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2017.05.15

【最近のウォーニングレター】ASTROM通信<122号>

 ~安全な医薬品の安定供給をご支援する~

こんにちは
ASTROM通信担当の橋本奈央子です。

ゴールデンウィークも終わり、次の連休が果てしなく先のことに思える今日この頃ですが、
いかがお過ごしでいらっしゃいますか?

さて、今回も前回に引き続き、最近米国食品医薬品局(FDA)の製品品質オフィスから発行
されたウォーニングレター(Warning Letter)の内容を確認していきたいと思います。

FDAがどんな点を指摘しているのかをご一緒に確認できれば幸いです。


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ウォーニングレターの概要
注:文中のXXはウォーニングレターでマスキングされている文言です
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■WL:320-17-29 インドの製造所の査察(2016/6/1~2016/6/10)でみつかった医薬品製造に
おける重大なCGMP違反に関する2017/3/10付ウォーニングレターで、下記の指摘事項があげ
られています。
1.貴社は、医薬品の成分、製品の容器、中間材料、ラベル、製品が、同一性、濃度、品質、
  純度の適切な標準に従うことを保証するための科学的に理にかない適切な規格、標準、サンプ
  リング計画、試験手順を含む試験室の管理を定めることを怠った。
例えば、品質管理の微生物試験室の査察中、査察官は以下のことを発見した。
A.微生物試験を行うためのポジティブコントロール(陽性対照)のプレートが、全く成長を
  示さなかった。ポジティブコントロールで増殖に失敗した時、試験結果は偽陰性の可能性がある、
  正当とみなすことはできない。
B.無菌試験エリアの環境モニタリング中、乾燥した培地プレートが使われていた。乾燥し、ひび
  の入った、または、傷ついたXXは、微生物の成長促進や正確な計数を損ない、人為的に低い
  微生物数で、偽の陰性にすることができる。欠陥のある培地を使用することは、貴社の微生物学
  的試験の結果を損なう。
  また、貴社は、無菌処理室の環境モニタリング中に回収された細菌や菌類の分離株を定期的に
  識別していなかったと思われる。
C.フィルタとプレートの間でエアが吹き出ていた。フィルタとプレートの不適切な接触は、細菌
  や菌類の回収を損なう可能性がある。
  貴社は、これらの試験室の逸脱の影響を評価した結果、それらがもたらすリスクは低いと信じて
  いると回答した。貴社の回答は、貴社の微生物試験室の管理と手順の包括的な評価を実施すると
  いう約束に欠けている。
2.貴社は、無菌をうたう医薬品の微生物学的汚染を防ぐために適切な文書化された手順を制定し
  それに従うことを怠った。手順には、全ての無菌及び滅菌工程のバリデーションを含む。
2014年の煙の調査のレビュ中、査察官は、ISO5エリアの充填ラインとキャッピング製造ラインで09:53
と10:29に気流の乱れがあったことを発見した。貴社は、過去の煙の調査における気流の不備の発生を
評価せず、問題を解決するための是正処置を提出していないため、貴社の回答は不十分である。また、
貴社は、最近の煙の調査のコピーを提出しなかった。
3.貴社は、権限のある職員のみが製造の管理の記録及びその他の記録の変更を行うことを保証する
  ための、コンピュータや関連システムの適切な管理を怠った。
例えば、無菌製造及び品質管理の微生物学的エリアの査察中、査察官は下記のことを発見した。
A.2つの機器の監査証跡の中で、少なくともXXとXXの6つの試験結果の削除が行われていた。貴社の
  システムは、オペレータにファイルの削除を許していた。貴社は、この作業を管理し、
  バックアップファイルが保存されることを保証するための手順を持っていなかった。さらに、
  監査証跡をレビュした時、合計25個のXXの試験結果の削除がみつかった。しかし、貴社は、
  バックアップデータが適切に保持されることを保証するための管理をいかに行うか、詳細に回答
  しなかった。
B.微生物同定装置のアクセス制限がなかった。さらに、この装置のデータのバックアップ用
  外部ハードドライブへのアクセス制限もなかった。全ユーザがファイルを削除したり修正したり
  できた。貴社は、システムと外部ハードドライブへのアクセスを制限することを約束した。
  しかし、貴社は、不十分なシステム管理の影響とその影響範囲に関する過去のリスク評価を提供
  しなかったので、回答は不十分である。
4.貴社は、制定した規格や標準に確実に従うために、必要な全てのテストから得られる完全なデータ
  を含む試験室の記録を保証することを怠った。
XXは同一性試験で不合格になった。貴社は、不合格の結果の調査をせず、合格した再試験結果を採用し
た。
貴社は、1年より前に行った分析の回顧的調査を実施し、OOSの結果は、とりあえず、分析者の間違いに
よってひきおこされていたと結論づけた。また、貴社は、OOS結果が得られた旋光計の交換を提言した。
しかし、貴社の回答は、OOSの手順の再検討の実施を含んでいなかった。OOSの結果が得られた場合、
即座の試験室の調査の開始が重要である。さらに、バッチの記録のレビュのために、試験中に得られた
全てのデータを品質部門に提供する必要がある。もし、試験室がOOSの結果を評価しなかったら、関連
する調査にバッチの記録も含めることは不可欠である。科学的に理にかなった確実な調査のみが、OOSの
結果を最終の分析証明書から除外することを正当化できる。
・データの完全性の改善
貴社の品質システムは、貴社が製造する薬の安全性、有効性及び品質を立証するためのデータの正確性
と完全性を適切に保証していない。我々は、貴社が貴社の作業を監査し、FDA要件を満たすことを手助け
するためのコンサルタントを使うことを承認している。
・複数の製造所での繰り返しの違反
FDAは同様のCGMP違反を貴社の系列の他の製造所でも挙げた。複数の製造所でのこれらの連続する問題は、
貴社の医薬品の製造における監督と管理が不十分であることを示す。貴社の経営層には、全ての不備を
完全に解決し、継続したCGMP順守を保証する責任がある。貴社は、システム、工程、究極的には製造
された製品がFDAの要件を満たすことを保証するために、すぐに包括的に、貴社の全体的な製造作業を
評価しなければならない。
我々が発見した貴社の逸脱の性質に基づき、我々が貴社の作業を評価し、CGMP要件を満たす手助けを
する適格なコンサルタントを雇うことを強く勧める。貴社のコンサルタントの使用は、CGMPを順守する
ための貴社の義務を軽減するものではない。
https://www.fda.gov/ICECI/EnforcementActions/WarningLetters/2017/ucm546483.htm

