造販売業者と製造業者が同一法人の場合)定期的な人事異動、内部通報制度、製造区域
       への入退室管理、定期的なコンプライアンス研修、医薬品品質システムの活用等
変更等の情報が製造所から遅滞なく報告されていることを定期的に確認し、また連絡されるよう、
 製造所との連携を強化すること。必要に応じて実地調査をすること。確認は、製造所の製造管理または
 品質管理に係る業務を行っていないものに実施させること。
・製造販売後安全管理業務手順書に、安全情報の報告が必要な範囲や報告手順を規定すること。
 教育訓練計画に基づき、医薬情報担当者への教育訓練を実施させること。
総括製造販売責任者及び安全管理責任者に職員個人の意図的な不正行為を防止するための対策を検討
 させること。
 ★具体例★内部通報制度の整備やこれまでの事例等を含むコンプライアンス研修等
・総括製造販売責任者及び安全管理責任者に、副作用等の報告漏れを防止するための営業所等への
 点検方法を検討させること。
 ★具体例★安全管理統括部門等の職員を営業所等に直接訪問させること、営業所等の責任者や医薬情報
      担当者等に対するインタビューを実施させること等
●総括製造販売責任者がすべきこと
・三役会議を定期的に開催し、品質管理業務及び安全確保業務の監督を円滑に行えるよう努めること。
製造業者の職員個人の意図的な不正行為を防止するための対策を検討すること。
●品質保証責任者、安全管理責任者がすべきこと
職員個人の意図的な不正行為を防止するための対策を検討すること
■出典
 http://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-11120000-Iyakushokuhinkyoku/0000169194.pdf


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2.最近発行されたEUのノンコンプライアンスレポート(Non-Compliance Report)について
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■Report No. DICM/INSP/FS/ACS スペインの製薬会社をスペイン当局が2017/1/18~20に査察
●不備
2017年1月18日~20日に実施した査察の中で、製造所の品質システムと製造され出荷された
免疫医薬品(無菌/非無菌の細菌ワクチン、無菌/非無菌の細菌自家ワクチン、無菌/非無菌の
アレルギーワクチン)の品質に影響を与えるクリティカルとメジャーな不備がみつかった
実際、品質管理活動は、原材料から製造され出荷された製品の適切で再現可能で求められた品質を
保証していない。また、原料の保管は、受入時点でGMPやEUの規定に則った管理がされていない。
最終製品の物理的または化学的規格が管理されていない。さらに、無菌管理が正しくバリデート
されていないという事実から、最終製品の無菌が保証されていない。また、培地充填試験は、作業が
無菌状態で行われたことを示していない。さらに、環境モニタリング、設備の洗浄と消毒、更衣の
衛生状態が無菌製品の製造に関するAnnex1の規定に則っていない。細菌ワクチン及び自家ワクチン
の不活性化プロセスがバリデートされていない。そのうえ、施設は、無菌及び非無菌医薬品の
製造活動を行うためのGMPのPart1及びAnnex1に則っていない。このように、この製造所で製造された
製品の品質は保証できない。
●対策
・販売承認の一次停止
・GMP証明の撤回
・出荷済バッチの回収
・供給禁止

