ASTROM通信バックナンバー

2014.11.01

【ICH Q12コンセプトペーパーについて】ASTROM通信<61号>

 ~安全な医薬品の安定供給をご支援する~

こんにちは
ASTROM通信担当の橋本奈央子です。

朝晩すっかり冷え込むようになってきましたが、いかがお過ごしですか?

今回は、ICH(International Conference on Harmonisation of Technical Requirements
for Registration of Pharmaceuticals for Human Use:日米EU医薬品規制調和国際会議)
で検討されている新しいガイドラインQ12に関する話題を取り上げたいと思います。


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ICH Q12「医薬品のライフサイクル管理に関する技術的および法的考察」
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2014年9月9日にICH運営委員会により、2014年7月28日付ICH Q12の最終コンセプトペーパー
「医薬品のライフサイクル管理に関する技術的および法的考察」が承認されました。

具体的なガイドライン条文はまだ存在していませんが、現時点でわかっていることについて、
コンセプトペーパーの内容をもとにご説明します。

■ICH Q12を作ろうとする背景
ICH Q8、Q9、Q10およびQ11は、科学的かつリスクベースのアプローチの機会を提供していますが、
ライフサイクル全体を通したアプローチが不足しています。
製品ライフサイクルの初期段階(すなわち、立上げ時の開発)は重要視されていますが、
商用生産段階での技術及び規制と調和したアプローチが不足しているために、承認後の運用の
柔軟性は達成されていません。それにより、医薬・バイオテクノロジーのイノベーションや
継続的改善の妨げになっています。
さらに、承認後の変更管理の計画やプロトコルの一貫しない利用があります
結果として、将来を見越したより戦略的な方法で、将来の変更を予め管理するチャンスを
逃しています。
そこで、ICH Q12により、ライフサイクル管理に関する技術的および法的考察に関する調和し
アプローチを提供することで、継続的な品質保証と高品質の医薬品の提供を支援する必要がある
のです。

■ICH Q12の適用対象
ICH Q12は、現在販売されている化学・バイオテクノロジーおよび生物学的製剤を含む医薬品
に適用されることになりそうですが、ジェネリック医薬品をこのガイドラインの範囲に含める
かどうかについては、各規制当局の判断となりそうです。

■ICH Q12への期待
ICH Q12は、ICH Q8~Q11と併用されることが意図され、製品のライフサイクルを通じて、より
予測可能で効率的な方法で、承認後の“化学・製造および品質管理”(CMC)の変更の管理を
容易にするためのフレームワークを提供することになるでしょう。
このガイドラインの採用は、イノベーションおよび継続的な改良を促進し、積極的なサプライ・
チェーンの計画を含む製品の品質保証と信頼できる製品供給を強化するでしょう。
また、規制当局(監査者や査察官)が承認後のCMCの変更の管理に関する製薬会社の医薬品品質
システム(PQS)をより理解することを可能にし、PQSにより多くの確信と信頼を抱くでしょう。

■ICH Q12の構想
この新しいガイドラインの開発および実施は、業界、規制当局および患者のために、次のような
利点を提供することを構想しています。
・製品のライフサイクルを通じて、より透明で効率的な方法でCMCの変更を管理するために、
 企業及び規制当局がより利用可能で供給の信頼性につながる変更管理を実現する
・リスクベースの法的管理と監査・査察のための資源の最適化を促進させる
・簡易化し調和したアプローチと、ICHの全地域を通じたガイドラインの期待についての解釈に
 より、業界がガイドラインへの適合を保証するための書類の維持と更新することを支援する。
・予想される変更管理(例:承認済の変更管理(PACM)の計画、PACMのプロトコル/比較可能性
 プロトコル、申請用紙)に関する規定ツールの使用を促進する。
製造や品質問題による医薬品不足を緩和することができる承認後の変更の戦略的管理を可能
 にすることで、供給に関する信頼性の保証を支援する
・製品の品質のバラツキを減らし、製造効率を増す製造工程とコントロール戦略の継続的改良
 を支援する
・製造効率を上げる
・イノベーションとPACMの導入を促進する
プロセスバリデーションライフサイクルコンセプトの実施を支援す
・ライフサイクルのコントロール戦略を可能にする(例:モデルメンテナンス、分析的ライフ
 サイクル)

