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2016.12.15

【2016/11/22 FDA発出:品質協定のガイダンス】ASTROM通信<112号>

 ~安全な医薬品の安定供給をご支援する~

株式会社プロス
太田和宏様

こんにちは
ASTROM通信担当の橋本奈央子です。

2016年も残すところあとわずかとなりましたが、いかがお過ごしでいらっしゃいますか?

さて、2016/11/22にFDA(米国食品医薬品局)から、
Contract Manufacturing Arrangements for Drugs: Quality Agreements  Guidance for Industry
(薬の外部委託製造の取り決め:品質協定のガイダンス)が発出されました。
外部委託製造時の取り決めに関してFDAが求めていることがわかり、興味深いので、今回はこれを
取り上げることにしました。
最後までお付き合いいただければ幸いです。


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Contract Manufacturing Arrangements for Drugs: Quality Agreements Guidance for Industry
(薬の外部委託製造の取り決め:品質協定のガイダンス)
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I.序論
このガイダンスは、CGMPの要件の適用対象である医薬品製造の契約に関わる関係者の定義、契約の
制定、製造活動の文書化に関するFDA(米国食品医薬品局)の最新の考えを述べている。
特に、医薬品製造の契約に関わる関係者が、CGMPに従っていることを保証するために、製造活動を
詳細に述べるにあたり品質協定をどのように使うことができるかを述べている。

このガイダンスの目的のために、いくつかの用語は下記の特別な意味で使用する。
・CGMPは全ての医薬品と原薬に関し、連邦食品・医薬品・化粧品法(FD&C法)を参照している。
  ヒト及び動物用医薬品に関しては、用語は、21 CFR Parts 210と211の適用可能な要件を含む。
  生物製剤に関しては、用語は、21 CFR Pars 600-680の適用可能な要件を含む。
・商業生産は、市場に出荷され、流通し、売られることを意図した薬の製造プロセスを言う。
・このガイダンスは、治験・開発・臨床試験の製造に明確に適用はしないが、FDAは、品質協定は、
  研究や開発の契約に関わる全ての関係者の活動を詳細に述べる時にきわめて有益であると信じる。
・製造は、加工処理、包装、保存、表示作業、試験、品質保証部門の作業を含む。
・製造者とは、品質を保証するために薬の製造を監視・管理することを含む、CGMPの活動に従事する
  組織である。
・品質部門は品質管理部門と同意語とする。
このガイダンスは、ヒト用の薬、動物薬、ある種の併用製品、生物製剤とバイオ製品、最終製品、
原薬、製剤原料、中間材料、併用薬/併用装置の構成要素の商業生産を対象とする。
一般に、FDAのガイダンス文書は、法的強制力をもたない。ガイダンスは、特別な規制や法令の要件
を挙げたものとしてではなく、当局の現在の考えを述べた推奨としてのみ見られるべきである。
当局のガイダンス中の“should”という言葉は、提案や推奨であり要求ではない。

II.外部委託製造の誰・何の定義
このガイダンスは、いかに外部委託製造作業が医薬品の品質システムのより大きな構想に適合する
かを述べる。また、外部委託製造の取り決めに含まれる組織の役割や製造活動に関する当局の現在
の考えを示している。特に、このガイダンスは、オーナーと契約設備の間の関係を取り上げている。
このガイダンスの目的のために、バイオ製品、併用薬を含む原薬、製剤原料、中間材料、最終製品
の製造者をオーナーとして定義する。オーナーとは、小売薬局、ドラッグストア、スーパーマーケッ
ト、ディスカウント倉庫店、または、自分の店のブランドとして、店頭販売するために最終医薬品を
購入した、その他の小売店を含まない。このガイダンスの目的のために、契約設備を、オーナーの
代わりに、製造作業を行う組織として定義する。
薬の製造は、たくさんの個別作業や活動を含む。1製造者が全ての操作や活動を実施するか、または、
契約のもとで、一部またはすべての操作や活動を実施するために外部の組織と契約することもあるか
もしれない。契約設備は、次のことを含むさまざまな製造作業と活動を実施する:製剤,充填と仕上
げ,化学合成,バイオ製品を含む細胞培養と発酵,分析試験及びその他の試験サービス,包装と表
示,滅菌または最終滅菌
しかし、オーナーと契約設備の間の取り決めは、時々、各組織のCGMPに関連する役割、製造作業、
活動を明確に定義していない。全ての組織が、CGMPに関連する役割、製造責任を理解している時、
契約設備を使うオーナー、オーナーにサービスを提供する契約設備、最終的にはこれらの取り決め
のもとで製造された薬を服用する患者は、多くの点でメリットがあるだろう。契約は、スピードと
効率を向上し、技術的な専門知識を提供し、能力を拡大することができる。
我々は、薬の流通(例:販売業者、仲介業者、自社ブランドの販売業者)に関連する製造に従事
する組織がこのガイダンス文書の推奨に適切に従うことを働きかける。しかし、我々のフォーカス
は、オーナーと契約設備の役割と製造活動にある。

