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2016.08.15

【MHRA発!Data Integrityガイダンスドラフト】ASTROM通信<104号>

 ~安全な医薬品の安定供給をご支援する~

こんにちは
ASTROM通信担当の橋本奈央子です。

連日猛暑が続いていますが、いかがお過ごしですか?

さて、2016年7月21日、MHRA(Medicines and Healthcare products Regulatory Agency:
英国医薬品庁)が、業界向けのGxPデータの完全性に関するガイダンス
(MHRA GxP Data Integrity Definitions and Guidance for industry)のドラフトを発表しました。
このドラフトには、MHRAの規制対象の組織で考慮されるべきデータの完全性に関する要求が述べら
れていて、2016年10月31日までコメントが募集されています。
正式ガイダンスではありませんが、MHRAが求めるデータの完全性について知るうえで非常に興味
深いので、今回はこの内容を見ていきたいと思います。
最後までお付き合いいただければ幸いです。

出典:
MHRAホームページ
https://www.gov.uk/government/news/mhra-gxp-data-integrity-definitions-and-guidance-for-industry
ガイダンスドラフト
https://www.gov.uk/government/uploads/system/uploads/attachment_data/file/538871/MHRA_GxP_data_integrity_consultation.pdf


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ドラフトガイダンスの抜粋
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■背景
規制対象の生成データは増え続け、その方法は、紙の記録を使った手動から、コンピュータ化
システムを使ったものにまで及ぶが、規制の主要目的は同じで、生成されたデータの品質と
完全性についての信頼性を持つことにあり、データから活動を再現できることは根本的な要件で
あり続ける。

■導入
これは化学及び薬剤の開発ライフサイクルの全ての局面を含む組織により考慮されるべきデータ
の完全性に対する要求を示したガイダンスである。
このガイダンスは、各GxPの一般的な規則やガイダンスと併せて読まれるべきである
人、システム、設備に関わる組織の手筈が設計・運用され、紙、電子といった全ての形式のデータ
が完全に矛盾なく正確であることを保証するために適用されなければならない。データの妥当性や
完全性を保証するために適用する取り組みと資源は、リスクや、データの完全性の不具合が患者や
環境に与える影響に釣り合っていなければならない。
組織はデータチェックへの法的なアプローチの実施は求められてはいないが、代わりに、論理的
根拠に支えられたデータの完全性のリスクに基づく、容認できる管理状態を提供する、設計と運用
が完全に文書化されたシステムであることが求められる。
日常のデータレビュに加えて、より広範囲のデータ管理のしくみにおいて、社内のシステムの
データ完全性の不具合の発見を可能にする定期的な監査を確実にすべきである。例えば、定期的
システムレビュが現行の管理方法の効果を検証し、不正な活動の可能性を考慮するのに対し、
日常のデータレビュは個々のデータセットの完全性を考慮すべきである。
注目すべきは、データの完全性の要件は、手動(紙)と電子データに対して同様に適用されること
である。組織は、自動/コンピュータ化から手動/紙ベースのシステムへ戻すことが、適切な
データの完全性の管理の必要性を取り除くものでないことに注意しなければいけない。監査または
規制当局の査察でデータの完全性の弱さがみつかったら、複数の製造所を持つ会社は、組織全体
で、適切な是正処置と予防処置の実施を確実に行わなければならない。
このガイダンスには含まれてないが、データの管理手法の成功における組織の文化や経営陣の動き
の影響を低く見積もってはいけない。

■データの重要性とデータの完全性の内在的リスク
データのライフサイクルの組織的、技術的管理のための取り組みや使用する資源は、品質に与える
影響の重要性に釣り合っていなければならない。
データは、(i)手動の手段-紙ベースの記録 または (ii)電子の手段-装置、シンプルな機械の
スペクトラムから複雑で高度に設定可能なコンピュータ化システム により生成される。

手動で記録されたデータが厳格な管理を必要とする時は、リスク低減のための監督方法の検討が
されなければならない。その例として、第二の人物による同時のデータ入力の検証や、関連する
情報源(例:装置のログブック)との照合がある。
装置やコンピュータ化システムに関連するデータの完全性の内在的リスクは、データによって
異なる。

