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2016.03.15

【ECで3月21日より発効する添加剤のリスクアセスメントについて】ASTROM通信<94号>

 ~安全な医薬品の安定供給をご支援する~

こんにちは
ASTROM通信担当の橋本奈央子です。

寒暖の差が激しい毎日が続いていますが、いかがお過ごしでいらっしゃいますか?

さて今回は、2016年3月21日からEU内で発効する“人用医薬品の添加剤のための適切なGMPを確認
するための様式化されたリスクアセスメントに関するガイドライン”を取り上げたいと思います。

このガイドラインは既に1年前に発出されていて、実は、本メールマガジンでも74号(2015/5/15
発信)にて取り上げています。

添加剤は、医薬品の有効成分ではありませんが、大部分の医薬品に添加されており、医薬品の品質
に影響を与えうるものであり、日本でも添加剤の管理を強化していこうとしています。

ヨーロッパに輸出をされていて本ガイドラインに未対応の製薬会社様は勿論ですが、輸出をされて
いない製薬会社様も是非、本ガイドラインを参考に添加剤のリスクアセスメントの実施を検討して
みてはいかがでしょうか?

最後までお付き合いいただければ幸いです。


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添加剤のリスクアセスメントについて
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2016年3月21日から、EU内で、 “人用医薬品の添加剤のための適切なGMPを確認するための
様式化されたリスクアセスメントに関するガイドライン”の新しい規制要件が発効します。
基本的に、医薬品製造販売業者が、医薬品の製造に使用された添加剤が安全であり、適切な
レベルのGMP標準が適用されていることを保証することを義務付けるもので、これらの要件に
対応するためには、全ての添加剤について、それぞれ、定められた様式でのリスクアセスメント
を実施する必要があります。

本ガイドラインは、発出から発効まで1年間という期間があったにもかからず、製薬会社の大半
は昨年の12月時点で、リスクアセスメントを開始していないか、新しい要件に気づいていなかった
ようで、対応が遅れている模様です。
このことは、IPEC(International Pharmaceutica Excipients Council:医薬品添加物国際協議会)
のヨーロッパ添加物フォーラムでも取り上げられたそうです。
IPECヨーロッパは、製薬会社が製品に使用する添加剤に関する適切なGMPを作ることを助けるため
のハウツー本をじきに発行するようです。

出典:
http://www.gmp-publishing.com/en/gmp-news/gmp-aktuell/risk-assessment-excipients-march-2016.html

以下にガイドラインの中味を記載しています。
長いのですが、リスク管理すべきポイントについて確認してみていただければと思います。


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ガイドライン訳
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序文
EC指令によれば、医薬品製造販売業者は、適切なGMPかを確認することにより、添加剤を医薬品用
に用いることが適切かを保証することが求められている。
人用医薬品の添加剤のための適切なGMPは、本ガイドラインに従って様式化されたリスクアセス
メントに基づいて確認されなければならない。
リスク評価には、添加剤の原料や、添加剤の使用目的、過去の品質欠陥の事例はもちろん、他の
品質システムの要件も考慮しなければならない。医薬品製造販売業者は、確認された適切なGMPが
適用されていることを保証しなければならない。医薬品製造販売業者は、講じた手法を文書化しな
ければならない。
添加剤のリスクアセスメント/リスクマネジメントの手順は、医薬品製造販売業者の医薬品品質
システムに組み込まれているべきである。
医薬品製造販売業者は、GMP査察官によるレビュに備え、製造所において、添加剤の適切なGMPに
関するリスクアセスメント/リスクマネジメントの文書を入手可能にしておかなければならない
継続的な改善を促進するために、リスクアセスメントから得られた情報について、添加剤メーカ
との共有が考慮されるべきである。
認可された人用医薬品に使用される添加剤について、本ガイドラインに提示されたリスクアセス
メントが2016年3月21日までに実施されなければならない。

1章 範囲
1.1
本ガイドラインは、人用医薬品の添加剤のための適切なGMPを確かめるためのリスクアセスメント
に適用する。EC指令によれば、添加剤とは、有効成分と包装資材を除く医薬品の物質である。
1.2
本ガイドラインは、そのままでは存在できない有効成分を安定させるために加えられた物質には
及ばない。

