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2015.10.30

【EU GMPガイドラインAnnex16改訂版について】ASTROM通信<85号>

 ~安全な医薬品の安定供給をご支援する~

こんにちは
ASTROM通信担当の橋本奈央子です。

そろそろコートが必要な季節になってきましたが、いかがお過ごしでいらっしゃいますか?

さて、2015年10月12日にEU GMPガイドラインAnnex16 “Certification by a Qualified Person
and Batch Release”
(クオリファイドパーソンによる出荷許可及びバッチの出荷)の改訂版が発出されました。
改訂版は、2016年4月15日から適用されます。
※クオリファイドパーソンは、PIC/S GMPガイドラインで言うオーソライズドパーソンに該当し
ます。

日本では、EU GMPガイドラインの内容と非常に近いPIC/S GMPガイドラインを活用していますが、
Annex16は活用の対象外とされているため、EUへの輸出をされていない製薬会社様にとって、今回
のEU GMPガイドラインAnne16の改訂の直接的な影響ありません
ただ、EU GMPガイドラインは、製薬業界の品質管理の方針や、ICH(日米EU医薬品規制調和国際会議)
の方向性も加味して改訂されていきますので、昨今のグローバルな出荷可否判定に関する動向を
知るのに役立つと思われます。

そこで、今回は、改訂版Annex16を抜粋して日本語訳したものを確認していきたいと思います。
長いのですが、最後までお付き合いいただければ幸いです。

EU GMPガイドラインAnnex16改訂版原文
http://ec.europa.eu/health/files/eudralex/vol-4/v4_an16_201510_en.pdf


◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆
Annex16の改訂理由
◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆
Annexは、医薬品のサプライ・チェインのグローバル化や新しい品質管理戦略の導入を反映させる
ために改訂されてきた。この改訂も、ICH Q8,Q9,Q10及び、製造及び輸入承認(MIA)に関する解釈
といった解説文書を実装している。


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EU GMPガイドラインAnnex16の概要
◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆
■範囲
Annex16は、
・クオリファイドパーソン(QP)による出荷許可
・販売許可(MA)を持つヒト及び動物用医薬品、または、輸出のために製造したヒト及び動物用
医薬品のEU内での出荷可否判定
に関するガイダンスである。このガイダンスの原則は、ヒト用の治験薬(IMP)にも適用される。

■一般原則
医薬品の使用期限、安全性、品質、効能についての最終的な責任は、医薬品市販承認取得者(MAH)
にある。しかし、QPは個々のバッチが販売許可(MA)またはGMPの要件に従って、出荷許可が行わ
れた場所で施行されている法律に従って製造されチェックされたことを保証する責任がある。
バッチの出荷は以下のプロセスからなっている:
i.定義された出荷判定の手順に従った製造及びバッチの試験の確認。
ii.バッチがGMP及び販売許可の要件に従っていることを示すことによるQPによる最終製品のバッチ
の出荷許可。
iii. QPによる出荷許可がされた最終製品の販売可能倉庫への移動または輸出。もしこの移動が出荷
許可の行われた場所とは異なるサイトで実施される場合、その手配は、サイト間の契約書にて文書化
されなければならない。

バッチの出荷判定の管理の目的は、主に以下のことを保証することにある:
i.バッチが、販売許可の要件に従って製造され、チェックされていること
ii.バッチがGMPの原則やガイドラインに従って製造され、チェックされていること
iii.その他の関連する法的要件が考慮されていること
iv.EudraLex Chapter8 Volume4 Part1に書かれている品質欠陥が起きた場合は、調査され、また
は、バッチが回収されること。また、出荷許可や確認には必ずQPが関わり、関連する記録が直ちに
確認できること

■1.出荷許可の手順
1.1 最終製品の各バッチは、EU内での販売、供給、または輸出のために出荷される前に、EU内の
QPにより出荷許可されなければならない。出荷許可は、製造業者及び/または販売承認で定義された
輸入業者のQPによってのみ実施できる。

1.2 バッチの出荷許可または確認に関係する全てのQPは、責任を負う工程についての詳細な知識
を持っていなければならない。QPは製品の特性、工程、技術的進歩、GMP上の変更についての自身
の継続的な教育について証明しなければならない。

1.3 製造、輸入、試験、出荷許可前のバッチの保管と、各工程でさまざまな場所があるだろう。
いくつのサイトがあるかに関わらず、最終製品の出荷許可を行うQPは、バッチがGMP、販売許可、
出荷許可が行われるサイトの加盟国の法的義務に従っていることを保証するために、正しいと認め
られた医薬品の品質システムのもとで全ての必要な工程が完了されたことを保証しなければならな
い。

1.4 EU内で行われる製造工程については、各製造所には少なくとも1人のQPがいなければならない。
1.4.1 バッチに関する部分的な製造作業のみを請け負う製造所では、その製造所のQPは、製造所で
請け負った作業がGMP及び製造所が責任を負うものとして記載された同意事項に従って実施された
ことを確認しなければならない。作業が販売許可要件に従っている確認をする責任をQPが負う場合
QPは販売許可要件の詳細にアクセスできなければならない。
1.4.2 最終製品の出荷許可を行うQPは、バッチの製造の全工程に関する全ての責任を担うか、また
は、製造の特定の工程について確認を行いバッチを管理する他のQPと責任を分担することができる。
同じ製造承認(MIA)取得者のもとで作業するQPや、異なるMIAの取得者のもとで作業するQPも存在
しうる。
1.4.3 バッチの規制準拠の証明に関わるQP間の責任分担は、全関係部門に正式に承認された文書に
て定義されなければならない。この文書には、バッチのGMPや販売許可要件に基づく逸脱の影響評価
に関する責任を明記しなければならない。