■データの品質と完全性を確かにするためのシステム設計
システムと処理は、データの完全性の原則の順守を促進するように設計されなければならない。
データの重要性による活動の適切な管理を確実にすると同時に、アクセスの容易さ、使いやすさ、
場所が検討されなければならない。検討例は次の通りである。
・イベントと同期がとられた記録を残すために適切に管理/同期されたクロックへのアクセス
・その場その場のデータの記録や、後で公的記録への複写を必要としないための、活動が行われる
 場所での記録へのアクセスの可能性
・ロー/ソースデータを記録するための白紙の書式への自由なアクセスは管理されるべきである。
 記録の作り直しを防ぐために、突き合わせが必要かもしれない。
・不正なデータの修正を防ぐユーザのアクセス権限(または監査証跡)
・秤のような自動のデータ保存または装置へのプリンタの接続
・要求した通りに職務を実行し、データを記録することを可能にする物理的パラメータ(時間、
 期間、装置)の管理
・データチェック作業を行う職員のためのローデータへのアクセス

オペレータの代わりに活動を記録するために筆記者を使用することは、”特別“と考えられ、次の
場合にだけ起こる:
・同時の記録の活動が製品や活動を損なう 例:無菌工程のオペレータによる文書化ラインの介在
・文化的または職員の読み書きの能力/言語の制約を調整するため、例えば、活動はオペレータが
 行うが、目視と記録は監督者または指揮者が行う。
どちらの場合も、監督の記録は、職務が行われるのと同時でなければならない。また、職務を
行った人と、記録を完成させた人を特定しなければならない。職務を実施した人は、可能であれば
記録に連著しなければならないが、連著は後でもよい。監督の文書化完成の過程は、承認された
手順に記述され、どの工程に適用するか活動を特定しなければならない。

■定義とガイダンス(●は定義、▲はガイダンス)
1.データ
●参照または分析のために一緒に収集された事実と統計値
▲データは次のようでなければならない。
 A:データの作成者が明確であること
 L:データが読めて長持ちすること
 C:同時性
 O:オリジナルな記録(または真のコピー)であること
 A:正確性
 データの管理方法は、データが、完成していて、矛盾がなく、ライフサイクルを通して長持ち
 することを確実にするものでなければならない。

2.ローデータ(GCP:ソースデータと同義)
もともと生成されたフォーマットで保持されたオリジナルの記録(すなわち、紙または電子)、
 または、“真のコピー”。ローデータは、不変の方法で、同時かつ正確に記録されなければ
 ならない。
▲ローデータは、データを生成した活動の完全な再現を可能にしなければならない。

3.メタデータ
●メタデータは、他のデータの属性を説明するデータであり、背景と意味を提供する。一般に、
 これらは、構造、データ要素、相互関係、およびデータのその他の特徴を説明するデータで
 ある。それは、また、データの作成者を特定することを可能にする。(自動で作成されたデータ
 であれは、オリジナルのデータソースを特定する)
メタデータはオリジナルの記録の無くてはならない部分を形成する。メタデータのないデータ
 は意味をもたない。

4.データの完全性
●全てのデータが完成していて、矛盾がなく、データのライフサイクルを通して正確である。
▲データの完全性の手筈は、正確性、完全性、データの内容と意味がデータのライフサイクルを
 通して保持されることを保証しなければならない。

5.データの管理
●データを保証するための手筈の骨子は、ライフサイクルを通じて、記録が完全で、矛盾がなく、
 正確であることを保証するために、データの生成フォーマットに関わらず、データが記録され、
 処理され、保持され、使用されることを確実にしなければならない。
▲データの管理は、ライフサイクルを通じて、データの所有者を指定し、故意または不慮の情報
 の変更のコントロールを含むデータの完全性の原則を順守するために、処理及びシステムの
 設計・運用・モニタリングを考慮しなければならない。
▲経営層は、ICH Q9のようなリスクマネジメント技術を使って、データの完全性に対する
 潜在的リスクを最小化するためのシステムや手順の実装の責任や、未解決のリスクの特定の責任
 を負う。委託者は、確実に、データの所有権、管理、利用可能性が、契約書や技術面の取り決め
 に含まれるようにしなければならない。委託者は、ベンダ保証のプログラムの一部として、
 データ管理のレビュを実施しなければならない。
▲日常のデータレビュにおいて、個々のデータの完全性、制定された組織または技術的方法の
 順守、データのリスク指標(例:データの修正)を評価しなければならない。データ管理方法
 (例:監査)の定期的レビュにおいて、制定された組織または技術的方法の効果を評価し、不正
 な活動の可能性を検討しなければならない。
▲データ管理システムは、データが容易に利用できて、国の規制当局の要求により直接アクセス
 可能であることを保証しなければならない。