■WL:320-17-30 シンガポールの製造所の査察(2016/3/14~2016/3/22)でみつかった医薬品製造に
おける重大なCGMP違反に関する2017/3/16付ウォーニングレターで、下記の指摘事項があげられています。
1.貴社は、無菌をうたう医薬品の微生物学的汚染を防ぐために適切な文書化された手順を制定し
  それに従うことを怠った。手順には、全ての無菌及び滅菌工程のバリデーションを含む。
無菌点眼薬の無菌製造中、貴社は容器の漏れと他のボトルの形状の不具合について記録した。これらの
不具合に対処するために、貴社は定期的に装置を調整し、製造を再開した。貴社はその後、これらの
ロットを出荷した。販売後、貴社は、顧客から容器の漏れの苦情を受けた。
更に貴社は、充填の調査中に、製品の漏れを含む多数の容器の密閉の欠陥をみつけた。点眼薬の無菌性
を保証するために、容器の完全性は必要不可欠である。貴社のXXの装置が、完全な容器密閉を連続的に
行うことの保証の欠如は、貴社が販売した製品の無菌性の信頼を損なう。
さらに査察官は、貴社がXXを捨てる前に何度も再使用することを発見した。XXは、通常1回使ったら
捨てられるものである。繰り返しの使用や再滅菌は、XXの有効性や物理的/化学的安定を損なう可能性が
ある。
査察中、貴社は、薬の販売前に工程のバリデートをしていなかったことを認めた。
2.貴社は、適切な間隔で、供給者の試験結果のバリデーションを通して容器密閉装置の供給者の分析
  の信頼性を立証することを怠った。
貴社は、貴社の点眼薬の容器密閉をするため、XXの装置XXを使っている。貴社は供給者の分析証明書上
で報告された数値を受け入れたが、供給者の試験結果の信頼性を検証しなかった。
密度やXXの品質特性を満たさないXXを使用することは、容器密閉の完全性の欠陥につながり、貴社の
点眼薬の無菌性を損なう。
3.貴社は、貴社の製品が、適切な安定性試験によって立証された使用期限に耐えると保証することを
  怠った。
貴社は、2014年と2015年に製造されたBuffered SalineとXXという点眼薬に関する安定性の研究を
実施することを怠った。更に貴社は査察時、他の製品について実施した安定性の研究から得らえる
試験結果を裏付けるローデータを提出できなかった。
貴社の安定性の研究の実施の不履行や、使用期限を裏付けるデータの不足は、販売された点眼薬の
品質問題に気付く能力を損なう。安定性のデータなしに、貴社は、表示された保存可能期間を通じて、
貴社の製品の品質を保証することは出来ない。更に、表示された使用期限の間、貴社は、貴社の点眼薬
が無菌性を維持できるか疑問を投げ掛ける点眼薬の容器の漏れの苦情を、複数の顧客から受け取った。
・CGMPコンサルタントの推奨
我々が発見した貴社の逸脱の性質に基づき、我々が貴社の作業を評価し、CGMP要件を満たす手助けを
する適格なコンサルタントを雇うことを強く勧める。貴社のコンサルタントの使用は、CGMPを順守す
るための貴社の義務を軽減するものではない。貴社の経営層に、全ての不備を完全に解決し、継続した
CGMP順守を保証する責任は残る。
https://www.fda.gov/ICECI/EnforcementActions/WarningLetters/2017/ucm547904.htm

■WL:320-17-31 インドの製造所の査察(2016/8/31~2016/9/4)でみつかった医薬品製造における
重大なCGMP違反に関する2017/3/27付ウォーニングレターで、下記の指摘事項があげられています。
1.貴社は、貴社の製品に関する全ての文書または口頭による苦情の処理に関し、適切な文書化
  された手順を制定し、それに従うことを怠った。苦情の処理には、製品の不具合の可能性、
  調査の必要性の判断を含む、苦情に関する品質管理部門によるレビュの提供を含む。
2012年1月から2016年8月まで、貴社は、漏れ、空、充填不足に関する多数(およそ1500)の顧客の
苦情を受け取った。貴社の調査は、この継続する重大な品質問題は、充填機械の、不適切な場所に
置かれたXXの問題によることを示した。この再発する機能不良により、オペレータは、不具合が
発生した時、しばしば無菌作業に介入した。これらの不具合は簡単に検知されず、ラインは
不完全な容器密閉の状態で製造を終えた。さらに、いくつかのケースでは、XXのひびはすぐに
発生せず、数日後に起きた。特に、貴社の調査において、“充填機械に置いたボトル上のXXの
間違った置き方が、すぐには起きず数日後に発生する損傷はひびにつながるのは明らかだ”と
述べた。置く場所の問題や欠陥の遅れたタイミングでの発生により、最終のマニュアル検査もしくは
自動検査では簡単に検知されない。
この信頼性を欠く工程は、品質、完全性、XXの無菌性を損なう。2013年以来、貴社は、さまざまな
是正処置・予防処置を実施したが、多数の苦情を受け取り続けてきた。最新のCAPAが、この再発する
容器密閉の完全性の欠陥に関する根本原因に対処していたのか、そして、問題を是正していたのかは
不明である。
貴社は、工程の改善と、特に、新しい試験装置の実装が、製造所での漏れの試験を保証し、100%の
保証レベルを達成するだろうと述べた。しかし、試験では、数日後に起きる漏れや出荷中の漏れは
検知できないだろう。また、貴社は、主要な梱包部品の欠陥を評価していない。
更に、調査を開始するアクションレベルの閾値を苦情の重要性ではなく、バッチ毎に受け取った
苦情の数に基づいている。患者の危険の可能性に釣り合わない調査開始の閾値は、科学的な妥当性に
欠けている。無菌薬の完全性の欠如に関する苦情は、販売された製品の重大な問題であり、適切な
調査のきっかけとみなすべきである。
我々は、2016年9月13日付の健康被害評価を重要度=高に分類したと知らせた。しかし、貴社は、
完全でない製品にふれる患者の可能性は低いと判断し、アクションの必要性は“並”と結論づけた。
2.貴社は、品質管理部門に適用される責任や手順を守ることを保証するのを怠った。
顧客との品質契約のもとで、貴社は、もし、貴社の出荷した製品がFAR(Field Alert Report:
現場警告報告)を受けると判断した場合はXX以内に顧客に知らせなければならない。しかし、
貴社は、漏れ、空、充填不足等の欠陥に関する多数の苦情を受け取っているのにも関わらず、
貴社が顧客に通知したエビデンスが査察時になかった。貴社が品質契約の条項に従わず、品質問題を
顧客に適切に通知しないことは、貴社の顧客が品質、安全性、効能を保証するために重要なアクション
をとることを遅らせたかもしれない。
貴社は、さまざまな医薬品の委託製造業者の機能を果たしている。貴社のCGMP順守の不履行は、
顧客のために製造する貴社の薬の品質、安全性、効能に重大な影響を与えるかもしれない。貴社は、
CGMPに完全に従って活動するという貴社の責任を理解し、顧客(例:施主、スポンサー)に、患者が
危険にさらされるかもしれない製品の問題や品質の問題はすぐに知らせることが絶対不可欠である。
貴社の顧客もまた、製品がCGMPに従って製造されていることを保証するために契約製造者を監視する
責任がある。
・CGMPコンサルタントの推奨
我々が発見した貴社の逸脱の性質に基づき、我々が貴社の作業を評価し、CGMP要件を満たす手助けを
する適格なコンサルタントを雇うことを強く勧める。貴社のコンサルタントの使用は、CGMPを順守す
るための貴社の義務を軽減するものではない。貴社の経営層に、全ての不備を完全に解決し、継続した
CGMP順守を保証する責任は残る。
https://www.fda.gov/ICECI/EnforcementActions/WarningLetters/2017/ucm550321.htm