1.5 EU外で製造された医薬品に関する物理的な輸入と出荷許可は、バッチを販売可能倉庫へ移動す
る前に実施する。
1.5.1 本Annexの1章で述べた通り、出荷許可の作業は、サプライ・チェインの複雑さや、製造所の
グローバルなサイトであるかに関わらず、EU市場に出荷、または、輸出する全医薬品に適用される。
1.5.2 本Annexの1.4章に従い、最終医薬品のバッチの出荷許可をするQPは、EU内の他の製造所また
は販売許可内で定義された他の製造承認取得者の製造所で行われた製造や輸入に関する他のQPによる
確認や、他のQPとの決められた責任の分担を考慮しなければならない。
1.5.3 もし、バッチとサンプルが別々に送られてくる場合、保管や輸送の状態は、バッチの出荷
許可をする前にQPによって確認されなければならない。
1.5.4 最終製品の出荷許可をするQPは、各最終医薬品のバッチがGMPや販売許可要件に従って製造
されたことを保証する責任を負う。EUと輸出国の間に相互承認協定(MRA)や同様の協定がなけれ
ば、QPは販売許可要件に従った医薬品の品質を保証するために、品質分析、全ての有効成分の定量
分析、その他の試験または必要なチェックがなされたことを保証する責任を負う。
1.5.5 輸入製品のサンプリングは、バッチ毎に実施されなければならない。サンプルは、EU内に
到着後、または、製造業者の品質システム内で文書化され技術的に正当化されたアプローチに従っ
て第三国の製造所内でとられているかもしれない。サンプルに関する責任は、製造所間の文書化
された契約内で定義されていなければならない。EU外部でとられたいかなるサンプルも、バッチと
同等の輸送条件で出荷されなければならない。
1.5.6 サンプリングが第三国の製造所で行われる場合、このアプローチに関連するリスクを特定し
管理するための技術的根拠は正式な品質リスクマネジメント手順に含めなければならない。これは
完全に文書化され、少なくとも下記の要素を含んでいなければならない。
i. サンプルが、輸入するバッチからとられていることを保証するための、第三国でのサンプリング
活動を含む製造活動の監査、その後のバッチ及びサンプルの輸送段階の評価
ii.第三国でとられたサンプルが輸入バッチからとられているという結論を裏付けるための、データ
を含む包括的な科学的調査
この調査は少なくとも下記を含んでいなければならない。
・第三国でのサンプリング手順の記述。
・サンプルと輸入バッチの輸送条件の記述。いかなる違いも正当であることを説明されなければ
ならない。
第三国でとられたサンプルと輸入後にとられたサンプルの比較分析
・制限時間の定義を裏付けるために、サンプリングとバッチの輸入 及び データ生成 の時間的
隔たりの考慮
iii.第三国でとられたサンプルの継続的信頼性を示すための輸入後のサンプルの無作為の定期的
分析データの提供
iv.予期しない結果や仕様からはずれた結果のレビュ。これらは、第三国の製造所で実施されサンプ
リングの信頼性も含まれ、出荷許可が行われる製造所に関する情報は、監督当局に通知されるべき
である。
そのような事象は、潜在的な品質の欠陥とみなし、EudraLex Volume4 Part1の8章に従って調査
されるべきである。
1.5.7 輸入された異なる最終製品のバッチは、同じバルクのバッチから作られているかもしれな
い。異なる最終製品のバッチのQPによる出荷許可は、品質リスクマネジメントの原則に基づいて
正当性が文書化された最終製品の初回輸入バッチの品質管理試験の結果に基づいて行われるだろう。
これは、第三国でとられたサンプルの信頼性を考慮しなければならない。エビデンスは、少なくとも
下記の文書化された検証を通じて立証され、輸入された最終製品のバッチの完全性と同一性を保証
するために、利用できなければならない。
i.包装前のバルク製品の保管に関する要件が満たされていること
ii.最終製品バッチが、要求された条件のもとで保管され輸送されたこと
iii.委託品は安全な状態が保たれ、保管や輸送の間に改竄のエビデンスがないこと
iv.製品の正しい識別がされていること
v.当該バルクから得られた全ての最終製品のサンプルが試験されていること

1.6 QPは、市場出荷や輸出のための出荷許可に先立ち、以下の業務上の責任を個人的に保証しな
ければならない。
i.製造承認の条項に基づいて、出荷許可がされていること
ii. 国の法律による追加の義務や要件に従うこと
iii.出荷許可は記録簿またはそれと同等の文書に記録されていること

