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2016.07.15

【WHOのGDRPガイダンス】ASTROM通信<102号>

 ~安全な医薬品の安定供給をご支援する~

こんにちは
ASTROM通信担当の橋本奈央子です。

蒸し暑い日が続いていますが、いかがお過ごしですか?

さて今回は、WHOが2016年5月に発行した最新のWHO technical report series(No. 996)の
中のAnnex 5 Guidance on Good data and record management practices:データ及び記録
の管理の手順に関するガイダンスについて取り上げたいと思います
このガイダンスのドラフトは1年前に出ていましたが、今回発行されたものはその最終版です。

WHO(世界保健機構)のガイダンスというと、あまり関係ないと思われるかもしれませんが、
昨今注目されているデータの完全性(Data Integrity)に関する欧米の解釈を理解するのに
役立つと思います。
最後までお付き合いいただければ幸いです。
※“長くてたまらん”という方は最後のまとめだけお読みください。

ガイダンス原文
http://www.who.int/medicines/publications/pharmprep/WHO_TRS_996_annex05.pdf?ua=1


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ガイダンスの概要
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Annex 5 Guidance on Good data and record management practices(データ及び記録の
管理の手順に関するガイダンス)は、下記の章立てでできています。
 1.     序文
 2.     本ガイダンスの目標と目的
 3.     用語
 4.     原則
 5.     適切なデータ管理を保証するための品質リスクマネジメント
 6.     マネジメントガバナンスと品質監査
 7.     契約組織、契約供給者、契約サービスプロバイダ
 8.     データ及び記録管理の教育
 9.     Good documentation practices(文書化の基準)
10. データの品質と信頼性を保証するためのシステムの設計とバリデーション
11. データのライフサイクルを通じたデータ及び記録の管理
12. データの信頼性問題への取り組み
引用文献・参考文献
Appendix 1

■1.序文 の概要
医薬品の規制において、開発、製造、包装、テスト、配送、製品の監視を行う際に様々な判断
のもととなるデータは、 ALCOA(Attributable:帰属性, Legible:判読性,
Contemporaneous:同時性, Original:原本性、Accurate:正確性)の状態であるのはもちろん、
完成していなければならない。
ALCOAの原則はデータの信頼性を保証するための手順に関するもので、新しいものでもレベルの
高いものでもないが、最近、GMP(Good Manufacturing Practice)、GCP(Good Clinical Practice)、
GLP(Good Laboratory Practice)の査察においてGDRP(Good Data and Record Management Practice)
に関する多数の問題が発生している。その原因として、製薬業界の選択と、最新のデータ管理戦略
とのギャップがある。製薬業界はコントロール戦略の最新化、最新の品質リスクマネジメント
(QRM)や適切な科学的原則を現在のビジネスモデルに適用することが必要である。
【※ALCOAについては9章に説明があります】

■2.本ガイドラインの目標と目的 の概要
2.1  このガイダンスは、現在のガイダンスとのギャップを埋めるために、既存の規範的な原則
     を統合し、詳細の例示的なアドバイスを与える。更に、これらのハイレベルの要件が実際
     に意味することと、要件に適合するために実施されるべきことを明確に説明する。
2.2 これらのガイドラインは、データ管理手順の適用を強調している。ガイドラインは、データ
     の信頼性を保証するために期待される全てのコントロールを定義しているわけではないので、
     WHOに存在しているガイドラインや、その他の関連する海外の文献と連携して考慮されるべき
     である。
2.3 このガイダンスは、進化的で説明的な性質を持つので、海外の規制当局(NRAs)を含む利害
     関係者から提供されるフィードバックと共に、ガイダンスの実装や有用性に基づき、定期的
     にレビュが必要である。

