ASTROM通信バックナンバー

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2013.11.29

【QbD:新たな製剤開発手法】ASTROM通信<39号>

 ~安全な医薬品の安定供給をご支援する~

こんにちは
ASTROM通信担当の橋本奈央子です。

今年も残すところあと1ヶ月。気忙しい季節になってきましたが、いかがお過ごしですか?

さて、最近、QbD(Quality by Design:クオリティ・バイ・デザイン)という言葉を耳にした、
もしくは耳にする機会が増えてきたということはありませんか?

QbDは、製剤の製品開発における手法で、そのコンセプトは、日米EU医薬品規制調和国際
会議のガイドラインICH Q8,Q9,Q10及びQ11に述べられています。

このQbDの手法の中のデザインスペースにフォーカスを当てて、2013/10/23に、欧州医薬品庁
(EMA)と米国食品医薬品局(FDA)が共同でQ&A集を出しました。
そこで、今回はこのQ&Aについて取り上げたいと思います。

QbDやデザインスペースは製剤開発の話と思われている方も多いと思うのですが、この考え方
は今後の品質管理に大きな影響を与えることになると思いますので、是非ご覧いただければと
思います。


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QbD(クオリティ・バイ・デザイン)への期待
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QbD手法の根底には、品質は製品になってから検証するものではなく、製品設計によって製品
に組み込まれているべきという考えがあり、デザインスペースの手法につながります。

<QbDの概要>
予め製品の目標品質を設定する → 科学的知見やリスクアセスメントに基づいて、目標品質
を担保するために管理すべきデザインスペース(工程パラメータと品質特性の範囲)を定める
→ デザインスペース内で運用することで一定品質を維持していく

この手法を取り入れることにより、下記の点が期待できます。
・デザインスペース内での変更であれば、承認事項の変更とはみなされないため、変更の申請
が不要
上流工程の管理がデザインスペース内でしっかり行われていれば、最終製品試験を減らせる
ため、リアルタイムリリース試験(RTRT)が可能になる
<注意>RTRTは最終製品試験の替わりとなり得るが、GMP下でバッチ出荷に要求される照査
及び品質管理の手続の替わりとなるものではない。

デザインスペースの設定を誤れば大変なことになりますので、デザインスペースの十分な検証が
必要になります。
よって、今まで以上に工程記録の管理やトレンド解析が重要になってくると思われます。
また、PAT(Process Analytical Technology:プロセス解析工学)の考え方を取り入れていく
必要もあるでしょう。
しかし、QbDの使用により、これまでよりもはるかに効率的な品質管理が実現できる可能性が
あるのです。


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用語集
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ここで、いくつかの重要な用語につき、薬食審査発第0628第1号 「製剤開発に関するガイドライン
の改定について」(平成22年6月28日発出)の4章 用語の記載を引用しておきます。

QbD(Quality by Design:クオリティ・バイ・デザイン):
事前の目標設定に始まり、製品及び工程の理解並びに工程管理に重点をおいた、立証された
科学及び品質リスクマネジメントに基づく体系的な開発手法。
※製剤開発に関するガイドライン 補遺の中では、”設計による品質の作り込み”と書かれて
います。

デザインスペース:
品質を確保することが立証されている入力変数(原料の性質など)と工程パラメータの多元
的な組み合わせと相互作用。このデザインスペース内で運用することは変更とはみなされない。
デザインスペース外への移動は変更とみなされ、通常は承認事項一部変更のための規制手続き
が開始されることになる。デザインスペースは申請者が提案し、規制当局がその評価を行っ
て承認する(ICH Q8)。

PAT(Process Analytical Technology: プロセス解析工学(工程解析システム)):
最終製品の品質保証を目標として原材料や中間製品/中間体の重要な品質や性能特性及び
工程を適時に(すなわち製造中に)計測することによって、製造の設計、解析、管理を行う
システム。

RTRT(Real Time Release Testing:リアルタイムリリース試験):
工程内データに基づいて、工程内製品及び/又は最終製品の品質を評価し、その品質が許容
されることを保証できること。通常、あらかじめ評価されている物質(中間製品)特性と
工程管理との妥当な組み合わせが含まれる。