出典
http://www.ich.org/fileadmin/Public_Web_Site/ICH_Products/Guidelines/Quality/Q12/Q12_Final_Concept_Paper_July_2014.pdf


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ICH Q12がガイドラインとなるまで
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ICH Q12の今後のタイムスケジュールは次の通りです。
 2014年6月             ICH運営委員会の承認によるトピックの採用
 2014年7月31日         コンセプトペーパー及びビジネスプランのIQDG(Informal Quality
                         Discussion Group)による同意
 2014年9月9日              コンセプトペーパー及びビジネスプランの運営委員会による採用
 2014年11月               ポルトガルのリスボンで第1回専門家委員会(EWG)の開催
 2015年6月                第2回専門家委員会(EWG)の開催
 2015年11月               第3回専門家委員会(EWG)の開催
 2016年第2四半期     Step2ドキュメントの採用
 2017年第2四半期     Step4ドキュメントの採用

今はまだコンセプトペーパーが承認されただけの状態ですので、このICH Q12がガイドライン
として成立するには、まだまだ時間がかかりそうです。

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●補足●
ICHのガイドラインは次の5ステップを経て成立します。
Step1:コンセンサス形成
 コンセプトペーパーに書かれた目的に基づいて、専門家委員会(EWG)が会議を行いながら、
 テクニカルドキュメントのドラフトを作成します。ドラフトのコンセンサスが得られると、
 Step2の採用を要求するために運営委員会に提出されます。

Step2a:6部会のテクニカルドキュメントについての6部会の一致の確認
 テクニカルドキュメントについて、6部会で十分な科学的コンセンサスが存在しているか
 を確認します。

Step2b:規制部会によるによるガイドライン案の採用
 テクニカルドキュメントに基づいて、3つのICH規制部会は、ガイドライン案を作るために
 活動します。
 3部会がガイドライン案に署名してStep2bに到達します。

Step3:規制の協議と議論
 段階1:ICHの各地域の規制当局の協議
 段階2:地域の規制当局のコメントの議論
 段階3:Step3の専門家によるガイドライン案のまとめ

Step4:ICHの調和した3者のガイドランの採用
 運営委員会がガイドライン案に十分なコンセンサスが存在していると同意するとStep4に
 達します。

Step5:実施
 Step4に達したらすぐ、実施の最終段階に移ります。
 このステップは、EU、日本、アメリカの中で、各国の手順に従ってガイドラインを実施します。

出典
http://www.ich.org/about/process-of-harmonisation/formalproc.html#step-2


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まとめ
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今回のテーマであるICH Q12は、内容がまだ見えていないので漠然とした内容になってしまい
ましたが、ICH Q12を作ろうとする動きはとても興味深いです。
というのも、これまでのガイドラインは、コンセプトペーパーにも書かれている通り、製品
ライフサイクルを通じた管理をせよと言いつつ、その記述は開発段階に集中しすぎている気が
してなりませんでした。
皆様も、ICHは商業生産段階での記述が薄く、困惑されることもおありだったのではないで
しょうか。

余談ですが、コンピュータ化システム適正管理ガイドラインも、開発フェーズについては
詳しく書かれているのですが、運用フェーズ、廃棄フェーズは記述が薄い気がします。。。

それはさておき、このICH Q12がどのような内容になるのか、とても楽しみです。
効率的な変更管理の手法を示してもらえるとうれしいなと思います

最後までお読み頂き、ありがとうございました。
☆次回は、11/14(金)に配信させていただきます。


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