2章 添加剤のタイプと使用に基づく適切なGMPの規定
2.1
EU GMPガイドライン(EudraLex Volume4)Part3:GMP関連文書や、ICH Q9 品質リスクマネジメント
において、品質リスクマネジメントの原則及び手法は、添加剤を含む医薬品品質の様々な側面に
適用できるという記述がある。
2.2
これらの品質リスクマネジメントの原則は、添加剤の品質、安全性、機能のリスクを評価し、
添加剤を分類(たとえば、低リスク、中リスク、高リスク)するために用いられなければなら
ない。EU GMPガイドライン(EudraLex Volume4)Part3やICH Q9に挙げられている品質リスクマネジ
メントの手法(たとえば、ハザード分析と重要管理点(HACCP))は、この目的のために使用され
るべきである。
2.3
各製造業者から得た添加剤の使用について、医薬品製造販売業者は、添加剤の動物、鉱物、野菜、
合成品といった原料から、最終製品の剤型への混入にいたるまで、品質、安全性、機能のリスクを
特定しなければならない。検討範囲には下記を含まなければならない。但し、下記に限定しない:
(i)     感染性海綿状脳症
(ii)    ウイルス混入の可能性
(iii)   微生物またはエンドトキシン/発熱物質混入の可能性
(iv)    一般的に、原料由来(たとえばアフラトキシンまたは農薬)の不純物、または、処理の
    過程での不純物の生成、溶剤や触媒等の残留物のキャリーオーバーによる不純物の可能性
(v)     無菌と公言されている添加剤の無菌状態の保証
(vi)    専用の装置及び/又は設備がない場合、他の工程からの不純物のキャリーオーバーの
    可能性
(vii)   環境管理 及び 該当する場合はコールドチェーン管理を含む保管/輸送状態
(viii)  サプライチェーンの複雑さ
(ix)    添加剤の安定性
(x)     包装の完全性の根拠
2.4
さらに、個々の添加剤の使用と機能について、医薬品製造販売業者は次のことを考慮すべきである:
(i)     添加剤を含む医薬品の調剤の形と使用
(ii)    処方における添加剤の機能(錠剤の中の潤沢剤や液剤の中の防腐剤等)
(iii)   医薬品の配合の中の添加剤の割合
(iv)    患者の日々の添加剤の摂取量
(v)     添加剤に関係する、グローバル/ローカルな会社の既知の品質欠陥/不正な粗悪品
(vi)    添加剤が合成物かどうか
(vii)   医薬品の重大な品質特性に与える既知または潜在的な影響
(viii) その他、患者の安全性の保証に関係する、特定された、または、既知の要因
2.5
医薬品製造販売業者は、添加剤のリスク分析を規定し文書化し、添加剤の品質を管理し維持する
ために必要と思われるEU GMPガイドライン(EudraLex Volume4)のAnnex1 及び/又はAnnex2、
Part2(出発原料として使用される原薬に関する基本要求事項)等の要素を規定し文書化しなければ
ならない。
2.6
下記の要素は、添加剤の原料、サプライチェーン、その後の使用により異なる。しかし、少なく
とも、次のハイレベルなGMPの要素は、医薬品製造販売業者により考慮されるべきである。
(i)     効果的な製薬の品質システムの制定と実施
(ii)    十分な数の有能かつ適切に適格性が確認された人員
(iii)   製造及び品質活動に関して責任を負う経営陣及び監督職員の明確な職務記述書
(iv)    製造及び品質活動に関与する全スタップの訓練プログラム
(v)     意図した業務に必要と認められる健康、衛生、衣服に関する訓練プログラム
(vi)    意図した業務に適した建物及び設備の規定及び維持
(vii)   全ての工程及び種々の製造及び品質作業に関する規格書を管理する文書システム
(viii)完全なトレーサビリティを可能にする、出発原料、中間体及び添加剤を符号化し識別
    するシステム
(ix)    供給者の適格性確認プログラム
(x)     添加剤の品質管理のためのプログラム 及び 製造から独立した出荷可否判定責任者
(xi)    入荷した原料及び添加剤の記録の保持と、EU GMPガイドライン(EudraLex Volume4)Part2
    で求められる期間中の添加剤のサンプルの保持
(xii)   文書化された契約の対象となる外注作業を保証するシステム
(xiii)苦情を照査し、添加剤を回収する効果的なシステムの維持
(xiv)   変更管理及び逸脱管理のためのシステム
(xv)    自己点検プログラム
(xvi)   環境管理と保管状態