III.外部委託製造に関わる組織の責任
薬の製造に従事する各組織は、製造活動がCGMPに従っていることを保証するための責任を負う。製造
作業を行うオーナーと契約設備の両方にとって、CGMPは、原料、材料、最終製品のリスク管理を含む
品質保証のために、薬の製造の監視と管理を行うことを含む。CGMPに従って製造されなかった薬は
不良となる。
また、FD&C法は、いかなる人も、各州の間の通商で、不良品や不正商標表示の薬を発売することを
禁じている。
FDAの法令は、いくつかの薬の製造活動を行うために、オーナーが契約設備を使うことを認めている。
オーナーが契約設備を使う時、オーナーの品質部門は、契約設備で作られた医薬品の最終出荷を含
む、承認・不承認に関し、法的に責任がある。法令は、品質部門の責任と手順の文書化と、その手順
に従うことを求めている。
オーナーは、CGMPに従っていることを保証するのを助けるために、包括的な品質システムモデルを
使用できる。 包括的な品質システムモデルは、多くのオーナーが、契約設備を使い、オーナーと
契約設備の間の品質協定を要求することを期待している。品質協定は、提供される材料やサービス、
品質特性、オーナーと契約設備の間の通信メカニズムを明確に述べなければいけない。
オーナーと契約設備は、CGMPに準拠する推奨を書いたFDAガイダンス文書をレビュするのもいい。
さまざまなFDAのガイダンス文書は、いかに、品質管理の原則が、いかに外部委託製造作業に関連して
いるかを述べている。
次の3つのICHのガイダンスは、外部委託製造の取り決めに関し、有益なCGMPの推奨事項を含む。
・Q7:医薬品の製造管理および品質管理に関する基準
・Q9:品質リスクマネジメント
・Q10:品質システム
ICH Q7は、契約設備が特定の作業においてCGMPに従っていることを保証するために、オーナーが契約
設備を評価することを推奨している。また、オーナーが、各組織の品質手段を含む製造責任を詳しく
定義した文書化された取り決めを持つことを推奨している。文書化された取り決めは、下請について
も定義するべきである。
ICH Q9は、効果的な品質システムの一部として、品質リスクマネジメントへの体系的なアプローチを
提案している。それは、リスクアセスメント、リスクコミュニケーション、リスクレビュのような品
質リスクマネジメントの原則を考察し、効果的なリスクベースの判断をするために用いることのでき
る、例えば監査や、外部委託製造者との品質協定の例を提供している。
ICH Q10は、オーナーが最終的に、“外注した活動と購入した原材料の品質の管理を確実にするため
のプロセスが行われている”ことを保証する責任を負う。これらのプロセスは、品質リスクマネジメ
ントに立脚し、次の重要な活動を含んでいなければならない:
・作業を外注する、または、原材料のサプライヤを決定する前に、契約の可能性がある請負業者の
  適合性と能力を評価すること。これは、監査、原材料の評価、またはその他の適格性評価の基準
  を通じて達成できる。
関係する組織の品質関連活動に関する製造の責任とコミュニケーションプロセスを定義すること。
  外注する活動について、これらは文書化された取り決めであるべきである。
・契約設備の性能をモニタし、レビュし、確認し、必要ないかなる改善も実施すること。
到着する成分や原材料が承認された供給源から取り決められたサプライ・チェインを使って入って
  いることを保証するためにモニタすること
FDAは、外部委託製造に従事する組織に品質管理活動を実施することを勧める。

IV.品質協定の中でのCGMP活動の文書化
オーナーが薬の製造(加工処理、包装、保存、試験を含む)の一部またはすべてに、契約設備を使用
するなら、オーナーの品質部門が契約設備の製品やサービスの合格・不合格に関する責任を負う。契
約設備は、CGMPの法令に従い、品質部門の要件を含むCGMPの規制が適用可能であることが求められ
る。CGMPの法令は、品質部門の活動と手順は文書化され、これらの手順に従うことを求める。
文書化された品質協定の実施は、CGMPの、特に品質部門の活動と手順は文書化されていなければなら
ないと書かれた21 CFR 211.22(d)の順守を促進する。FDAはオーナーと契約設備が、薬の製造に関す
る、CGMP関連の役割、責任、活動を述べた文書化された品質協定を制定することを推奨する。品質協
定は、CGMPに従うための法定または規制上の責任を委託するために用いることはできないことに留意
することが重要である。
 A.品質協定とは何か?
 品質協定は、薬の外部委託製造に関わる組織間の包括的な文書化された取り決めで、各組織がいか
 にCGMPに従うかの観点でそれぞれの製造活動を定義し、規定したものである。一般に、品質協定
 は、どの組織-オーナーまたは契約設備または両者-が特定のCGMP活動を実施するかを明確に述べ
 るべきである。各組織の品質部門の担当者及び保管の関連する利害関係者は、品質協定の立案に積
 極的に参加すべきである。
 品質協定は、機密、価格またはコスト問題、配送条件、責任または損害の限度といった一般取引条
 件を対象にすべきでない。FDAは、品質協定は、サービス協定や供給協定のような商業用の契約とは
 独立した文書、または少なくとも分離できることを推奨する。品質協定は、査察中にレビュされる
 かもしれない。

 B.品質協定の要素
 品質協定は、CGMPのもとでのオーナー及び契約設備の役割と製造活動を述べる。よく書かれている
 品質協定はクリアな言語を使う。重要な製造の役割と責任を定義する。両組織の問合せ先を規定
 し、コミュニケーションの期待値を制定する。オーナーが契約設備からどの製品及び/またはサービ
 スを期待するか、また誰がさまざまな活動の最終承認を行うかを特定する。ほとんどの品質協定は
 以下の章を含んでいる:
 ・目的/範囲-提供される外部委託製造サービスの性質を含む
 ・定義-オーナーと契約設備が品質協定の詳細な用語の意味で合意していることを保証する
 ・不一致の解決-組織がどのように製品品質問題や他の問題についての不一致を解決するかを説明
  する
 ・製造活動-製造プロセスの変更管理はもちろん、製造プロセスに関連する品質部門及び他の活動
  を文書化する。
 ・品質協定のライフサイクル及び改訂
  オーナーは品質協定の一部として、契約設備が制定したプロセスや手順を含むことを検討しても
  よい。そうすることで、製造中の誤った解釈や間違いのリスクを減らせる。品質協定は、請負業
  者が製造の逸脱をオーナーにどのように報告するか、どのように調査し、文書化し、CGMPに従っ
  て解決するか オーナーにどのように報告するかを説明するべきである。
 品質協定は、契約設備(研究所を含む)から提供された製造サービスが、CGMPに従うと述べるべき
 である。CGMPの観点から、製造活動は品質協定の最も重要な要素である。 最も危険な部分は、次の
 章で述べる品質と変更管理である。
  1.製造活動
  品質協定は、各組織の役割と製造活動を、さまざまなフォーマット-チャート、マトリクス、文
  章、これらの組み合わせにより文書化する。フォーマットに関わらず、品質協定は、どの組織が
  どの活動に責任があるかを明確に文書化するべきである。品質協定は、CGMPに従っていることを
  保証するために全ての活動をカバーしなければならない。提供される外部委託製造サービスの範
  囲により、品質協定はオーナーか契約設備(または両方)が次のトピックスに関連する活動を取
  り扱うかどうかを示さなければならない。
   a.品質部門の活動
   各組織の品質部門の活動を書いた章では、製品がCGMPに従って製造されていることを保証する
   ために、各組織がどのように一緒に働くかを詳しく定義しなければならない。品質協定の中で
   品質管理やその他の活動をオーナーや契約設備に任命しても、各組織をCGMP要件に従うことか
   ら解放するわけではないことに注意しなければならない。
   特にこの章は、製品出荷について明確でなければならない。契約設備は、製品の合格・不合格
   に関してや、製造作業(例:試験結果、最終剤型、中間材料)の結果に責任を負う。また、
   オーナーは、契約設備により製造された薬の、出荷判定を含む合格・不合格に関し責任を負
   う。全てのケースにおいて、不良や不正商標表示のされた、いかなる薬も、各州間の商業に導
   入されたり配送されたりしてはならない。
   品質部門の活動の中で、品質協定は、いつ、どのように、口頭と文書の両方で、オーナーと契
   約設備がお互いにコミュニケーションをとるかを述べなければならない。これは、オーナーと
   契約設備の組織内の適切な連絡窓口を特定することを含む。
   品質協定は、監査、査察、指摘事項の連絡をカバーしていなければならない。協定は、特定の
   操作に関し、CGMPに従っていることを保証するために、オーナーが契約設備を評価し監査する
   ことを可能にするべきである。この定めは、定期的な品質監査と、正当な理由による監査の両
   方をカバーすべきである。協定は、提供される製造された製品及び/またはサービスの性質を
   考慮して、オーナーと契約設備にFDA査察に関する査察(承認前、定期的調査、正当な理由によ
   る調査)の可能性があることを定めなければならない。
   しばしば契約設備は複数のオーナーにサービスを提供するので、品質協定は、請負業者がい
   つ、どのように、査察や契約設備の監査でみつかった好ましくない状態について、何の情報を
   オーナーに報告するべきかを定めるべきである。