■Report No. 17IPP002 ブラジルの製薬会社をフランス当局が2017/2/17に査察
●不備
査察中、次の7つのクリティカルな不備がみつかった。
・医薬品品質システムの欠陥:逸脱の不十分な対応、製品品質レビュの不十分な対応、品質マニュアル
 のリスクマネジメントの考慮の不足
マイナーと分類され対策まで6ヶ月待った注射カートリッジの漏れの欠陥についての苦情で明らかに
 なった逸脱
・無菌状態で働くのに不適切なオペレータの挙動:組んだ手、腕組みしてそばに立つ、何度も体に
 触れる腕、素早い動き、手をグレードAの区域内に入れる前にグローブが無消毒であること
 グレードAの区域内に入れる前の上半身全体が無消毒であること、カートリッジをつかむために
 用いられる道具の非専用エリアでの保管、床に落とした道具を再び使用するオペレータ
・外観検査:工場は不良品の危険性を考えていない。不良品に関する受入品質の制限は定義されて
 いないし、出荷判定に関する不良の最大率も考慮されていないし、カートリッジは上下を逆に
 されないし、白い背景でチェックされない。
・製品の高度の汚染リスク:環境汚染(たとえば、充填機の内側に溶液を移動するためのパイプ用
 のグレードCとグレードBの間の壁の密封されていない、圧力の逆転で広がっている穴、培地充填試験
 の移動用の穴)、交差汚染(計量のための道具、部屋の移動)
・原薬のドラム毎のサンプリングの欠如:わずかなドラムがサンプリングされただけで、バッチが
 品質管理に承認される(グリーンラベル)かもしれないということが何回かあった。
・品質管理の実験室で、偽造された結果がみつかった:全てのドラムからサンプリングされていない
 のに、分析証明書は、全ての原薬のドラムの同一性試験が適合したと述べていた。
次の7つのメジャーな不備もみつかった。
・必要な資格と適切な経験を持つ職員の不適切な数が、不備の重大性に関する医薬品品質システム
 の不十分な対応につながった。
・データインテグリティの保証の欠如(ローデータの管理)
・生産高と照合量の不備
・供給者の適合性評価の不備
・バリデーションマスタプランの対応の弱さ(性能適格性評価が全く考慮されていない)
・原材料のサンプリングの対応の欠如(サンプリングツールは品管の実験室内に包まれて保管されて
 いなかった)
・苦情管理(常には品質保証部門によって管理されていなかった)
●対策
・無菌製品ARTIADRER 100 40mg/ml 0.01mg/mlの全国的な販売認可の要求の拒絶
 製造所によって提供された情報によると、製造所で製造されたいかなる製品についてもEUの顧客は
 確認されなかった。国の所轄官庁は、この製造所から供給された製品の致命度を評価し、適切な場所
 で継続的に供給されることを保証するための方法を制定するべきである

■Report No. IT/NCR/API/1/2017 rev.1 インドの原薬製造会社をイタリア当局が2017/3/4に査察
●不備
次の領域でメジャーの不備がみつかった:電子と紙の分析のデータインテグリティ、品質管理活動、
コンピュータ化システムのセキュリティ、分析と製造データの改ざん、職員、公衆衛生に重大な
リスクにつながる逸脱及びOOS(Out of Specification)の管理
●対策
・販売承認の変更要求
・出荷済バッチの回収
・供給禁止
・原薬製造所認定(CEP:Certificates of Suitability)の一次停止または取消
・この供給者のいかなる新規/継続申請も承認されるべきではない

■Report No. 17MB002NCR インドの製薬会社をフランス当局が2017/3/17~23に査察
●不備
2017年3月13日~27日に実施された事前承認査察で、バイオシミラー医薬品3製品に関し、次の11件の
メジャーの不備を含む35件の不備がみつかった:(1)環境モニタリング(2)教育(3)OOSの結果の管理
(4)洗浄バリデーション(5)プロセスバリデーション(6)ベンダの適格性評価(7)培地充填試験
(8)交差汚染リスク(9)バッチの製造記録(10)クラス分けされた区域内での差圧アラームの管理
(11)バッチの保証に関するSAP内のアクセス管理
●対策
・販売承認の一次停止
・供給禁止

■Report No. DE/NCR/API/1/2017 インドの原薬製造会社をドイツ当局が2017/4/26に査察
●不備
製造、品質管理の領域で2件のクリティカル、建物及び設備の領域で1件のメジャーの不備がみつかった。
品質管理に関するクリティカルな不備は、GMP環境外(研究開発部門)で実施されたGMPの有効成分(原薬)
の試験のトレーサビリティに関する曖昧さによるものである。研究開発用以外のサンプルも、GMP外の
研究開発用実験室で分析されたことは明らかだった。これらの試験のトレーサビリティの手段は、
組織的かつ意図的に無効(ローデータがない、ログブックがない、HPLC(高速液体クロマトグラフィー)
からファイルが消されている、HPLCに監査証跡がない、研究開発用HPLCに関するネットワークシステム
がない)になっている。
製造に関するクリティカルな不備は、リテスト日の近づいているバッチの再処理による。このプロセス
により、新しいバッチ番号が作られ、新しい(延期された)リテスト日が設定された。再処理は、新しい
バッチ番号によってトレースされなかった。
接種材料が取り扱われる微生物実験室内のHVAC(高真空)システムの信頼性の欠如により、接種材料の
取り扱いに関する適切な環境条件が保証されなかった。
●対策
・現在有効なGMP証明の撤回
・供給禁止
・GMP証明の発行の拒絶

