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2014.09.15

【EU GMPガイドライン 改訂版発出!】ASTROM通信<58号>

 ~安全な医薬品の安定供給をご支援する~

こんにちは
ASTROM通信担当の橋本奈央子です。

さわやかなお天気が続いていますが、いかがお過ごしですか?

さて、2014年8月13日、PIC/S GMP ガイドラインと深い関係のあるEU GMP ガイドラインのいくつ
かの章の改訂版が発出されました。
1)Part1
 3章 建物及び設備
 5章 製造
 8章 苦情、品質欠陥及び製品回収
 ※2015年3月1日施行です。
2)Part2 出発原料として使用される原薬に関する基本的要求
 ※2014年9月1日施行済です。

ご存知の通り、PIC/S GMP ガイドラインは、EU GMP ガイドラインが改訂されると、それに追随して
改訂されます。従って、今回のEU GMP ガイドラインの改訂版は、いずれ、PIC/S GMP ガイドライン
にも反映されることになります。
そこで、今後PIC/S GMP ガイドラインがどう改訂されるかを知っておくために、今回は、EU GMP
ガイドライン Part1の改訂版の内容を確認していきたいと思います。
たどたどしい直訳が長く続きますが、最後までお付き合いいただければ幸いです。

出典:
 EU GMP ガイドライン Part1 3章
  http://ec.europa.eu/health/files/eudralex/vol-4/2014-08_gmp_chap3.pdf
 EU GMP ガイドライン Part1 5章
  http://ec.europa.eu/health/files/eudralex/vol-4/2014-08_gmp_chap5.pdf
 EU GMP ガイドライン Part1 8章
    http://ec.europa.eu/health/files/eudralex/vol-4/2014-08_gmp_chap8.pdf

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EU GMP ガイドライン Part1 3章 建物及び設備
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3章は、3.6の交差汚染の予防に関する記述以外、変更されていません。
改訂前のガイドラインは、重篤な医学的危害のリスクを最小限にするため、専用の自己封じ込め式
設備の使用を挙げています。
一方、改訂後のガイドラインには、交差汚染を製造設備の適切な設計と運用により防ぐこと、その
手段は、品質リスクマネジメントの原則に従い、リスクに応じた手段を講じる必要があることが
書かれています。そして、交差汚染のリスクが存在するのであれば、専用設備の使用を求めてい
ます。

【考察】設備にもリスクベースドアプローチの考え方が求められています。
交差汚染のリスクが存在すれば、専用設備の使用が求められていますので、逆に言うと、
専用設備を使用せずに複数の薬を製造する場合は、交差汚染のリスクがないことを評価し、文書
に残しておく必要があります。
ヨーロッパに輸出をしている日本の製薬会社様で、工場内の原料の移動経路や、区分保管の方法
に関して、交差汚染のリスクを指摘されたケースがあると聞きました。
ヨーロッパは交差汚染の管理に厳しいと思われますので、今回、EU GMP ガイドラインに交差汚染の
記述が追加されたことも考えると、日本の製薬会社様も、交差汚染の管理強化が必要になるのでは
ないでしょうか。


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EU GMP ガイドライン Part1 5章 製造
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5章は、かなり変更されています。
交差汚染の予防を強化するために、5.17~5.21章が変更されています。
また、出発原料がGMPに従って製造されることを保証するために5.27章~5.30章に記述が追加され
ました。
5.35章、5.36章では、出発原料の試験に関する製造業者/供給者の責任を明確にしています。
また、5.71章には、製造業者側の原因で発生する製品の不足に関し、記述が追加されました。
下記に、記述が追加、もしくは、大幅に変更された章をとりあげました。

■製造における交差汚染の防止
5.17
通常は、非医薬品の製造を、医薬品の生産用のエリアや設備で行うことは避けるべきだが、問題
ないことが証明され、下記及び3章に記述されたように、医薬品への交差汚染を防ぐ手段が適用
できるのであれば、許可される。
殺虫剤(これらが医薬品の製造に使用される場合を除く)および除草剤のような工業用の毒薬の
製造/保管は、医薬品の製造/保管に使用されるエリアで許可されるべきではない。