   b.設備及び装置
   この章では、契約設備が製造作業を行う製造所を特定しなければならない。それには、住所や
   各製造所が提供するサービスを含まなければならない。どの部門がプロセスをバリデートし、
   適格性を評価し、装置や契約した操作に関連する適用可能なシステムを保持しているかを示さ
   なければならない。これらには、情報技術および自動化された制御システム、環境のモニタリ
   ング、部屋の識別、ユーティリティ、CGMPに従って外部委託製造作業を実施するために保持さ
   れている装置や設備を含む。協定は、どの組織が装置のバリデーション、適格性評価、維持管
   理活動を承認するかを特定すべきである。さらに、契約設備が複数オーナーのために薬を製造
   する場合は、交差汚染の予防や、トレーサビリティの保持について、いかに組織が情報を連絡
   するかを示さなければならない。

   c.原材料管理
   この章では、どの組織が成分の仕様を制定し、監査、適格性評価、供給者のモニタリングに関
   する手順を制定するかを述べなければならない。それは、どの組織がCGMPで要求されるサンプ
   リングや試験を実施するかを特定しなければならない。この章は、組織がどのように適切な在
   庫管理、表示、ラベル印刷、在庫の突き合わせ、製品のステイタスの識別(例:隔離)を保証
   するかを示さなければならない。また、契約設備がどのように取り違えや交差汚染を防ぐかを
   示さなければならない。FDAは協定に各成分のサプライ・チェインの完全な記述を含むことを
   期待しない。しかし、協定は、製造工程内で、原材料の物理的管理に関する責任を定めなけれ
   ばならない。例えば、協定は、保管、移動、出荷に関わる適切な状態の責任をカバーしなけれ
   ばならない。協定は、保管や契約設備からオーナー、または更なる操作をする別の契約設備へ
   の移動における各組織の役割を定義しなければならない。これは、モニタリングや出荷状態の
   バリデーションに関する活動の定義を含む。

   d.製品固有の考察
   包括的な品質協定は、個々の製品と関連した具体的な検討に取り組むかもしれない。オーナー
   と契約設備は、この情報を付録に含めるか、品質協定の本体に直接含めるかを選択できる。ど
   ちらの場合も、この章には以下の期待値を含めなければならない。
   ・製品/成分の仕様書
   ・バッチの付番プロセスを含む定義された製造操作
   ・使用期限/リテスト日付、保管、出荷、ロットの処分に関する責任
   ・設計、適格性評価、オンゴーイングの検証、モニタリングを含むプロセスバリデーションの
    責任
   ・適時、オーナーの職員が契約設備に立ち入ることを許可する条項
   品質協定は、薬がCGMPに従って製造されることを保証するために、オーナーが製品や工程の開
   発情報のような知識を契約設備にどのように移転するか、また、逆に契約設備が製品ライフサ
   イクルの中で得た製品の品質情報をオーナーとどのように共有するか示さなければならない。
   これは、承認申請(例:新薬の申請)を必要とする薬や、市販薬承認基準のもとで市場に売られ
   る非処方箋薬を含む全ての薬についての知識にあてはまる。
   承認申請をするオーナーは、製造活動に影響する申請と承認の要件に気付かなければならな
   い。品質協定を結ぶ両当事者は、CGMP及びその他の適用可能なFD&C法の要件に従うことを保証
   するために、関連する情報を共有しなければならない。

   e.試験室の管理
    オーナーと契約設備は、ともに、彼らの薬の試験のために適切な試験室への立ち入りができな
   ければならない。品質協定は、試験室の管理に関する役割と責任を定義することにより、この
   ニーズを満たすことを助ける。我々は次の要素を勧める。
   ・サンプリングや試験サンプルの管理の詳細手順
   ・契約設備で実施された全ての試験結果のオーナーへの連絡の手続きと手順
   ・オーナーと契約設備の移転開発の検証の手順、適格性評価、オーナーが実験室の試験のため
    に契約設備を使う時のバリデーション方法
   ・契約設備の実験室装置の適格性評価がされていること・キャリブレーションされているこ
    と
   ・CGMPに従って管理された状態を維持していることを保証するための定期的な監査の手順
   ・実験室で調査した逸脱、不一致、不具合、規格外試験結果(OOS)、傾向外試験結果(OOT)
    の責任の明示及びその調査報告の共有

   f.文書化
   品質協定は、文書をレビュして承認するために、契約設備とオーナーの間の期待を定義すべき
   である。契約設備により提供される製品またはサービスに関する標準操作手順、製造記録、仕
   様書、実験室の記録、バリデーション文書、調査記録、年次報告書、その他の文書にどのよう
   な変更が行われたかを述べなければならない。品質協定は、CGMPに従ったオリジナルの文書、
   または、真のコピーの作成と保管に関するオーナーと契約設備の役割を定義しなければならな
   い。それらの記録は、すぐに査察に利用できるように、どのように作られるかを説明すべきで
   ある。
   品質協定は、電子記録がCGMPに従って保存され、適用された規制で制定された要求される記録
   保持期間中、すぐに検索できることを示さなければならない。