詳細は下記を参照してください。
http://www.pmda.go.jp/ich/q/q8r2_10_6_28.pdf


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2013/10/23にEMAとFDA が共同で出したQ&A集のポイント
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ここからようやく、EMAとFDA が共同で出したQ&A集についての話題となります。

EMAとFDAは、2011年3月に、QbDに関連し、製造・品質の並行評価のための3か年の試験的な
プログラムを立ち上げ、並行評価の中で達した結論につき、Q&A集にまとめました。
日本のPMDAはこのプログラムにオブザーバとして参加しています)

Q&Aのポイントは下記の通りです。
●デザインスペースの検証は、申請の提出時に完了している必要はなく、製品のライフサイクル
を通して継続的に検証されるべきである。

●デザインスペースの検証は商業スケールで行うべきである。商業スケールで検証し、スケール
アップが製品品質に悪影響を及ぼさないことを示す必要がある。

●デザインスペースは、はじめは、ラボまたはパイロットスケールで行われた実験に基づいて
設定される。商業スケールにおけるデザインスペースの信頼性は、開発データの量とタイプと、
スケーラビリティ(すなわち、デザインスペースのスケール依存度)の知識により異なる。
商業スケールのデザインスペースのリミットは、開発研究及び/または実験中に示された
スケールアップの相関性に基づく。また、デザインスペースのリミットは、コンピュータ
シミュレーションで確認できる。

デザインスペースを定義するためにラボまたはパイロットスケールで行われた実験を商業
スケールで繰り返す必要はない。さらに、デザインスペースの全領域で検証したり、不合格
の境界を判断したりする必要はない。原則として、提出時、デザインスペースの1つ以上の
領域で検証されているだろうが、製品のライフサイクルを通じてデザインスペースはさらに
検証されるだろう。

●デザインスペースの検証の手順は以下のものを含む:
・CQA(重要品質特性)への影響が商業スケールでは検証されていないスケールに依存するパラ
メータのリストアップ
・スケールアップによるCQAへの潜在リスクの定義
要求される品質の製品が一貫して生産されることを保証するために策定される管理戦略が、
リスクに対処可能かどうかの議論
・必要に応じて、任意の追加コントロールの記述

●万が一予期しない結果/事象が、デザインスペース検証研究の間に得られた場合や、デザイン
スペースの境界や記述の変更や、デザインスペース検証の手順の変更は、当局に報告されな
ければならない。

●プロセスバリデーションとデザインスペースの検証は、どちらも予備知識と開発結果を考慮し、
商業スケールで行われるが、スコープが違う。
プロセスバリデーションは正常な動作範囲(NOR)でプロセスの一貫性を実証するが、デザイン
スペースの検証はスケールの影響 及び/又は モデルの前提が、設計スペースの新しい領域に
おいて制御可能で、製品品質に影響を与えないことを示すものである。

詳細は下記をご参照ください。
http://www.ema.europa.eu/docs/en_GB/document_library/Other/2013/11/WC500153784.pdf


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まとめ
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先日の日薬連主催の医薬品GQP・GMP研究会の中で、PMDAより、日本におけるQbD適用品目の
承認件数が2008年で3件だったのに対し、2012年には11件になったと聞きました。
QbDを採用するケースが確実に増えてきているようです。

QbDを採用するためには、十分な科学的知見とリスクマネジメントが必要になるでしょう。
しかし、ほんの小さな変更であっても届出や承認が必要であった今までとは違い、検証された
デザインスペースの中であれば製法等の変更が可能になると、規制当局・製薬会社の双方が、
品質管理にかける時間とコストを削減できるのではないでしょうか

QbDは、現時点では、EMAもFDAもまだ試験的な状況にあるように思いますが、今後の品質管理に
画期的な変革をもたらす可能性があり、目が離せません。


最後までお読み頂き、ありがとうございました。
☆次回は、12/13 (金)に配信させていただきます。

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【発行責任者】
株式会社プロス
ASTROM通信』担当 橋本奈央子
info@e-pros.co.jp