5.18
他の原料又は製品による出発原料又は製品の汚染は防止されなければならない。偶発的交差汚染の
リスクは、製造中の原料又は製品からの制御されていない塵埃、ガス、蒸気、スプレー又は微生物
の放出、装置上の残留物、及び作業員の着衣から生ずる。リスクの重大性は、汚染物質及び汚染
される製品の種類により異なる。汚染が最も重大であると考えられる製品は注射剤や長期間投与
される製品である。しかし、いかなる製品の汚染も、汚染物質と汚染の範囲により、患者の安全に
危険をもたらす。

5.19
交差汚染は、3章に述べられているような建物及び設備の設計への注意によって防がれるべきであ
る。
これは、工程設計の配慮と、交差汚染のリスクをコントロールするための効果的で再現性のある
洗浄プロセスを含む技術的または組織上の手段の実施により、下支えされるべきである。

5.20
有効性と毒物学的評価を含む品質リスクマネジメント作業は、製造された製品により生じる交差
汚染のリスクの評価とコントロールに用いられるべきである。
施設/設備の設計と使用、人と原料の流れ、微生物学的コントロール、活性物資の物理化学的特性、
工程の特性、洗浄プロセス、製品の評価から設定された制限に関する分析能力を含むあらゆる
ファクタは考慮されるべきである。
品質リスクマネジメント作業の結果は、特定の製品または製品群の専用の建物及び設備の必要性と
範囲の判断根拠になるべきである。
これは、専用化すべき建物及び設備が、製品に接触する特定のエリアなのか、製造施設全体なのか
の判断を含む。
多品種製造設備内で、分離され、自己完結型したエリアに製造活動を限定することも、正当性が
証明されれば容認できる。

5.21
品質リスクマネジメント作業の結果は、交差汚染のリスクを管理するために技術的で組織的な手段
が必要とされる範囲の判断根拠になるべきである。手段に下記のことを含むとよいが、下記に限定
はされない。

●技術的手段
   i.専用の製造施設(建物と設備)
  ii.分離した製造設備、分離したれ冷暖房空調設備(HVAC)システムを持つ自己完結型の製造
     エリア
 iii.製造、整備、洗浄中の交差汚染の機会を最小化するための製造工程、建物、設備の設計
  iv.製造中及び設備間の原料/製品の移動における閉鎖システムの使用
   v.封じ込め手段として、断路器を含む物理的バリアの使用
  vi.汚染源に近いほこりの制御された除去 例:局所的抽出
 vii.設備の専用化、製品接触部分の専用化、または、洗浄が困難な限定部分(例えばフィルタ)
     の専用化、メンテナンス用工具の専用化
viii.1回使用後使い捨ての技術
  ix.洗浄の容易さのために設計された設備の使用
   x.特定エリア内に潜在的な空気中の汚染を限定するためのエアロックと圧力の適切な使用
  xi.未処理、または処理が不十分な空気の再循環、または、再入場による汚染リスクの最小化
 xii.効果が確認された自動洗浄システムの利用
xiii.共通の一般的な洗浄エリアにおける、洗浄設備、乾燥エリア、保管エリアの分離

●組織的手段
   i.効果が確認された洗浄プロセスに従ったキャンペーン(時間による分離)による製造施設
     全体の専用化または自己完結した製造エリア
  ii.交差汚染のリスクの高い製品の製造エリア内での特別な保護服の保
 iii.より高いリスクが存在すると思われる製品について、品質リスクマネジメントによるアプ
     ローチの効果を下支えするため、各製造キャンペーン後の洗浄ベリフィケーションは検出可能
     ツールとして考えるべきである
  iv.空気の汚染または機械の移動による汚染に対するコントロール手段の効果を実証するため、
     汚染リスクに応じた 製品の非接触面の洗浄ベリフィケーションと製造エリア内・隣接エリア
     の空気のモニタ
   v.廃棄物の取り扱い、汚染されたすすぎの水、汚れた衣服に関する具体的な手段
  vi.流出、予想外の出来事、手順からの逸脱の記録
 vii.交差汚染のリスクのない建物及び設備の洗浄プロセスの設計
viii.承認された手順に従った洗浄の完了を保証するための洗浄プロセスに関する詳細な記録の検討
     と、設備と製造エリアに貼る洗浄ステイタスを示すラベルの使用
  ix.キャンペーンによる共通の一般的な洗浄エリアの使用
   x.訓練の効果や、関連する手順の順守を保証するための仕事中の行動の監督