  2.製造活動と関係がある変更管理
  オーナーまたは契約設備は、プロセス、機器、試験方法、仕様書、および他の契約上の要件を、
  変更することができる。両当事者は変更を議論し、品質協定の中で取り組まなければならない。
  一部の変更は、変更を実行する前にオーナーがレビュし承認しなければならないが、その他の変
  更は請負業者がオーナーに知らせずに実施されるかもしれない。協定はどのようにすべての変更
  が行われるかが概説されるべきであり、そこには変更を実行する前に必要なバリデーション活動
  の実施責任の任命を含むべきである。さらに、両当事者は、補足または年次報告書でFDAに提出す
  る必要のある変更に気付くべきである。オーナーと契約設備は、お互いの組織とFDAに報告する変
  更のタイプ及びお互いの組織の品質部門とFDAからの承認の必要性を注意深く検討し、合意しなけ
  ればならない。品質協定は、以下の変更の報告と承認に関する期待に対処しなければならない。
  ・成分及び/または供給者
  ・建物の位置
  ・製造工程
  ・同じ製造ライン、装置、設備を使う製品及び製品タイプ
  ・試験手順
  ・主要な製造装置
  ・出荷方法
  ・ロットの付番プログラム
  ・容器の密閉システム
  ・改ざん明示特性
  ・製品販売
  製造の逸脱、苦情、製品回収、薬害報告、ラベルの変更、現場のアラートレポート、バイオ製品
  の逸脱報告のような様々な予想外のイベントは、工程と手順への変更を余儀なくさせるかもしれ
  ない。 工程改善プロジェクト、工程能力分析、傾向報告もまた、工程と手順への変更を余儀なく
  させるかもしれない。品質協定は、予想外のイベントと関連する変更の報告と連絡に関するオー
  ナーと契約設備の期待を含むべきである。

V.実例となるシナリオ
以下の仮定のシナリオは、外部委託製造の取り決めにおける一般的な問題を示し、オーナーと契約設
備が製品品質に影響を与えうる方法を描く。 これらのシナリオは、問題を解決するための潜在的な方
法についてのFDAの現在の考えも示す。 提供された例は、オーナーと契約設備の間の取り決めに関す
るすべての薬の製造問題を包含することは意図しない。 むしろ、FDAの査察官が頻繁に直面し分析し
たパタンを産業界とステークホルダーに提供する。
 A.オーナーと契約設備はともにCGMPに責任を負う
  CASE1:契約設備における設備と装置の保全と維持
  注射剤の製品を製造する契約設備におけるFDA査察で、重大な好ましくない状態が明らかになる。
  ほとんどの好ましくない状態は、注射剤の製品を製造するために使用された設備と装置のメンテ
  ナンス不足と関連する。装置は壊れ、パイプは変色し、封印は漏れている。さらに、設備の設計
  は、適正に汚染を防止しない。 契約設備とオーナーの間の品質協定は、オーナーが、オーナーの
  製品を製造するために使用される設備と装置の改修とメンテナンスについて責任があると述べて
  いる。 オーナーは、改修やメンテナンスを実行することに怠り、契約設備は、汚染のリスクがあ
  るnon-CGMP条件下で製品を製造し続ける。

  CASE2:製造工程の文書化ステップ
  契約設備がオーナーのための処方箋薬の製品を製造している。FDAはこの薬に関するオーナーから
  の申請を容認した。査察において、FDAは、契約設備のバッチ記録が、再生粉末の追加を文書化し
  ていないことから、実際の製造工程を正確に反映していないことを発見する。バッチ記録は不正
  確で、CGMPに従っていないにも関わらず、契約設備は、バッチの記録はオーナーとの品質協定に
  設定された期待値に従っていると主張する。

上に述べたケースでは、オーナーと契約設備はCGMPに違反していると思われる。品質協定は、品質協
定がCGMP要件を議論したかに関わらず、オーナーまたは契約設備が適用されるCGMPに従うという法令
または規制の責任を免除できない。
CASE1で、たとえ品質協定が、オーナーが装置のメンテナンスと維持について責任があると伝えていて
も、契約設備は、旧式または不十分に設計された装置において製造し続けたことにより、CGMP要件に
違反する。 CASE2で、バッチ記録が品質協定に設定された内容と一致していても、製造工程を正確に
反映しないバッチ記録を使用したことにより、契約設備は、CGMPに違反する。
同時に、オーナーは、品質協定が特定の製造活動を契約施設に任命しても、CGMPに従って製品が作ら
れることを保証することについて責任がある。契約設備で問題を発見した後に、上のケースで、FDAは
オーナーを査察することが適切であると判断するかもしれない。 オーナーは、契約設備の製造活動の
監督不足に関連し、CGMPの違反になるかもしれない。

 B.CGMPは、分析試験を行う実験室を含む全ての契約設備に適用する。
  CASE3:実験室の記録とテスト結果に関する使用できないデータ
  このシナリオにおいて、オーナーは設備と分析的試験サービスを契約する。 契約設備は、実際の
  分析は不具合を示している時に、そのCGMP記録の中で繰り返し合格の結果を報告する。契約施設
  は、最終製品の製造者であるオーナーに正確な結果を報告することを怠る。
  FDAがオーナーを査察し、2年毎に契約設備の監査を行う文書化された手順を持っているにも関わ
  らず、オーナーは、分析試験設備の監査をしていなかったことを発見する。

  CASE4:契約した分析試験実験室とバリデーション方法
  オーナーは、設備と、安定性試験と、他の新しく承認された分析の実施を契約する。FDAは承認と
  オーナーとの品質協定は、オーナーの新薬申請(NDA)に述べられたプロセスを使って薬が製造さ
  れることを求める。契約設備は、NDAに含まれた分析方法を使うが、いくつかの規格外試験結果
  (OOS)を得る。また設備の二重のサンプル分析は時々、薬の濃度において受け入れられないと考
  えられる濃度の変動を示す。設備は変動する結果を調査し、不具合はサンプルの準備の技術に関
  係するとし、問題を明確に特定しない。これにもかかわらず、契約設備は、製品をテストするた
  めに、CGMPに不遵守な方法を使い続ける。FDAが契約設備を査察し、設備は、問題を完全に調査し
  て是正処置を実施することを怠っていると発見する。契約設備は製品の申請で指定された通り、
  オーナーの示す分析方法を使用し、関連する調査と是正措置の実施に責任はないと主張する。

上の両方のケースにおいて、FDAは契約設備は、実験室の活動にCGMP違反の責任があると結論づけるだ
ろう。FDAは、オーナーにもCGMP違反について責任があると結論づけることもあり得る。分析試験を行
う実験室は、オーナーと取り決めた品質協定があっても、CGMPに従った操作を行う責任がある。
彼らは、データと試験結果が信頼でき、CGMP要件に従って保持されていることを保証するために、適
切な管理を行わなければならない。製品の出荷と配送を許可するかしないかを決めるために、契約設
備から得られる情報をレビュすることはオーナーの責任である。
たとえ誰が製品をテストしても、オーナーの品質部門は、CGMPに従って製品が製造されることを保証
することについて最終的に責任がある。 品質協定はそれを変更しない。 FDAは、オーナーは、ケース
3と4において、契約設備を評価し、適格と判断し、監査し、モニタすることを怠っているので、さら
に言及するかもしれない。