3章 添加剤製造業者のリスク分析の規定
3.1
適切なGMPの規定後、要求されるGMPと、添加剤製造業者の業務活動や能力とのギャップ分析が
行われなければならない。
3.2
ギャップ分析を裏付けるデータ/エビデンスを、査察または添加剤製造業者から受け取った情報
から得る必要がある。
3.3
添加剤製造業者の品質システム及び/又はGMPの評価と基準が考慮されるべきである。
3.4
要求されるGMPと添加剤製造業者の業務活動や能力の間に認められたいかなるギャップも文書化
されなければならない。更に、医薬品製造販売業者は、例えば、低・中・高といったリスクを
測定するために、添加剤製造業者の更なるリスク評価を実施しなければならない。この目的の
ためにEU GMPガイドライン(EudraLex Volume4)Part3、ICH Q9が用いられ、そこに挙げられて
いるHACCPのような品質リスクマネジメントの手法が使用されるべきである。
3.5
医薬品製造販売業者は、様々なリスク分析や、監査、文書検索、試験等の管理方法に基づき、
合格から不合格までの区分を持つ必要がある。

4章 適切なGMPの適用の確認
4.1
一度、添加剤のための適切なGMPと添加剤製造業者のリスク分析が定義されたら、継続的な
リスク照査が、次のようなメカニズムを通じて実行されるべきである:
(i)     受入した添加剤のバッチと関係のある欠陥の数
(ii)    それらの欠陥のタイプと重大性
(iii)   添加剤の品質のモニタとトレンド分析
(iv)    関連する品質システム及び/又は添加剤製造業者によるGMP証明の喪失
(v)     医薬品の品質特性の傾向の観察:これは、添加剤の性質と役割によるかもしれない
(vi)    添加剤製造業者において観察された組織上、手続上、または技術的なプロセスの変更
(vii)   添加剤製造業者の監査/再監査
(viii) アンケート
リスク照査の結果に基づき、制定された管理方法は照査され、必要に応じて改訂されなければ
ならない。

出典:
http://eur-lex.europa.eu/legal-content/EN/TXT/PDF/?uri=CELEX:52015XC0321%2802%29&from=EN


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まとめ
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本ガイドラインは、添加剤そのものの品質管理は勿論ですが、包装、保管・輸送、サプライ
チェーンの複雑さ等々、非常に広範囲のリスクマネジメントを求めているため、インパクトの
大きなガイドラインです。
しかし、EU内でもガイドラインの存在に気づいていなかった製薬会社様もあるくらいで、対応
の遅れている状況がうかがえます。これは、有効成分に比べて添加剤の品質管理が手薄になって
いるあらわれと見ることもできるのではないでしょうか。
日本でも添加剤の品質管理については同様のことがいえます。明確な規定がなく、製薬会社様は
自主基準に基づいて添加剤を管理している状況です。
昨今、海外では、添加剤の品質確保が強く求められてきています。この機会に是非、本ガイド
ラインを参考に、社内の添加剤の管理レベルを確認してみるのもよいのではないかと思います。


最後までお読み頂き、ありがとうございました。
☆次回は、4/1(金)に配信させていただきます。


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【発行責任者】
株式会社プロス
ASTROM通信』担当 橋本奈央子
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2016.03.01

【2019年ECで義務化の安全機能&Part11違反のFDAウォーニングレター】ASTROM通信<93号>

 ~安全な医薬品の安定供給をご支援する~

こんにちは
ASTROM通信担当の橋本奈央子です。

そろそろ早咲きの桜の便りが聞かれるようになってきましたが、いかがお過ごしでいらっしゃい
ますか?

