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2015.04.15

【EU GMP 新Annex15発出!】ASTROM通信<72号>

 ~安全な医薬品の安定供給をご支援する~

こんにちは
ASTROM通信担当の橋本奈央子です。

ゴールデンウィークが近づいてきましたが、いかがお過ごしでいらっしゃいますか?

さて今回は、2015年3月31日に発出されたEU GMP ガイドランAnnex15(Qualification and
Validation:適格性評価及びバリデーション)について取り上げたいと思います。

このAnnex15は、2014年2月6日にドラフト版が出されていましたが、今回出たのは最終版で、
2015年10月1日から施行されます。
2014/03/14 発行のASTROM通信<46号>で取り上げたドラフト版と今回の最終版で、大きな
変更はないのですが、現Annex15と比べると内容もボリュームもかなり変わっています。

ご存知の通り、EU GMPガイドラインは、PIC/S GMPガイドラインのベースになっていて、EU GMP
ガイドラインが改訂されれば、いずれはPIC/S GMPガイドラインも改訂されます。
ということで、EU圏に輸出をされていない製薬会社様も、この機会に是非新Annex15最終版の
内容をご確認ください。

新Annex15原文
http://ec.europa.eu/health/files/eudralex/vol-4/2015-10_annex15.pdf


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現Annex15と新Annex15(2015年10月1日施行)の目次の比較
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現Annex15が11ページであるのに対し、新Annex15は16ページとボリュームアップしました。
目次を比較すると、内容がかなり変わっていることがおわかり頂けると思います。

■現Annex15の目次 <2001年9月施行目次>
1.適格性評価及びバリデーション
2.バリデーション計画
3.文書化
4.適格性評価
   設計時適格性評価
   据付時適格性評価
   運転時適格性評価
   性能適格性評価
   施設、システム、設備の適格性評価
5.プロセスバリデーション
   予測的バリデーション
   同時的バリデーション
   回顧的バリデーション
6.洗浄バリデーション
7.変更管理
8.再バリデーション
9.用語

■新Annex15の目次
原則
一般
1.適格性評価及びバリデーションに関する組織と計画
2.VMPを含む文書化  注)VMP:Validation Master Plan:バリデーション・マスタ・プラン
3.設備、施設、ユーティリティー、システムの適格性評価の段階
   ユーザ要求仕様(URS)
   設計時適格性評価(DQ)
   工場受入試験(FAT)/現場受入試験(SAT)
   据付時適格性評価(IQ)
   運転時適格性評価(OQ)
   性能適格性評価(PQ)
4.再適格性評価
5.プロセスバリデーション
   一般
   同時的バリデーション
   従来のプロセスバリデーション
   継続的なプロセス検証
   ハイブリッドアプローチ
   ライフサイクルを通じたオンゴーイングのプロセスバリデーション
6.輸送の検証
7.包装バリデーション
8.ユーティリティーの適格性評価
9.テスト方法のバリデーション
10.洗浄バリデーション
11.変更管理
12.用語


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新Annex15のポイント
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現Annex15から変更された部分の中で重要と思われるポイントをピックアップします。
1.適用範囲
現行のAnnex15は、医薬品を作る施設、システム、設備、工程
(facilities, systems, equipment and processes)を対象としていますが、新Annex15では、
ユーティリティー(utility)が追加され、バリデーション範囲が、工場のインフラ的な部分に
まで及んでいます。
具体的には、新Annex15の8章に、「ユーティリティーの適格性評価」という新たな章が設けられ
ています。
また、補足的オプショナルガイダンスという表現で、原薬も対象としている点に注意が必要です。
※原薬は、2014年のドラフト版Annex15にも記載がなく、今回新たに追加されています。

2.回顧的バリデーション
冒頭の「一般」の記述の中に、回顧的バリデーションはもはや容認可能なアプローチとはみなさ
ないと明記されています。
※日本の2013年版GMP事例集GMP13-76にも、『回顧的バリデーションは、バリデーシヨン基準を
 導入した際に暫定的に認められたものであり、現在、回顧的バリデーションを行う機会は原則
 ない。』という記述があります。
 化学品を医薬品として取り扱う等の特例はありますが、基本的には、回顧的バリデーションを
 バリデーションとして認めていません。
 本来バリデーションをすべきなのに未実施で、指摘されたら回顧的バリデーションを実施すれば
 いいと考えている製薬会社様が時々おありですが、国内の事例集でもグローバル基準でも、
 回顧的バリデーションは認められなくなっている点にご注意ください。