1.7 加えて、QPは、1.7.1から1.7.21が守られていることを担保する責任を負う。これらの業務は、
適切に教育された社員または第三者に委託されるだろう。QPは医薬品の品質システムに依存する
必要があるだろうが、QPはこの依存が正しい根拠に基づいていることを継続的に担保しなければ
ならない。
1.7.1 製造に関連する全ての活動や、医薬品の試験は、GMPの原則及びガイドラインに従って実施
されたこと
1.7.2 原薬及び医薬品の、出荷許可段階までのサプライ・チェイン全体が文書化され、QPが利用
可能であること。文書には、出発原料や医薬品の包装材料、及び製造工程のリスク評価を通じて
重要とみなされたその他の原料の製造所を含む。文書は、例えば、無菌工程の機器の部品や設備の
消毒のような、重要工程の下請け業者を含む業者が含まれた包括的な図の中にあることが望ましい。
1.7.3 製造所、医薬品の試験、原薬の製造所を含むサイトの全ての監査が実施され、監査報告は
出荷許可を行うQPが利用可能でること。
1.7.4 製造、分析、出荷許可を行う全てのサイトが対象とする分野の販売許可の条項に従っている
こと。
1.7.5 全ての製造の活動及び試験の活動は、販売許可要件の中で述べられた内容と一致している
こと。
1.7.6 バッチに使用される出発原料や包装材料の調達元や仕様は販売許可要件に一致しているこ
と。供給者の品質マネジメントシステムは要求された品質の原料のみが供給されたことを保証する
ものであること。
1.7.7  2001/83/EC指令、または2001/82/EC指令の範囲に含まれる医薬品について、その原薬は、
GMPに従って作られ、原薬のGDPに従って配送されたこと。
1.7.8 ヒト用医薬品の製造に使用される原薬の輸入は、2001/83/EC指令の要件に従っていること。
1.7.9 2001/83/EC指令の範囲に含まれる医薬品について、添加剤は、GMPに従って製造されたこと。
1.7.10 バッチの製造に使用される全ての原料のTSE(感染性海綿状脳症)ステイタスは販売許可
要件に従っていること。
1.7.11 全ての記録は適切な職員により完成され承認されること。要求される全ての工程内管理
及びチェックが実施されたこと。
1.7.12 全ての製造及び試験工程はバリデートされた状態をたもっていること。職員は、適切に
教育され、権限を与えられていること。
1.7.13 最終製品の品質管理(QC)試験データは、販売許可、または、承認されたRTRT
(Real Time Release Testing)プログラムで述べられた最終製品の仕様に従っていること。
1.7.14 当局の市販後の製品の製造または試験に関するコミットメントに対し対応したこと。現在
収集中の安定性データが、出荷許可を裏付けていること。
1.7.15 製品の製造や試験に対するいかなる変更の影響も評価され、追加のチェックや試験が完了
していること。
1.7.16 出荷許可された全てのバッチ(規格外や傾向外を含む)に関係する調査は、出荷許可を
裏付けるのに十分なレベルまで完了していること。
1.7.17 現在進行中のいかなる苦情、調査、回収も、疑義のあるバッチの出荷許可に関する条件を
打ち消してはならない。
1.7.18 必要な技術契約が存在すること。
1.7.19 自己点検プログラムが、機能し、行われていること。
1.7.20 配送や出荷に関する適切な手配が行われていること。
1.7.21  EU連合内の市場のヒト用医薬品について、2001/83/EC指令で言及された安全機能が梱包
に付けられていること

1.8 EudraLex Volume4,Annex2の生物活性物質やヒト用医薬品、放射性医薬品の製造等、ある種の
製品には特定のガイダンスが適用される。

1.9 並行輸入や並行流通の場合、すでに出荷されたバッチのいかなる再包装作業も、対象市場の
管轄庁により承認されなければならない
1.9.1 再包装されたバッチの出荷許可に先立ち、QPは並行輸入に関する国の要求及び並行流通に
関するEUのルールに従っていることを確認しなければならない。
1.9.2  再包装された最終製品のバッチの出荷許可を任命されたMIA取得者のQPは、再包装が、
再包装に関係する管轄庁とGMPに従って実施されていることを証明する。

1.10 QPの出荷許可の記録
1.10.1 医薬品の出荷許可は記録簿または、その目的のための同等の文書に記録されていなければ
ならない。記録は各製造バッチが2001/83/EC指令、2001/82/EC指令を満たすことを示さなければ
ならない。記録は、業務の実施にあわせて最新の状態に保たれ、EU加盟国の管轄庁により指定され
た最低5年の期間中、管轄庁が利用できる状態になければならない。
1.10.2 バッチが他の加盟国に入った時にさらなる管理をすることを免除されるために、バッチに
関する2001/83/EC指令または2001/82/EC指令で言及されている管理の記録または問題となっている
市場への出荷許可に関する同様のシステムに基づいた別の証明が、利用可能でなければならない。

■2.監査等第三者によるGMP評価への依存
いくつかの場合、QPは、製品が製造されたサイトの医薬品品質システムの的確な機能に依存する
だろう。それは、第三者によって実施された監査から得られるものかもしれない。
2.1 監査等第三者によるGMP評価への依存は、外注した活動を明確にし、合意し、管理するため
に、GMPガイドライン7章に従っていなければならない。
2.2 特別の注意点は、監査報告の承認で確認されなければならない。
i. 監査報告は、品質マネジメントシステムのような一般的なGMP要件、全ての関連する製造、及び、
原薬製造、品質管理試験、主要な包装等の供給品の品質管理手順を対象としていなければならない。
ii. 原薬や医薬品の製造及び品質管理がGMP、第三国での製造の場合は、2001/83/EC指令また
2001/82/EC指令と同等のGMPに従っているか判断しなければならない。
iii. 外部委託活動の場合、販売許可要件に従っていることを証明しなければならない。
iv. QPは、文書化された最終的な評価と第三者機関の監査報告の承認がなされていることを保証し
なければならない。QPは、監査結果及び外部委託活動の連続した依存についてのレビュを容易
する全ての文書にアクセスできなければならない。
v. 製品品質に重要な影響のある外部委託活動は、EudraLex Volume4 PartIIIに記載された品質
リスクマネジメントの原則に従って定義されなければならない。これにより、QPは関連するバッチ
の出荷許可の前に製品品質に重要な影響を与える監査結果に気づくことができる。
vi. 品質リスクマネジメントの原則に従って繰り返し監査が実施されなければならない。