■3.用語 の概要
【※データ、監査証跡、バックアップといった言葉の説明がのっているので、参考になります。
  ここでは、私が個人的に興味のあった3つの用語をピックアップしておきます。】

data integrity(データの完全性)
 データの完全性とは、データが完全で、一貫し、正確で、信頼できて、確実なレベルにあり、
 データの特性がデータのライフサイクルを通じて保持されていることをさす。データは、確実な
 方法で収集され保持され、帰属的で、判読可能で、同時に記録され、原本または真正な写しで
 あり、正確でなければならない。データの完全性の保証には、適切な科学的原則と適切な文書化
 の基準を順守した品質とリスクの管理システムを必要とする。

hybrid approach(ハイブリッド手法)
 オリジナルの電子記録と紙の記録を組み合わせたコンピュータ化システムの使用をいう。
 ハイブリッド手法の例は、ラボの分析者が、オリジナルの電子記録を生成するコンピュータ化
 機器システムを使い、結果のサマリを印刷することである。ハイブリッド手法は、記録の保持
 期間を通して、紙と電子のような、全てのタイプの記録同士の確実な関連性を求める。
 ハイブリッド手法が用いられる場合、テンプレート、フォーム、マスタ文書のような電子文書
 が印刷できて入手可能でなければならない。

True copy(真正な写し)
 真正な写しとは、オリジナルの記録の全ての内容と意味が保たれた正しい完全なコピーである
 と承認するための検証と証明がされた、オリジナルのデータの記録のコピーをさす。
 電子データの場合は、全ての本質的なメタデータとオリジナルのデータの形式が適切に保たれて
いることを意味する。

■4.原則 の概要
4.1 GDRPは医薬品の品質システムの重要な要素であり、GXPの記録とデータが製品のライフ
     サイクルを通じて完全で信頼できることを高いレベルで保証するためには、システマ
     チックな手法が実施されなければならない。
4.2 データ管理プログラムは、以下のデータ管理のための一般的な原則に対応する方策や
     管理手順を含んでいなければならない。
4.3 紙と電子データの両方への適用性
   データの正当性の堅固な管理を保証するGDRPの要件は、紙にも電子データにも同等に
     適用する。
     GXPの対象である組織は、自動またはコンピュータ化から、手動または紙ベースのシステム
     に立ち戻ることが、堅固な管理の必要性を取り除くものではないことを十分承知してい
     ければならない。
4.4 委託者と受託者への適用性
   ガイドラインの原則は委託者と受託者に適用される。委託者は、受託者から提供された
     データを含むGXPデータに基づいてなされた全ての判断の信頼性について最終的な責任を
     負う。従って、委託者は受託者が提供するデータの正確性、完全性、信頼性を保証する
     ためのリスクべースの詳細な調査を行わなければならない。
4.5 文書化の基準
   断固とした判断をするために、判断を支えるデータは信頼できて完全でなければならない。
     GDocPは、紙と電子の全ての記録の完全な復元とGXP活動のトレースができることを保証し
     なければならない。
4.6 マネジメントガバナンス
   堅固で持続可能なデータマネジメントシステムを確立するために、経営陣が適切なデータ
     のマネジメントガバナンスプログラムを整えることが重要である。
4.7 品質文化
   経営者は、品質部門のサポートを受けて、基準に準拠しない記録や、誤りのある記録や
     データのリスクを最小化する作業環境を確立し維持しなければならない。品質文化の必須
     の要素は、序列に関係なく、組織の全てのレベルで、逸脱、過失、手抜かり、異常な結果
     を透明かつ率直に報告することである。
4.8 品質リスクマネジメントと適切な科学的原則
   安定した判断のために、適切な品質リスクマネジメントシステムと、信頼できるデータに
     基づいた適切な科学的・統計学的な原則に忠実であることが必要である。
4.9 データのライフサイクル管理
   安全性、効き目、品質を保証し向上するための製品の継続的な改良に、データが、
     生成・記録・処理・伝送・レビュ・報告・アーカイブ・検索される全てのフェーズで、
     データの完全性のリスクの管理を保証するデータ管理手法が必要であり、この管理プロセス
     は、定期的レビュの対象である。
4.10 データ管理を行うにあたっては、データの所有権、データ処理の説明責任、データの
      ライフサイクルを通じたリスク管理に取り組まなければならない。
4.11 記録の保管方法及び保管システムの設計
   記録が紙でも電子でも、その保管方法及び保管システムは、データの完全性の原則への
      適合を促進する方法で設計されなければならない。
4.12 設計の例
      ・指定時刻のイベントの記録に使用される時計の変更の制限
      ・GXPデータの記録(例:紙のバッチの記録、紙の事例報告フォームやラボのワーク
        シート)に使用する管理されたフォームの保証
      ・GXPデータの記録用のブランクペーパの発行の管理
      ・データ修正を防ぐためのシステムへのユーザアクセスの制限
    ・独立かつ適時のデータの記録を保証するための、秤のような装置につながった自動
        データ収集やプリンタの保証
    ・関連作業場所へのプリンタの近接の保証
     ・抜け道やサンプルの改竄の誘惑を最小化し、容易で効率的なサンプリング作業を可能
        にするためのサンプリング場所への容易なアクセスの保証
    ・データをチェックする従業員のオリジナル電子データへのアクセス保証
4.13 データや記録媒体は耐久性がなければならない。紙の記録の場合、インクは消せない
      ものでなければならない。温度感受性または感光性のあるインクや、その他の消せる
      インクは使われるべきでない。紙もまた、温度感受性または感光性のあるもの、容易に
      酸化するものであってはならない。
4.14 記録保管システムの維持
   紙の記録でも電子記録でも記録保管用のシステムは、科学及び技術の進歩を考慮しな
      ければならない。記録やデータの保管に使用されるシステム、手順、方法は、定期的に
      有効性をレビュされ、必要に応じてアップデートされるべきである。