2013.11.15

【速報!医薬品GQP/GMP研究会】ASTROM通信<38号>

~安全な医薬品の安定供給をご支援する~

こんにちは
ASTROM通信担当の橋本奈央子です。

冬らしくなってきましたが、いかがお過ごしでいらっしゃいますか。

さて、参加された方もおいでになると思いますが、先日、東京・大阪・富山の3会場にて、
日本製薬団体連合会主催の「第33回 医薬品GQP/GMP研究会」が開催されました。

私は11月7日の大阪会場の研究会に参加してきました。
そこで今回は、この医薬品GQP/GMP研究会で聞いた内容と、大阪会場のみの講演内容
について、取り上げたいと思います。


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今回の研究会の概要
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今回の研究会は、研究課題が「PIC/S加盟に向けた品質保証のあり方について」という
ことで、PIC/S加盟申請に関わる話題や、PIC/SのGMPガイドランを踏まえて
今年の8月30日に発出された通知「医薬品及び医薬部外品の製造管理及び品質管理の基準に
関する省令の取り扱いについて」(薬食監麻発0830第1号 厚生労働省医薬食品局監視
指導・麻薬対策課長)の解説、また、近々発出予定のGMP事例集の改正版が取り上げられて
いました。

また、「ICH Q7の解釈の変化に対応するICH Q7 IWGの活動について」という
特別講演では、昨今のICH Q7(原薬GMP)の解釈の変化や、それによるICH Q8、
Q9、Q10、Q11への影響について、解説が行われました。


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医薬品及び医薬部外品の製造管理及び品質管理の基準に関する省令
取り扱いについて」の解説
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(講演会内容より)
PIC/SのGMPガイドラインと日本のGMPには、主に、以下の6つのギャップが存在
しています。
1.品質リスクマネジメントの活用
2.製品品質の照査
3.参考品・保存品等の保管
4.安定性モニタリング
5.原料等の供給者管理
6.バリデーション基準

国際整合性を図る目的で、8月30日発出の課長通知本文 及び GMP施行通知の改正に、
これらの6点が盛り込まれました。
6点に関する解説のポイントを簡単にまとめます。

1.品質リスクマネジメントの活用 について
 全てを闇雲に管理するのではなく、リスクに応じた管理が求められています。
 ベースとなるICHQ9,Q10にも目を通しておく必要があります。

2.製品品質の照査
 製品品質の照査を、通常毎年1回実施し文書に記録すること、そして、照査結果は再バリ
 デーションと関連付けることが求められています。

3.参考品・保存品等の保管
 参考品:市場に出荷後の不具合等、将来、品質を評価する可能性に備えるための分析試験
     用のサンプルです。
     最終製品以外に、原料・資材も、製造業者等がリスクを考慮し、必要に応じて保管
     すべきであるとされています。
 保存品:市場にある製品との同一性を確認するためのサンプルで、最終製品のロットから
     採取したものである必要があります。

4.安定性モニタリング
 最終製品及び原薬が該当します。
 製造した最終製品あるいは原薬が、定められた保管条件下で有効期間、リテスト期間
 または使用期限にわたり、規格内の品質に留まっている、また、留まり続けることが
 期待できることを監視し、その結果を記録し保管する必要があります。
 GMP事例集の改訂版では、原則として25℃±2℃、60%RH±5%RHを保存
 条件とするが、当面の間は、室温における保管を認め、その代わりに温湿度モニタリング
 の実施を求めるようです。

5.原料等の供給者管理
 全ての原料及び資材は、品質部門が承認した供給者から購入し、その承認プロセスは、
 品質管理基準書等に定めておく必要があります。
 重要な原料及び資材は、供給者との間で製造及び品質に関する取り決めを行い、供給者が
 取り決めに従って管理を行っていることを、リスクに応じて適切に確認することを求めて
 います。