3.ICH Q9の影響
ICH Q9の影響で、「ライフサイクル」、「品質リスクマネジメントシステム」という言葉が登場
します。
・ライフサイクルを通じた適格性評価とバリデーション(一般、1.1章 他)
・適格性評価とバリデーションは、品質リスクマネジメントシステムの一環としてリスク評価
 に基づいて実施すること(一般)
※ライフサイクル全体を通じたリスクを管理と、それに基づいた適格性評価とバリデーションが
 必要です。

4.ICH Q8の影響
プロセスバリデーションにおいて、デザインスペースの考え方、PAT(Process Analytical
Technology)の活用の記述があります。
※デザインスペース、PATに興味をお持ちの方は、よろしければ、ASTROM通信39号内の用語集を
 ご覧ください。→ http://astrom.jp/astromnews/2013/11/

5.プロセスバリデーション全般
現行のAnnex15では、プロセスバリデーションには、予測的バリデーション、同時的バリデー
ション、回顧的バリデーションについて、明確な定義がありましたが、新Annex15はここが
変わっています。
例えば、大きなリスクがないと言える特別な場合は、患者の利益のために、通常の製造前に
バリデーションが終わっていなくてもよく、同時的バリデーションの実施が可能となっています。
但し、当然のことながら、同時的バリデ-ションを実施することが正当化され、それが、VMP
(バリデーション・マスタ・プラン)に文書化され、権限者の承認が必要です。
またQbD(クオリティ・バイ・デザイン)法で開発された製品については、従来のプロセスバリ
デーションの代わりに、連続的なプロセス検証がよいとされています。
※かなり大きく変更されていますので、新Annex15の5章.プロセスバリデーションをご覧になる
 ことをお勧めします。

6.輸送の検証(新Annex15で追加)
下記の規定が明記されています。
・製品となった医薬品、治験薬、バルク品およびサンプルは、製造承認された条件、製品
 仕様書や製造業者が定めた条件に従って輸送されなければいけないこと
・輸送ルートは明確にし、輸送の検証中、季節変動やその他の変動についても考慮すること
・輸送中の、継続的に管理・モニタされる状態以外の変動についての影響を考慮するため、
 リスク評価を実施すること
・輸送中に製品がさらされるであろう、あらゆる重大な環境条件について、連続的なモニタと
 記録が行われるべきであること

7.包装バリデーション(新Annex15で追加)
下記の規定が明記されています。
包装設備のパラメータの変化は包装機能に影響を与えるだろうから、主要な包装工程は
 バリデーションを実施すべきであること
・包装機械の設定に関する適格性評価は、温度、マシン速度、密閉圧力、またはその他の
 重要パラメータに関して定義された最小・最大の動作範囲で行なわれるべきであること
※バリデーションの対象として、現Annex15にも2014年のドラフト版Annex15には記載のなかった、
 最終製品またはバルクの2次包装設備が追加されていますので、ご確認ください。


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まとめ
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新Annex15は、ICHの考え方が取り入れられ、製剤開発時から蓄積されたデータや知識の活用、
工程で得られるデータの活用により、非常に合理的なバリデーション・検証を実施する方向に
向かっているという印象を受けました。
その反面、今回追加された”輸送の検証”は、かなりインパクトがあると思います。
EU GMPガイドラインAnnex15の改訂内容が、PIC/S GMPガイドラインAnnex15に取り入れられた
場合、国内向け医薬品のみ製造している製薬会社様に対しても、輸送中の状態の連続的なモニタ
リングが求められることが予想されます。
今後、医薬品の運送業者様も含め、相当な対応が必要になると思われます。


最後までお読み頂き、ありがとうございました。
☆次回は、5/1(金)に配信させていただきます。


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ASTROM通信』担当 橋本奈央子
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2015.04.01

【日本版NIH設立 及び 最近のFDAウォーニングレター】ASTROM通信<71号>

 ~安全な医薬品の安定供給をご支援する~

こんにちは
ASTROM通信担当の橋本奈央子です。

待ちに待った桜がついに咲き始めましたが、いかがお過ごしでいらっしゃいますか?