 C.オーナーと契約設備が変更管理活動を行う
  CASE5:製品品質やCGMPの準拠に影響のある変更の承認または拒絶
  契約設備は、オーナーに、明らかなパウダーの分離問題についてしらせた。契約設備は、装置に
  変更を行うことで問題を修正することをこころみていたが、工程の再設計と部品の交換をしない
  限り修正できないと判断した。品質協定のもとで、契約設備は、オーナーの承認なしにこれらの
  変更を実施することができなかった。オーナーは、提言された変更を承認することを拒否したの
  で、契約設備は、不備のあるプロセスを使って製品の製造を続けため、CGMPに違反した。
  CASE5は、変更管理が問題になっている時のオーナーと契約設備の責任の例を示している。オー
  ナーは、変更がCGMPに従って薬の製造を続けるために必要であっても、契約設備により提言され
  た変更の承認に気が進まなかった。

VI.推奨
オーナーと契約設備は、薬の製造における活動を定義し、制定し、文書化することで、加工処理、包
装、保存、表示作業、試験、品質保証部門の作業を含む、外部委託契約した薬の製造の複雑な工程を
実行するために品質管理の原則を利用することができる。従って、FDAは、オーナーと契約設備が、
CGMPに従うことを保証するために製造活動を描写したツールとして、文書化された品質協定を実装す
ることを勧める。

出典:
http://www.fda.gov/ucm/groups/fdagov-public/@fdagov-drugs-gen/documents/document/ucm353925.pdf


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まとめ
◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆
このガイドラインは、従来のような、Contract Giver(委託者)とContract Acceptor(受託者)と
いう言葉は一切使わず、一部にContractor(請負業者)という言葉は登場するものの、ほぼ、
Owner(オーナー)とContract Facility(契約設備)という言葉を使って、委託関係を表現している
のが興味深いです。
中身自体は従来の要件と大きな違いはなく、要は、委託関係にある組織は、文書化した品質協定を結
び、役割と責任を明確にせよということが書かれています。
終わりの部分で具体的な例を5つ挙げ、たとえ品質協定に書かれている内容を守っても、CGMP違反に
なる可能性があることを示しているのがわかりやすいと思います。
外部委託製造に関し、FDAがどのような点に注意を払っているかを知ることのできるガイダンスなの
で、是非参考にしてみていただければと思います。

今年も1年間メールマガジンをお読み頂き、ありがとうございました。
来年もどうぞよろしくお願いいたします。
☆次回は、1/5(木)に配信させていただきます。

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2016.12.01

【最新のFDAウォーニングレター10通の傾向】ASTROM通信<111号>

 ~安全な医薬品の安定供給をご支援する~

こんにちは
ASTROM通信担当の橋本奈央子です。

ここにきて急に冬らしくなってきましたが、いかがお過ごしですか?

さて、2016年10月14日配信のASTROM通信108号>では、2016年6月30日から9月15日に
FDAの製品品質オフィスから出された12件のウォーニングレターについて取り上げましたが、
今回はその後に出された10件のウォーニングレターについて、その概要を確認していきたいと
思います。

最後までお付き合いいただければ幸いです。


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10件のウォーニングレターの概要
注:文中のXXはウォーニングレターでマスキングされている文言です
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■WL:320-16-32 ブラジルの製造所の最終医薬品製造における重大なCGMP違反に関する2016/9/12付
ウォーニングレター
1.貴社の品質部門は、医薬品の品質に影響のある全ての手順や、同一性、濃度、品質、純度に
  影響のある規格について、承認したり不合格と判定したりすることを怠った。
2.貴社は、出荷前に、製品の各バッチについて、同一性や有効成分の濃度を含む規格への適合の
  判定を行っていない。
3.貴社は、製造や、製造した製品が持つと言われている同一性、濃度、品質、純度を保証する
  ための工程管理に関する文書化された手順に従うことを怠った。
4.貴社は、製品のバッチと関連づけて、製造、管理、販売の記録を、バッチの有効期限が切れた
  後少なくとも1年間保持することを怠った。
http://www.fda.gov/ICECI/EnforcementActions/WarningLetters/2016/ucm522983.htm

■WL:320-16-34 中国の製造所の最終医薬品製造における重大なCGMP違反に関する2016/9/26付
ウォーニングレター
1.貴社は、製造や、製造した製品が持つと言われている同一性、濃度、品質、純度を保証する
  ことを意図した工程管理に関する文書化された適切な手順を規定することを怠った。
  FDAは通関手続地でサンプルを収集し、FDAラボ分析により、表示されたどの有効成分も含んで
  いないことに気付いた。FDAは積荷の入国を拒否し、貴社に苦情を訴えた顧客に通知した。
2.貴社は、出荷前に、製品の各バッチについて、同一性や有効成分の濃度を含む規格への適合の
  判定を行っていない。
  査察中、貴社は、出荷前に最終製品の全てのバッチについては試験を行っていないことを認め
  た。
  例えば、2015年、貴社はアメリカに出荷した全バッチのうち5バッチしか試験しなかった。
  貴社の品質部門は、バッチのアメリカ市場への出荷許可をする前に、全ての製造と管理の記録
  をレビュし、試験し、全ての製品が規格に適合していることを確実にしなければならない
  貴社の調査は倉庫がバッチXXに関して間違った原薬を出庫したことを示唆した。これが、多数
  の、製品に誤った有効成分を加える誤りの発端となった。
http://www.fda.gov/ICECI/EnforcementActions/WarningLetters/2016/ucm524001.htm

■WL:320-16-35 日本の医薬品製造所に対する2016/9/26付ウォーニングレター
貴社は、FDAの査察を制限したり、査察を許可することを拒絶したりした。
1.エリアへのアクセスの妨害
  査察中、貴社は品質管理ラボへの査察官のアクセスを制限した。品質管理マネジャは従業員に
  協力し合って、ラボやアメリカの販売用の医薬品の分析をするために使用する装置へのアクセス
  を妨害するよう指示した。
2.文書のコピーの提供の拒否
  貴社は、日本とアメリカ市場向けの薬を、同じ装置と工程を使って製造し、2つの市場の販売
  のためにロットを分割する。査察中、査察官は、貴社が顧客から貴社の薬について受け取った、
  薬にガラス、髪、ボール紙、金属、変色した薬、黒いクモが含まれているという内容を含む
  苦情をレビュした。これらの記録のコピーをFDAに提供することを拒み、査察を制限した。
3.写真撮影の制限
  査察中、査察官はアメリカ販売用の薬を製造するために使用されている装置の写真をとろうと
  した。貴社の品質保証マネジャは、装置の写真撮影の妨害により、査察を妨げた。
  貴社は、2016年8月8日に輸入警告を出された。
http://www.fda.gov/ICECI/EnforcementActions/WarningLetters/2016/ucm522801.htm