■5.適切なデータ管理を保証するための品質リスクマネジメント の概要
5.1 GXPに該当する作業を実施する全ての組織は、適用可能なWHOガイダンスにより、品質マネジ
     メントシステムを制定し、実行し、保持しなければならない。システムの要素は、品質
     マニュアルまたはその他の適切な情報管理により文書化されなければならない。
5.2 品質マネジメントシステムの中で、データの完全性に影響のある事態を防止・検出し、
     データに基づき、リスクベースの科学的に堅固な判断をするために、適切なインフラ、
     組織構造、文書化された方針や手続き、手順、システムを構築しなければならない。
5.3 品質リスクマネジメントは、効果的なデータや記録の正当性を評価するプログラムの不可欠
     な要素である。データや記録の管理に割り当てられた力やリソースは製品品質のリスクに
     釣り合っていなければならない。
5.4 正しい手順を促し、記録やデータの完全性に関する問題の発生を防ぐ戦略が望ましく、
     それが最も効果や費用対効果が高い可能性がある。
5.5 記録やデータの完全性に関するリスクは、QRMの原則に従って、データのライフサイクル
     を通じて評価され、軽減され、連絡され、レビュされなければならない。
5.6 適切なQRMの原則に基づいて開発され実施されたデータマネジメントプログラムは、存在
     する技術を最大限活用することが期待される。

■6.マネジメントガバナンスと品質監査
6.1 堅固なデータの完全性の保証は、GXPの作業に求められる品質を保証するための技術的な
     運営やリソースの提供に関する全ての責任を持つ経営者から始める。品質システムに不可欠
     な要素として、データの信頼性への全社的な関与の確立と持続のためにリーダシップは
     不可欠である。
6.2 行動、手続/方針の考察、基本的な技術の管理は、適切なデータの管理の基礎となる。
     経営者はデータの完全性と、患者の安全や、質の高い製品やサービスに関する組織の評価
     を守るという役目の重要さの関連性を従業員に意識させるべきである。
6.3 経営者は、従業員が、データの信頼性問題を含む失敗やミスを伝えることを促す職場環境
     を作らなければならない。それにより、是正処置・予防処置がとられ、製品の品質や
     サービスが向上する。
6.4 マネジメントレビュと定期的な品質測定基準の報告は、目標の達成を容易にする。これは、
     最高経営者に直接接触でき、直接リスクを伝えることができる品質マネージャの指名を
     必要とする。それにより、経営陣は、いかなる問題にも気づき、それに対応するための
     リソースを配分することができる。
6.5 供給者の品質監査、自己点検、リスクレビュにより、データの信頼性に影響を与える
     システムとプロセスを改善する機会を確認し、経営者に伝えなければならない。経営者に
     よる、システムとプロセスの改善のためのリソースの配分は、データの完全性のリスク]
     を効果的に低減するだろう。
6.6 GXP組織により保有される全てのGXP記録は当局の査察を受ける必要がある。