■WL:320-17-32 インドの製造所の査察(2016/9/5~2016/9/14)でみつかった医薬品製造における
重大なCGMP違反に関する2017/4/3付ウォーニングレターで、下記の指摘事項があげられています。
1.貴社は、バッチが既に販売されたかどうかに関わらず、バッチやその成分の原因不明の規格との
  不一致や不具合を徹底的に調査することを怠った。
2016年1月1日から6月30日まで、貴社は、139のうち101(約72%)のOOSについて、根本原因の判断をする
ための十分な調査をせず、正当性を確認しなかった。
例えば、貴社は、6ヶ月の安定性試験のOOSについて、試験室の調査を開始した。貴社は、適切な調査を
せず、不合格の結果の確認をせず、再試験を実施して合格の結果を報告した。貴社の調査は、原因に
至らず、適切な是正処置・予防処置をとらなかった。
貴社は、回答の中で、試験室の判断は科学的評価に基づいて判断されるべきで、OOSの結果は、試験室の
作業によるか製造工程によるかを判断するべきであると述べた。しかし、上の例では、貴社の調査は、
試験室の作業における”分析の偏り“とみなし、分析における明らかに重大なエラーが、将来いかに
撲滅または軽減できるかを判断することを怠った。
貴社が試験室の作業のせいとしたエラーを軽減するための是正処置及び予防処置の計画を実施することを
怠ったので、貴社の回答は不十分である。さらに、貴社は、試験室の調査の傾向分析に、これらの不適切
で正当性を確認しなかったOOSの結果を含めなかった。貴社の調査はしばしば、理由もなく、初期の不合格
の正当性の確認をしないので、貴社の試験室の傾向は、試験室のシステムの問題を警告しうるデータの
大部分を除外している。
2.貴社は、エラーが起きなかった、または、エラーが起きた場合、十分に調査を行ったことを保証する
  ために、製品の記録をレビュする権限を持つ適切な品質管理部門の設置を怠った。
貴社の品質部門は、HPLC(高速液体クロマトグラフィ)やGC(ガスクロマトグラフィ)用に使用する
コンピュータ化システムが生成したエラー信号をモニタし、調査することを怠った。これらの信号は、
オリジナルのCGMP分析データの喪失や削除を示すものである。しかし、貴社の品質部門は、エラー信号に
徹底的に取り組まず、これらの問題が我々の査察中にレビュされるまで、喪失または削除されたデータの
範囲と影響を判断しなかった。
例えば、我々の査察官は、2016年8月からのバッチXXの分析試験とバッチXXの溶解試験の監査証跡をレビュ
した。これらの試験に関する監査証跡は、“結果は削除された”というメッセージを含んでいたが、これらの
どちらも、製品のバッチの分析パッケージ内に記録されていないし、品質部門によるレビュも調査もされて
いなかった。
更に、査察中、査察官は、Empower3システムの監査証跡が、たくさんの事例で、分析試験の結果から注入の
記録が漏れていることを示す“プロジェクトの完全性欠如”というメッセージを表示していることを発見した。
たとえば、2016年6月20日に実施されたXXの分析で、試験の最初の実行に関するクロマトグラムが表示され
なかった。この試験に関するデータパッケージは、最初の試験の実行結果が失われていることを示したが、
貴社の品質部門は、その事象の調査をしなかった。
査察官は、中断、欠落、削除、紛失したデータを探し出したが、貴社も調査を開始し、データの完全性の
喪失の根本原因に関する調査で査察官と同様の結論に達した。しかし、貴社は、適切な是正処置と予防処置
をとらなかった。査察官は、貴社が、たくさんの出来事について、電力の中断、接続の問題(イーサネット
または電源コードの切断)、機器の誤動作のせいにしていることを発見した。貴社は、貴社の試験室で、
なぜ頻繁にこれらの問題が発生するかを説明できなかったし、問題の包括的な調査も、是正も再発の防止
もしなかった。
貴社の2017年2月17日の文書による回答の中で、貴社は、最初の分析時にデータ収集の中断が発生した後、
オリジナルの試験結果が喪失したある1週間の中から、7つのサンプルを識別した。貴社は、各中断の
根本原因の調査の開始や、後々のレビュまたは品質部門の調査のために記録を残すかわりに、中断の後に
すぐにサンプルの再試験を開始した。
データの収集が中断した現象の特定と調査をしていないので、貴社の回答は不十分である。貴社は、7日間
から得られた、限られた数のエラーコードを評価する一方で、貴社は、貴社の製品の品質を評価するために
使用するデータの信頼性、正確性、網羅性に関係する他のエラーコードの影響を評価しなかった。貴社は
多数の回答を提出したが、問題の広がり、薬の品質への影響、実験室でなぜ頻繁に問題が起きたか等について
答えていない。
・データの完全性の改善
貴社の品質システムは、貴社が製造する薬の安全性、有効性及び品質を立証するためのデータの正確性と
完全性を適切に保証していない。我々は、貴社が貴社の作業を監査し、FDA要件を満たすことを手助けする
ためのコンサルタントを使うことを承認している。
https://www.fda.gov/ICECI/EnforcementActions/WarningLetters/2017/ucm550326.htm