さて今回は、下記の2つのテーマについて取り上げたいと思います。
1.2015年4月1日(本日)設立される日本医療研究開発機構について
2.FDAの製造及び製品品質オフィスから2015年2月に発行された2件のウォーニングレター(Warning
Letter)について

最後までお付き合いいただければ幸いです。


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1.日本医療研究開発機構について
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日本版NIHとも呼ばれる日本医療研究開発機構(AMED:Japan Agency for Medical Research and
Development)が本日(2015年4月1日)設立されます。

独立行政法人日本医療研究開発機構法によると、AMEDの役割は、下記のことを総合的かつ効果的に
行うことにあります。
基礎的な研究開発から実用化のための研究開発までの一貫した研究開発の推進
・研究成果の円滑な実用化
・研究開発が円滑かつ効果的に行われるための環境の整備

これまで、文部科学省、厚生労働省、経済産業省がそれぞれ管理していた医療に関わる研究開発
事業が、AMEDに移管され、事業運営がワンストップサービス化されることにより、縦割りだった
研究費の効果的な配分、省庁ごとに異なる研究開発計画の標準化等のメリットが期待できる
言われています。

2015年3月22日に東京で開催されたAMED国際シンポジウムの中で、甘利経済再生大臣は、AMEDの
設立により、画期的な新薬を開発し、経済成長に繋げたいという考えを示しており、AMEDに対する
政府の期待の大きさを感じます。

2017年度から研究費の配分が開始されることになっていて、既に、AMED委託研究開発の公募もされ
ています。
ちなみに、2017年の予算は、トータルで1423億円になるそうです。
■AMED委託研究公募要領について
http://www.mhlw.go.jp/bunya/kenkyuujigyou/hojokin-koubo-h27/dl/nihoniryou_koubo2.pdf

このAMEDは、日本版NIHと呼ばれていますが、日本の職員は300人前後なのに対して、本家アメリカ
のNIH(アメリカ国立衛生研究所)は、国立癌研究所、国立ヒトゲノム研究所、国立アレルギー・
感染症研究所 等27の組織、1万8000人以上のスタッフで構成され、そのうち6000人以上が科学者
(医師、生命科学研究者)なのだそうです。また、年間の予算額は250億米ドル~300億米ドル
(3兆~3兆5000億円)で、自前で研究するだけでなく、世界中の研究機関に対する助成をしたり、
バイオテロの予防も行ったりしているそうです。

さすがアメリカという気がしますが、それはさておき、日本のAMEDの今後が楽しみです。

■出典
厚労省HP
http://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-10600000-Daijinkanboukouseikagakuka/itaku.pdf
独立行政法人日本医療研究開発機構法について
http://www.shugiin.go.jp/internet/itdb_housei.nsf/html/housei/18620140530049.htm
日経デジタルヘルス
http://techon.nikkeibp.co.jp/article/EVENT/20150206/402940/?ST=ndh&P=2
Wikipedia 「アメリカ国立衛生研究所」
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%A2%E3%83%A1%E3%83%AA%E3%82%AB%E5%9B%BD%E7%AB%8B%E8%A1%9B%E7%94%9F%E7%A0%94%E7%A9%B6%E6%89%80


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2.ウォーニングレター(1)
WL: 320-15-02 2015年2月25日 インドの原薬メーカに対して(一部抜粋)
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2014年3月24日~28日に行われたインドの製造所査察において、原薬製造に関するCGMPからの重大な
逸脱が確認され、次の指摘を含むウォーニングレターが出ました。
1.苦情の適切な調査と、影響を受けた可能性のある他のバッチへの調査の拡大の不履行
 2011年以来、苦情に関する完全な調査と、是正措置の実施を怠っている。
 例えば
 a.2011年9月に、顧客から原薬の異臭について苦情を受けた。貴社は、この苦情の原因は既知の
      不純物による異臭と結論づけたが、この結論を裏付けるデータを提供せず、是正措置の実施
   前に調査を終了した。
   その後に実施した製造プロセスの変更という是正措置が、異臭問題と相関関係があるという
   保証はない。

 b.2012年8月に、別の顧客から原薬の異臭について苦情を受けた。苦情を訴えた顧客が、不明な
   不純物の混入について報告した。
   調査は、異臭が基準を超える不純物によるものと結論づけた。しかし、調査結果を裏付ける
   データは保持されていなかった。また、調査の一環として、不純物のレベルを特定するために
   複数のクロマトグラムデータを復元したが、そのパラメータは保持されていなかった。
   査察の間に、不純物がXppm含まれるというデータ復元結果が提出されたが、同じバッチに
   ついての当局向け文書では、不純物は検出されなかったという結果が提出された。

   貴社は、不純物はXppm以下にするという仕様を設けたと言ったが、Xppmという値を使用する
   科学的正当性を示してほしい。

   また、社内基準を超える不純物の混入を防ぐために実施している管理について述べ、市販され
   た原薬XバッチX内の不純物が社内基準値に収まるという品質の保証について説明せよ。