さて今回は、ECとFDAに関する2つの話題について取り上げます。
1つは、ECで2019年から適用される安全機能について、もう1つは1月末にFDAの製造品質オフィス
よりインドの製薬会社に出されたウォーニングレターについてです

最後までお付き合いいただければ幸いです。


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2019年よりEC域内でヒト用医薬品の包装に義務化される安全機能について
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2016年2月9日、欧州委員会(EC)は、官報の中でDelegated Regulation(委任規制)2016/161を発表
しました。文書には、ヒト用医薬品の包装に関する義務的な”safety features”(安全機能)の
詳細について明確に書かれています。

この安全機能の背景には、偽造医薬品の問題があります。
偽造医薬品の流通を防ぐには、医薬品トレーサビリティが必要ですが、各国や地域が、独自の
トレーサビリティ認証方法を作れば、域内の医薬品の流通を制限し、サプライ・チェーンに関わる
コストを上げることになります。そのため、ユニークな識別子、安全機能の照合に関する手順、
安全機能に関する情報を蓄積するリポジトリ・システムの設立と管理といった、ヒト用医薬品の
安全機能に関する域内全体で通用するルールを作る必要があります

委任規制2016/161は、医薬品の包装についている改竄防止対策のされたユニークな識別子と、
リポジトリ・システムに蓄積された識別子との照合により、流通のはじめから終わりまで、医薬品
の包装の真正性と完全性を保証し、偽造医薬品の流通のリスクを下げることを目指しています。

具体的には、医薬品の個々の包装に、医薬品の製品コードとシリアルナンバーの組み合わせから
なるユニークな識別子を2次元バーコード化して印刷します。
製品コードはグローバルにユニークであることが前提となります。
シリアルナンバーは、偽造者に推測されないために、特別なランダム化ルールに従って生成され
なければいけません。
製品コードとシリアルナンバーの組み合わせは、少なくとも、製品の使用期限の少なくとも1年後、
または、販売または配送の少なくとも5年後の長いほうの期間中、ユニークであることが求められ
ます。

更に、完全性の証明された改竄防止装置を使用することにより、包装が開封または改竄されたか
どうかを明らかにし、包装の中味の真正性を保証する必要があります。

包装に付けられたユニークな識別子は、安全なリポジトリ・システムに保存された識別子の情報と
の比較により、真正性の保証に使用されることになります。

この委任規制2016/161は、2019年2月9日から適用されます。
また、ECは、委任規制2016/161の推進のために、ECはQ&A集を準備しています。

委任規制2016/161
 http://ec.europa.eu/health/files/eudralex/vol-1/reg_2016_161/reg_2016_161_en.pdf

Q&A集
 http://ec.europa.eu/health/files/falsified_medicines/qa_safetyfeature.pdf

EC域内にヒト用医薬品を輸出している製薬会社様には、インパクトのある規制です。
是非、委任規制2016/161及びQ&A集を一読されることをお勧めします。


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ウォーニングレター
WL:320-16-07 2016年1月29日 インドの製薬会社に対して(一部抜粋)
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2014年にインドの3ヵ所の製造所で行われた査察において、原薬及び最終医薬品の製造に関し、
CGMPからの重大な逸脱が確認された。

■原薬製造所A
1.データへの不許可のアクセスや変更を防いでいない。
保存された電子データの変更を防ぐための基本的なラボの管理をしていない状態で、データを、
 薬の品質評価や、仕様や基準に従っていることの判断に使用している
 ・正当な理由もなくサンプルの再試験を日常的に実施し、分析データを消去している
・製造所全体で、複数の試験装置の、複数の医薬品に関するシステムデータの改竄をしている
医薬品のクロマトグラフィー分析を実施するために使用するコンピュータ機器やコンピュータ化
 システムについて、ラボの分析者がPCの管理者アクセス権限を持ち、ローデータや試験結果を
 改竄するために利用している
合格結果を得るために分析者が処理パラメータを改竄することを防ぐためのコンピュータ化
 クロマトグラフ機器の管理が不適切である
・テストデータの日付の改竄を防ぐ管理が欠けている
これらの行為は貴社の分析ラボで当たり前になっていると思われる。査察中、分析者は査察官に
対し、“もし試験で不具合がみつかったら、我々はパソコンの日付/時間を戻し、合格結果が得ら
れるよう再分析する”と語った。分析者は、削除、上書き、分析パラメータの変更、パソコンの
日付/時間の設定の変更は、原材料、工程試験、最終原薬の試験に関して実施していると説明した。
貴社は、ラボのクロマトグラフ機器はもはや個々の分析者が自由にアクセスできる状態ではないと
語った。貴社は、製品品質に関して不正確な結論にいたるようなデータの改竄はなかったと回答
したが、貴社の回答には、総合的な評価や、コンピュータ化ラボシステムで生成されたデータの
回顧的レビュが不足している。