■7.契約組織、契約供給者、契約サービスプロバイダ の概要
7.1 契約組織へのGXP作業の外注の増加は、これらの関係性を通して、完全で正確なデータや
     記録を保証し、役割や責任の分担を規定し、それを確実に維持する必要性が増す。委託者
     と受託者の責任として、データの完全性を保証するために守らなければならないプロセス
     に徹底的に取り組まなければいけない。
7.2 作業を外注した組織は、下請けの組織やサービスプロバイダを含む全ての報告結果の完全性
     に関して責任を負う。
7.3 この責任を果たすために、外注をした組織は、自身のシステムに加え、委託先のシステム
     の妥当性を、監査やその他の適切な手段により検証しなければならない。
7.4 審査し、定期的に契約組織またはサービスプロバイダの能力を評価する職員は、データの
     完全性を管理するシステムを評価し、正当性の問題を発見するために、適切な経歴、資格、
     経験を持ち、教育を受けていなければならない。
7.5 期待されるデータの完全性に管理戦略は、委託者と受託者の間の品質の合意、文書化された
     契約、技術的取り決めの中に含まれていなければならない。
7.6 データや文書の保持が第三者と契約されている場合、この取り決めのもとで、データの
     所有権や検索に特別な注意を払わなければならない。データが保持されている物理的な
     位置と、地理的に適用されうる法の影響が考慮されるべきである。
7.7 データベースを外注し、下請け業者が使われる場合、特に、クラウドベースのサービス
     プロバイダについて、委託者は、彼らが品質の合意に含まれ、適切に資格要件を満たし、
     GDRPの教育を受けていることを保証しなければならない。

■8.データ及び記録管理の教育 の概要
8.1 職員は、データの完全性の方針に関する教育をされ、それに従うことに同意していなけれ
     ばならない。
8.2 マネージャ、管理者、品質部門の職員を含む主要職員は、データの問題を防ぎ、発見する
     方法を教育されていなければならない。これには、構成設定の評価や、電子データや監査
     証跡のようなメタデータのレビュといった、データの生成、処理、報告に使用される個々
     のコンピュータ化システムに関する特別な教育が必要かもしれない
8.3 経営者は、職員を雇う時と、その後必要に応じて定期的に、全職員が、紙と電子記録の両方
     に関するGDocPを確実に行うために教育されていることを保証しなければならない。

■9.Good documentation practices(文書化の基準) の概要
9.1 適切なGXPデータの基礎的要素は、GDocPに従い、データのライフサイクルを通じて、データ
     の正確性、完全性、一貫性、信頼性に対するリスクを管理することである。職員は、データ
     の完全性を保証するために、紙の記録と電子記録の両方についてGDocPに従わなければなら
     ない。
9.2 Attributable:帰属性
   データがデータ発生源(人またはコンピュータシステム)により作成されたと識別できる
     情報が記録の中に記録されていること
9.3 Legible, traceable and permanent:判読性、追跡可能性、不変性
   データが読め、理解でき、記録の保持期間中に実施された全てのGXP活動が、いつでも、
     記録をレビュした人により完全に復元できるように手順や事象の順番の明確な状況を与える
     こと
9.4 Contemporaneous:同時性
   データが生成されたときまたは観測された時に記録されること
9.5 Original:原本性
   原本データとは、最初のデータ、または、収集した何も加工されていない原始データまたは
     情報を含む
9.6 Accurate:正確性
     正しく、真実で、完全で、根拠がしっかりして、信頼できること
9.7、9.8 省略