■WL:320-17-33 中国の製造所の査察(2016/9/26~2016/9/29)でみつかった原薬製造における重大な
CGMP違反に関する2017/4/5付ウォーニングレターで、下記の指摘事項があげられています。
1.貴社は、原薬の品質特性のばらつきの原因となりうる工程段階の進捗のモニタや実績の管理をする
  文書化された手順の制定を怠った。
査察官は、2014年12月から2016年9月まで貴社の設備で製造された原薬のバッチの約10%が、不純物の
限界値を満たさなかったことを発見した。この期間中、XXに関し、バッチの更なる10%はOOT(out-of-trend)
だった。貴社は、不合格のOOS(out-of-specification)のバッチの再加工をしたが、製造中の過度の不純物
の形成につながる工程設計の是正や不具合の管理をするための効果的な是正処置・予防処置(CAPA)の
実施を怠った。
貴社の回答によれば、新しい根本原因の分析で、不純物の不具合は、XXの不十分な管理に関連するらしい
ということを発見した。貴社は、XXの新しい工程の性能適格性評価用のバッチにおいて、XXの特定の
プロセスパラメータをモニタすると約束した。しかし、提案されたパラメータは、過去3年、貴社により
モニタされた”重要なプロセスパラメータ“と異なっており、もっとも最近の工程の適格性研究の中で
”危険で重要である“として分類したパラメータを含んでいない。貴社の回答は、品質に影響し、
中間製品または原薬のバッチが規格に適合しない原因となりうる全てのパラメータに関して、今後の
バッチをモニタすることを約束していない。
貴社の回答は、リスクアセスメントと、全てのバッチの立ち上げ段階の工程のばらつきを検出する管理を
実装し原薬の品質を保証することを確実に実施するための科学的な論拠を含んでいない点で不適切である。
貴社は、2017年3月の書簡の中で、原薬XXの商業用生産の再開以来、追加のロットで不合格になったと
知らせた。貴社の調査と工程の再適格性評価後の製品品質の不具合の再発は、貴社の根本原因の分析と
CAPAの効果がなかったことを示している。
2.科学的に妥当なサンプリング手順に基づくサンプリング計画の作成を怠った。
査察官は、原薬XXのバリデーションのサンプリング計画に欠陥があると記録した。製品の品質が、
各バッチを通じて均一かどうかを評価するための工程の適格性評価の段階で、適切なモニタリングや
試験を実施していなかった。貴社は、均一性に関し、乾燥工程の水分含量のみを評価した。
貴社の回答において、貴社は、製造工程の再バリデーション中のサンプルにおいて、残留溶媒と
粒子サイズの分布に、バッチ間でばらつきを見せたことを認めた。
貴社の回答は、貴社が継続して実施している工程の検証プログラムは、品質特性が各バッチを通じて
均一であるのと同様に、バッチ間でも均一であり続けることをいかに保証するかを述べていなかった
ので適切ではない。均一性に関し、バッチの中でも著しく変わる特性に関し、XXのサンプルのみの
使用は、貴社の工程の管理状態が継続していることを保証するには不十分である。
https://www.fda.gov/ICECI/EnforcementActions/WarningLetters/2017/ucm554461.htm

