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2014.10.15

【医薬品リスク管理計画について】ASTROM通信<60号>

 ~安全な医薬品の安定供給をご支援する~

こんにちは
ASTROM通信担当の橋本奈央子です。

2週連続、大きな台風に見舞われましたが、お変わりなくお過ごしですか?

ちょうど1つめの台風が近づいていた10月4日~5日、弊社オフィスもあるアクトシティ浜松にて、
第14回「CRCと臨床試験のあり方を考える会議」が開かれていました。
土日は人の少ない建物なのですが、この2日間は、スーツ姿の人を大勢見かけました。

それはさておき、この会議の中の製造販売後調査をテーマにしたシンポジウムに関して、2014年
10月8日付薬事日報の中に、“昨年から提出が義務付けられた「医薬品リスク管理計画」(RMP)
が医療現場にほとんど浸透していないという指摘があった”という記事をみつけました。

医薬品リスク管理計画といえば、昨年4月1日以降新医薬品及びバイオ後続品に適用され、今年の
8月26日には後発医薬品にも適用されています。
そこで、今回は、医薬品リスク管理計画につき、平成24年4月11日発出「医薬品リスク管理計画
指針について」をもとに確認していきたいと思います。


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医薬品リスク管理計画(RMP : Risk Management Plan)
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医薬品リスク管理計画の目的は、医薬品の開発段階、承認審査時から製造販売後の全ての期間に
おいて、ベネフィット(薬の効果)とリスクを評価し、これに基づいて必要な安全対策を実施する
ことで、製造販売後の安全性の確保を図ることにあります。


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医薬品リスク管理計画の策定について
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医薬品の製造販売業者又は製造販売承認申請者は、常に医薬品の適正使用を図り、ベネフィット・
リスクバランスを適正に維持するため、医薬品について(1)安全性検討事項を特定し、これを踏まえ
て、(2)医薬品安全性監視計画及び(3)リスク最小化計画を策定し、また、必要に応じて(4)有効性に
関する製造販売後の調査・試験の計画を策定し、これらの計画の全体を取りまとめた医薬品リスク
管理計画書を作成します。

(1)安全性検討事項
安全性検討事項とは、1)重要な特定されたリスク、2)重要な潜在的リスク、3)重要な不足情報を
さします。
1)重要な特定されたリスク
 医薬品との関連性が十分な根拠に基づいて示されている有害な事象のうち重要なもの
 例)医薬品との関連性が明らかにされている副作用等
2)重要な潜在的リスク
 医薬品との関連性が疑われる要因はあるが、臨床データ等からの確認が十分でない有害な事象
 のうち重要なもの
 例)当該医薬品では認められていないが、同種同効薬で認められている副作用等
3)重要な不足情報
 医薬品リスク管理計画を策定した時点では十分な情報が得られておらず、製造販売後の当該
 医薬品の安全性を予測する上で不足している情報のうち重要なもの
 例)治験の対象から除外されていた患者集団であるが、実地医療で高頻度での使用が想定される
   等の理由により、当該患者集団での安全性の検討に必要となる情報
製造販売後の医薬品安全性監視活動等の結果として、新たな安全性の懸念が判明したときは、
速やかに安全性検討事項の内容を見直す必要があります。

(2)医薬品安全性監視計画
医薬品安全性監視活動には、製造販売業者が実施している通常の医薬品安全性監視活動と、(1)で
特定された安全性検討事項を踏まえた追加の医薬品安全性監視活動がありますが、追加の医薬品
安全性監視活動を実施する場合においては、医薬品リスク管理計画書の作成又は改訂を行います。

(3)リスク最小化計画
医薬品の承認時までに得られた情報及び当該医薬品の製造販売後に医薬品安全性監視活動により
収集された安全性等に関する情報並びにそれらの情報の評価に基づき、当該医薬品のリスクを
最小に抑え、ベネフィット・リスクバランスを適切に維持するために実施する個々のリスク最小
活動を束ねたものをさします。
リスク最小化活動には、全ての医薬品において通常行われる活動と、当該医薬品の特性等を踏ま
え、必要に応じ追加して行われる活動があります。
通常のリスク最小化活動には、使用上の注意を記載した添付文書を作成し、必要に応じて改訂し、
その内容を医療関係者に対して情報提供することや、患者向医薬品ガイドを作成すること等が
あります。
追加のリスク最小活動には、安全性検討事項について行われる医療関係者への情報提供、当該
医薬品の投与対象となる患者への情報提供、当該医薬品の使用条件の設定、ヒューマンエラー防止
等のために医薬品の表示、容器・包装に工夫を講じる等があります。
追加のリスク最小化活動を実施する場合においては、医薬品リスク管理計画書の作成又は改訂を
行います。