6.データライフサイクル
●初期の生成から、処理(分析、変換またはマイグレーション)を経た記録、使用、保管、
 アーカイブ/検索、破棄までのデータ(ローデータを含む)の全てのフェーズ
▲データの破棄の手順は、データの重要性や、法的保管要件を考慮しなければならない。

7.データ変換/マイグレーション
●データ変換は、データ及びメタデータの、記憶媒体またはコンピュータシステム間の変換処理
 をさす。
 データマイグレーションは、他のコンピュータシステムで使う、または、見ることができるよう
 にするためにデータのフォーマットを変更することである。
▲データ変換/マイグレーションは、データの完全性の原則を維持するために設計されバリデート
 されなければならない。

8.データ処理
●データの抽出、定義されたフォーマットでの情報の提示や取得のために、データに行う一連の
 操作
データ処理作業において用いられたパラメータについても適切なトレーサビリティがなければ
 ならない。監査証跡と保持された記録は、全てのデータ処理活動を再現することを可能にしな
 ければならない。

9.データの記録
▲会社は、適切なレベルで、工程の理解と、データの記録に用いられるシステムの能力、制約、
 脆弱性を含む技術的知識を持たなければならない。

10.データの除外
▲データは、データが異例か、または、事実を代表していないということを、論理的に正しい
 科学を通じて証明できる場合にのみ除外されうる。全てのケースにおいて、この理由は文書化
 され、データレビュと報告の間に検討されなければならない。全てのデータ(除外されたもの
 を含む)は、オリジナルのデータ一式と共に保管され、レビュの際に、データの除外の決定の
 妥当性を確認するために利用できなければならない。

11.オリジナルの記録/真のコピー(または“保証されたコピー”または“立証されたコピー”)
11.1 オリジナルの記録
●データの完全性を保っている、もともと生成されたファイルまたはフォーマットとしてのデータ
 (例:オリジナルの紙の記録、コンピュータ化システムから得た電子ローデータ)
11.2 真のコピー
●オリジナルと同じように、属性と情報の全てを持った正しい(正確で完全な)コピーとして証明
 されたオリジナルの情報のコピー
▲オリジナルの記録と真のコピーは、記録の完全性(正確性、完成性、内容と意味)を保たなけれ
 ばいけない。

12.コンピュータシステムのトランザクション
●コンピュータシステムのトランザクションとは、1つの操作または1つの論理的作業単位として
 実施される一連の操作をさす。トランザクションを作る操作は、ユーザが意図的な操作を通して
 トランザクションを記録するまで、または、システムがデータの保存を行うまでは、恒久的な
 記憶装置に永久的な記録として保存されないだろう。
▲メタデータ(すなわち、ユーザ名、日付、時間)は、ユーザがトランザクションを保存するまで
 は、システムの監査証跡に保存されない。コンピュータ化システムにおいて、電子署名は、記録
 の保存のために求められる。

13.監査証跡
●監査証跡は、活動を再現することを可能にする、重要な情報(例:関連データの変更または
 削除)の記録のメタデータである。
▲コンピュータ化システムが保存、処理、報告、保管、ローデータの電子的アーカイブに用いら
 れる場合、システムの設計は、常に、前の、または、オリジナルのデータに対する全ての変更を
 示す監査証跡の保持に対応しなければならない。データへの全ての変更と、変更を行った人を
 関連付けることができ、変更にはタイムスタンプが押され、変更の理由が提供されなければなら
 ない。監査証跡に含まれる項目は、処理や活動を再現することに関係するものでなければならな
 い。
▲監査証跡は作動していないといけない。ユーザ(システム管理者を除く)は監査証跡を修正した
 り、監査証跡のスイッチを切ったりすることができてはいけない。
▲関連する監査証跡が機能的に存在しない(例:レガシーシステム、スプレッドシート)場合、
 例えば、ログブックの使用、各バージョンの保護と変更管理により、同等レベルの管理ができる
 かもしれない。
▲日常のデータレビュは、文書化された監査証跡のレビュを含むべきである。
▲監査証跡のないシステムがある場合、完全な監査証跡が残るシステムが利用できるようになる
 までは、データへの変更を示す紙ベースの監査証跡が認められるだろう。