■WL:320-17-34 インドの製造所の査察(2016/11/29~2016/12/6)でみつかった原薬製造における
重大なCGMP違反に関する2017/4/13付ウォーニングレターで、下記の指摘事項があげられています。
1.貴社の原薬が、制定した品質及び/または純度の基準に確実に従うために、試験の手順が科学的に
  妥当で適切であることを保証するのを怠った。
査察官は、未知の不純物に関するHPLC分析を実施するために使用するソフトウエアが、科学的に正当な
理由もなく、”積分値計算の抑制“機能の大々的な利用を許可するよう設定されていることを発見した
例えば、査察官は、XXの出荷試験における不純物の識別に関して貴社がHPLCで使用している
積分パラメータをレビュした。これらのパラメータは、貴社のソフトウエアが分析中4回ピークの
積分値計算を抑制するように設定されていることを示した。同様に、XXに関し、貴社が実施した
出荷時の不純物試験において、HPLCのパラメータは、分析中4回積分値計算を抑制するよう設定されて
いた。
商業用のバッチに関する出荷試験中に、いくつかの点で積分値計算を抑制することは、科学的に正当化
されない。それは、貴社の原薬の同一性や不純物の定量化を隠すことがあり、規格に一致しない原薬の
出荷につながりうる。
貴社の回答の中で、貴社は、積分値計算抑制機能の使用の管理を含む“クロマトグラフィに関するピーク
の積分値計算技術”の手順の改訂を含むいくつかの是正処置を実施したと述べた。しかし、具体的な是正
処置や、各薬のクロマトグラフの処理パラメータに関する補助的な文書を示していないため、貴社の回答
は不十分である。貴社は、貴社の原薬が制定した標準や規格に従うかどうかを判断するために、貴社の
試験方法が適切であることをいかに保証するかを示していなかった。それゆえに、貴社が提供した
サマリデータは、過去に出荷したロットが、未知の不純物を角に含んでいないことを証明していない。
2.データへの許可のないアクセスや変更を防ぐことを怠り、データの改ざんや削除を防ぐ適切な管理を
  怠った。
査察中、査察官は、貴社がCGMP活動を実施した試験室に電子的に保存されたデータの変更や削除を防ぐ
ための基本的な管理が不足していることを発見した。特に、貴社がCGMPの作業を実施するために使用する
いくつかのシステムの監査証跡機能は、査察前は日付のみ使用可能であり、かつ、監査証跡データを
レビュし評価するための品質部門の手順がなかった。例えば、貴社はスタンドアロンのHPLCを、
DMF(Drug Master File)の提出や、XXの出発原料の特性評価のような研究用に使用していた。
また、貴社は、管理がされていないシステムを原薬XXの製造に使用される中間材料のOOSの調査を実施する
ために使っていた。
我々は、貴社の回答の中で、これらのシステムで生成されたデータのレビュや評価を義務付ける手続きの
改訂や、試験室の全てのクロマトグラフのシステムの監査証跡を使えるようにすることを含む是正処置が
述べられているのを認める。しかし、貴社の回答は、貴社が実装した管理が、いかにデータの削除や変更
を防ぐかを示していないし、これらの管理がいかに文書化され、実装され、遵守されること保証するか
を示していない。
3.記録へのアクセス制限やコピーの制限
貴社は、査察官が査察する権利のある記録へのアクセスやコピーを制限した。例えば、査察官は貴社の
設備でアメリカ市場向けの薬を試験するために使用された全てのクロマトグラフシステムの監査証跡を
要求した。貴社が最終的に提供したEXCELのスプレッドシート形式のファイル(クロマトグラフのソフト
ウエアから直接出力したものではない)は、オリジナルの記録または真正なコピーではなく、改ざんの
印があった。貴社が提供したマーカーで塗られた部分を含む記録は、一貫性のない日付フォーマットが
使用され、タイムスタンプデータが欠けていた。これらの特徴は、クロマトグラフの試験ソフトウエア
から直接出力したオリジナルデータと矛盾している。
査察官と管理者は、貴社が提出したデータは、クロマトグラフのシステムから得た実際の監査証跡データ
ではないと少なくとも2回説明し、オリジナルの修正されていない記録の提供を要求した。貴社は合理的
な説明もなく、要求した監査証跡の記録は提供できないと述べた。査察官は、貴社が要求した記録を提供
しないことを、拒絶として記録に残すと説明した時、貴社は拒絶であることを認めた。査察官は、FDAが
査察する権利を持つ記録を要求したが、貴社は一部しか提供せず査察を制限した。査察中、FDAは何度も、
貴社の品質部門の指示のもと、貴社の研究開発試験室で行われたCGMP活動の記録を要求した。
しかし、貴社は要求した記録の一部のみを提供することで査察を制限した。査察官は、要求した記録の
少なくとも1つが、裂かれてゴミ箱に捨てられているのを発見した。
最後に、査察官は、XXの不純物を識別し定量化したという貴社の主張を立証するために、クロマトグラム
を要求したが、貴社は、貴社の主張を裏付けるために査察官が頼んだ記録を提供することをなかった。
・データの完全性の改善
貴社の品質システムは、貴社が製造する薬の安全性、有効性及び品質を立証するためのデータの正確性と
完全性を適切に保証していない。我々は、貴社が貴社の作業を監査し、FDA要件を満たすことを手助けする
ためのコンサルタントを使うことを承認している。
https://www.fda.gov/ICECI/EnforcementActions/WarningLetters/2017/ucm554576.htm


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まとめ
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今回は6通のウォーニングレターをみてきましたが、いかがでしたでしょうか。
6通のうち3通はデータの完全性に関わる内容で、前回同様、FDAがどれだけデータの完全性に注目
しているかを認識することができました。
ところで、WL:320-17-32などを読んでいると、FDAが膨大な監査証跡を確認して、データの不整合
をみつけだしていることがわかります。監査証跡というのは、ある意味、恐ろしいものだなあと
思ってしまいました。
監査証跡を残せないシステムが認められなくなりつつある理由がわかる気がします。

最後までお読み頂き、ありがとうございました。
☆次回は、6/1(木)に配信させていただきます。


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おしらせ
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弊社は、今年も、6月28日(水)~6月30日(金)に開催される医薬品・化粧品・洗剤 研究・製造
技術展インターフェックスジャパン(会場:東京ビックサイト)に出展します。
ブースは、東1ホールのITソリューションゾーン【E25-26】となります。
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【発行責任者】
株式会社プロス
ASTROM通信』担当 橋本奈央子

2017.05.01

【最近のウォーニングレター】ASTROM通信<121号>

~安全な医薬品の安定供給をご支援する~

こんにちは
ASTROM通信担当の橋本奈央子です。

ゴールデンウィークがはじまりましたが、いかがお過ごしでいらっしゃいますか?

さて、今回は、ASTROM通信118号以降に新たに米国食品医薬品局(FDA)の製品品質オフィスから
発行された9件のウォーニングレター(Warning Letter)の内容を、2回に分けて確認していきたい
と思います。

昨年のこの時期、製品品質オフィスから4件しか発行されていなかったウォーニングレターですが、
今年は既に19件とかなりのハイペースで発行されています。しかも、その内容の大半には、
データの完全性(Data Integrity)に関わる指摘が含まれており、FDAがいかにデータの完全性に
注目しているかがわかります。
FDAがどんな点を指摘しているのかをご一緒に確認できれば幸いです。