2.重大な逸脱を調査し解決することを怠っている
・品質部門は、コンピュータ化システムが品質関連データの改竄や削除を防ぐ管理が欠けている
 ことに気づいていたが、管理者は十分な是正処置を行わず、問題の再発を防がなかった。
 例えば、2013年8月5日にラボ内でデータの偽造や改竄が行われているという匿名のメールがあり、
 貴社はGC(ガスクロマトグラフ)装置、HPLC(高速液体クロマトグラフ)装置の調査を行ったが、
 2013年8月10日に開始した調査は不完全で、データの偽造や改竄の問題を解決しなかった。
1)GCの調査
貴社は、2013年1月~8月の分析に関する監査証跡をレビュし、複数の不完全なデータや分析が実施
保留となっている事例をみつけたが、逸脱は重要ではなく、逸脱に関する製品や患者のリスクは
ないと結論づけ、2013年11月27日は是正処置も予防処置もとらず調査を終了した。
査察官が同じデータと監査証跡をレビュしたところ、短時間に重大な不備や疑がわしい下記の
データを発見した。
ソフトウエアの管理者アクセス権限を使ったコンピュータ機器の時間や日付の変更
合格結果または望ましい結果を得るための試験用の処理パラメータの改竄
・進行中のサンプル分析の中断
・試験結果の原本を含むローデータファイルの上書きや削除
2)HPLCの調査
貴社は、2013年7月~12月のHPLCのデータを調査し、2014年3月に正しい文書化手順が守られず、
貴社の従業員は、Part11の要件を十分に理解していないと結論づけた。
我々の査察官も、同様の不備を発見した。貴社の独自調査で確認したのと同じHPLCの監査証跡
データをレビュし、科学的に正当な理由もなく、通常の注入のデータが操作されていることが
わかった。
2013年5月のHPLCのデータをレビュしたところ、やはり、操作されたり削除されたりしていたが、
貴社はこれらの不備や、製品品質への影響の可能性について独自調査を行わなかった。
貴社には堅固なCAPA(Corrective Action and Preventive Action:是正処置・予防処置)の
プログラムがない。健全な調査手順や、品質部門の活動の管理支援なしに、製品品質の不具合の
根本原因の特定はできない。

3.ラボの管理を文書化し、それに従うことを怠っている。また、ラボの手順の逸脱に関する
文書化や説明を怠っている。
・査察中、微生物ラボのデータの日付をごまかしたり、改竄したりしている多数の事例を発見した。
1)微生物ラボの温度記録のログブック
日々の冷蔵室の温度の記録の一部が、提出されていなかった。
また、査察中、査察官は、分析者が温度記録のログブックの日付のごまかし/後で入力している
ことを発見した
2)サンプルデータ
サンプリングの記録によれば、45個のサンプルが準備され培養されたことになっていたが、
そのうちの3つは培養されていなかった。
査察官の問に対し、分析者は、サンプルの試験がされたかのように記録を改竄したことを認めた。
査察官は、培養室内で117のサンプルに関する文書を確認した。しかし、74のサンプルは
培養室にあったが、43のサンプルはなかった。

■医薬品工場B
1. 仕様や基準に合っていることを保証するために必要な試験から得られるデータを含むラボの
記録の保持を怠っている。
・分析試験の結果がオリジナルのデータなしに記録されていた。
 また、サンプルの試験的な注入が多数回実施されていた。追加試験の結果は報告されていたが、
 もともと(試験的注入)の結果がなかった。これらの試験的注入の結果は後のテスト結果で
 上書きされていた。
 これらの試験的注入に関する調査はされず、文書も説明も提供されなかった。
 貴社の回答によれば、貴社は、プリントアウトしたデータのレビュとSOPの改訂に集中していた
 とのことだった。貴社の品質部門は、電子ローデータのレビュをしなかったので、データの書き
 換え、削除、ファイルの上書きを発見することが出来なかった。