6.バリデーション基準
 製品ライフサイクルに応じた管理を行うこと(ICH Q10)、品質リスクに基づき
 実施すること(ICH Q9)、大規模プロジェクトのような場合はバリデーションの
 マスタープランを作成することを考慮する必要があることなどが求められています。
 また、GMP施行通知の中も、DQ/IQ/OQ/PQの定義が明確にされました。


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大阪府におけるGMP調査について(大阪会場のみの講演)
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今後大阪府で実施するGMP調査の実施案について説明がありました。
大阪府以外の製薬会社様には直接関係はないかもしれませんが、非常に興味深い内容だった
ので、ここで取り上げたいと思います。

大阪府は、課長通知、事例集等に基づく確認事項をチェックリスト化して、GMP調査を行う
予定だそうです。

チェックリストでは、まずは、品質リスクを考慮した製造管理・品質管理を行っているかを
確認し、行っているという回答だった場合は、手順書の有無や実施内容について具体的な確認
を行うようです。

GMP調査における指摘事項案は下記の通りです。

・課長通知の内容に抵触する場合
  当面の間は軽度の指摘により改善計画を促す
  ただし、場合によっては中程度の指摘等により強く改善を求める場合もある
・GMP事例集の内容に抵触する場合
  当面の間は推奨事項として柔軟な指導を行うことを基本とする
  ただし、場合によっては軽度の指摘等により改善を促す場合もある
[出典:第33回 医薬品GQP/GMP研究会 講演要旨集]

また、製品品質の照査(年次レビュー)に関するGMP調査では、直近のロットについて
確認を行うのではなく、リスクの高いロットを選定し、そのロットの製造記録、試験記録、
及び出荷記録等を確認して、妥当性を評価するという話がありました。

大阪府以外でも、多少の違いはあっても似たようなGMP調査が行われることになるのでは
ないでしょうか。
製薬会社様は、今回の大阪府の実施案、指摘事項案を参考にされるのがよいと思います。


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まとめ
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今回、医薬品GQP/GMP研究会に参加し、日本の製薬業界にとって、PIC/S加盟が
いかに大きな変化をもたらすものであるかをあらためて認識することができました。

また、GMP事例集の改正版には、かなり新しい内容が追加されているようですので、発出
されたら要チェックです!


最後までお読み頂き、ありがとうございました。
☆次回は、11/29 (金)に配信させていただきます。

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2013.11.01

【FDA、抜き打ち査察を計画中!】 ASTROM通信<37号>

 ~安全な医薬品の安定供給をご支援する~

こんにちは
ASTROM通信担当の橋本奈央子です。

今年も残りすくなくなってきたことを実感しているこの頃ですが、いかがお過ごしですか。

今回は、海外のGMPニュースで気になる記事を2件、取り上げたいと思います。

そのうちの1件は、米食品医薬品局(FDA)に関わるものです。
前回、FDAが発した最近のワーニングレターのいくつかを見ていきましたので、2回連続
のFDAネタになりますが、どうぞお付き合いください。


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FDA、インド製薬会社の抜き打ち査察を計画中!
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FDAは、インドにおける薬の製造現場の積極的な監視および抜き打ち査察を行う計画を
しています。

過去9ヶ月の間にインドの調査団の数を12から19に増やし、もともとあったニューデリー
のオフィスに加え、ハイデラバードとムンバイにもオフィスを開き、製造現場の頻繁な管理
を可能にするための準備を整えています。

インドには、FDA承認製造プラントが米国の国外として最も多く存在し、また、米国への
ジェネリック医薬品の最大の輸出国となりましたが、その一方で、製薬現場では様々な
コンプライアンス問題が発生しているため、これは当然の動きといえるでしょう。

コンプライアンス問題の中には、GMPの違反だけでなく、データの完全性に関する問題
も含まれています。

これまでFDAは予め査察の実施を知らせていたため、査察の準備をするための時間が
十分ありましたが、抜き打ち査察となると、そうはいきません。
これまで以上にさまざまな問題が見つかる可能性があります。

また、記事によれば、FDAは、犯罪捜査の専門知持った人を査察チームに入れたそう
です。
FDAがインドの製薬現場におけるコンプライアンス問題をかなり重大視していることが
うかがえます。