■10.データの品質と信頼性を保証するためのシステムの設計とバリデーション
10.1 記録保管の方法及びシステムは、記録が紙でも電子でも、基準への適合を促し、データの
      品質と信頼性を保証する方法で設計されなければならない。
10.2 電子データの完全性を保証するために、コンピュータ化システムはその使用と適用に応じた
      適切なレベルでバリデートされなければならない。バリデーションは、オリジナルの電子
      データ及びシステムから出るレポートの印刷物またはPDFを含む、データの完全性を保証
      するために必要なコントロールに対処しなければならない。
10.3 補足ガイドライン:バリデーション(WHO technical report series(No.937),
      2006, Annex 4)に、バリデーションで考慮すべき事柄のより包括的な説明が書かれている。
10.4 ユーザの関与
      ユーザは、データの完全性を保証する重要データとデータライフサイクルの管理を明確に
      するために、適切にバリデーション活動に関与しなければならない。
10.5 構成設定と設計管理
   バリデーション活動は、構成設定とGDocPの設計管理を確実にしなければならない。
10.6 データライフサイクル
   バリデーションはデータライフサイクル中のリスク評価と、リスクを防ぎ、発生を検知
      するためのコントロールを含む品質リスクを軽減する開発を含まなければならない。
10.7 SOPと訓練
   バリデーション活動は、GXPに使用するシステムのリリース前に、適切な教育と手順が開発
      されていることを保証しなければならない。
10.8 電子データと、それに関連した紙のデータに関する適切なデータ管理を保証するための
      バリデーション管理は、システムのタイプとその使用目的により適切と判断されたとおり
      に実施されなければならない。

■11.データのライフサイクルを通じたデータ及び記録の管理 の概要
11.1 データ処理は、データの完全性のリスクを適切に軽減し、管理し、継続的にレビュする
      ように設計されなければならない。
11.2 データライフサイクルのQRMは、データ処理の科学と技術と、それらの固有の制約の理解
      を必要とする。プロセスの理解と、QRMを含む科学的原則の適用に基づく適切なデータ処理
      の設計は、データの完全性の確実さを増し、効果的で効率の良いビジネスプロセスをもた
      らすことが期待される。
11.3 データ処理または特別なデータ処理のステップに一貫性がない、主観的である、先入観が
      ある、セキュリティ対策が実施されていない、不必要に複雑または冗長である、重複して
      いる、不明確である、理解されていない、ハイブリッドである、証明されていない仮定に
      基づいている、かつ/または、GDRPに忠実でない時、データの完全性のリスクが発生し、
      しかも、リスクが最も高くなる可能性がある。
11.4 適切なデータ処理の設計は、データ処理の各ステップについて、管理を保証し、強化する
      ことを考慮すべきである。
11.5 データ収集と記録
   全てのデータ収集と記録は、GDRPに従って実施し、重要なデータを保護し確認するために、
      リスクベースの管理を適用すべきである。
11.6 検討の例
   ラボの試験のためのサンプルの識別や、治験者の未加工のデータの記録等のデータの入力
      は、第二の人間によって照合されるか、バーコードのような技術的手段を通じて、データ
      の使用目的に応じて適切に入力されるべきである。
11.7 データ処理
   データの完全性を保証するために、データ処理は、客観的な方法、バイアスのない状態で、
      バリデートされた/適格と判断された または 検証された手続き、プロセス、方法、シス
      テム、装置を使って、承認された手順と教育プログラムに従って実施されるべきである。
11.8 検討の例
   GXP組織は、望ましい結果にむけて、テストをやめたりデータを加工したりすることに
      対する予防措置をとらなければならない。
11.9 データレビュと報告
   結果に一貫性があり、制定した基準に合っているかを判断するプロセスの完了後、データ
      はレビュされ、統計的に評価されなければならない。評価は、報告されたデータと共に、
      標準に合致しない、疑わしい、または、不合格のデータも含めた全てのデータを考慮に
      入れなければならない。
11.10 例えば、自己点検中にすべき重要な質問は次の通りである:自分は全てのデータを収集
       しているか?自分は全てのデータを考察しているか?もし、自分の判断過程でいくつか
       のデータを除外していたとしたら、それをする理由は何か?不合格データと合格と報告
       したデータの両方を含む全てのデータが保管されているか?
11.11 重要データや、紙の記録上で×印で消されたメタデータや、電子記録の監査証跡といった
       特定の記録の内容をレビュする手法は、適用されうる全ての規制要件に合致し、リスク
       ベースでなければならない。
11.12 傾向外試験結果や標準に合致しない結果が得られたらいつでも調査しなければならない。
11.13 データライフサイクルを通じて、工程の理解の向上とナレッジ・マネジメントや判断を
       容易にするために、データの継続的な監視をすべきである。
11.14 検討の例
    全てのデータが検討されることを保証するために、オリジナルの電子データのレビュには、
       無効なデータ、削除されたデータ、正しくないまたは不合格のデータが保存されている
       場所を含む全ての場所のチェックを含むべきである。
11.15、11.16 省略