■出発原料
5.35
最終製品の製造業者は、販売承認関係資料に述べられている出発原料のいかなる試験にも責任を
負う。
彼らは、承認された出発原料の製造業者から得た試験結果の一部または全てを利用することがで
きるが、Annex8により、各バッチの識別試験は、最低限行わなければならない。

5.36
この試験のアウトソーシングの論理的根拠は、正当化され文書化され、以下の要件が満たされて
いなければならない:
   i.出発原料の品質特性を維持し、配達された原材料にテスト結果がそのまま適用可能である
     ことを保証するために、流通の管理(輸送、販売、保管、配達)に特別な注意を払うべきで
     ある。
  ii.医薬品の製造業者はGMP、規格、販売承認関係資料に記載されたテスト方法を順守している
     ことを保証するために、出発原料のテスト(サンプルを含む)を実施するサイトで、リスク
     に応じて適切な間隔で、内部及び第三者の監査を実施するべきである。
 iii.出発原料の製造業者/供給者により提供される分析証明書は、適切な資格と経験を持つ指定
     された人により署名されるべきである。署名は、バッチ毎に別々に提供されたのでなければ、
     各バッチが合意された製品の規格に従ってチェックされたことを保証するものである。
  iv.医薬品の製造業者は、出発原料の製造業者(供給者経由も含む)との、バッチ受領に先立つ
     評価を含む適切な取引の経験や、社内試験の一部省略の手順遵守の履歴を有するべきである。
     製造または試験プロセスにおけるいかなる重要な変更も考慮されるべきである。
   v.医薬品の製造業者は、分析証明書の信頼性を確認するために、リスクに応じて適切な間隔で、
     全項目の分析を実施(または、別個に承認された契約のある実験室を通じて実施)し、原材料
     の製造業者または供給者の分析証明書の結果と比較すべきである。この試験の結果のいかなる
     不一致も確認され、調査が実施され、適切な手段がとられるべきである。分析証明書の受諾
     は、これらの手段が完了するまで停止されるべきである。

■製造の制約による製品の不足(今回新たに追加されました)
5.71
製造業者は、供給に異常な制限をもたらす可能性のある製造上のいかなる制約も、医薬品市販承認
取得者(MAH)に報告しなければならない。この報告は、法的義務に従って医薬品市販承認取得者が
所轄官庁に供給制限を報告することを促進するため、タイムリーな方法で実施されるべきである。

【考察】3章と同様、ここでも交差汚染のリスク管理を強く求めている点が興味深いです
    また、出発原料の供給元(製造業者及び供給者)の管理の強化、医薬品の不足時の報告の
        強化を求めているのは、昨今の原薬の品質や安定供給に対する危機感の表れと言えるのでは
        ないでしょうか。


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EU GMP ガイドライン Part1 8章 苦情、品質欠陥及び製品回収
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8章は、品質リスクマネジメントの考え方に基づき、タイトルは「苦情及び製品回収」が、「苦情、
品質欠陥及び製品回収」と変更され、中味は大幅に変更され、ボリュームも8.16章から8.31章に増
えました。
改訂版では、品質欠陥や苦情の原因が調査・特定され、再発を防ぐために適切な予防処置がとられる
ことを強く求めると同時に、所轄官庁に品質欠陥を報告する責任を明確にしています。
本章は大幅に変更されているため、全文を記載します。

■原則
公衆および動物の健康を守るために、潜在的な品質欠陥を含む苦情を記録、評価、調査、レビュし、
必要であれば、流通経路から、人用または動物用医薬品と治験薬の回収を効果的かつ速やかに実施
するために、システム及び適切な手順が整えられるべきである。品質リスクマネジメントの原則が
品質欠陥の調査と評価、製品回収の意思決定プロセス、是正処置・予防処置、その他リスク低減活動
に適用されるべきである。
これらの原則に関するガイドラインは、1章にある。
全ての関連する所轄官庁は、製品回収につながる医薬品または治験薬の品質欠陥(欠陥のある製造、
製品の劣化、偽造の発覚、販売承認または製品仕様書の不順守、その他の重大な品質問題)が確認
された場合や、供給の異常な制限が発生する場合、タイムリーな方法で通知すべきである。市場の
製品に販売承認の不順守が見つかった場合、不順守の度合いが、予期しない逸脱の取り扱いに関す
るAnnex16の条件を満たす場合は、関係する所轄官庁に知らせる必要はない。
外部委託をする場合、契約には、不良品に関する評価、意思決定、情報の普及、リスク低減活動の
推進に関わる製造業者、医薬品市販承認取得者、スポンサ、及び関連するサードパーティの役目と
責任を記述すべきである。契約に関するガイドラインは7章にある。そのような契約には、品質欠陥
や回収の管理に関し責任を負う各組織にどのように連絡をとるかを書いておく必要がある。