■3. 予期しない逸脱の取り扱い
もし、原薬、添加剤、包装材料、医薬品の提供された登録済の仕様があって、販売許可要件及び/
またはGMPに記載された詳細から製造工程 及び/または分析管理手法に関して予期しない逸脱が
発生した場合、QPはバッチが販売許可要件やGMPに準拠していることの確認や、バッチの出荷許可
を検討するだろう。逸脱は徹底的に調査され、根本原因が正されなければならない。この場合、
継続する製品の製造に関する変動を提出することを要求されるかもしれない。
3.1 逸脱の影響は、GMPガイドラインPartIIIに述べられているような適切な手法を使い、品質
リスクマネジメントの手順に従って評価されなければならない。品質リスクマネジメントの手順は
下記のことを含んでいなければならない。
i. バッチの品質、安全性、効能に対する逸脱の潜在的影響の評価と、影響が無視できるという
結論
ii. 実施中の安定性プログラムに影響を受けたバッチを含める必要があるかの検討
iii. バイオ医薬品の場合、承認された手順からの逸脱が安全性、効能に対する予期しない影響を
与えるかの検討
責任がバッチの製造や管理に関する2人以上のQPの間で分担されうることを考慮し、医薬品の
バッチの出荷許可をするQPは、GMP及び/または販売許可要件の遵守に影響を可能性のある逸脱に
気づき、考慮しなければならない。

■4. バッチの出荷許可
4.1 医薬品のバッチは、上で述べたようにQPによる出荷許可後に市場への販売または供給がされ
なければならない。バッチの出荷が許可されるまで、バッチは、製造所内にとどめるか、または、
関連する管轄庁に承認されたサイトへ隔離された状態で出荷されなければならない。
4.2 許可されていないバッチが販売可能倉庫に出荷されないことを保証するための予防手段が、
隔離、ラベル表示、バリデートされたコンピュータ化システムの使用といった電子的な方法等、
物理的に設けられなければならない。出荷許可されていないバッチが、許可された場所から、他の
場所に移動された場合、時期尚早の出荷を避ける予防手段が存在しなければならない。
4.3 販売可能倉庫への移動を行うサイトへのQPの許可を知らせるために必要なステップは技術契約
の中で定義されなければならに。そのようなQPによるサイトへの通知は正式で明確であり、かつ、
EudraLex Volume4 PartIの4章の要件に従っていなければならない。


◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆
まとめ
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長い文章でげっそりされたかもしれませんが、いかがでしたでしょうか。
改訂版Annex16は品質リスクマネジメントを非常に意識した内容になっていると思います。
それから、気になったのは、現行Annex16ではQPの個人的責任について、5.1章、5.2章、5.4.1章、
5.4.2章、5.5.1章、5.6章、5.7章に、いろいろなケース分けをして書かれているのに対し、改訂版
Annex16では1.6章に簡潔にまとめられている点です。簡潔でわかりやすくなった分、曖昧さがなく
なり、QPの責任が重くなったように思いましたが、皆様はどう思われましたか?

最後までお読み頂き、ありがとうございました。

☆次回は、11/13(金)に配信させていただきます。


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【発行責任者】
株式会社プロス
ASTROM通信』担当 橋本奈央子
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2015.10.15

【WHOの非公開情報共有の話題 等】ASTROM通信<84号>

 ~安全な医薬品の安定供給をご支援する~

こんにちは
ASTROM通信担当の橋本奈央子です。

まだ10月とはいえ、年賀状やお節料理の広告を目にするような時期になってきましたが
いかがお過ごしでいらっしゃいますか?

さて、今回は、下記2つのテーマを取り上げたいと思います。
1)EC、EMA、WHOによる非公開情報の共有について
2)製薬業界向けデータセンター事業について

最後までお付き合いいただければ幸いです。


◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆
EC、EMA、WHOによる非公開情報の共有について
◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆
欧州委員会(EC)と欧州医薬品庁(EMA)は、世界保健機構(WHO)と、医薬品の
安全性、品質及び効力に関する非公開の情報を共有することで合意し、2015年9月1日より
共有を開始しました。非公開の情報には、欧州連合(EU)内で既に正当性が認められた情報
だけでなく、照査中の情報や、WHOにより適格性が確認される前の情報・照査中の情報も
含まれます。

この協力は、各組織間のコミュニケーションを強化し、より容易、かつ、より迅速に、
公衆衛生を守るための行動をとることを可能にします。また、この合意により、患者がEU内
の新しい革新的な薬にアクセスすることを早め、新薬の各組織による評価の重複を防ぎ、
承認を促進する等の効果が期待されます。

秘密厳守のもと、各組織は下記の情報を共有することになります。
・承認後の医薬品安全性監視データ
  特に、定期的な安全性の報告から生じた懸念のあるデータ、副作用に関するデータ 等
・科学的アドバイスの申請、希少薬の指示、販売承認に関する情報、重要な公衆衛生に関する
  承認後の活動の情報 等
・査察、製造設備、臨床研究に関するデータや関連するレポート

出典:
http://www.ema.europa.eu/ema/index.jsp?curl=pages/news_and_events/news/2015/09/news_detail_002396.jsp&mid=WC0b01ac058004d5c1

