ASTROM通信バックナンバー

2014.11.28

【英規制当局発表、過去5年の重度/中程度GMP要件不備TOP5』】ASTROM通信<63号>

 ~安全な医薬品の安定供給をご支援する~

こんにちは
ASTROM通信担当の橋本奈央子です。

日に日に寒さが厳しくなってきましたが、いかがお過ごしですか?

今回は2014年10月15日にイギリスの医薬品・医療製品規制庁MHRA
(Medicines and Healthcare Products Regulatory Agency)が発表した2013年のGMP査察に
おける要件不備のレポートについて取り上げたいと思います。

このレポートは、2013年の査察結果だけでなく、過去5年のGMP査察におけるにおける重度
(critical)・中程度(Major)の要件不備のランキングが載っていて、なかなか興味深いです。

MHRAの査察を直接受ける機会はないかもしれませんが、EUの加盟国であるイギリスの規制当局が
査察時にどのような点に注目しているのかを確認してみていただければと思います。

出典:http://www.mhra.gov.uk/home/groups/pl-a/documents/websiteresources/con464241.pdf


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レポートの要旨
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-過去5年間の査察においてみつかったGMP要件不備の内容は 、“化学的/物理的汚染(あるいは
 汚染の可能性)”を除き特に変化していませんが、“化学的/物理的汚染(あるいは汚染の可能
 性)”は著しく増加しています。
-品質システムに関する不備は、査察中、群を抜いて多くみられます。
-この5年間の査察で見られること:
 ・各査察における中程度の不備の割合は、比較的変わっていない
 ・2013年までは、各査察の重度の不備の割合は一定だったが、2013年は、公衆衛生に潜在的に
  影響を与える”データの完全性”に関する問題が群発している
 ・各査察の重度の不備の件数は、他の地域(大陸)に比べアジアが高い


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2013年のGMP査察状況
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MHRAが2013年に630のGMP査察を実施した結果、イギリス国内で174件、国外で42件の中程度または
重度の不備がみつかっています。
件数を見ると、イギリス国内でGMPが多く発生しているように見えますが、査察あたりの不備件数
を大陸別に見ると、アジアの査察でみつかった件数が多いことがわかります。
<大陸別の重度及び中程度のGMP不備の平均件数>
   アジア:重度 0.19件 、中程度 1.00件
  イギリス:重度 0.04件 、中程度 0.52件
 北アメリカ:重度 0.00件 、中程度 0.35件

<不備の内訳>
■重度の不備:29件
630の査察のうちの3%にあたります。
1つの査察サイトで、最大で3件の重度の不備がみつかりました。
■中程度の不備:403件
630の査察のうちの31.6%にあたります。
1つの査察サイトで、最大で7件の中程度の不備がみつかりました。


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過去5年間の不備の傾向
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査察において、重度の不備の発生割合は、2009年が2.27であるのに対して、2013年は1.87となり、
減少しています。
一方、中程度の不備の発生割合は、2009年から2012年まではほぼ一定だったのに対して、2013年に
増加しています。この増加は、”データの完全性”に関する不備によるものです。

2013年にデータの完全性の不備が発生している背景には、MHRAがEU GMPガイドラインに則りデータ
の完全性を重要視しつつあることが原因と思われます。
現に2013年12月には、医薬品の製造業者・輸入者・契約研究所に対し、自己点検の一環として自社
の管理システムのデータの完全性とトレーサビリティを保証するように求め、2014年の査察からは
より一層この分野を重視していく姿勢を示しています。


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過去5年の重度・中程度の不備のトップ5
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★1位 異常の調査
-いつ、どのように逸脱の基準を定めるかの明確なスコープがない。その結果、定めた逸脱を
 無期限に使用することを可能にしてしまっている。
-偏差が適切であったために、傷んだ/使い古した備品がそのまま使われた。設備が傷んだ原因
 に関する調査は行われなかった。重大な備品であるにも関わらず交換できるスペアがなく、製品
 が潜在的に危険な状態にさらされ続ける状態で製造が許された。
-返品手順の中で、過去の原料の影響に関する考察がなされなかった。
-多数の調査が1年以上保留の状態で、大量の調査がタイムリーに完了されていなかった。
 ある調査は15か月間保留になっていた。
-製品ボトル上のラベル欠落に関する苦情につき、根本原因を特定するために徹底的に調査されな
 かった。
-逸脱の調査期間中、根本原因の適切なレベルの分析が実施されなかった。
-遭遇した問題が重大な逸脱なのか、それとも軽微なレベルの出来事なのかを判断するための製品
 への影響評価とそれに関連する論理的根拠が正式に文書化されていなかった。
-不良の錠剤に関する苦情の調査において、苦情の結果下された判断と、とられた手段が文書化さ
 れていなかった。文書の記述に、根本原因も是正措置も予防措置も見当たらなかった。
 繰り返し発生する問題として気づいていたにもかかわらず、他のバッチにも起こりうる結果が
 文書化されておらず、調査プロセスの中に適格者(Qualified Person)が関与していたかも明ら
 かでなかった。