■12.データの信頼性問題への取り組み の概要
12.1 データの正当性や信頼性に関する問題が発見されたとき、患者の安全と製品品質や、判断
      に使用される情報の信頼性への潜在的影響が重要であり、申請が最優先に調査されなけれ
      ばならない。調査の結果、もし患者、製品、報告した情報、申請書類に影響が見つかった
      場合は、当局に報告しなければならない。
12.2 調査は、事象のレビュと潜在的に関係する全てのプロセスを徹底的に確認するために、
      全てのデータのコピーがタイムリーに入手されることを保証しなければならない。
12.3 関係者は 失敗の本質と、どうしてそれが発生し、何をしたらそれを防ぎ、すぐに検知する
      ことができたかをより理解するために面接されるべきである。これには、監督者、品質保証
      及び品質管理の職員はもちろん、データの完全性の問題に関係した人との話し合いを含む
      べきである。
12.4 この調査は、確認された特定の問題に限定すべきでなく、今、信頼できないとわかった
      データやシステムに基づき行われた以前の判断の潜在的な影響もまた考慮すべきである。
      さらに、潜在的な経営者の圧力やインセンティブ、適切なリソースの不足を含む問題のより
      深い根本的な原因を考慮することが不可欠である。
12.5 是正処置・予防処置は確認された問題の対処だけに行うべきではなく、将来の再発のリスク
      を防ぐための経営者の期待の再整理や追加のリソースの配置の必要性を含む、より深い
      根本的な原因への対処はもちろん、影響がある以前の判断やデータに対しても行うべきで
      ある。

■Appendix 1
【※紙ベースのシステムと電子システムにALCOAの原則を導入した際の期待とリスクマネジメントの
  例が、Attributable:帰属性, Legible:判読性, Contemporaneous:同時性,
  Original:原本性、Accurate:正確性別に記載されています。
  例えば、Attributableに対する期待の場合
  紙の記録の帰属性:イニシャル、完全に手書きのサイン、印鑑、日付と必要であれば時間の使用
   電子記録の帰属性:データの生成・修正・削除を行ったユーザとリンクしたユニークなログオン
                      ユーザ、ユニークな電子署名(生体認証でも非生体認証でもいい)
                      ユーザIDと日付とタイムスタンプが保存された監査証跡、サインされた記録
                      としっかり永久にリンクした署名
    紙と電子の記録で求められる対応の違いがわかるので、とても面白いです。
   興味のある方は是非目を通しておかれることをお勧めします。】


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まとめ
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長くなってしまいましたが、いかがでしたでしょうか。
ガイダンスのタイトルからすると、ひたすら電子記録のことが書かれていると想像しがちですが、
中を読むと、GDRP(Good Data and Record Management)は、紙の記録にも電子データにも同等に
適用されると明記されています。
紙にも、データの完全性(Data Integrity)が求められることに注意が必要です。

もう1つ、注目したいのは、クラウドサービスに関する記述です。
7.7章にクラウドサービスのプロバイダにもGDRPの教育が必要であることが書かれています。
セキュリティ面の懸念やバリデーションのハードルのせいで、製薬業界にはまだそれほどクラウド
サービスが普及していないように思いますが、今後クラウドサービスの利用を検討される場合は、
このあたりのことも考慮する必要があると思われます。

最後までお読み頂き、ありがとうございました。
☆次回は、8/1(月)に配信させていただきます。

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【発行責任者】
株式会社プロス
ASTROM通信』担当 橋本奈央子

2016.07.01

【パンゲア作戦:違法な医薬品の販売取り締まりについて】ASTROM通信<101号>

 ~安全な医薬品の安定供給をご支援する~

こんにちは
ASTROM通信担当の橋本奈央子です。

すっきりしないお天気が続いていますが、いかがお過ごしですか?