<コメント>
WHOといえば国連の専門機関ですが、今回の合意は、ECやEMAといった特定地域の組織
との非公開情報の共有という点で少し気になりました。もちろん、情報共有は有益なことでは
ありますがヨーロッパだけでなく、是非とも、世界中の当局と情報共有をしてほしいものです。


◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆
製薬業界向けデータセンター事業について
◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆
2015年9月25日付薬事日報に、大手IT企業によるデータセンター事業と製薬業界向けサービス
を一体化させた新しいクラウドサービス構想が掲載されていました

製薬業界におけるデータセンターの活用はなかなか進んでいないため、このニュースは非常に
興味深く、本メールマガジンでも取り上げることにしました。

まず、データセンターとは、顧客のサーバを預かり、インターネットへの接続回線や保守・
運用サービスなどを提供する施設を意味します。
「インターネットデータセンター」(IDC)とも呼ばれ、サーバを預かり回線や保守を提供
するサービスを「コロケーションサービス」とか「ハウジングサービス」と呼びます。また、
自らが用意したサーバを顧客に貸し出すホスティングサービスを提供する業者もあります。
データセンターは耐震性に優れたビルに高速な通信回線を引き込んだ施設で、自家発電設備や
高度な空調設備を備え、IDカードによる入退室管理やカメラによる24時間監視などでセキュリ
ティを確保しています。基本的にサーバの運用は顧客自身が行いますが、停止してないか
監視するサービスや、定期バックアップなどの付加サービスを提供しているところもあります。

出典:
http://e-words.jp/w/%E3%83%87%E3%83%BC%E3%82%BF%E3%82%BB%E3%83%B3%E3%82%BF%E3%83%BC.html

企業が自前でサーバを管理するとなると、空調のきいたサーバルームを用意したり、入退室の
管理をしたりと、手間やコストがかかります。
そのため、一般的には、自社にサーバを置かずに外部のデータセンターを活用する動きが活発に
なっています。しかし、製薬業界は、コンピュータ化システムバリデーション(CSV)等の
薬事規制要件に対応することが難しいため、他業界に比べデータセンターの活用が進んでいない
のが実状です。

今回の大手IT企業による製薬業界向けデータセンター事業は、これらの問題を解決するために、
・管理手順の説明資料や作業証跡の整備
・トラブル対応や信頼性保証業務求められる教育訓練文書の整備
・センター監査向けの自己点検シートの準備
・製薬企業の監査への対応
も含めたCSV対応サービスを提供するそうです。

<コメント>
これまで、CSVの点でデータセンターの利用に乗り気でなかった製薬業界も、CSV対応
サービスが提供されるようになると安心してデータセンターを利用できるのではないでしょうか。


◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆
まとめ
◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆
1つ目の、EC、EMA、WHOによる非公開情報の共有の話題、いかがでしたでしょうか。
せっかく、PIC/SやICH等により、各国の管理レベルが統一されつつあるので、
ヨーロッパだけでなく、世界中で情報共有をしてほしいものです。

2つ目のデータセンターの話題は非常に興味深いものです。
データセンターの利用にもコストがかかりますが、システム部門をもたない中小製薬会社様
の場合、自社でサーバを管理する手間やコストと比較検討してみるのもよいかと思います。
いずれにしても、CSV対応サービス付データセンターの登場により、製薬業界のデータ
センター活用が一気に進む可能性があります。

最後までお読み頂き、ありがとうございました。

☆次回は、10/30(金)に配信させていただきます。


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2015.10.01

【インド問題 & EU GMP Annex17諮問書発出】ASTROM通信<83号>

 ~安全な医薬品の安定供給をご支援する~

こんにちは
ASTROM通信担当の橋本奈央子です。

秋の気配がいよいよ濃くなってきましたが、いかがお過ごしでいらっしゃいますか?

さて、今回は、下記2つのヨーロッパネタでいきます。
1)7月にEMAがインドの後発医薬品の販売禁止を決定した件につい
2)9月15日に発出されたEU GMPガイドラインAnnex17(リアルタイムリリース試験)の諮問書に
ついて

リアルタイムリリース試験は、各工程でリアルタイムに品質を評価することにより製品の品質を
保証する方法で、リードタイムを短縮し効率的に出荷が行うことが期待されるため、今後ますます
普及していくと思われる興味深い話題です。

最後までお付き合いいただければ幸いです。


◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆
インドの後発医薬品の販売禁止
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2015年1月に欧州医薬品庁(EMA)は、インドのGVK Biosciencesで臨床試験が実施され欧州連合
(EU)内で販売承認されている約700の後発医薬品について、臨床試験の信頼性に関する懸念を
理由に、販売禁止(サスペンション)を勧告していました。
これを受けて本件の再調査を実施した結果、ヒト用医薬品委員会(CHMP)は、2015年5月21日
に勧告を採用し、ついに欧州委員会(EC)は、2015年7月16日に欧州連合各国に適用される法的
拘束力をもったサスペンションの最終決定を下しました。

これらの医薬品の一部は、もしそれらが患者にとって非常に重要であれば、いくつかの国の市場に
残る可能性があります。
医薬品が患者にとって重要かの判断は、欧州連合各国によって実施され、重要と判断された場合、
会社は追加の臨床試験データを提出するために12ヶ月の猶予を与えられることになります。

EMA通知
http://www.ema.europa.eu/docs/en_GB/document_library/Referrals_document/GVK_Biosciences_31/WC500191576.pdf
サスペンション対象医薬品のリスト
http://www.ema.europa.eu/docs/en_GB/document_library/Other/2015/05/WC500187078.pdf