★2位 品質マネジメント
-自己点検が過去に実施されていないし、現在も実施の計画がない。
-研究所の薬の品質システムが、安定性のサンプルの管理について明らかにしていない。企業は、
 R&Dの手順は、実施の準備ができていると述べているが、かなりの数の手順が延び延びになって
 いることがわかっている。また、企業は、自己点検を通じてR&Dの機能を監督していなかった。
-品質リスクマネジメントの手順がない。
-PQR(Product Quality Review)の中に重大な品質問題を含めていなかった。
-苦情、エラー、例外手順の管理が、次の点で弱い:
 ・苦情の問題の他のバッチへの影響の推測、影響を受ける可能性のあるバッチの分析や、苦情の
  傾向の分析の手順が正式なものになっていなかった。さらに、その手順が現在の苦情処理プロ
  セスに反映されていなかった。
 ・影響評価や根本原因の分析を行うことに関する例外手順があいまいだった。
-品質リスクマネジメントの手順は、GMP Part3(ICH Q9)に基づいてはいるものの、リスクマネ
 ジメントをいかに事前対策及び回顧的に行うかに関する詳細の記述が欠けていた。
-品質システムが、次の点で維持されていない:
 ・PQR(Product Quality Review)が、義務付けられている期間中に終えられていなかった。
 ・かなりの数のSOPがレビュ期日を過ぎており、複合的な変更管理が6ヶ月以上保留にされ、多数
  の苦情の対応が完了していなかった。
 ・品質マネジメントレビュが手順に従って実施されていなかった。
 ・2つの原薬に関する原薬査察が計画通りに実施されていなかった。原薬供給者との取引継続を
  正当化する手順がなかった。
 ・定めた期間内に、計画した自己点検の3分の1が終わっていなかった。

★3位 CAPA
-CAPAのレビュ中、下記の問題がみつかった。
 ・CAPA活動がどのように問題の根本的原因と関連づいているかが明らかでなかった。
 ・CAPAの完了予定日がなかった。
 ・CAPAの効果を測定し、その効果を示す仕組みが無かった。
請負業者により製造された原薬にみつかった外部問題の調査について、原料の最終的な処理や、
 例えば、供給者への返品や再処理という、実施を要したアクションに関する詳細の記述を怠った。
規制当局の査察を含む様々な仕組みから発生するCAPA活動が時間内に漏れなく完了したことを
 保証する手順がなかった。
-CAPAシステムは、前回の査察の後、医薬品許可機構に対して作成したコミットメントが、記載し
 た通りに完了されていることを保証していなかった。
原薬供給者に関して起きたCAPAにおいて容認できないと決定された原薬供給者を医薬品販売承認
 許可から除外する活動を含んでいなかった。

★4位 汚染・化学的/物理的汚染(あるいは汚染の可能性)
-製造所に取り込まれた新しい分子が、毒性分子と相溶性がなく、設備内で作られたものではない
 ことや、洗浄の手順がリスクに対して適切であることを保証するための適切な文書化された手順
 がなかった。
-作業場のローラー式圧縮機が白い粉で覆われていた。設備は6ヶ月間そこにあったにもかかわら
 ず、粉の正体が特定されていなかった。
-製造通路の床の上や、エリア内のパレットの上に正体不明の白い粉があることに気づいていた。
-洗浄バリデーションは、綿棒で採取した個々の標本の結果に関する評価や基準を含んでいなかっ
 た。従って、標本全体の平均は許容限度内であっても、個々の標本は許容限度を超えていたかも
 しれない。
-洗浄バリデーションが必要な洗浄工程において、洗浄効果を裏付けるための設備の最大ダーティ
 ーホールドタイムを設定していなかった。
-キャンペーン方式で稼働するつもりはなく、特別な封じ込めの手段もとられていなかった。さら
 に、適用されている洗浄システムは、共用設備内で天然物を扱うことを考慮していなかった。
-同じ造粒部屋の中で、複数バッチ(または異なる製品)の製造を行うことに関する正当な根拠や
 リスク分析がなかった。