(4)有効性に関する調査・試験の計画
医薬品の有効性に関する情報の収集を目的として調査、試験等をさします。

■関連情報■
「医薬品リスク管理計画指針について」
  平成24年4月11日付薬食安発0411第1号・薬食審査発0411第2号厚生労働省医薬食品局安全対策
  課長・審査管理課長連名通知
「医薬品リスク管理計画の策定について」
  平成24年4月26日付薬食審査発0426第2号・薬食安発0426第1号厚生労働省医薬食品局審査管理
  課長・安全対策課長連名通知
「医薬品リスク管理計画書の公表について」
  平成25年3月4日付薬食審査発0304第1号・薬食安発0304第1号厚生労働省医薬食品局審査管理
  課長・安全対策課長連名通知
「医薬品リスク管理計画指針の後発医薬品への適用等について」
  平成26年8月26 日付薬食審査発0826第3号・薬食安発0826第1号厚生労働省医薬食品局審査管理
  課長・安全対策課長連名通知


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まとめ
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医薬品リスク管理計画は、一度策定してそれで終わりということはなく、製造販売後の状況に
応じて見直しを行い、医薬品のベネフィット・リスクバランスを適正に維持する必要があります。

製造販売後の状況に応じて見直しを行うためには、医療機関から情報収集を行う必要があります
が、製薬企業と医療機関でリスクの考え方にギャップがあったり、情報収集の方法に問題があった
りして、医薬品リスク管理計画が医療現場に浸透しきれていない状況のようです。

しかし、平成26年9月30日付薬食安発0930第2号厚生労働省医薬食品局安全対策課長通知「医薬品、
医薬部外品、化粧品、医療機器及び再生医療等製品の製造販売後安全管理の基準に関する適合性
評価について」の中に、医薬品リスク管理計画書の取り扱いに関する評価項目が多数のっている
ことからもわかるように、医薬品の安全性を確保するためには、全ライフサイクルを通じた医薬品
リスク管理が不可欠であり、今後ますます医薬品リスク管理計画が重視されるのではないでしょ
か。

「医薬品、医薬部外品、化粧品、医療機器及び再生医療等製品の製造販売後安全管理の基準に関する適合性
評価について」
http://wwwhourei.mhlw.go.jp/hourei/doc/tsuchi/T141008I0020.pdf

最後までお読み頂き、ありがとうございました。
☆次回は、10/31(金)に配信させていただきます。


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ASTROM通信』担当 橋本奈央子
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2014.10.01

【前回補足:EU GMPガイドライン改訂版3章について】ASTROM通信<59号>

 ~安全な医薬品の安定供給をご支援する~

こんにちは
ASTROM通信担当の橋本奈央子です。

ここ数日、全国的に晴天が続いていますが、いかがお過ごしですか?

さて、今回は、前回のメールマガジンで取り上げたEU GMP ガイドラインの改訂版Part1 3章
(建物・設備)の解説について、読者様よりご指摘をいただきましたので、その訂正も含め、
あらためて3章の改訂箇所を見ていきたいと思います。


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前回のメールマガジンについての読者様からのご指摘
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前回のメールマガジンで、2014年8月13日に発出された、EU GMP ガイドラインの改訂版について
取り上げました。改訂箇所は下記の通りです。
1)Part1
 3章 建物及び設備
 5章 製造
 8章 苦情、品質欠陥及び製品回収
 ※2015年3月1日施行です。
2)Part2 出発原料として使用される原薬に関する基本的要求
 ※2014年9月1日施行済です。

その中で、Part1 3章 建物及び設備 3.6 交差汚染の予防 に関し、サマリをして
『改訂後のガイドラインには、交差汚染を製造設備の適切な設計と運用により防ぐこと、その
 手段は、品質リスクマネジメントの原則に従い、リスクに応じた手段を講じる必要があることが
 書かれています。そして、交差汚染のリスクが存在するのであれば、専用設備の使用を求めて
 います。』
と記載したところ、“交差汚染のリスク”という言葉について、メールマガジンの読者様より、
“3.6章で言っているのは交差汚染そのもののリスクではない”というご指摘をいただきました。