■WL:320-16-36 オランダの製造所の医薬品製造における重大なCGMP違反に関する2016/9/29付
ウォーニングレター
1.貴社は、出荷前に、製品の各バッチについて、同一性や有効成分の濃度を含む規格への適合の
  判定を行っていない。
  貴社は、最終製品の分析試験を行わず、薬の最終製品の出荷試験の規格を作っていなかったと
  述べた。
2.貴社は、全ての成分、容器、封じ込め、工程内の原料、包装材料、ラベル、製品を承認したり
  不合格と判定したりする責任と権限を持つ品質管理部門を設置することを怠った。
  貴社は、査察官に、薬のレビュをし、出荷を承認する品質部門を持っていないと述べた。
3.貴社は装置の洗浄及び保守管理に関する文書化された手順を制定し、それに従うことを怠った。
  貴社は、アメリカ市場向けの製品を、その他の製品の製造に使用しているのと同じ装置で製造
  している。貴社の適切な装置の洗浄の不履行は、薬が、潜在的な毒性化学物質により汚染される
  リスクをうむ。
http://www.fda.gov/ICECI/EnforcementActions/WarningLetters/2016/ucm524124.htm

■WL:320-16-37 スイスの製造所の最終医薬品製造における重大なCGMP違反に関する2016/9/29付
ウォーニングレター
1.貴社は、規格外の結果や顧客の苦情のレビュを含む、品質管理部門に適用できる文書化された
  責任と手順を制定することを怠った。査察中、貴社は、独立した品質部門を持っていないと
  述べた。
2.同一性、有効成分の濃度に関する製品のバッチの試験をすることを怠った。
3.貴社は、さまざまな供給者から調達した成分の同一性を保証することを怠った。
4.貴社は、故障や汚染を防ぐために、XXを適切な間隔で洗浄しメンテナンスすることを怠った。
  査察中、XXのさびと合致した赤茶色の変色を発見した。
5.貴社は、製造した製品が持つと言われている同一性、濃度、品質、純度を保証するためのバリ
  デーション手順や報告を含む、製造や工程管理に関する文書化された手順の制定を怠った。
  査察中、貴社はプロセスバリデーションに関する手順を持っていないと述べた。
6.貴社は、貴社の製品が有効期間を通して、化学的・物理的に許容できることを示すデータを
  持っていない。
http://www.fda.gov/ICECI/EnforcementActions/WarningLetters/2016/ucm524002.htm

■WL:320-17-01 イスラエルの製造所の最終医薬品製造における重大なCGMP違反に関する2016/10/13
付ウォーニングレター
1.バッチが既に販売されたかどうかに関わらず、バッチまたは成分の、仕様からの原因不明の
  かい離や不具合の十分な調査を怠った。
  貴社は、培地充填試験及び無菌試験の不具合の適切な調査をしなかった。これらの不具合は
  貴社の製造設備内に無菌性の保証の欠陥があることを示している。
  a.培地充填
    貴社は、無菌製造ラインの培地充填の汚染を適正に調査しなかった。
    貴社は、培地充填の汚染を、様々な作業者による無菌技術の違反のせいにした。セット
    アップ、充填、注入タンクの変更に関し、様々な違反がみつかった。しかし、貴社の調査
    は十分ではなかった。たとえば、汚染された容器内の微生物を識別することを怠った。
    潜在的な汚染源と汚染の範囲を理解するために、培養充填容器内でみつかった微生物の
    正体を究明することは不可欠である。
    培地充填におけるいかなる汚染も、潜在的に重大な無菌保証の問題を示し、十分に調査
    されるべきである。
  b.陽性の無菌試験の調査
    貴社は、陽性の無菌試験を十分に調査しなかった。例えば、無菌試験の不合格の調査で、
    無菌の不具合につながる無菌製造オペレーションにおける危険を十分に評価しなかった。
    また、同じ製造ラインで作られた他のバッチに影響があるかどうかの判断をしなかった。
2.貴社は、無菌をうたう製品の、無菌及び滅菌工程のバリデーションを含む微生物学的汚染を
  防ぐための文書化された手順を制定して手順に従うことを怠った。
  a.不十分な無菌動作
    査察中、査察官は、貴社の設備で録画された不十分な無菌工程の技術をみつけた。
    例えば、ビデオでは、無菌注入薬のセットアップ、充填中に下記の内容を示した。
    ・ゴム栓ホッパーの上で、あるオペレータが別のオペレータに直接ペンを渡した。
    ・充填ラインのセットアップ中、オペレータがクリーンルームの床に座っていて、立った
     後、着衣を変えなかった。
    ・オペレータ達がクリーンルームの壁に寄りかかっていた。
    ・充填ラインのセットアップ中の長い間、オペレータはアクセス制限バリア
     (Restricted Access Barrier)を開けっぱなしにした。
  b.培地充填中の機械の不具合
    貴社は、培地充填中、機械の問題またはその他の原因により多数のバイアルを不合格にし
    た。例えば、コンベヤベルトモータの機械的問題により培地充填バッチが中止された。
    3,696のバイアルが充填されたが、そのバイアルは培養されず、適切な理由なしに無効化
    された。
    貴社は、そのような機械の不具合の後の製造や廃棄について記述した手順を持っていな
    かった。
3.貴社は、無菌工程エリアの環境状態をモニタリングする適切なシステムの制定を怠った。
4.科学的に理にかない、適切な仕様・規格・サンプリング計画・成分・製品の容器・着衣・中間
  材料・ラベル・製品が同一性、濃度、品質、純度の規格に従うことを保証するために作られた
  テスト手順を含むラボの管理を確立することを怠った。
5.貴社は、仕様や規格に従うことを保証するために必要な全ての試験から得られるデータを含む
  ラボの記録を保証することを怠った。
6.権限のある職員だけが、製造及び管理の記録の変更をすることを保証するため、コンピュータ
  または関連システムの適切な管理を行うことを怠った。
  貴社のスタンドアロンのコンピュータシステムは、分析者がデータを削除することを防ぐため
  の、所定の監査証跡のレビュや全データの保持のような管理が不足していた。
  HPLC(高速液体クロマトグラフィー)の監査証跡のレビュに着手する手順を実装したが、我々の
  査察の前に、いかなるレビュも実施していなかった。
7.貴社は、バッチの均一性を保証するための製造及び管理の記録の作成に関する文書化された
  手順に従うことを怠った。
http://www.fda.gov/ICECI/EnforcementActions/WarningLetters/2016/ucm525640.htm