★5位 供給者及び請負業者の監査
-製造所が供給者のリストに加えられた時、供給者の監査報告書をみることができなかった。その
 ため、承認された製造業者が、それを受けて同時に供給者として決定されているというエビデンス
 が存在しなかった。
承認された原薬供給者のファイルにある供給者の製造所の住所が、最近の監査報告書にある住所
 と異なっていた。
原薬に関する監査報告書は実際に何を監査したか明らかではなく、製造所の手続き要件に違反し
 ていた。
-4ヵ月前の監査で、供給者を承認しないと明記していたにも関わらず、承認された供給者として
 供給者リストに載っていたことからわかるように、承認された供給者のリストのメンテナンスと
 管理がしっかり行われていない。
-監査の頻度は、リスクアセスメントにより決められるように記述されていたが、多くの場合、
 リスクアセスメントに基づいた最長の期間が記述されているものはなかった。
-品質保証協定において、委託者の担当者名は、閉鎖された製造所にいた人物の名前だった。
 また、協定は原薬の輸送条件、即ち、原薬は3~8℃で輸送しなければいけないということについて
 十分に記述していなかった。
-承認された供給者のリストに多数の誤りがあった。例えば、行方不明の供給者が載っていたり、
 リストに載っているいくつかの供給者は、リストに載せるべきでない供給者であったりした。
-供給者監査SOPは、原薬の供給者に関する監査について書かれておらず、サービスに関する手順も
 曖昧だった。
-供給者に関する監査報告書では、監査した製造所はGMP問題により原薬の供給にふさわしくないと
 いう結論となっていた。しかし、前述のサイトで製造された原薬の在庫は、隔離されたり不合格に
 されたりせず、アクションが不十分だった。


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今後の注目分野
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見つかった不備のレビュ、GMP関連法の今度の変更、他の当局から受け取った情報に基づき、MHRA
では次の分野を優先対象としました。

-データの完全性(DI)
 データの完全性の問題につき、まずい作業の結果によるものから非常に軽い故意の不正行為に
 いたるまで、全ての地理的位置や産業部門を通して調査をしました。それをもとに、今後、査察
 中、この分野に焦点をあてることになるでしょう。
 加えて、MHRAは、データ保全性と追跡可能性が維持されることを保証するために、会社が管理
 システムについて、所定の有効性レビュを実施するように連絡しました。
-偽造薬指導(FMD:Falsified Medicine Directives)
 ・FMD法が2013年8月にイギリス国内で施行された時、次のようなたくさんの要求事項が導入され
  ました:
  *原薬の製造業者、輸入業者、販売業者はMHRAに登録しなければならない。製造業者/輸入業
   者のライセンス(MIA)保有者は、原薬供給者の登録状況を確認しなければならない。
  *第三国から輸入された原薬は、第三国の当局によるEU GMPとの同等性確認の書面の添付、また
   は、指導46(b)に書かれた権利放棄をしなければならない。
  *イギリス国内の医薬品の最終製品の仲介業者はMHRAに登録しなければならない。
-”異常の調査”は、過去5年間にわたり、査察時、もっとも不備が多い状態のままです。
  したがって、”異常の調査”は引き続き査察の焦点となるでしょう。
-潜在的汚染
 ・潜在的汚染の分野は、次の理由により、査察の焦点となるでしょう:
  *汚染・化学的/物理的汚染(あるいは汚染の可能性)に分類される不備が、過去2年間、著し
   く増加している。
  *原薬は潜在的汚染が高まる傾向にあり、製品品質に対しより大きな影響が予想される
  *「専用設備」に関するEU GMPの3章及び5章の変更


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まとめ
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これまで、PIC/SやFDAの話題を中心に取り上げてきましたが、今回はEU加盟国であるイギリスの
規制当局の情報を取り上げてみました。
MHRAが不備と判断した項目が理解でき、イギリスと日本の規制にギャップがないように思え、これ
がPIC/S効果かと思ってしまいましたが、皆様はいかがでしたでしょうか?
今後、MHRAは自己点検、データの完全性を重要視する方向にあるようですので、我々もこのあたり
にも十分注意を払っていく必要があるのではないでしょうか?

最後までお読み頂き、ありがとうございました。
☆次回は、12/15(月)に配信させていただきます。


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