14.電子署名
▲電子署名の使用は、EC指令のような国際標準の要件に従わなければならない。
▲電子署名のされた文書の紙またはPDFコピーが作られる時、電子署名と関連があるメタデータは、
 関連する文書と一緒に保管されなければならない。

15.データレビュ
▲データのレビュと承認の処理を述べた手順がなければならない。データレビュは、監査証跡を
 含む関連メタデータのレビュを含まなければならない。
▲レビュは、オリジナルデータまたは真のコピーに基づかなければならない。しばしば、データの
 概略報告が会社間(委託者と受託者)で提供されるが、概略報告には、重要なデータやメタデータ
 が含まれていないことがあることを認識していなければならない。
▲概略報告の受領に先立ち、データの完全性の原則に従った契約受託者の品質システムの、リスク
 ベースの評価が規定されていなければならない。
データを生成する会社によりデータレビュが実施されていない場合、データレビュの責任は文書化
 され、両組織に同意されなければならない。

16.コンピュータ化システムのユーザアクセス/システム管理者の役割
仕事の役割にあった機能に限定したアクセス権を持つことを確実にするために、アクセス管理を
 完全に利用すべきである。会社は個々の職員に与えたアクセスレベルをはっきり示すことができ、
 ユーザのアクセスレベルに関する過去の情報が利用できることを保証しなければならない。管理
 はオペレーティングシステムとアプリケーションレベルで適用されるべきである。
共有ログインまたは一般のユーザアクセスは使われるべきではない
▲一部のコンピュータ化システムは、1ユーザのログインまたは、限定されたユーザのログインしか
 サポートしていない。適切な別のコンピュータ化システムが入手できない場合、サードパーティ
 のソフトウエアまたはトレーサビリティを可能にする紙ベースの方法により同等の管理ができるか
 もしれない。代わりのしくみの適合性が検証され、文書化されなければならない。ハイブリッド
 システムは、データ変更者がわからない脆弱なシステムであるため、さらなるデータレビュが求め
 られる可能性がある。会社は、現在の当局の要求に従ったシステムを実装することが求められる。
 GMP設備は2017年の終わりまでに、個々のログインと監査証跡が管理できるシステムへのアップ
 グレードが求められる。(EC指令)
▲システム管理者権限は最小の人数に限定されるべきである。一般のシステム管理者アカウントは
 使用可能であるべきでない。管理者権限をもつ職員は、個人が特定できるユニークな認証情報を
 使ってログインすべきである。

17.データ保持
▲データ保持は、アーカイブとバックアップに分類される。データと文書の保持の手筈は、データの
 意図的または不慮の変更または喪失からの保護を保証しなければならない。確実な管理は、データ
 の保管期間を通してデータの完全性を保証する。

18.ファイル構造
18.1 フラットファイル
18.2 リレーショナルデータベース
※細かい内容なので省略します。

19.バリデーション
コンピュータ化システムは規制要件や関連するガイダンスに従い、その使用目的に応じてバリ
 デートされていなければならない。これは、工程内のコンピュータ化システムの理解を必要と
 する。そのため、ベンダが提供する、実際のシステム設定や使用目的とは切り離されたバリデ
 ーションデータの採用は受け入れられない。意図した工程やエンドユーザのITインフラから
 切り離されたベンダのテストは、機能の検証に限定され、性能適格性評価の要件を満たさない。

20.クラウドプロバイダと仮想サービス/SaaS(Software as a service)/PaaS(Platform as a
    service)/IaaS(Infrastructure as a service)
▲クラウドや仮想サービスが使用される場合、提供されるサービス、所有権、検索、データの保持
 ・セキュリティの理解に特別な注意が払われなければならない。
 その地理的場所に適用される法律の影響を含む、データが保持される物理的場所が考慮される
 べきである。委託者と受託者の責任は、技術的取り決めまたは契約により、定義されるべきで
 ある。これは、データ所有者または国の所轄官庁の要求によりデータへのタイムリーなアクセス
 を保証すべきである。プロバイダとの契約において、データの保管期間を通じて、データの
 アーカイブと継続的な可読性に関する責任を定義すべきである。ソフトウエア/システムを
 もともとのバリデートされた状態に復元するために適切な取り決めがなければならない。
 事業継続の取り決めが契約に含まれ、テストされるべきである。