   未知の不純物のバッチへの混入によるOOS(Out-of-specification:規格外)について、貴社
   の調査では、原薬の製造過程で用いた原材料から持ち越された不純物が原因と結論づけた。
   しかしこの調査は、品質部門が、出荷前に不純物のOOSに気づかなかったことの調査を行って
   いない。

   不純物を含む原材料の使用を防ぐための管理について回答せよ。更に、改訂された原材料の
   管理の実施履歴と、改訂前に製造されたバッチについて社内基準に収まるかを評価した詳細に
   ついて回答せよ。

2.品質部門が製造された原薬がCGMPに準拠し、設定した品質及び純度に関する仕様を満たすことを
保証する責任を果たしていないこと。
 a.貴社は、残りの溶媒のクロマトグラムに、未知のピークが出現している原薬を出荷した。貴社
   の分析者も管理者のこのピークに気づかなかったか、もしくは、レビュでピークについて評価
   しなかった。
   その後、顧客の苦情により、貴社は、未知のピークがXであり、製造工程で発生した汚染によ
   るものであると気づいた。
   貴社は、製造作業において汚染の再発を軽減するために適切な管理を実施しているという保証
   を提供しなかった。

   現在の溶媒の流れにより発生する交差汚染のリスクを評価して提出せよ。
   また、評価に基づく是正措置について回答せよ。

3.データへの無許可のアクセス、データ改竄の防止策の不履行 及び データの削除を防止する
ための適正な管理の不実施
 貴社は、電子生データに対する無許可の操作を防ぐ適切な管理を行っていなかった。
 例えば
 a.2009年のガスクロマトグラフィー(GC)のソフトウエアバリデーションについて、監査証跡機能
   の評価を行っているにも関わらず、GCの監査証跡機能が2013年10月まで使用されていなかっ
   た。

 b.貴社が、ガスクロマトグラフィー、マルバーン粒度分析器、および紫外(UV)分光光度計の
   電子生データを保持しているという保証がない。査察官は、これらの装置が、データを保持
   するスタンドアロンのコンピュータと接続されていて、そのデータが消去可能であることに
   気付いた。

 c.査察前、貴社は、フーリエ変換赤外線分光計、偏光計、UV分光光度計、およびマルバーン粒度
   分析器で生成されるデータのバックアップシステムを持っていなかった。

   貴社は、他のラボの機器データと同様、これらの機器のデータも今は中央サーバに保存されて
   いて、新しいLIMSのシステムも2014年10月に設置されるという回答したが、貴社の回答は
   電子生データの保管に関する暫定的な解決策にすぎない。電子生データの完全性を保証する
   ために貴社がとっている追加処置についても回答せよ。

   電子データのアーカイブと復元に関する手順が正当であることを確認するために、貴社の
   計画のコピーを提供せよ。

   我々は、多数の安定性サンプルが必要な間隔でテストされていないことにも気づいている。
   特に2014年の安定性試験の計画は未処理で、サンプルはテスト期限切れであった。更に、
   貴社の品質保証部門は、この未処理の状態に気づいていなかった。

   当初計画されていたテスト間隔において予想される原薬の不純物のプロファイルと、2014年に
   遅れて実施するテスト結果の比較情報を提供せよ。
   また、未処理状態を解消するためのスケジュールも提出せよ。

注)文中のXは、ウォーニングレターの中でマスキングされた値・文言です。

出典:
http://www.fda.gov/ICECI/EnforcementActions/WarningLetters/2014/ucm421544.htm


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2.ウォーニングレター(2)
WL: 320-15-07 2015年2月27日 タイの原薬メーカに対して(一部抜粋)
◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆
2014年3月21日~25日に行われたタイの製造所査察において、原薬製造に関するCGMPからの重大な
逸脱が確認され、次の指摘を含むウォーニングレターが出ました。
1.再処理により仕様通りの原薬を一貫して製造することの不履行
 a.貴社は、再処理の規格を満たさない6ロットを再処理に使用した。貴社は、この再処理がDMF
   (Drug Master File)に準拠していないことを認めた。

 b.OOSにより不合格とされたロットを再処理した。
   ロットに含まれる不溶性の5~10ミクロンの黒い斑点が、設備の洗浄不足と判断したが、
   前工程に原材料として投入して、フィルタで濾過することで再処理した。
   貴社は、品質部門の洗浄の管理の不履行、汚染問題、再処理の妥当性について説明しなかっ
   た。