2015年8月6日付フィナンシャル・タイムズによると、アメリカでも、昨今品質の懸念からインドの
製薬会社数社の輸入を禁止しているそうです。

インドの製薬産業は、この10年、安価な後発医薬品を大量生産することで急激にシェアを伸ばして
きましたが、数年前からその伸びが劇的に鈍っているそうです。今回のECの決定で、更に影響を
受けるかもしれません。

2015年8月6日付フィナンシャル・タイムズ
http://www.nikkei.com/article/DGXMZO90216560W5A800C1000000/

<コメント>
エコノミック・タイムズによると、インド政府は、国内の数千の製薬会社を説得して製造設備を
向上させ、PIC/S基準に合致させようとしているそうです。しかし、製造設備を向上させるだけで
は、品質に関する信頼を回復することは難しく、そう簡単に後発品のシェアを伸ばせないのでは
ないでしょうか。


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EU GMPガイドラインAnnex17(リアルタイムリリース試験)改訂案
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2015年9月15日、ECは2015年12月11日を期限とし、EU GMPガイドライン Annex17:リアルタイム
リリース試験改訂案の諮問書を発出し、コメントの募集を始めました。

以下に、Annex17の概要をまとめます。

■変更の理由
前のガイドラインは、無菌試験の省略があらかじめ定められ、バリデーション済の無菌条件が達成
されたことが証明できる場合、無菌試験を実施せずに、最終的製品の出荷可否判定を日常的に行う
パラメトリックリリースの適用、更に、プロセス解析工学(PAT)、クオリティ・バイ・デザイン
(QbD:設計による品質の作り込み)及び品質リスクマネジメント(QRM)の適用の推進に集中して
いた。
本ガイドラインは、ICH、Q8、Q9、Q10、およびQ11の文書にも反映される。また、製造工程で収集
された情報、製品知識、工程の理解とコントロールを通じて収集された情報に基づいた出荷判定シ
ステムに関する規制当局の期待を詳説している。

■施行期限
発行の6ヶ月後

1.原則
医薬品は承認された製品の規格に従わなければならない。そして、有効成分と/または最終製品の
一連のテストの実行により市場に出荷することができる。承認された特別な状況では製造工程、
製品の知識、工程の理解とコントロールに基づき、バッチリリースを行うことができる。

2.適用範囲
本文書は、重要なパラメータや関連する原料の属性が、所定の医薬品の最終製品のテストの代わり
に用いられるリアルタイム試験(RTRT)の適用の要件の要点を述べるものである。
このガイドラインの変更の主要な目的は、製造工程のいかなる段階、有効成分や中間体を含むいか
なるタイプの最終製品においてもRTRTの適用を具体化することにある。