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ウォーニングレターの概要
注:文中のXXはウォーニングレターでマスキングされている文言です
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■WL:320-17-24 中国の製造所の査察(2016/5/16~2016/5/19)でみつかった原薬製造における重大な
CGMP違反に関する2017/2/14付ウォーニングレターで、下記の指摘事項があげられています。
制定した規格や標準に従うことを保証するために実施された試験室での試験から得られる完全な
 データを保持することを怠った。
我々の査察官は、HPLC(High Performance Liquid Chromatography:高速液体クロマトグラフィー)及び
GC(Gas Chromatography:ガスクロマトグラフィー)の分析を実施するために使用したさまざまなスタンド
アロンの実験装置から得られる監査証跡をレビュし、貴社が全てのクロマトグラフのシーケンスと個々の
注入の記録を削除していたことを発見した。
例えば、貴社のXXに関する文書化されたシステム適合性手順では、6回だけの注入を義務付けている。
しかし、貴社の記録は、2016/1/5にバッチXXについて、7回注入していることを示している。監査証跡は、
最後の注入の記録が機器のコンピュータから完全に削除されていることを示した。貴社分析者は査察官に、
手順で義務づけられているより多く注入し、システム適合性に合格することを保証するために好ましく
ない結果を削除するのが試験室の慣行であると述べた。
科学的な正当性の提供もなく、貴社は、合格結果が得られるまで分析を繰り返した。貴社はもともとの
OOS(Out-of-Specification)、または、好ましくないテスト結果を調査することを怠り、ログブックや
製剤ノートには合格の試験結果のみ記録した。貴社は、バッチの出荷判定の際、これらの操作された
テスト結果と不完全な記録に頼った。
・データの完全性の改善
貴社の品質システムは、貴社が製造する薬の安全性、有効性及び品質を立証するためのデータの正確性と
完全性を適切に保証していない。我々は、貴社の改善を手助けする適格なコンサルタントを雇うことを
強く勧める。
https://www.fda.gov/ICECI/EnforcementActions/WarningLetters/2017/ucm543347.htm


■WL:320-17-25 中国の製造所の査察(2016/5/30~2016/6/1)でみつかった原薬製造における重大な
CGMP違反に関する2017/2/24付ウォーニングレターで、下記の指摘事項があげられています。
1.貴社の品質部門は、貴社の製造所で製造された原薬がCGMPに従い、品質と純度に関して制定された
  規格を満たすことを保証する責任を果たすことを怠った。
貴社の品質管理室は正当な理由もなく、多数の不純物のOOSの結果を無視した。例えば、2015年9月22日に
貴社は、XXのバッチXXの36ヶ月の安定性に関するHPLCの試験中に、未知の不純物のピークに遭遇し、その
分析を終了した。新しいサンプルの試験も不純物のOOSのピークを示した。クロマトグラムは、このピーク
の存在を隠すよう、手動でスケールが変更された。貴社の試験室はこのピークを削除するために、
積分パラメータを設定した。ピークが削除されたので、品質部門は、バッチの安定性を評価したり、他に
販売される可能性のあるバッチが品質基準を満たすことを評価するための完全な情報を提供されなかった。
さらに、貴社の監査証跡は、2015年7月1日~2日に、貴社がHPLCを使って60ヶ月の安定性検証用のバッチの
不純物の試験をするために7つのサンプルの注入を行ったことを示している。貴社は、最初の5つの注入
の記録を完全削除した。それから、最後の2つの注入の名前を替え、それらが規格を満たすと報告した。
貴社の品質部門は、これらの重大なデータ改ざんを見落とし、対処することを怠った。
我々は、2018年7月までに、品質システムを再構築するために第三者のコンサルタントを雇うという貴社の
約束を承認した。しかし、貴社の回答は不十分である。貴社は2018年中旬までの品質システムの不備を
解決し強固な品質システムを実装している間のリスクを軽減するための詳細な中間計画が欠けている。
2.OOSの結果を適切に調査することを怠った。
貴社は、貴社のSOPの要求に不合格の結果の調査の開始を怠った。2015年10月5日、HPLCを使った原薬の
12ヶ月の安定性の試験中に未知の不純物のOOSに遭遇した時、新しいサンプルを準備してテストし、不合格
結果の調査をしなかった。
3.許可されていないデータへのアクセスやデータの変更を防ぐことを怠り、データの削除を防ぐための
  適切な管理をすることを怠った。
査察官は、貴社の試験室のシステムは、作業者が電子データを改ざんしたり削除したりすることを防ぐため
の管理が不足していることを発見した。分析者は監査証跡を改ざんしたり、削除したりしていた。貴社は
全てのHPLC、GC、紫外線を用いたシステムにおいて適切な管理が欠けていた。
例えば、分析者は、2015年9月15日から2016年4月24日までのガスクロ#YQ-07-10の監査証跡を削除し、
2015年11月6日から13日の監査証跡を完全削除した。さらに、査察官は、貴社の品質管理マネージャと
品質管理マネージャ代理が、貴社の全てのコンピュータ化システムについて、データを改ざんし監査証跡を
消すことの許された管理者権限を持っていることを発見した。
我々は、CGMPの要件に従うために分析システムをアップグレードするという貴社の約束を承認した。
しかし、調達した新しい機器、インストールされた新しいアップグレード済のデータ収集ソフト、使用可能
なさまざまなソフトウエアの機能は、CGMP順守を達成するには不十分である。もし、貴社の品質部門が
バッチの出荷判定手順の一部として、全ての製品、管理データ、関連する監査証跡をレビュすることを
確実にするために、貴社が適切な手順とシステムを実装するならこれらのステップは有効である。
貴社は、電子データの管理に関するSOPに、情報テクノロジースタッフのみが全管理者権限を持つことを
明記すると回答した。しかし、貴社は、どの情報テクノロジー職員がこれらの管理者権限を持つかを明記
しなかった。
さらに、このSOPはFDAの査察前の2016年5月9日に有効になった。しかし、貴社の品質管理マネージャは、
2016年5月30日から6月1日の我々の査察中もまだ全てのコンピュータ化システムに対する管理者権限を
持っていた。
・データの完全性の改善
貴社の品質システムは、貴社が製造する薬の安全性、有効性及び品質を立証するためのデータの正確性
と完全性を適切に保証していない。我々は、貴社が貴社の作業を監査し、FDA要件を満たすことを手助け
するためのコンサルタントを使うことを承認している。
https://www.fda.gov/ICECI/EnforcementActions/WarningLetters/2017/ucm546319.htm