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まとめ
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このガイダンスドラフトは、イギリスのEU離脱が決まった後に発出されたものですが、EC指令を
参照しているところが面白いです。このままいくのか、それとも、今後削除されるのか、少々
気になるところです。
それはさておき、ガイダンスドラフトは、先日のASTROM通信102号でご紹介したWHOのGDRP
ガイダンスと同様、データの完全性は、紙の記録にも電子データと同等に適用されることが明記
されています。
「紙の記録はデータではない」という話は通用しないということをあらためて実感する内容です。
また、GDRPガイダンス同様、クラウドサービスに言及している点も、興味深いところです。

ところで、このガイダンスドラフトで注意すべきは、セキュリティ及び監査証跡に関する部分です。
セキュリティや監査証跡に対応していないシステムを使用している場合は、ログブックや変更管理
などの方法で対応していいとしつつ、GMP設備は2017年の終わりまでに、個々のログインと監査証跡
が管理できるシステムへのアップグレードを求める内容となっています。

今後、MHRAだけでなく他の規制当局もシステムのアップグレードを求める方向に向かうのか、非常に
気になるところです。

最後までお読み頂き、ありがとうございました。
☆次回は、9/1(木)に配信させていただきます。


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【発行責任者】
株式会社プロス
ASTROM通信』担当 橋本奈央子

2016.08.01

48 / 多数 すべて印刷 新しいウィンドウで開く 【最近のFDAウォーニングレター12通の傾向】ASTROM通信<103号>

 ~安全な医薬品の安定供給をご支援する~

こんにちは
ASTROM通信担当の橋本奈央子です。

関東甲信越地方の梅雨も明け、いよいよ夏本番というところですが、いかがお過ごしですか?

さて、2016年4月1日配信のASTROM通信<95号>で、インドの製薬会社に対して発行された
ウォーニングレター(WL:320-16-08)を取り上げましたが、その後も、FDAの製品品質オフィス
から続々とウォーニングレターが発行されています。
そこで、今回は、前回以降に発行された12件のワーニングレターについて、概要を確認して
いきたいと思います。

最後までお付き合いいただければ幸いです。


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12件のウォーニングレターの概要
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■WL:320-16-09 インドの製造所の最終医薬品の重大なCGMP違反に関する2016/4/1付ウォーニング
レター
1.規定した仕様や規格の順守を保証するために必要な全ての試験から得られた完全なデータ
  を含むラボの記録の保証を怠った。
2.主生産及びその管理の記録、または、その他の記録の変更は、承認された職員しか変更でき
  ないことを保証するためのコンピュータや関連システムの適切な管理の実施を怠った。
3.製造する医薬品が均一性、含量、品質、純度を備えていることを保証するために設計された
  製造及び工程管理の手順に従わず、作業の実施と同時に記録することを怠った。
4.製造する医薬品が均一性、含量、品質、純度を備えていることを保証するために設計された
  製造及び工程管理の手順を適切に文書化して制定することを怠った
http://www.fda.gov/ICECI/EnforcementActions/WarningLetters/2016/ucm495535.htm

■WL:320-16-10 インドの製造所の原薬製造におけるCGMPからの重大な逸脱に関する2016/4/14付
ウォーニングレター
1.品質関連の顧客苦情の、制定された手順に従った記録と調査の不履行
2.全ての製造の逸脱のレビュと調査の不履行
3.不正アクセスやデータの変更を防ぐための十分なコントロールをしないという、コンピュータ
  化システムの不具合
4.原薬が制定された規格や品質及び/または純度に合っていることを保証するための適切なテスト
  手順がないこと
http://www.fda.gov/ICECI/EnforcementActions/WarningLetters/2016/ucm496623.htm

■WL:320-16-11 中国の製造所の原薬製造におけるCGMPからの重大な逸脱に関する2016/5/12付
ウォーニングレター
1.規格外の試験結果の適切な調査や適切な是正処置の不履行
2.不正アクセスやデータの変更の予防の不履行、データの改ざんや削除を防ぐ適切な管理の提供
  の不履行
3.作業が行われた時に記録を作ることの不履行、ローデータの破棄
http://www.fda.gov/ICECI/EnforcementActions/WarningLetters/2016/ucm501282.htm