■人員及び組織
8.1
適切に訓練されて経験を積んだ人員は、苦情と品質欠陥の調査の管理、および回収を含む問題に
よって示された潜在的リスクを管理するために取るべき手段の決定に責任を負うべきである。これら
の人員は、販売及びマーケティング組織から独立しているべきであり、そうでなければ正当化する
必要がある。
これらの人員は、懸念があるバッチの出荷許可をするクオリファイドパーソンに含まれない場合、
調査、リスク低減活動、回収作業についてタイムリーに知らされなければならない。

8.2
十分に訓練された人員および要員は、苦情及び品質欠陥の対応、調査、レビュとリスク低減活動の
推進にあたることができなければならない。十分に訓練された人員および要員は、所轄官庁との意思
の疎通の管理にあたることができなければならない。

8.3
適切に訓練された品質マネジメント用人員を含めた内部訓練のためのチームの活用が考慮されるべき
である。

8.4
苦情と品質欠陥の取り扱いが組織内に中心で管理される状況では、関係者の相対的な役割および責任
は文書化されるべきである。しかし、中央での管理が、問題の調査や管理の遅れにつながってはいけ
ない。

■品質欠陥の可能性を含む苦情の対応と調査に関する手順
8.5
苦情を受領した場合にとられる処置について記述した文書化された手順があるべきである。全ての
苦情は文書化され、潜在的な品質欠陥または他の問題を表しているのかどうかをはっきりさせるため
に評価されなければならない。

8.6
苦情または品質欠陥が偽造薬と関係あるのかをはっきりさせるために、特別な注意が払われるべきで
ある。

8.7
会社が受け取った苦情の全てが実際の品質欠陥を示しているとは限らないので、品質欠陥を示さない
苦情も適切に文書化され、苦情の調査・管理に関連するグループや責任者に、有害事象の疑いのよう
な特質が伝えられるべきである。

8.8
報告された疑わしい有害事象の調査を支援するため、医薬品のバッチの品質の調査依頼を手助けする
手順が存在するべきである。

8.9
品質欠陥調査が開始された時、少なくとも下記のことに対応する手順がなければならない:
   i.報告された品質欠陥の記述
  ii.品質欠陥の範囲の決定。この一部として、参考品または保存品サンプルのチェックまたは試験
     が考慮されるべきである。場合によっては、バッチの製造記録のレビュ、バッチの証明記録や
     バッチの配送記録(特に感温製品の場合)のレビュが行われるべきである。
 iii.苦情による欠陥品のサンプルや返品の依頼の必要性、適切な評価の実施の必要性
  iv.品質欠陥の重大度や範囲に基づくリスク評価
   v.バッチや製品の回収またはその保管の処置など、流通経路内でとられるべきリスク低減処置の
     潜在的な必要性に関し用いられる意思決定プロセス
  vi.回収活動が市場における患者/動物用医薬品の入手可能性に与える影響の評価
 vii.品質欠陥とその調査に関してとられるべき内部及び外部の伝達
viii.品質欠陥に関し可能性のある根本的原因の確認
  ix.この問題に対してとられるべき適切な是正処置・予防処置(CAPA)の特定と実施の必要性、
     これらのCAPAの効果の評価の必要性

■調査と意思決定
8.10
全てのオリジナルの詳細情報も含め、品質欠陥の可能性に関して報告された情報は記録されるべき
である。全ての報告された品質欠陥の正当性と範囲は、調査の度合いと取るべき処置に関する決定
を下支えするため、品質リスクマネジメントの原則に従って文書化され、評価されなければならな
い。

8.11
もしバッチに品質欠陥が発見されたか、もしくは、品質欠陥が疑われる場合、他にも影響があるか
を判断するために、他のバッチのチェックや、場合によっては、他の製品のチェックをするための
考察が行われるべきである。特に、不良バッチの一部または不良成分の一部が含まれているかも
しれないバッチは調査すべきである。

8.12
品質欠陥調査は、前の品質欠陥報告、または、関連する特異な兆候や、注意と、場合により更なる
規制措置を要する問題の再発に関する情報のレビュを含むべきである。