■Report No. 17MPP048NCR 中国の原薬製造会社をフランス当局が2017/6/24に査察
●不備
全部で22件の不備がみつかり、そのうちの1件はクリティカル、3件はメジャーに分類された。
クリティカル:バッチの製造記録、出発原料の製造業者の査察報告、GC(ガス・クロマトグラム)
       及びHPLC(高速液体クロマトグラム)等のGMP文書の改ざん・日付のごまかし・偽造
メジャー1:トレーサビリティなしに行われている未申告の作業
メジャー2:トレーサビリティのない未確認の製品の未申告の保管
メジャー3:バッチの製造記録の発行に関する不十分な規定
●対策
・出荷済バッチの回収
・供給禁止

■Report No. DE/NCR/MP/2/2017 インドの製薬会社をドイツ当局が2017/8/1に査察
●不備
〇クリティカルの不備:
1.医薬品品質システム(PQS)の本質的要素-PQSが効果的でない。(詳細はメジャーの不備を見よ)
a)何百ものケースで、“従業員のエラー”により、OOSの結果がトレースや科学的な根本原因の分析も
 なしに組織的に無効にされている。
b)逸脱、OOS管理、プロトコル、レビュ、報告システムは、体系的に設計され実行されているが、
 不一致、不適合、インシデント、異常な出来事は文書化・報告されていない。
c)部屋および製品の直接接触設備の洗浄が検証可能でなかったり、良好に実施されていなかったり
 した。但し、BMR(バッチの製造記録)やBPR(バッチの包装記録)には、ぼんやりと実施されたことが
 文書化されていた。
結論:これにより、BMR(バッチの製造記録)、BPR(バッチの包装記録)、BTR(バッチの試験記録)の網羅性、
   インテグリティは保証できない。その結果、BMR、BPR、BTR及び関連するレビュ(例:バッチの記録
   のレビュ)は出荷判定の判断に使えない。記録は、否定的な出来事は文書化されていないので、
   BMR/BPRのレビュによって製造のOOSの結果や市場の苦情(品質の不具合/製品の欠陥報告)の調査に
   関する根本原因の分析が客観的にうまく実施することはできないと結論づけられる。
〇5つのメジャーな不備:
1.逸脱の管理とQP(クオリファイドパーソン)のバッチの保証
1.1 “インシデントログ”の閾値の受け入れ難い高さ
1.2  BMR/BPRの中で評価されていない設備の故障のバッチ品質への影響
1.3 同時に評価されていないインシデント
1.4 適切なインシデントの対処がないことによる販売承認に準拠しないバッチの出荷
2.部屋及び設備の設計、前提、維持管理
2.1 秤のキャリブレーションと文書の完全性
2.2 製造室の表面
2.3 冷暖房空調設備のフィルターの洗浄と維持管理
2.4 不適当な扉
2.5 不適当な分注設備
3.部屋と設備の洗浄
3.1 汚れた部屋と設備
3.2 洗浄の文書のインテグリティ
3.3 洗浄ステイタスのラベル
3.4 洗浄されていない設備3の“クリーン”の状態ラベル
3.5 専用設備のラベル
4.製造工程のバリデーション
4.1 不完全なプロセスバリデーションから得たバッチの記録の目的外の承認
4.2 不完全なプロセスバリデーションの不適切な追跡調査
4.3 プロセスバリデーションが不完全な工程から得られ、顧客に供給されたバッチ
5.OOSの結果の調査と対応
5.1 安定性試験
5.2 原材料、バルク、最終製品の試験
5.3 精製水の試験
●対策
・出荷済バッチの回収
・供給禁止

■出典
http://eudragmdp.ema.europa.eu/inspections/gmpc/searchGMPNonCompliance.do


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まとめ
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いかがでしたでしょうか。
1つ目の、「医薬品の製造販売業者における三役の適切な業務実施について」は、これまでと異なり、完全に
性悪説に基づいて書かれていると感じました。職員の意図的な不正行為の防止策
の具体例として、内部通報制度の整備を挙げているのを見て、そういう時代になったのだなあと思ってしまい
ました。

2つ目のEUのノンコンプライアンスレポートは、当局の記述レベルが異なりわかりづらいところもありましたが、
(Report No. 17IPP002)のフランス当局によるブラジルの製薬会社のオペレータの挙動に関する指摘は細かくて
驚きました。
FDAのウォーニングレターとかなり異なりますが、EUのノンコンプライアンスレポートの内容も是非参考にして
いただければと思います。

最後までお読み頂き、ありがとうございました。
☆次回は、9/15(金)に配信させていただきます。


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