■WL:320-16-12 ドイツの製造所の原薬製造におけるCGMPからの重大な逸脱に関する2016/5/16付
ウォーニングレター
1.原薬の安定性をモニタし、適切な保管条件やリテストまたは使用期限を守る目的でその試験
  結果を利用するために行う、文書化された現在進行中の安定性試験プログラムの不実施
2.製品や原薬の管理に影響のある全ての変更を評価する変更管理システムの制定と順守の不履行
  及び 変更が原薬の品質に与える可能性のある影響の評価の不履行
3.逸脱結果の適切な調査の不履行
4.不正アクセスやデータの変更を予防するためのコンピュータ化システムの十分な管理の不実施
  と、データの削除を防ぐ適切な管理の提供の不履行
http://www.fda.gov/ICECI/EnforcementActions/WarningLetters/2016/ucm502347.htm

■WL:320-16-13 インドの製造所の原薬製造におけるCGMPからの重大な逸脱に関する2016/5/19付
ウォーニングレター
1.中間体及び原薬のバッチについて、規格に合致するか判断するために、適切なラボのテストが
  実施されたことを保証することの不実施
2.不正アクセスやデータの変更の防止の不履行と、データの改ざんや削除を防ぐ適切な管理の
  提供の不履行
3.重大な逸脱の不適切な調査 または 仕様や品質規格に合致させるための処理の不履行
http://www.fda.gov/ICECI/EnforcementActions/WarningLetters/2016/ucm503699.htm

■WL:320-16-14 イタリアの製造所の原薬製造における重大なCGMP違反に関する2016/5/20付ウォー
ニングレター
1.清掃、保守、適切な作業を行うために、適切な建物において医薬品の製造、処理、包装、保持
  するために使用される設備を持つことを怠った。
2.故障や、当局やその他の要求を超えて、医薬品の安全性、均一性、含量、品質、純度を変える
  汚染を防ぐために、適切な間隔で、装置や器具を清掃し、メンテナンスし、薬の性質にあう
  よう消毒または滅菌することを怠った。
3.成分、医薬品容器、容器蓋、中間材料、ラベル、医薬品が均一性、含量、品質、純度の適切な
  規格に合うことを保証するために設計された科学的に妥当で適切な仕様、規格、サンプリング
  計画、テスト手順を含むラボの管理を行うことを怠った。
4.試験手順が、原薬が制定された品質及び/または純度の規格に合うことを保証するためには、
  科学的に妥当で適切ではない。
5.原薬の製造に使用される建造物や設備が、好ましくない微生物学的汚染物質にさらされること
  を制限するために設計され、建設されていない。
http://www.fda.gov/ICECI/EnforcementActions/WarningLetters/2016/ucm503559.htm

■WL:320-16-15 台湾の製造所の最終医薬品の重大なCGMP違反に関する2016/6/2付ウォーニング
レター
1.全ての成分、医薬品容器、容器蓋、中間材料、包装材料、ラベル、医薬品の承認または不承認
  をする責任と権限のある品質管理部門の制定を怠った。
2.製造する医薬品が均一性、含量、品質、純度を保っていることを保証するために設計された、
  バリデーションの実施計画・報告を含む、製造や工程管理の手順が適切に文書化されて制定
  されていなかった。
3.適切な安定性試験により裏付けされた使用期限に耐える医薬品である保証を怠った。
4.医薬品の安定性を評価し、適切な保管条件やリテストまたは使用期限を決定する目的でその
  試験結果を利用するために行う試験について、文書化された試験プログラムの制定と実施を
  怠った。
5.品質管理部門によってサンプリングされ、適切に試験または分析され、使用許可がされるまで、
  ロットの成分、医薬品容器、容器蓋の使用を差し控えることをしなかった。
http://www.fda.gov/ICECI/EnforcementActions/WarningLetters/2016/ucm505558.htm

■WL:320-16-16 台湾の製造所の最終医薬品の重大なCGMP違反に関する2016/5/27付ウォーニング
レター
1.品質管理部門が、医薬品の安全性、均一性、含量、品質、純度に影響のある手順や仕様の承認
  または不承認を怠った。
2.製造する医薬品が均一性、含量、品質、純度を保っていることを保証するために設計された、
  バリデーションの実施計画・報告を含む、製造や工程管理の手順が適切に文書化されて制定
  されていなかった。
3.品質管理部門によってサンプリングされ、適切に試験または分析され、使用許可がされるまで、
  ロットの成分、医薬品容器、容器蓋の使用を差し控えることをしなかった。
4.バッチ同士の均一性を保証するために策定された主生産と管理の記録の作成に関する文書化
  された手順の作成とその実施を怠った。
http://www.fda.gov/ICECI/EnforcementActions/WarningLetters/2016/ucm504571.htm

