ASTROM通信バックナンバー

月別アーカイブ

2015.08.14

【FDA発出、品質測定基準ドラフト版ガイダンス】ASTROM通信<80号>

 ~安全な医薬品の安定供給をご支援する~

こんにちは
ASTROM通信担当の橋本奈央子です。

立秋をすぎてもまだまだ暑い日が続いていますが、いかがお過ごしですか?

さて、今回は、FDA(連邦食品医薬品局)より2015年7月28日に発出された“Request for Quality
Metrics(品質測定基準に対する要求)”のドラフト版ガイダンスについて取り上げたいと思いま
す。

このドラフト版ガイダンスには、FDAがFD&C Act(連邦食品医薬品化粧品法)の704条に基づいて医薬
品製造業者等の経営者や作業者に対し、品質測定のための情報提出を要求する権限について述べら
れています。
FDAは、品質測定基準の活用により、監視査察の頻度の減少や、承認後の製造の変更に関する適切
な報告カテゴリの決定に役立てようとしています。
2015年9月28日まで、このドラフト版ガイダンスに対するパブリックコメントが募集され、その後、
本ガイダンスが最終決定される予定です。

コメント募集について
http://www.regulations.gov/#!documentDetail;D=FDA-2015-D-2537-0001
ドラフト版ガイダンス
http://www.fda.gov/downloads/Drugs/GuidanceComplianceRegulatoryInformation/Guidances/UCM455957.pdf

FDAがどのような情報提出を要求しようとしているのか、情報を提出しなかったらどうなるのか等、
興味深い内容が書かれています。また、FDAが活用しようとしている品質測定基準は、製薬会社様が
自社の品質を測定し継続的な改善を行ううえでも活用できそうです

最後までお付き合いいただければ幸いです。


◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆
品質測定基準 及び ガイダンスの概要
◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆
品質測定基準は、製薬業界の中で、品質管理システムや工程をモニタし、医薬品製造の継続的な
改善努力を行うために用いられているが、FDAも下記の目的に用いることができる。
・規定や査察方針、医薬品製造のリスクベースの査察計画を作る
・将来の医薬品不足を予測し、それを緩和する
・製薬業界に、医薬品製造のための最先端の革新的な品質マネジメントシステムを実装するよう
促す

ガイダンスでは、FDA医薬品評価センター(CDER)やFDA生物製剤評価センター(CBER)が、継続的
改善と製薬業界の革新を支援するための方針や手順を確かなものにするために、どのようにデータ
を収集し、品質測定基準を使おうとしているかについて説明している。


◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆
背景
◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆
■規制当局による薬の品質の監視の現代化
FDAの品質監視に対するアプローチは近年進化している。CDERとCBERは、公衆の健康を守り、促進
するミッションの一環として、医薬品製造の現代化をサポートするために全力を傾けている。
これらの努力は、医薬品不足軽減のための長期的な戦略にもなるだろう。
2002年にFDAは、現代的でリスクベースの医薬品の品質評価システムの実装を促進するために、
“医薬品の21世紀のcGMP:リスクベースドアプローチ”というタイトルの構想を立ち上げた。
この構想は、規制当局による点検、規定、製薬業界の継続的改善と革新をサポートするための査察
方針を含むいくつかの目標と共に発表された。それ以来、CDERは、規制当局による大がかりな管理が
なくても、高品質の医薬品を確実に製造する、最大限に効果的で機動的で柔軟な製造部門の構想を
促進してきた。
FDAは、本ガイダンスの最終版発出時に、要求したデータを使って算定する品質測定基準を選ぶため
に以下の判断基準を用いた。
(1)客観的であること
(2)FD&C Act704条に基づいていること
(3)製品や工程の品質、製造業者による品質に対する責任、PQS(Pharmaceutical Quality System
   :医薬品の品質システム)と結びついた健全性(すなわち、効果的に機能している)の総合的な
   状態を評価するのに有効であること
(4)必要以上の報告の負荷を避けること

品質測定基準プログラムは、リスクベースの査察計画のスケジューリング及び医薬品不足の潜在的な
緩和に対する取り組みにおいて、重要な役割を演じることが期待されている。


◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆
品質データの報告と、品質測定基準の算定
◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆
A.誰が報告するか?
薬の製造、製剤、増殖、配合、加工に従事する施設の経営者または作業者は、FDAにデータを報告し
なければならない。
1.報告対象の施設
FDAは、1)FD&C Act 510条に基づき、FDAにより品質測定基準データの記録を要求されている施設
及び2)対象となる薬またはその薬に用いられる原薬の製造、製剤、増殖、配合、剤形の加工に従事
する施設の経営者または作業者に要求して品質測定基準データを得ようとしている。これらの要求
の対象となる薬は、下記の通りである。
・FD&C Act 505条または公衆衛生法351条に基づき許可申請をしなければいけない薬
・OTC医薬品承認基準に従って売買されている薬
・売買されている未承認薬
要求は、受託研究所・受託滅菌業者・受託包装業者、及び、対象の薬の製造、製剤、増殖、配合、
剤形または原薬の加工に従事する施設を対象とするが、これだけに限定はされない。
賦形剤、容器蓋の製造業者は、対象としない。