3.リアルタイムリリース試験(RTRT)
3.1 RTRTのもと、工程内のモニタリングと管理の組み合わせが、最終製品のサンプルの
繰り返しの試験を実施しなくてもバッチリリースの妥当性を示す十分なエビデンスを提供しうる。
工程の評価の期間中、関連する規制当局との意思の疎通が考慮されるべきである。意思の疎通の
レベルは、適用されるRTRTの管理手順の複雑さのレベルによる。RTRT手順が制定され、
承認されたら、クオリファイドパーソンは、GMPと共に承認されたリリース基準に照らした工程デ
ータに基づきバッチを保証することができる。
3.2 RTRT戦略を設計する際、以下の基準が最低限制定され、基準が満たされることが望ま
れる。
i. 関連する工程内の原料の属性と工程パラメータのリアルタイムの測定と管理が、最終製品の属性
と一致することを予測する正確な判断材料とならなければいけない
ii. 最終製品の属性の代わりとして、関連のある評価される原料の属性と工程の管理の有効な組み
合わせが、原料、製品及び工程の知識に基づく科学的エビデンスと共に設定されなければならない。
iii. 組み合わされた工程の測定(工程パラメータと原料属性)や、製造工程において生成もしくは
収集されたいかなるテストデータも、RTRTやバッチの廃棄の決定のために揺るぎない根拠を提供
しなければならない。
3.3 医薬品の品質システムを通じて適切に統合され管理されたRTRTの基本計画の準備が整っ
ていなければいけない。最低限下記の内容を含んでいなければならない。
i. リスクアセスメントに関連する全工程の品質リスクアセスメント
ii. 変更管理プログラム
iiii. 管理戦略
ivi. 職員の教育プログラム
vi. 装置と設備の設計及び適格性評価プログラム
vii. 逸脱/CAPAシステム
viii. 工程開発及びバリデーションプログラム
viiii. 工程センサ/装置の不具合における危機管理手順
ixi. 継続的な製品の品質保証のためにRTRT計画の有効性を測定する定期的な照査/評価プロ
グラム。それは、重要な原料の属性や工程パラメータについての製品のライフサイクルを通じた
モニタリングプログラムを含む。
3.4 リスク評価では、リアルタイムリリース計画に含まれる重要な品質特性や重要な工程パラ
メータを確認しなければならない。既存の製品や工程のリアルタイムリリースの検討であれば、
過去のデータの評価が必要になるが、新しい製品や工程のリアルタイムリリースが検討された場合
は、工程開発の間にリスク評価が実施されなければならない。
3.5 1章に述べられた原則やAnnex15に基づくなら、変更管理プログラムは、リアルタイムリリ
ース計画の重要部分である。製品の製造や試験、または、設備のバリデートされた状態、システム、
装置や工程に潜在的に影響のある全ての変更は、品質リスクマネジメントの原則の正しい適用に
より妥当性を示し、完全に文書化されなければならない。変更が完了した後、期待される品質を
損なわないことを示すために、評価に取り掛からなければならない。先を見越したアプローチが
促されなければならない。
3.6 管理戦略は、工程のモニタだけでなく、管理状態を保持し、期待される品質の製品が常に
製造されることを保証するように設計されなければならない。管理戦略は、選択された工程内の
管理、原料の属性、日常的にモニタされる工程パラメータについて記述され、妥当性が示されなけ
ればならない。また管理戦略は、製品、処方、工程の理解に基づいていなければならない。
管理戦略は、動的で、品質リスクマネジメントのアプローチと知識管理の活用が求められる製品の
ライフサイクルを通じて変わるだろう。
管理戦略ではサンプリング計画、合格/不合格の基準を記述し、サンプリング計画に関連づけた
動作特性曲線(Operating Characteristic curve)または合格品質水準(AQL)と不合格品質水準
(UQL)を含めなければならない。サンプリング計画は製品を代表し、製品の従前の知識と、サン
プリング場所、サンプリング頻度、サンプリング数に関するリスク評価に基づいて設計されている
ことを保証しなければならない。設定された合意基準のような統計的方法論は、データの基本的な
分布を考慮したリスクベースのサンプリング計画を実行するために検討されなければならない。
3.7 職員はRTRTの技術、原則、手順について特別な教育をされなければならない。主要
職員は適切な経験と製品や工程への知識や理解を証明しなければならない。RTRTの実装の成功
のためには、統計的な工程の管理や統計的な品質の管理といった特別なテーマの経験を持った機能
横断型の/多くの専門分野にわたるチームからの情報が含まれなければならない。
3.8 RTRT計画の重要な部分は、設備、システム、装置の適格性評価と、分析的手法のバリ
デーションである。特に、適格性評価、バリデーション、インラインの管理、オンラインの分析
手法に注意を払うべきである。これらは、GMPガイドラインAnnex15に従って適格性評価とバリデー
ションがされなければならない。
3.9 いかなる逸脱や工程の不具合は徹底的に調査され、GMPガイドラインの1章に示した通り、
異常な傾向は適切に追及されなければならない。工程センサ/装置の不具合における危機管理手順
は有効でなければならない。
3.10 製品のライフサイクルを通して行われるデータ収集と分析による継続的な学習は重要で
あり、RTRTの実装のための品質システムの一部として設計されなければならない。新しい測定
ツールの使用と共に、信頼できるデータの傾向が観察されなければならない。製造業者は、傾向が、
どれくらい、または、もしかして、潜在的な品質の低下や異常値を示しているかを判断するために
これらのデータを科学的に評価しなければならない。
3.11 予想外の結果、または、承認されたRTRTアプローチによって判断された不合格の結果
により、製品の実際のテストを実施するのはよくない。例えば、分析装置の故障により、RTRTの
情報の一部が利用できない場合、出荷が目的の最終テストは、容認できる。(3.3参照)

4.パラメトリックリリース
4.1 この章では、最終製品の無菌試験を求めるのではなく、重要な工程管理の照査に基づいて、
最終滅菌された製品のバッチリリースを定めたパラメトリックリリースのガイダンスを提供する。
4.2 最終製品の無菌試験は、バッチサイズに対して少数のサンプルを使い、全てではなく一部
の微生物の成長を刺激する培地を使うため、汚染を検出することに限定される。よって、最終製品
の無菌試験は、滅菌保証システムの大きな不具合を発見する機会を提供するだけである。対照的に、
工程内管理から得られるデータや関連する滅菌パラメータのモニタリングによって得られるデータ
は、滅菌保証システムに関するより詳細な情報を提供することができる
4.3 パラメトリックリリースは、局方の要求事項に従い、最終容器で蒸気、乾式加熱、電離放
射線を使って滅菌が行われる製品に適用される。
4.4 このアプローチを利用するために、製造業者は、GMP遵守についての良好な経歴と、一貫性
のある工程管理と工程の理解を示すための揺るぎない滅菌保証システムを持っていなければならな
い。GMP遵守の評価の際、可能であれば、過去の無菌試験結果も考慮されるべきである。
4.5 滅菌保証システムは、少なくとも、安定した滅菌サイクルの開発、バリデーション、バイオ
バーデンの管理、環境モニタリングプログラム、製品の滅菌計画、装置、サービス、設備設計、適格
性評価プログラム、変更管理プログラム、職員の教育、具体化した品質リスク管理アプローチのよう
な重要工程パラメータの確認とモニタリングを含んでいなければならない。
4.6 リスク評価は、パラメトリックリリースの要件に不可欠で、全てのバッチの各ユニットの
無菌状態を達成するために、不具合のリスクを増す要因の緩和に重点的に取り組まなければなら
い。もし、新しい製品や工程のパラメトリックリリースが検討されたら、工程開発中にリスク評価
が実施されなければならない。既存の製品や工程のパラメトリックリリースが検討されたら、リスク
評価には、過去のデータの評価を含めなければならない。
4.7 滅菌保証に適任で経験のある職員(エンジニア、微生物担当者を含む)が、製造及び滅菌
の現場にいなければならない。パラメトリックリリースに関係する全ての職員の適格性評価、経験、
危機管理、教育は、文書化されなければならない。
4.8 製品及びその包装は無菌用で、製品の有効期限を通して無菌状態が保持されるよう設計され
なければならない。
4.9 滅菌保証に影響しうるいかなる変更提案も変更管理システムに記録され、1章及びGMPガイド
ラインAnnex15の要求に従って、適切な職員によって照査されなければならない。
4.10 加工済品と未加工品や、滅菌製品と滅菌待ち製品の取り違えのリスクを減らすために、
製品の分別保管計画が利用可能でなければならない。
4.11 事前滅菌製品のバイオバーデンモニタリングプログラムが、パラメトリックリリースを
支えるために開発されなければならない。サンプリングとモニタリングの頻度が定義され、実装され
なければならい。滅菌前のサンプリング場所は、最悪ケースのシナリオに基づき、バッチを代表する
ものでなければならない。バイオバーデンテストでみつかったいかなる微生物も、滅菌工程で耐性の
ある胞子形成細菌でないことが確認されなければならない。内毒素を生成する種の存在を確認する
ため、細心の検討がされなければならない。
4.12 製造環境や工程の設計は、製品のバイオバーデンが少なくとも以下のように効果的に管理
されていることを保証しなければならない。
-効率的な清掃、消毒、衛生化のための装置と設備の設計
-清掃、消毒、衛生化の詳細かつ効果的な手順が利用可能であること
-工程の定義とバルク流体及び充填容器の保持時間の限界
-可能であれば微生物の除去フィルターの使用
-職員の衛生、着衣、操作、操作の行為と手順が利用可能であること
-原料及び中間体の微生物の特性の定義
4.13 水溶液であったり、微生物学的に不安定であったりする製品に関し、化学的出発物質の
溶解のタイムラグ、製品の流体のろ過、滅菌は、内毒素の生成やバイオバーデンを最小化するため
に定義されなければならない。