■医薬品工場C
1.仕様や基準に合っていることを保証するために必要な試験から得られるデータを含むラボの
記録の保持を怠っている。
・査察中、QCラボは、サンプルの試験的な注入を実施したが、全てのデータを報告しなかった。
 貴社の品質部門は、出荷判定時、全ての分析データをレビュしなければならない。製品の品質に
 ついての完全で正確な情報がなければ、品質部門は、品質の仕様や基準に合った製品を出荷する
 ことを保証できない。貴社の回答は、貴社のラボシステムと手順がいかにデータの削除を防ぎ、
 製造所のマネージャが出荷判定やその他の品質関係の決定に関する全ての記録が完全で正確で
 あることをいかに保証するかを示していない。

2.貴社のラボ管理は、医薬品が同一性、濃度、品質、純度の基準に従っていることを保証する
ための科学的に妥当な試験手順を作ることを怠った。
・査察中の2014年11月24日、培地に黄色ブドウ球菌の増殖がみられたが、2014年12月7日の微生物
 培養に、同じ培地が使用され、再び黄色ブドウ球菌の増殖がみられた。
 貴社には、培地の供給者の妥当性の評価、ラボ管理の妥当性の評価、ラボ職員の逸脱を発見し
 是正処置を行う適性の評価が欠けている。

■結論
貴社は、これらの違反や逸脱の原因究明と再発防止、また、その他の違反や逸脱を防止する責任が
あります。貴社の品質システムは、データの正確性や完全性、また、データが医薬品の安全性、
有効性、品質を保証するために利用可能であることを保証していません。ウォーニングレターの
回答の中で下記の情報を提供してください。
・総合的な調査と評価
 方法論を述べてください。結果にはデータの完全性の欠陥の範囲と根本原因を含めてください
・リスク評価
 発見された欠陥が貴社の医薬品に関して利用可能な品質情報の信頼性や完全性にどれだけ影響を
 与えるかのリスクを評価してください。
・全体的な是正処置・予防処置の詳細な行動計画を含む経営戦略
 顧客との連絡、薬の改修、追加テストの実施や安定性プログラム対象ロットの追加、不備な状態
 で製造された医薬品の品質を保証するための他の措置について述べてください。また、手順の
 改訂、新しい管理の実施、職員の教育または再教育、または、データの完全性違反を含むCGMP
 からの逸脱の再発を防ぐためのアクション等、貴社の取る手段について示してください。

出典:
http://www.fda.gov/ICECI/EnforcementActions/WarningLetters/2016/ucm484910.htm


◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆
まとめ
◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆
1つ目の話題について。
日本では、医療用医薬品の取り違えによる医療事故の防止及び医療用医薬品のトレーサビリティの
確保、医薬品の流通の効率化の観点からGS1が義務化されましたが、ヨーロッパでは、偽造医薬品
のリスクを防ぐ目的で、EC域内の医薬品の流通のはじめから終わりまで、包装の真正性と完全性を
保証しようとしている点が興味深いです。ヨーロッパにおいて、いかに偽造医薬品が大きな問題に
なっているかがよくわかる話題だと思います。
この規制は2019年から適用されます。少し先の話ではありますが、ヨーロッパに医薬品を輸出され
ている製薬会社様は、対応の準備が必要ではないでしょうか。

2つ目の話題について
このメルマガで、たびたびウォーニングレターを取り上げていますが、最近、本当にPart11査察が
多くなっていると感じます。
査察官に“もし試験で不具合がみつかったら、我々はパソコンの日付/時間を戻し、合格結果が
得られるよう再分析する”と答えた分析者には驚かされますが、それはさておき、たとえ製造の
手順がしっかりしていても、コンピュータ化システムのデータの正確性、完全性が保証されていな
ければ、医薬品の品質は保証されていないと判断されるということを、よくよく肝に銘じておく
必要があると思います。


最後までお読み頂き、ありがとうございました。
☆次回は、3/15(火)に配信させていただきます。


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