さて今回は、2016年5月30日から6月7日にかけてインターポール(国際警察)主導で行われた、
インターネット上で行われる違法な医薬品の販売取り締まり(第9回パンゲア作戦)について
取り上げたいと思います。
最後までお付き合いいただければ幸いです。


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1.第9回パンゲア作戦について
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2016年5月30日から6月7日にかけて、毎年恒例のパンゲア作戦がインターポール(国際警察)
主導で行われました。パンゲア作戦は今年で9回目となる活動で、医薬品・医療機器のインター
ネット上での非合法な販売、違法・偽造の可能性のある医薬品・医療機器の流通と戦うことを
目的としています。この活動には、103か国から193の規制当局、税関、警察が参加した他、
インターネット業者やDiscover、G2、LegitScript、MasterCard、PayPal、VISAといった民間の
決済代行会社も協力しました。

<活動中に発見されたものの一例>
・FDA(米国食品医薬品局)は、米国内で違法に薬や化学物質を売っていた4,402のウエブサイト
 の閉鎖を要求し、未承認で不正商標表示のされた処方薬を提供しているウエブサイトの運営者
 に53通のウォーニングレターを発行した。
 また、FDAは、税関国境警備局と協力し、サンフランシスコ、シカゴ、ニューヨークの国際
 郵便施設(IMFs)を通じて、違法な医薬品を押収し、797の小包が国内に入ることを阻止した。
・ミャンマーの当局は不法な抗がん剤の製品を押収した。
・シンガポールでは、筋肉増強剤、睡眠薬、妊娠検査キット及び不妊治療薬、糖尿病検査
 キット、減量薬を回収した。
・ドイツでは、50,915個のカプセル、錠剤、およびアンプルが没収された。
・ハンガリーの警察では、車の後部座席及び予備のホイールの内部に隠されていた約65,000個
 の不安症の薬の錠剤を押収した。
・オーストリアでは、ハンガリーと同様の手口の麻薬の密売と、偽造の医薬品やステロイド剤
 を製造している地下の研究所が発見された。

パンゲア作戦の結果、世界中で393件の逮捕と、1220万個、値段にして5300万米ドル以上の
偽造・違法な医薬品の押収、27万個以上、値段にして110万米ドル以上の医療機器の押収が
行われました。

出典
 http://www.interpol.int/News-and-media/News/2016/N2016-076
 https://www.gmp-publishing.com/en/gmp-news/gmp-aktuell/operation-pangea-IX-illegal-drug-import-interpol.html
 http://www.fda.gov/NewsEvents/Newsroom/PressAnnouncements/ucm505921.htm


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2.日本国内の状況
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パンゲア作戦とは関係ないのですが、厚生労働省が2016年6月21日に、タイから個人輸入した
無承認無許可医薬品による健康被害(疑い)の発生について発表しています。
それによると、甲状腺機能亢進の症状がみられる30代の女性が、今年の1月にインターネット
経由でタイから個人輸入した「ホスピタルダイエット」という薬を服用していたことが判明
したそうです。

厚生労働省の健康被害情報・無承認無許可医薬品情報によれば、「ホスピタルダイエット」
は、平成 14 年から死亡事例を含む健康被害が複数の都府県から報告されていて、薬からは
向精神薬の検出がされているそうです。

参考
 http://www.mhlw.go.jp/stf/houdou/0000128218.html
 http://www.mhlw.go.jp/kinkyu/diet/jirei/030902-1.html


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まとめ
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グローバル化・インターネットや電子決済の普及により、危険な医薬品や偽造医薬品の違法
取引を発見することが非常に難しくなっているなかで、世界のさまざまな組織が協力し、
インターポール主導で年1回実施されるパンゲア作戦は非常に貴重な取り組みだと思います。

それにしても、このメールマガジンでパンゲア作戦を取り上げようと準備していた矢先に、
日本における無承認無許可医薬品の健康被害(疑い)について発表されて、あまりのタイ
ミングにびっくりしました。
毎年、日本もパンゲア作戦に参加していて、しかも、タイの「ホスピタルダイエット」と
いう薬に問題があること、平成14年から健康被害が発生していることが明らかになっている
のに、もう少し打つ手はなかったのだろうかと思ってしまいます。
ま、それだけ、違法取引を発見することが難しいということなのでしょう。
怖いことですが、今後ますます無承認無許可医薬品の問題が増えていくのかもしれません。

☆次回は、7/15(金)に配信させていただきます。

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