■WL:320-17-26 インドの医薬品製造所の査察(2016/9/19~2016/9/23)でみつかった重大なCGMP違反に
関する2017/2/24付ウォーニングレターで、下記の指摘事項があげられています。
1.貴社の品質部門は、貴社の製造所で製造された医薬品がCGMPに従い、品質と純度に関して制定され
  た規格を満たすことを保証する責任を果たすことを怠った。
貴社の製造所は原薬中間体を製造した。貴社の品質部門は、医薬品を製造するために不純な原料の使用
を認めた。
査察官は、貴社が、CGMP要件への不適合に関するFDA輸入警告措置66-40を受けている製造所から原料を
調達したことを発見した。
貴社の回答は不十分である。貴社は、XX製造所から得た中間材料の使用と、その中間材料を使用して
製造した医薬品の出荷に関する十分なリスク評価を実施しなかった
2.貴社は装置の洗浄とその装置を原薬製造に使用するためのリリースに関する適切な文書化された
  手順の制定と実施を怠り、主要装置の使用に関する適切な記録の保持を怠った。
査察官は、製造装置の内側表面が、貴社の手順で要求された通りに洗浄されていないことを発見した。
例えば、洗浄済のラベルが貼られていたが、装置BSR-04の底に残留物と汚れを発見した。
貴社は、貴社の装置の管理が行き届いていることを確実にするために予防保全の適切性に取り組むこと
や、薬と接触する表面に蓄積された物質が薬を汚染しないことについての回答を怠っている。
3.貴社は、貴社の医薬品が、品質及び/または純度に関して制定した規格に確実に従い、全ての
規格とテスト手順が科学的に理にかなっていて適切であることを保証するのを怠った。
貴社のテスト方法では貴社の医薬品の純度を証明することはできない。特に、XXは、不明確なピーク、
ショルダー、メインピークの重なりを示した。貴社は積分値計算も、可能性がある不純物の調査も
しなかった。さらに、分析者は、12回まで、データを再加工し、品質保証のレビュのためのレポートに、
最後の結果のみ含めた。貴社の品質管理マネージャ代理は、適切な積分値を得るために“パラメータと
遊ぶ”日常的な慣行だと述べた。
貴社は、XXの複数バッチをレビュし、それらが持つ似たショルダーはメインピークのゆがみであると
判断した。しかし貴社はこの判断を裏付ける十分なデータを提供しなかった。
4.貴社は改訂履歴を保持した文書の発行、改訂、廃棄、撤回の管理を怠った。
貴社の品質保証部門は、既に承認されサインされた白紙の文書フォームを分析者に与えていた。
査察官は、部分的に完成しQAがサインをしたキャリブレーションの記録が破られゴミ箱に捨て
られているのを発見した。また、QAの職員が、文書の種類や理由を記録せずに文書をシュレッダー
にかけているのを発見した。
・データの完全性の改善
貴社の品質システムは、貴社が製造する薬の安全性、有効性及び品質を立証するためのデータの
正確性と完全性を適切に保証していない。
https://www.fda.gov/ICECI/EnforcementActions/WarningLetters/2017/ucm544066.htm


■WL:320-17-27 インドの製造所の査察(2016/9/26~2016/9/28)でみつかった原薬製造における重大な
CGMP違反と不正商標表示に関する2017/3/2付ウォーニングレターで、下記の指摘事項があげられています。
・CGMP違反
1.原薬製造者から受け取った全ての品質または規制当局の情報を顧客に伝えることを怠った。
貴社は、貴社が顧客に発行した分析証明書(COA)上で、元の原薬製造者の名前と住所を削除し、元の
バッチの証明書のコピーも含めなかった。
多数の原薬に関し、貴社は、元の原薬製造者から得た分析結果のコピーや貼り付け、レターヘッドの
製造者の情報の取り換えによりCOAを作成して、顧客に発行していた。貴社は元の製造者の名前、住所、
テストを実施した試験室の電話番号を含む重要な情報を削除した。
顧客や規制当局は、医薬品やその成分の品質、調達元の情報に関してCOAを信頼する。COAから情報を
削除することは、サプライチェインの信頼性やトレーサビリティを損ない、消費者を危険にさらす。
2.原薬の取り違えや同一性の喪失を防ぐための、原薬の再包装、再ラベリング、保管作業の管理を怠
  った。
FDAの査察官は、“出荷のための判定済”エリアにて、ラベルの貼られていない原料があることを記録
した。貴社は査察官にこの原料は顧客に出荷されるのではなく、破棄するつもりであると言った。
出荷できる原料とできない原料や、異なる原薬同士の取り違えを防ぐために、貴社は適切なCGMPの管理
のもとで、再包装、再ラベル、保管をしなければならない。
3.品質部門が、CGMPに従い貴社の製造所でラベル再貼付された原薬を保証する責任を怠った。
貴社の再ラベリング作業は適切に記録されていない。貴社は、貴社が販売した原薬の再ラベリング作業
を実施した日時や再ラベリング作業を実施した従業員について記録していない。貴社は作業を実施した
のと同時に、サインし、日付を記録することを行っていない。
・不正商標表示に関する違反
原薬製造者の名前が異なるので不正商標表示である。
さらに、販売者または包装者を製造者と表示している。
・CGMPコンサルタントの推奨
我々が発見した貴社の逸脱の性質に基づき、我々が貴社の作業を評価し、CGMP要件を満たす手助けを
する適格なコンサルタントを雇うことを強く勧める。
https://www.fda.gov/ICECI/EnforcementActions/WarningLetters/2017/ucm545464.htm