■WL:320-17-02 チェコの製造所の原薬製造及び最終医薬品製造における重大なCGMP違反に関する
2016/10/18付ウォーニングレター
●原薬の逸脱
1.データへの不許可のアクセスや変更を防ぐことの不履行、データの改善や削除を防ぐための
  適切な管理の不履行
  貴社の品質管理部門は、電子的に保存されたラボのデータの変更を防ぐ基本的な管理を行っ
  いなかった。貴社の分析者達は、クロマトグラフのデータを生成し分析するためのシステムに
  対し、通知なしにデータを削除し、ピークエリアを替え、許可なしにサンプルを追加したり
  除外したりすることのできる特権を持っていた。
  査察中、我々は8906件のデータを保存するシステムから監査証跡をレビュした。これらのうち、
  半分以上はデータの何らかの削除または改ざんがあった。その中には少なくとも1441件の結果
  の削除、3643件のマニュアル積分、194件のサンプルの変更が含まれていた。貴社の職員は、
  これらの作業がクロマトグラフのデータ処理中に日常的に行われていることを認めた。我々は
  システムのユーザの条件や制限のレベルについて示した手順がないことをみつけた。
  貴社の品質部門は、バッチの出荷判定をする時に全ての関連する分析データをレビュしなけれ
  ばならない。しかし、貴社のシステムは許可なくテスト結果を消したり変更したりすることを
  分析者たちに許可していた。その結果、品質部門は、薬の品質についての不完全で不正確な
  情報を提供された。
2.貴社の原薬が、制定された品質・純度の規格に従うことを確実にするために、テスト手順が
  科学的に理にかなっていて適切であると保証することの不履行
  貴社のラボの手順は、正当な理由なしに、分析者がクロマトグラフの順番を変え、結果を削除
  することを許していた。
  不純物のテスト中に生成されたクロマトグラムのレビュ中、我々は分析者がたくさんのマニュ
  アル積分を実施していることを発見した。また、つじつまのあわない積分を含むピーク積分の
  不一致や、全く積分されていないピークを発見した。それらのピークは不純物の存在を示して
  いるが、それらは、バッチの出荷判定のために品質部門に提供するデータに含まれていなかっ
  た。そのために品質レビュや製品の出荷判定は薬の品質に関して不完全なデータに基づいて
  行われていた。
●最終製品の違反
1.権限のある職員だけが製造及び管理の記録の変更をすることを保証するための、コンピュータ
  または関連システムの適切な管理を行うことを怠った。
  たとえば、監査証跡は、たくさんの削除された結果とマニュアル積分の実施を明らかにした
2.科学的に理にかない、適切な仕様・規格・サンプリング計画・成分・製品の容器・着衣・中間
  材料・ラベル・製品が同一性、濃度、品質、純度の規格に従うことを保証するために作られた
  テスト手順を含むラボの管理を確立することを怠った。
  貴社のラボの手順は、分析者達が、クロマトグラフの結果を正当な理由もなく修正したり削除
  したりすることや、管理外の状況でマニュアル積分を使用することを許していた。
  例えば、査察官は、繰り返しのマニュアル積分の後に削除された結果を発見した。不当な繰り
  返しのマニュアル積分と削除は、ラボの管理が、製品をテストするために科学的に理にかなって
  はおらず適切でないことを示す。
http://www.fda.gov/ICECI/EnforcementActions/WarningLetters/2016/ucm525748.htm

■WL:320-17-03 中国の製造所の原薬製造における重大なCGMP違反に関する2016/10/19付ウォーニン
グレター
1.貴社は、FDAの査察を遅らせ、拒絶または制限し、または、許可しなかった。
  査察官が窓越しに、倉庫に貴社の会社のラベルがついた多数のドラム缶があるのをみつけた。
  査察官がこの倉庫へ入ることを要求したところ、貴社は容器または原材料を調べるために倉庫に
  入ることを、合理的な説明をすることなしに禁じた。
  翌日、貴社は査察官を倉庫に入れたが、多数のドラム缶は取り除かれていて、査察することが
  できなかった。前日見たドラム缶について尋ねたが、倉庫やドラム缶の中身について説明をしな
  かった。
  貴社は倉庫へのFDAの立ち入りを遅らせ、査察前にドラム缶を移動させることで査察を制限した。
2.制定した仕様や規格に従うことを保証するために行う全てのラボの試験から得られる完全なデー
  タの保持を怠った。
  査察官は設備のいたるところで、システムのデータの改ざんを発見した。査察官は、ラボのテス
  ト結果の無断の削除を記録した。査察官は、貴社が合格の結果を得るまで試験を繰り返し、OOS
  または望ましくないテスト結果の調査を怠っていることを発見した。貴社は、バッチのリリース
  や安定性データの根拠として、これらの偽造や改ざんされたテスト結果に依存した。
  貴社は日常的に、HPLCのサンプルを再試験し、正当な理由もなしに、前のクロマトグラムを破棄
  した。貴社の管理者は品質管理ラボ内の従業員が、最終結果の報告前に、望ましくない結果が
  出た時は、結果にアクセスし、HPLCの注入データを削除したり注入を繰り返したりする権限を
  持っていたことを認めた。
  CGMP記録の一部として生成されたいかなるデータも、リリースの基準の一部として品質部門に
  より評価されるべきであり、保持されるべきである。リリースの意思決定プロセスからデータを
  除外するためには、除外に関する正当で文書化された科学的な理由がなければならない
3.全ての品質関連の活動が実行された時に記録されることを確実にすることを怠った。
  製造エリアで、査察官は、7バッチ分の製造記録をバックデートで作成し、テンプレートの記録
  からデータを転記しているのを目撃した。さらに、これらの7バッチの転記されたデータと、
  約40バッチの原薬のデータの分析の結果は、データを同時に記録せず、不足しているデータは
  後で偽造され、その結果、公式の記録は完全に見えることを示唆した。
  ラボエリアで、査察官は、ラボの分析者が、HPLC器具の部屋から大量の綴じていない文書の山を
  持ち去ろうとしているのを発見した。査察官は文書の山をレビュし、部分的に完成した品質管理
  データのワークシートやサンプルの重量を含むメモ用紙を見つけた。査察官は、これらと、公式
  な品質管理データのワークシートを比較し、重さや計算結果に多数の矛盾を発見した。
4.バッチが、リリースまたは販売される前に制定した原薬の仕様に従うことを判断するためのバッ
  チの製造やラボの管理記録を保持することを怠った。
  貴社は、2015年の9月に原薬XXの製造を停止したと言ったが、査察官がHPLCとガスクロの電子監
  査証跡をレビュし、原薬XXの多数のHPLCとGCの分析が2015年の11月5日から6日にかけて実施され
  ていることが判明した。
  貴社のバッチの採番システムにより、これらのバッチ番号は、貴社が製造をやめたといった2ヶ月
  後の日付である2015年の11月に製造されたものに該当していた。査察中、貴社は、これらのバッ
  チに関する製造記録や、これらのバッチのテストに関する機器使用ログブックを提供できなかっ
  た。
http://www.fda.gov/ICECI/EnforcementActions/WarningLetters/2016/ucm527005.htm