○滅菌工程
4.14 完全にバリデートされた湿式加熱、乾式加熱、電離放射線による最終滅菌工程は、パラ
メトリックリリースを検討できる。
4.15 滅菌システムの設計が適切であることを保証するために、適格性評価及びバリデーション
は重要な活動である。ガンマ線照射装置を除き、パラメトリックリリースのバリデーションのために
微生物学的特性の適格性評価を推奨する。
4.16 定期的な装置の再適格性評価と工程の再バリデーションはGMPガイドラインAnnex15の要求
に従って実施されなければならない。
4.17 適切な滅菌モニタリング装置の使用はパラメトリックリリースの重要な要件であり、全て
のバッチの滅菌について使用されなければならない。測定器の校正に用いられる基準は特定され、
校正は国家又は国際基準に沿っていなければいけない。
4.18 重要な操作パラメータが制定され定義されなければならない。操作レンジは滅菌工程、
工程能力、校正の許容誤差限界、パラメータの重要度に基づいて作られなければならない。
4.19 滅菌設備の日常のモニタリングは、各滅菌サイクルにおいて、特定の工程に求められる
バリデートされた状態や滅菌保証レベルが達成されていることを示さなければならない。重要パラ
メータは、特に滅菌フェーズの間は、常にモニタされなければならない。
4.20 管理戦略手順では、重要な操作パラメータに合わない不具合は、不合格とすることを
明確にしなければならない。
4.21 滅菌サイクルの冷却段階では製品を微生物汚染のリスクにさらしてはいけない。
4.22 滅菌記録は全ての重要な工程パラメータを含んでいなければならない。滅菌記録は少なく
とも2つの独立したシステムにより、規格にあっていることをチェックされなければならない。これ
らのシステムは2人の人員或いはバリデーション済のコンピュータシステムと一人の人員でも可であ
る。
4.23 規制当局により一度パラメトリックリリースが承認されたら、バッチの出荷可否の判断
は、承認された規格と、重要な工程管理データの照査に基づかなければならない。所定のチェック、
変更、計画外及び所定の計画されたメンテナンス活動は、記録され評価され、製品の市場出荷前に、
承認されなければならない。パラメトリックリリースの規格に適合しないものを、最終製品の無菌
試験の合格によって覆してはならない。

原文
http://ec.europa.eu/health/human-use/quality/pc_quality/consultation_document_annex_17.pdf


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まとめ
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1つ目の話題のインドの後発医薬品の販売禁止の件、このメールマガジンでもよく取り上げるFDA
のウォーニングレターの内容を見る限り、やむを得ない気もしますが、インドから原薬等を輸入して
いる日本の製薬会社様は多いので、今回のECの判断は気になるところです。
ただ、ECの販売禁止の背景には、欧米の製薬企業とインドの製薬企業の間の知的財産権の対立も
絡んでいるようですので、そのあたりも踏まえて、今後の動向を見ていく必要があるのではないで
しょうか。

2つ目のEU GMPガイドラインAnnex17(リアルタイムリリース試験)改訂案の話題も非常に興味深い
です。
工程内でモニタリングすべき重要パラメータを決定し、それが最終製品の品質を左右するデータで
あることを示す科学的エビデンスを用意するのは難しいと思います。ただ、ひとたび重要パラメータ
が決定され、それが工程内でリアルタイムに測定・管理できれば、最終製品のサンプリング試験より
も確かな品質保証が可能となり得、出荷までのリードタイムも短縮できるというRTRTに対し、
どのようなパブリックコメントが、特に製薬の現場から寄せられるのか気になるところです。


最後までお読み頂き、ありがとうございました。

☆次回は、10/15 (木)に配信させていただきます。


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