■WL:320-17-28 インドの製造所の査察(2016/8/16~2016/8/19)でみつかった原薬製造における重大な
CGMP違反に関する2017/3/2付ウォーニングレターで、下記の指摘事項があげられています。
1.浄水装置について、水が適切な品質で意図した使用に適合することを保証するためのバリデートと
  モニタを怠った。
査察中、査察官は、浄水装置が適切にモニタされ管理されていないことを発見した。貴社は水を医薬品
の成分としても、設備や装置の洗浄用にも使っているので、これらの不具合は、貴社の薬の安全性に
対する重大なリスクを引き起こす。
・源水
貴社は水システムの源水の試験を怠っていた。源水は近くの川からきていて、貴社の製造所に達する前
に、農家の流出水や動物の排泄物にさらされる農地を通っている。貴社は源水を大きな穴のあるタンク
に保管している。貴社の保管方法は、泥や他の汚染物質、有害生物や好ましくない細菌の侵入や増殖
から貴社の水を守っていない。
・消毒とバリデーション
貴社は、貴社の水システムに関する消毒手順に従っていない。貴社の手順では、XXの消毒を明記して
いるが、査察官は、正当な理由もなく10分程度の消毒を行っているのを見た。
査察中、貴社は、水システムの評価を2016年3月に開始したが、まだ終わっていないと述べた。貴社は、
システムが適切な品質の水を製造できるという科学的なエビデンスがないにもかかわらず、2014年の
設置以来、この評価がされていないシステムを日常的に使っていた。
・テスト
査察官は、貴社が、工程内の全ての水のサンプルに関する
TAMC(好気性総菌数:Total Aerobic Microbial Counts)が何ヶ月も貴社の定めた限界を超えている
ことに気付いていたことを発見した。貴社はこれらの逸脱について調査を怠った。
2.貴社の品質部門は、原薬の製造に関する文書を準備し、レビュし、承認することを怠った。
2016年8月16日、査察官は、貴社の敷地内の建物の後ろで、大量のゴミ袋を発見した。ゴミ袋には、
破られた、分析試験報告書や水試験報告書、サンプルの記録などの試験室及び製造のオリジナルの
記録が入っていた。これらの、捨てられ破られた文書の情報は、公的記録と一致しなかった。貴社の
品質部門は、これらの食い違いを調査しなかった。2016年8月18日に査察官が、ゴミ袋のあった場所に
再び訪れた時、文書は持ち去られていた。これらの発見は、貴社の品質部門がその責任を果たして
いないことを示す。
貴社の回答では、貴社は、文書管理に関し “品質保証部門の中にギャップが存在した”ことを認めた。
貴社は文書管理を強化し、同時に、従業員を教育したと述べた。
しかし、貴社は、是正・予防の処置の詳細を提出していないので回答は十分ではない。貴社は、不具合
が適切に調査されることを保証するためのいかなる変更にも取り組まなかった。さらに、他の破られた
文書を含むゴミ袋の除去は査察官がこれらの文書を調査することを阻んだ。さらに、貴社は、破られた
文書と公的文書の全体的な照合の実施を阻んだ。
3.分析方法が適切であることを検証するのを怠った。
貴社は、契約している試験機関により用いられている方法について、目的にあっていることが検証されて
いることを保証していなかった。正確で信頼のできる結果を提示する、適格な試験機関を使用すること
は貴社の責任である。
貴社はXXとリリース判定の試験に関し契約している。
貴社のXXとの品質保証契約は、方法のバリデーションの責任を明記していない。査察中、査察官は、
XXで実施されている残留溶媒、不純物、及び微生物の試験に関する方法の根拠を求めたところ、
貴社は、要求された文書はXXにあり、15日以内に取ってくると述べた。
貴社の回答において、要求されたXXの文書を提供しない代わりに、残留溶媒、不純物、及び微生物の
試験方法のドラフトを提供した。貴社は、これらの方法は、2016年12月15日までに検証されると述べた
が、どちらの会社が検証を行うか不明確である。
4.重大な逸脱を適切に調査することを怠った。
XXは貴社に、原因不明の食い違いを含む不純物試験のクロマトグラムの結果と、3ヶ月の間に少なくとも
6バッチのデータの再加工を行った不純物試験のクロマトグラムの結果を送った。貴社は、これらの
食い違いについて、記録をせず、調査もしなかった。
貴社の回答では、貴社は、“規制当局の規格に関しては、HPLCのクロマトグラムの結果を解明したり
レビュしたりするために専門的判断を下さなかった。”と述べた。貴社は正しいクロマトグラフの
手順(“Good Chromatographic Practices”)を行っていることを保証するために、会社の
“専門家代表”の出席のもと、6バッチの再試験を実施することを提案した。さらに、貴社のXXとの
品質保証契約は、OOSの結果や食い違いに関する連絡手段を明記していなかった。
・CGMPコンサルタントの推奨
我々が発見した貴社の逸脱の性質に基づき、我々が貴社の作業を評価し、CGMP要件を満たす手助けを
する適格なコンサルタントを雇うことを強く勧める。貴社のコンサルタントの使用は、CGMPを順守する
ための貴社の義務を軽減するものではない。貴社の経営層に、全ての不備を完全に解決し、継続した
CGMP順守を保証する責任は残る。
・品質契約の改訂の推奨
契約試験室を使う会社はCGMPに従わないといけない。FDAは多くの製薬会社が製造設備、試験機関、
包装業者、ラベル貼付業者のような独立の契約業者を使うことに気付いている。FDAはこれらの契約業者
を製造業者の延長とみなしている。
・データの完全性の改善
貴社の品質システムは、貴社が製造する薬の安全性、有効性及び品質を立証するためのデータの正確性
と完全性を適切に保証していない。
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まとめ
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今回取り上げた5件のうち4件は、データの完全性に関わる内容でした。
具体的には、試験機器から得られるデータの改ざんや削除、システムのアクセス制限の管理の不備、
紙の記録のずさんな管理に関する指摘がされていました。
今回の指摘の内容を見ると、データの改ざんや削除を防ぐ機能がないシステム、アクセス権限が
設定できないシステム、監査証跡が残せないシステムの使用は、この先ますます難しくなっていくと
思われます。
また、“データの完全性”というと、コンピュータ化システムのデータのことを考えがちですが、
紙の記録のずさんな管理も、指摘の対象となることを、今一度注意しておく必要があると思われます。
最後までお読み頂き、ありがとうございました。
☆次回は、5/15(月)に配信させていただきます。


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おしらせ
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弊社は、今年も、6月28日(水)~6月30日(金)に開催される医薬品・化粧品・洗剤 研究・製造
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