2.報告者
FDAは、対象となる薬の剤形毎・原薬毎に、対象となる施設から、品質測定基準データを含む報告の
提出を求める予定である。FDAは、薬の品質を保証するため、薬の製造業者を監視し管理する責任を
負う。FDAは、施設が、報告を提出するために必要とされる全ての品質測定基準データを持ち、また
は、アクセスできる状態にあると信じている。
FDAでは、剤形または原薬に関する報告において、製品の監視をする責任と権限を持った品質管理部
門が、提出する報告情報を集めるのに最もよい立場にあると考える。
FDAは、FDAに登録の義務はないが、米国が薬を輸入するにあたって報告対象の薬の剤形や原薬に関す
る品質測定基準データを持つ海外の施設が存在することを認識している。この場合、FDAは、704(a)
(4)条に基づく品質測定基準データの提出要求はしない。代わりに、国内の施設に対し、海外の施設
から得た、もしくは、得ることのできる品質測定基準データの提供を促すため、海外の施設のデータ
も、提出情報の中に含まれる。海外の施設のデータの欠如はFDAのリスクベースの査察スケジュール
において、当該施設に予測されるリスクを高め、査察の可能性を高めるだろう。逆に、海外の施設か
らの信頼性のあるデータの報告は、当該施設に予測されるリスクを低下させ、査察の可能性を減らすだろう。
FDAは、海外の施設の製造及び製品品質の状態について提出される情報を評価し、将来のより広範囲
のデータの提出を要求するかどうか検討する予定である。

B.FDAが算定しようとしている品質測定基準
FDAが業界の報告に基づいて算定しようとしている品質測定基準は、客観的で、FD&C Act704条に基づ
く査察の対象であり、PQSの総合的な評価に役立つもので、合理的な方法で施設に負荷をかけずに報
告できるものになった。
FDAはこれらの品質測定基準が、それとは別に得られるデータと共に、運用上の信頼性や品質文化に
関する重要な情報をもたらすと信じている。

FDAは、各製品や施設に関する以下の品質測定基準を算定しようとしている
・ロット合格率=1-x
(x=規格に不合格のロット数÷同じ施設の同じ時間枠の中で製造業者が商用に製造したロット数)
・製品品質苦情率=製品品質に関する苦情数÷同じ時間枠の中で出荷されたロットのトータル数
・無効となったOOS(Out-of-Specification)率=施設で無効とされた最終製品のOOS試験結果の数
 ÷OOS試験結果のトータル数÷施設で同じ時間枠の中で実施された試験のトータル数
・オンタイムの年次製品照査(APR:Annual Product Review)または製品品質照査(PQR:
 Product Quality Review)率=施設で年次照査実施予定日の30日以内に実施されたAPRまたはPQR
 の数÷施設で製造された製品の数

C.報告される品質データ
前述のBで、FDAが算定しようとしている測定基準と、測定基準を算定するために用いられる関連
データについて述べてある。FDAは、品質測定基準を自身が算定するのをサポートするために、
製品や施設に関するデータの報告を促している。
このドラフト版ガイダンスで提案されている要求は、FD&C Act704条に基づいて査察する情報で
あり、それらは、cGMPに準拠した医薬品製造の過程で作られ保持されているものであり、また、
21CFR 211に従って保持されているものである。
FDAは、容易にアクセスしやすい形式の、集計された下記のようなデータが報告されることを求める。
・商用に製造された製品のロットの数
・製造中または製造後に不合格となった、規格不合格製品のロットの数
・30日を超えて廃棄保留となったロットの数
・安定性試験を含む製品としてのOOSの数
・製品の出荷判定及び安定性試験が実施されたロットの数
実験室のエラーにより無効となった製品の出荷判定及び安定性試験におけるOOSの数
・受領した製品品質の苦情の数
・流通または製造の次の段階へリリースされたロットの数
製品の年次照査実施予定日の30日以内に完了したAPRまたはPQRの数
・製品に関して必要なAPRまたはPQRの数

D.品質データをFDAに報告する方法
FDAは、データの提出依頼を出した後1年間の品質測定基準データを報告するよう要求する予定で
ある。報告は報告期間の最終日の60日以内に提出されなければならない。たとえば、要求が2016年
10月1日から2017年9月30日の期間のデータであった場合、データの報告は2017年の12月1日までと
なる。報告は、3ヶ月ごとに分割されたデータとなるよう要求する予定である。


◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆
品質測定基準の無報告の影響
◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆
要求された品質データの報告の不履行は、FDAの査察優先度の判断において、施設に予測される
リスクを高め、より早い時期の査察の実施につながりうる。更に、FD&C Act 704条(a)(4)(A)に
基づいて必要とされる報告のない施設に関連する製品は、501条に基づき不良とみなされ、強制
行動が行われるであろう。


◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆
まとめ
◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆
品質測定基準としてあげられているデータは、かなり表面的な数値で、これを見ただけでどこまで
施設や製品の品質レベルが把握できるのかは少々疑問です。
しかし、そうは言いつつ、異なる施設や異なる製品の品質レベルを共通の方法で数値化できる点で、
品質測定基準は非常に面白いのではないでしょうか。

但し、FDAが求めるデータの提出を怠った場合、査察頻度が上がる可能性があるようなので、データ
報告対象となる製薬会社様は正式版ガイダンスの発出に十分注意が必要と思われます。


最後までお読み頂き、ありがとうございました。
☆次回は、9/1 (火)に配信させていただきます。


◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇

★弊社サービスのご案内
http://e-mktg.jp/~pros/_dm/cc.php?ccd=3.677.430

★ブログ毎日更新中!
◆ PROS.社長の滋養強壮ブログ
http://e-mktg.jp/~pros/_dm/cc.php?ccd=1.677.430
◆ 営業ウーマンの営業報告ブログ
http://e-mktg.jp/~pros/_dm/cc.php?ccd=2.677.430
※URLクリック数の統計をとらせていただいております。

本メルマガは、名刺交換させていただいた方に、毎月1日、15日(土日祝日に重なった場合
は前日)に配信いたしております。

今後このような情報が必要ない方は、お手数ですが、こちらに配信停止依頼のメールを
お願いいたします。
hashimoto@e-pros.co.jp

【発行責任者】
株式会社プロス
ASTROM通信』担当 橋本奈央子
info@e-pros.co.jp