ご指摘の通り、ここで書いた“リスク”とは、交差汚染そのもののリスクではなく、交差汚染に
より医薬品に生じるリスクをさします。
誤解を招く表現をしてしまいましたので、ここで訂正させていただきます。

改訂版3.6章に書かれている”品質リスクマネジメント”は、開発及び製造中に潜在する品質問題
を特定し、コントロールする予防的な手段を提供し、より高品質の医薬品を患者に提供することを
めざすものです。

前回の書き方ですと、専用設備の要否は、交差汚染のリスクの有無で判断するととれてしまうと
思いますが、本来は、交差汚染のリスクが存在したとしても、リスクをコントロールする手段が
あり、患者保護の観点でリスクを許容できるレベルまでコントロールできるかで判断するべきもの
です。

この読者様からは、”特定されたリスクをコントロールできるかどうか、そしてコントロールした
結果許容できるレベルかどうかを判断し、許容レベル以下のリスクであればリスクテイキングすれば
良いのだろうと考えています。”というコメントも頂きました。

ICH Q9(品質リスクマネジメント)にも、このことが書かれています。
 http://www.pmda.go.jp/ich/q/q9_06_9_1.pdf
読者様のコメントも含め、是非、ご参考にしていただければと思います。


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前回のメールマガジンについての読者様からのご指摘
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前回のメールマガジンでは、現行版と改訂版の違いのサマリしか載せていなかったので、今回は、
新旧両版を載せておきます。

●3.6章(現行) : 現行PIC/S GMPと同じであるため、厚労省PIC/S GMPガイドライン訳を引用
 交叉汚染による重篤な医学的危害のリスクを最小限にするため、高感作性の原料(例えば
 ペニシリン類)又は生物学的製剤(例えば生存している微生物由来のもの)のような特殊な
 医薬品の製造には、専用でまた自己封じ込め式の設備が使用できなければならない。ある種の
 抗生剤、ある種のホルモン、ある種の細胞毒性物質、ある種の高活性薬物及び非医薬品のような
 製品の製造は同一の施設で実施してはならない。例外として、特別な予防策が講じられ、また
 必要なバリデーションが行われている場合には、これらの製品についての同一施設における
 キャンペーン生産(期間を分けた品目ごとの集中生産)は許される。
 殺虫剤及び除草剤のような工業毒物の製造は医薬品の製造に使用する建物では許されない。
 ※この部分だけ交差汚染ではなく交叉汚染としているのは、厚労省ガイドライン訳を引用して
  いるためです。調べたところ、交叉汚染と交差汚染に違いはないようです。

●3.6章改訂版(2015年3月1日施行)
 製造施設の適切な設計と運用により、全ての製品に対する交差汚染を防がなければならない。
 交差汚染を防ぐ手段はリスクにふさわしいものでなければならない
 品質リスクマネジメントの原則が、リスクを評価しコントロールするために用いられなければ
 ならない。
 リスクのレベルに応じて、いくつかの医薬品によりもたらされるリスクをコントロールするた
 に、製造・包装業務のための専用の建物や設備が必要になるかもしれない。
 下記の理由で医薬品がリスクをもたらす場合、製造のための専用施設が必要である。
   i リスクが、運用や技術的手段で適切にコントロールできない
  ii 毒性評価から得られた科学的データがリスクをコントロール可能であることを保証しない
 または
 iii 毒性評価から導かれた関連残留物の限度値が、バリデートされた分析手法によって満足の
   いくように測定できない

【考察】
3.6章の改訂版は、現行から大きく変更され、品質リスクマネジメントの適用が明確に記載されて
います。
製造・包装業務に専用施設を使用するかの判断には、交差汚染により医薬品に生じるリスク評価
という根拠が求められていることを意識しておく必要があります。


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まとめ
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前回のメールマガジンでは、安易なサマリ文の記載により誤解を招く情報をご提供してしまい、
申し訳ありません。
このメールマガジンを通じて、出来る限り質の高い情報をご提供していきたいと考えております
ので、今後もお気づきの点などおありになりましたら、どうぞご指摘ください。

最後までお読み頂き、ありがとうございました。
☆次回は、10/15(水)に配信させていただきます。


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