8.13
欠陥調査期間中及び調査後に下される決定には、品質欠陥により起こるリスクのレベルも、販売
承認/製品仕様書またはGMPの要件の不順守の重大さも反映させなければならない。決定は、患者
及び動物の安全が維持されることを保証するために、問題がもたらすリスクのレベルに応じて
タイムリーにされなければならない。

8.14
品質欠陥の特徴および範囲についての包括的な情報が、調査の初期段階で必ずしも利用可能だとは
限らないので、意志決定プロセスは、調査中の適切な時点で適切なリスク低減処置がとられている
ことを保証しなければならない。品質欠陥の結果として得られた全ての決定および手段は文書化
されていなければならない。

8.15
品質欠陥が製品の回収や製品の異常な供給制限を引き起こす可能性がある場合、製造業者により、
タイムリーな方法で、医薬品市販承認取得者/スポンサ、全ての関連する所轄官庁に報告されなけ
ればならない。

■根本的原因分析および是正・予防処置
8.16
品質欠陥の調査の間、適切なレベルの根本的原因の分析作業が行われるべきである。品質欠陥の
真の根本的原因が確認できない場合、最も根本的原因と思われるものを特定するための考察が行わ
れ、それに対処すべきである。

8.17
ヒューマン・エラーが品質欠陥の原因として疑われるか、または、特定される場合、原因は正式に
証明され、工程、手順またはシステム起因のエラーや問題が見落とされていないことを保証する
ための注意がされなければならない。

8.18
適切なCAPAが決定され、品質欠陥に対して行われなければならない。それらの処置の有効性は、
モニタされ評価されなければならない。

8.19
品質欠陥の記録はレビュされ、特異な兆候や注意の必要な問題の再発に関する定期的な傾向分析が
実施されるべきである。

■製品の回収およびその他の潜在的リスク低減活動
8.20
回収活動を保証またはリスク低減活動を実施するため、定期的にレビュされ、必要な時に改訂され
る、制定され文書化された手順がなければならない。

8.21
製品が市場に出た後、品質欠陥の結果として流通経路から取り戻すことを、回収とみなし、管理さ
れるべきである。(この規定は、品質欠陥の問題/報告の調査を容易にするために流通経路から製品
のサンプルを取り戻すこと(返送)には適用されない。)

8.22
回収作業は、いつでも速やかに始めることができなければならない。場合によっては、回収作業は、
社会または動物の健康を守るために、根本的原因や品質欠陥の範囲の確定の前に始める必要がある
かもしれない。

8.23
配送記録は回収責任者が速やかに利用可能であり、また輸出製品及び医療用サンプルを含め、卸売
業者及び直接供給した顧客に関する十分な情報(住所、就業時間内及び時間外の電話ないし
ファックス番号、配送バッチ及び数量)を含んでいなければならない。

8.24
治験薬の場合には、治験実施施設がすべて特定されるべきであり、仕向国が示されなければならな
い。販売承認がおりている治験薬の場合、治験薬の製造業者は、スポンサと協力し、承認された
医薬品に関わる品質欠陥の情報も、医薬品市販承認取得者に知らせなければならない。スポンサは、
早急な回収が必要であり、盲検用製品の早急な非盲検化の手順を実施しなければならない。
スポンサは、必要な場合は、盲検用製品の正体を明かす手続きを確実に行うべきである。

8.25
社会または動物の健康に対する潜在的リスクと、提案された回収活動の影響を考慮し回収作業を
流通経路のどれだけ遠くまで広げるべきかに関する検討は、関連所轄官庁との協議で提供されなけ
ればならない。
所轄官庁は、不良のバッチが使用期限切れ(短い使用期限の製品の場合)により、回収活動が提案
されていない場合の状況についても、情報を提供されなければならない。

8.26
製品が回収される予定の場合は、全ての関連所轄官庁は前もって通知されるべきである。重大な
問題(例えば、患者や動物の健康に重大な影響を与える可能性がある場合)の場合は、所轄官庁に
知らせる前に、迅速なリスク低減活動(製品回収など)がとられなければならないかもしれない。
可能であれば、回収の実行前に、関連所轄官庁の同意を得る試みをすべきである。