■WL:320-17-04 日本の製造所の原薬製造における重大なCGMP違反に関する2016/11/8付ウォーニング
レター
1.制定した原薬の仕様や規格に従うことを保証するために行う全てのラボの試験から得られる完全
  なデータの保持を怠った。
  査察官は、全てのラボの分析から得られる完全なデータを保持することを怠り、貴社の薬が、
  制定した仕様に従っているかどうかを判断するために不完全な情報に頼っていることを発見し
  た。例えば、
  a.ガスクロ機器とつながったコンピュータのゴミ箱フォルダから多数のデータファイルが見つ
    かった。その中に、XXの残留溶媒のテストに関する削除されたデータを発見した。貴社の
    記録は、貴社が、文書化された正当な理由や調査もなく、ロットのリテストをしていること
    を示す。貴社は最終テスト結果のみ保持していた。
  b.査察中、査察官は、2つの原薬の残留溶媒のテストデータの提出を要求した。貴社はこの
    データを検索できなかった。リリースの基準の一部として品質部門に評価されるために、
    CGMP記録の一部として生成されたいかなるデータも保持されていなければならない。
2.データへの許可のないアクセスや変更を防ぐことを怠り、データの削除を防ぐための適切な管理
  を怠った。
  査察官は、貴社のラボのシステムは、電子生データの削除や変更を防ぐための管理が不足してい
  ることを発見した。貴社は、7つのHPLCシステムと、1つのガスクロシステムの適切な管理を行っ
  ていない。例えば、HPLCの監査証跡は、バッチXXの分析を記録していない。貴社の記録は、
  2014年3月3日に分析が行われたことを示すが、監査証跡は2014年2月28日から3月4日に分析が
  実施されていないことを示している。さらに、貴社の分析者は査察官に対し、結果を印刷する
  前、変更が監査証跡に記録されることなく、注入日時を含むデータを変更できると述べた。
3.原薬をテストするために用いられる分析手法が適切にバリデートされ検証されていることを確実
  にすることを怠った。
  査察官は、微生物学的試験の方法が適切に検証されておらず、安定性試験の方法が不適切にバリ
  デートされていることを発見した。例えば、
  a.貴社の非殺菌原薬XXは、アメリカに販売するための無菌の最終製剤の製造に使用される。
    貴社は好気性微生物の総数や、酵母とカビの総数に関するテスト方法を適切に検証していな
    かった。
    特に、これらの方法で微生物の回収が可能であることを示さなかった。
b.貴社の安定性試験の方法が、他の成分と同様、主成分から、劣化を検知・分析できると示さな
  かった。
http://www.fda.gov/ICECI/EnforcementActions/WarningLetters/2016/ucm528590.htm

■WL:320-17-05 インドの製造所の原薬製造における重大なCGMP違反に関する2016/11/8付ウォーニン
グレター
1.制定した仕様や規格に従うことを保証するために行う全てのラボの試験から得られる完全なデー
  タの保持を怠った。
  HPLCの監査証跡は、適切な文書、正当な理由、調査もなく、18ヶ月の安定性試験で、未知の不純
  物に関し、多数の積分を実施していることを示した。
  貴社の品質保証責任者は、これらの積分が不適切であったと認めた。査察官が適切な積分パラ
  メータを使って、クロマトグラムを再処理することをたずねたところ、その結果は、未知の不純
  物によるOOSだった。品質部門は、バッチのリリース判断をする時、全ての関連する分析データ
  をレビュしなければならない。
  貴社は、24ヶ月の合格の安定性の結果を提供したが、18ヶ月の安定性結果の不合格について取り
  組んでいないので、貴社の回答は適切ではない。
2.実施時に、ラボの管理を文書にして従うことを怠った。
  査察官は、一貫性のない日付のラボの記録を発見した。
  例えば、貴社が実施している手順の記録は、2015年2月14日に入力された24ヶ月の時点の安定性
  試験のサンプルを示している。査察官がHPLCのデータを要求したところ、貴社は、サンプルが、
  その1日または2日前の、2015年2月12日と13日に試験されたことを示すHPLCクロマトグラムの
  印刷物を提出した。貴社は、これらの試験に一致するいかなるローデータもみつけることが出来
  なかった。HPLCの使用ログには、これらの実行に関する入力がなかった。
  他の例ではXXに関連しガスクロで行われた関連物質の分析の印刷されたクロマトグラムには、
  2014年8月26日という日付があったが、この分析機からコンピュータに保存されたデータは、
  印刷されたクロマトグラムの約8か月前の2013年12月28日の日付だった。
http://www.fda.gov/ICECI/EnforcementActions/WarningLetters/2016/ucm529237.htm


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まとめ
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FDAは、インドや中国の製造所の査察に注力しているように思っていましたが、今回のウォーニング
レターには、オランダ、スイス、そして、日本の製造所に対して発行されたものが含まれていて驚き
ました。

今回も指摘の内容には、データの完全性(Data Integrity)、しかも、ラボのデータに関わるものが
かなり含まれています。

査察官は、パソコンのゴミ箱フォルダもしっかりチェックするのですね。

それはさておき、合格が得られるまで試験を繰り返すというのは、非常によく目にする指摘です。
明らかな異常でない場合、合格結果が得られるまで、ついつい試験を繰り返したくなる気持ちはわか
らなくもないですが、やはり不合格は不合格。
FDAの査察を受ける/受けないに関わらず、この機会に、自社内で、正当な理由もなく合格が出るまで
試験を繰り返すことが日常的に行われてはいないか確認してみるのもよいのではないでしょうか。

最後までお読み頂き、ありがとうございました。
☆次回は、12/15(木)に配信させていただきます。


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