■WL:320-16-17 米国テキサスの製造所の最終医薬品の重大なCGMP違反に関する2016/6/13付
ウォーニングレター
1.無菌医薬品の微生物汚染を防ぐために設計された、無菌や滅菌工程のバリデーションを含む、
  適切な文書化された手順の制定とその実施を怠った。
  医薬品の製造、処理、包装、保持のため、適切に設計され、適切なサイズで、意図した目的の
  操作や、清掃・保守を行うために適切に設置された装置の使用を怠った。
2.適切なサイズの、特に定義されたエリアの中で作業を実施せず、また、分離もしくは境界が
  明確なエリアを持つか、または、無菌工程のための汚染や取り違えを防ぐため管理システムを
  持つことを怠った。
3.製造を行う人員が、汚染から医薬品を守るために適切な衣類を着ることを確実に行うことを
  怠った。
4.その使用目的を考慮すると微生物汚染の可能性上好ましくない成分について、使用前の微生物
  学的試験の対象とすることを怠った。
http://www.fda.gov/ICECI/EnforcementActions/WarningLetters/2016/ucm507554.htm

■WL:320-16-18 中国の製造所の原薬製造におけるCGMPからの重大な逸脱に関する2016/6/16付
ウォーニングレター
1.規定した仕様や規格の順守を保証するために必要な全ての試験から得られた完全なデータを
  含むラボの記録の保証を怠った。
2.全ての製造の逸脱が報告され評価され、重大な逸脱は調査され、その結果を記録することを
  確実に行うことを怠った。
http://www.fda.gov/ICECI/EnforcementActions/WarningLetters/2016/ucm508554.htm

■WL:320-16-19 中国の製造所の原薬製造における重大なCGMP違反に関する2016/6/21付ウォー
ニングレター
1.不正アクセスやデータの変更の予防の不履行、データの改ざんや削除を防ぐ適切な管理の
  提供の不履行
2.作業が行われた時に記録を作ることの不履行
http://www.fda.gov/ICECI/EnforcementActions/WarningLetters/2016/ucm508291.htm

■WL:320-16-20 中国の製造所の原薬製造におけるCGMPからの重大な逸脱に関する2016/6/22付
ウォーニングレター
1.活性成分の均一性と含量に関する医薬品の最終バッチの試験を怠った。
2.供給者の成分分析に頼っていた時に、少なくとも1回、成分の均一性試験の実施を怠った。
3.製造する医薬品が均一性、含量、品質、純度を保っていることを保証するために設計された
  製造と工程管理の手順を適切に文書化して制定することを怠った。
http://www.fda.gov/ICECI/EnforcementActions/WarningLetters/2016/ucm508876.htm


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まとめ
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12件のウォーニングレターの指摘内容をざくっと分類し、多かった順に並べてみました。
(内訳の番号は、ウォーニングレターのIDです)

1位 手順の順守:計9件
    内訳:320-16-09,10,12,13,14,15,16,17,20
2位 手順の文書化:計8件
    内訳:320-16-09,10,12,14,15,16,17,20
3位 データの完全性(不正アクセス防止、同時性を含む):計7件
    内訳:320-16-09,10,11,12,13,18,19
4位 逸脱・苦情の調査、是正処置:計5件
    内訳:320-16-10,11,12,13,18
5位 設備:計2件
    内訳:320-16-14,17
5位 汚染防止:計2件
    内訳:320-16-14,17
5位 品質管理部門:計2件
    内訳:320-16-15,16
5位 試験前の原材料の使用:計2件
    内訳:320-16-15,16

FDA査察の性質上、手順の文書化や順守に関連する指摘が多いのは当然として、データの完全性
に関する指摘が最近非常に多くなってきていることをあらためて実感する結果となりました。
これをもとに、自己点検をしてみるのもよいかもしれません。

最後までお読み頂き、ありがとうございました。
☆次回は、8/15(月)に配信させていただきます。


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