8.27
提案された回収活動が、異なる市場に異なる方法で影響を与えるか考慮されるべきであり、影響を
与える場合は、市場固有の適切なリスク低減活動が開発され、関連所轄官庁と論じられるべきで
ある。薬の治療的使用を考慮に入れて、回収のようなリスク低減活動を決定する前に、承認された
代わりの薬がない医薬品の不足のリスクが検討されるべきである。必要なリスク低減活動を実行
しないためのいかなる判断も、前もって所轄官庁に合意されなければならない。

8.28
回収された製品は、識別し、それらの最終処置に関する決定を待つ間は、安全な区域に分離して
保管されなければならない。回収されたバッチの廃棄は正規に実施され、文書化されなければなら
ない。回収された製品を再加工するいかなる判断の論理的根拠も文書化され、関連所轄官庁と議論
されるべきである。市場に出すことが考えられている再加工されたバッチの残存使用期限の延長も
また検討されなければならない。

8.29
回収過程の進捗は、終結するまで記録されなければならない。そして、製品/バッチの配送量と
回収量の収支照合を含む最終報告書が作成されなければならない。

8.30
回収の手筈の有効性は、それが堅固で使用に適した状態に保たれていることを確認するために定期的
に評価されなければならない。それらの評価は、評価を実施する時に、模擬回収活動が実施される
べきかを考慮して、営業時間内と営業時間外の両方で示されなければならない。この評価は文書化
し、正当化されなければならない。

8.31
回収に加えて、品質欠陥により生じるリスクを管理するために検討されるかもしれない、他の潜在的
リスク低減活動がある。その中には、不良品の可能性があるバッチの使用に関し医療従事者に対する
警告連絡の配布もあるかもしれない。これらはケースバイケースで検討され、関連所轄官庁と議論さ
れるべきである。

【考察】改訂版には、品質欠陥が発生した時の是正処置・予防処置(CAPA)について、かなり詳しい
        記述が追加されているのが興味深い点です。
    回収等のリスク低減活動を行う際は、医薬品の不足のリスクも検討するように求めている
        点も、注目すべき点だと思います。


◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆
まとめ
◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆
今回のEU GMP Part1の3章、5章、8章の改訂版には、リスクベースドアプローチ、交差汚染対策の
強化、出発原料の供給元(製造業者及び供給者)の管理の強化、医薬品の不足時の報告の強化、
CAPAの活用といった昨今の規制の動向がそのまま反映され、しかも、以前の記述より明確になって
います。
EU GMPの改訂は、PIC/S GMPにも近いうちに必ず反映されますので、今回EU GMPに盛り込まれた
内容は十分意識しておく必要があると思われます。

最後までお読み頂き、ありがとうございました。
☆次回は、9/30(火)に配信させていただきます。


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【発行責任者】
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ASTROM通信』担当 橋本奈央子
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2014.09.01

【医療用医薬品への新バーコード表示】ASTROM通信<57号>

 ~安全な医薬品の安定供給をご支援する~

こんにちは
ASTROM通信担当の橋本奈央子です。

朝晩はだいぶ暑さも和らいできましたが、いかがお過ごしでいらっしゃいますか?

今回は、以前にも取り上げたことがあるのですが、いよいよ対応期限まで1年をきった医療用
医薬品への新バーコード表示について取り上げたいと思います。


◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆
医療用医薬品への新バーコード表示に伴うJAN/ITFコード表示の終了について
◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆
ご存知の方も多いと思いますが、2014年7月10日付で、医政経発0710第5号・薬食安発0710第7号
厚生労働省医政局経済課長・医薬食品局安全対策課長連名通知「医療用医薬品への新バーコード
表示に伴うJAN/ITFコード表示の終了について(周知徹底及び注意喚起依頼)」が発出され
ました。

平成27年7月(特段の事情(※1)のあるものは28年7月)以降製造販売業者から出荷される医療用
医薬品については、すべての製品の調剤及び販売包装単位、特定生物由来製品及び生物由来製品
の元梱包装単位に新バーコード(※2)による表示が行われることとなり、併せて、現在、販売包装
単位に新バーコードとともに任意で併記されているいわゆるJANコード及び元梱包装単位に
任意で併記されているいわゆるITFコードが表示されなくなります。
※1:特段の事情とは、年1回しか製造していない物等をさします。
※2:新バーコードとは、日本工業規格X0509 に規定するGS1 データバー又は日本工業規格X0504
  に規定するコード128をさします。