   貴社の再処理手順に関する徹底的なレビュと評価の結果を回答せよ。また、再処理原料を
   使った全ての製品の評価を行い、結果を報告せよ。また、この再処理ロットの安定性確認
   を行っているか回答せよ。
   更に、品質部門の管理を向上させるために計画された組織的改善についても述べよ。

2.全てのテストから得られたデータの保管の不履行と、定めた原薬の仕様への不準拠及びデータ
保管の保証の不履行
 テスト及び手順のバリデーションから得られる生データの保管を怠ったことにより、原薬の品質を
 評価するための情報が不足していた。
 特に
 a.原薬の品質を保証するために実施したテストから得られる生データを保管していなかった。
   例えば、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)のテスト結果を裏付ける電子生データを貴社は
   提供できなかった。

 b.手順のバリデーションで使用した重量と計算結果を記録した生データを、標準操作手順書
   (SOP)の“生データの記録”で指定されている通りに保持していなかった。

 c.分析者は、関連する物質のテストにおいて、選択的にデータを無効にした。たとえば、初回
   のシステム適合性確認のために使用された全6回のインジェクションのうち、1つのインジェ
   クションのデータを正当な理由なく捨てた。

   貴社は生データの管理向上のためにSOP を改訂すると回答した。
   貴社は、手順のバリデーション中に生成された全てのデータは報告され、適切に保管される
   べきだという査察官の意見に同意しつつ、手順を改訂すると言っているが、手順の改訂は、
   初回の手順のバリデーションで得られたデータや、全ての製品の試験から得られた生データの
   保管に関して我々が抱く懸念に対する適切な取り組みではない。

3.データへの無許可のアクセス、データ改竄の防止策の不履行 及び データの削除を防止するた
めの適正な管理の不実施
 データアクセスに関する不適切な管理は、データの確実性や信頼性、貴社が製造した製品の品質に
 対する疑念を生じさせる。
 a.貴社は、ラボの電子生データの無許可の操作を防ぐ適切な管理を行っていなかった。貴社の
   HPLCのコンピュータソフトウエアは、もともとのメソドロジーに関する情報、変更を行った
   人物の特定、変更の日付を含む分析方法の変更を記録する監査証跡機能がなかった。更に、
   貴社のラボシステムは、データの削除や生データの変更を防ぐためのアクセス管理機能を
   持っていなかった。査察の間、貴社の分析官は、HPLCのデータファイルを削除するための
   不適切なユーザが設定できることを証明した。

 b.ガスクロマトグラフ(GC)のコンピュータソフトウエアは、パスワード保護がされていないた
   め、全従業員は、無管理の状態で、データにフルアクセスできた。

   貴社は、2014年7月31日までに、HPLCシステムが監査証跡機能、GCにはパスワード保護機能を
   持つようアップグレードすると回答した。しかし、貴社の回答は明確でない。単に監査証跡
   機能を付けるだけでは不十分である。
   更に、貴社はアメリカの市場に出荷した貴社の製品の品質を保証するための過去データの
   レビュを行っていなかった。

   薬の製造及びテスト中にコンピュータ化システムにより生成される電子生データの完全性を
   保証するために行う包括的な管理について回答せよ。生データの保持とアーカイブに関する
   管理と手順についても述べよ。

   上記は、貴社の品質システムのCGMPからの重大な逸脱を示している。
   貴社がCGMPに準拠するために、貴社のデータの完全性の問題を検知できるサードパーティの
   監査役/コンサルタントを雇うことを勧める。しかし、どのようなサードパーティの監査役
   がいても、電子システムの評価やデータの完全性を保証することは貴社の責任である。

出典:
http://www.fda.gov/ICECI/EnforcementActions/WarningLetters/ucm436268.htm


◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆
まとめ
◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆
ウォーニングレターの指摘内容について、このメールマガジンでも何回か取り上げてきましたが、
最近の指摘事項には、必ずといっていいほど、CAPAや電子データの管理が含まれているように思い
ます。
特に、苦情やOOSに対して適切な対応がとられていないと、それを糸口に、電子データの管理の問題
や、品質管理のほころびが明らかになっていくようです。
CAPAの実施や電子データの管理の徹底にまで、なかなか手が回っていないという製薬会社様は少なく
ないと思いますが、最近の査察の傾向として是非参考にしていただければと思います。

最後までお読み頂き、ありがとうございました。
☆次回は、4/15(水)に配信させていただきます。


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