インドの製造設備で起きているコンプライアンス問題の根本的原因は、しばしば、文化や、
設備で働く人の姿勢や、会社の経営上層部を含む人的要因に関係しています」と、元FDA
のコンプライアンス組織の長であり、現在アメリカの製薬企業の品質問題のコンサルタント
であるAjaz Hussain氏は語っています。

インドの製薬企業のコンプライアンス問題の根はかなり深いところにあるのかもしれません。

<情報>
インドの製薬の輸出促進会議によれば、インドにはFDAが承認する135の製造プラント
があり、製薬業は1兆1000億ルピー(2013/10/27のレートで1.58471 JPY = 1 INR なので、
約1兆7431億円)の産業になっています。
その大部分はジェネリック医薬品であり、2012年の輸出金額は約4000億ルピー(約6339億円)
で、その約30%(約1900億円)を米国に輸出しています。

 出典
  http://www.gmp-publishing.com/en/gmp-news/gmp-aktuell/FDA-surprise-inspections-india.html
  http://www.livemint.com/Industry/j65oKt7TtyxTxDS2Ut6seL/US-regulator-plans-surprise-inspections-at-Indian-drug-units.html


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EU以外で初!厚労省がEudraGMDPデータベースに入力開始。
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厚生労働省とPMDAは、日本の製薬メーカのリクエストに基づき、日本の製薬メーカの
GMPコンプライアンスに関する情報を、10/1よりEudraGMDPデータベースに入力
し始めました。
※EudraGMDP:欧州医薬品庁(EMA)が提供する製造および輸入認可、GMP
 証明書の情報を含むデータベース
 詳細は、下記URLをご参照ください。
 http://www.pmda.go.jp/operations/shonin/info/export/file/130628-04.pdf

EudraGMDPデータベースにヨーロッパ以外の規制当局が情報を追加するのは初めて
のことです。
この取り組みにより、薬事規制関連の手続きをスピードアップし、輸入業者・製薬メーカ・
監督機関の時間を節約することが期待されます。

この展開は、欧州連合(EU)および日本の間で相互認証協定(MRA)の一部です。
欧州医薬品庁(EMA)は、新しい製造メーカの追加を含む販売許可申請や変更申請の
ような多数の薬事規制関連の手続きのためにGMP証明書原本を発行する代わりに、
ヨーロッパの各国の所轄官庁と日本の監督省庁がEudraGMDPの情報を使うことを
許可します。
EU及び日本の規制当局は、EU-日本のMRAの範囲内で、EudraGMDPの項目
の参照、ダウンロード可能なファイル、データベースからの印刷が可能になります。

EMAは、EUが、MRAまたは工業製品の適合性評価と受理(ACAA)を締結している
全ての国の規制当局に対してEudraGMDPに”読込&書込”のアクセスを許可します。
これらの国の大部分は、既に、自国の規制手続きのために、EudraGMDPの情報を
使用していますが、日本の規制当局はEudraGMDPにデータを入力する権利を取
した最初の国です。

 出典
  http://www.gmp-publishing.com/en/gmp-news/gmp-aktuell/Japan-EU-eudragmdp.html


◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆
まとめ
◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆
FDAがインドの製薬会社の抜き打ち査察を計画しているニュースから、米国が、いかに
インドの状況を危惧しているかがわかります。
インドから原薬や医薬品を輸入している日本の製薬会社様も、インドの状況を考慮し、
供給者の管理をしっかり行う必要がありそうです。

もう1点。この10/1より、日本の厚労省及びPMDAがEudraGMDPデータベースに
登録可能になりました。輸出手続きの効率化・スピードアップが期待されます。
また、このEudraGMDPデータベースにヨーロッパ以外の規制当局が情報を追加
するのは日本が初めてのことであるのは注目すべき点ではないでしょうか。
厚労省及びPMDAの管理レベルは、EMAから信頼を得ていると考えてよいでしょう。
PIC/S加盟が近いのではないでしょうか。


最後までお読み頂き、ありがとうございました。
☆次回は、11/15 (金)に配信させていただきます。

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