出典:http://wwwhourei.mhlw.go.jp/hourei/doc/tsuchi/T140714I0010.pdf


◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆
新バーコードの詳細
◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆
新バーコードに表示するデータは下記の通りです。
●:平成20年9月(特段の事情があるものについては21年9月)以降に出荷されるものに表示
★:平成27年7月(特段の事情があるものについては28年7月)以降に出荷されるものに表示
○:任意表示

(1)調剤包装単位
●特定生物由来製品
商品コード:必須 有効期限:必須 製造番号または製造記号:必須
●生物由来製品(特定生物由来製品を除く)
商品コード:必須 有効期限:任意 製造番号または製造記号:任意
★内用薬(生物由来製品を除く)
商品コード:必須 有効期限:任意 製造番号または製造記号:任意
●注射薬(生物由来製品を除く)
商品コード:必須 有効期限:任意 製造番号または製造記号:任意
★外用薬(生物由来製品を除く)
商品コード:必須 有効期限:任意 製造番号または製造記号:任意

(2)販売包装単位
●特定生物由来製品
商品コード:必須 有効期限:必須 製造番号または製造記号:必須
●生物由来製品(特定生物由来製品を除く)
商品コード:必須 有効期限:必須 製造番号または製造記号:必須
●内用薬(生物由来製品を除く)
商品コード:必須 有効期限:任意 製造番号または製造記号:任意
●注射薬(生物由来製品を除く)
商品コード:必須 有効期限:任意 製造番号または製造記号:任意
●外用薬(生物由来製品を除く)
商品コード:必須 有効期限:任意 製造番号または製造記号:任意

(3)元梱包装単位
●特定生物由来製品
商品コード:必須 有効期限:必須 製造番号または製造記号:必須 数量:必須
●生物由来製品(特定生物由来製品を除く)
商品コード:必須 有効期限:必須 製造番号または製造記号:必須 数量:必須
○内用薬(生物由来製品を除く)
商品コード:任意 有効期限:任意 製造番号または製造記号:任意 数量:任意
○注射薬(生物由来製品を除く)
商品コード:任意 有効期限:任意 製造番号または製造記号:任意 数量:任意
○外用薬(生物由来製品を除く)
商品コード:任意 有効期限:任意 製造番号または製造記号:任意 数量:任意

必須表示以外のデータについては、今後の表示状況及び利用状況を踏まえ、可能な製造販売業者
から新バーコード表示に順次取り組むことが求められています。


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新バーコード表示の対応状況
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2014年7月4日付の薬事日報に、厚労省医政局経済課が公表した、昨年9月末時点での「医療用
医薬品における情報化進捗状況調査」の結果が掲載されていました。
それによりますと、表示が義務付けられている項目については、ほぼ100%の表示率だったそう
です。
しかし、来年7月出荷分から義務化される調剤包装単位の内用薬の商品コードは約38%(前年
より14ポイント増加)、外用薬の商品コードは約35%(前年より12ポイント増加)と、まだ
50%をきる状態だったそうです。

また、医薬品卸売業者については、物流センターで新バーコードを利用していた企業の割合は、
販売包装単位が78%(前年より8ポイント上昇)、元梱包装単位は74%(前年より23ポイント上
昇)、支店・営業所で新バーコードを利用していた企業の割合は、販売包装単位が57%(前年
より3ポイント上昇)、元梱包装単位は44%(前年より9ポイント上昇)だったそうです。


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まとめ
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医薬品の取り違え事故の防止及びトレーサビリティの確保並びに医薬品の流通の効率化を
推進する”という目的で始められた新バーコード表示ですが、まだまだ対応が進んでいない
ようです。
バーコードを使用することで、確実に人為的ミスが減らせますし、バーコードを読んだという
電子記録も残せますので、任意項目も含め、バーコード表示の普及が望まれるところです。

しかし、実現のためには、製造販売業者様であれば、新バーコードを印字するしくみ、印字した
ものをテストするバーコード検証機のようなものが必要になりますし、卸売業者様であれば、
新バーコードを読むリーダを用意する必要がありますので、対応の遅れている会社様には、
今後相当な負担がかかりそうです。

来年7月出荷分から対応が必要となると、残された時間は1年もありません。
直前にバタバタしないためにも、早急なしくみ作りと、そのバリデーションが必要ではないで
しょうか。


最後までお読み頂き、ありがとうございました。
☆次回は、9/15(月)に配信させていただきます。


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